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14章 二人の真実

コレットの書~真実・1~

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 ◇◆アース歴200年 6月24日・朝◇◆

「……ん……朝、か……」

 今日はドラゴニュートの探索……昨日の夜に親父さんに脅されたせいか、あまり寝付けなかった。
 必ず遺跡の中にいるわけじゃないけど、なん~か嫌な予感がするのよね。

「……いやいや! 朝から暗い気持ちになってどうするのよ!」

 今は魔力の鎧もある! まぁそのせいで余計なプレッシャーもあるけども。
 また黄金の剣みたいなのが高速で飛んでこない限りは大丈夫!

「――よし、今日も一日頑張るぞ! ファイト私!」



≪――!≫

「……」

 さすがに今日は朝一でギルドに行った方がいいかなと思って、早く来たけど……。

≪――! ――!≫

 もうギルドの中が騒がしい。
 さすがギルド総出の捜索なだけあるわ、私も早く中へ入らないと。

「他の村や町に出た情報は?」
「――で、この肉を檻の中に入れておいてだな……」
「そんな安い肉に上級モンスターが釣られるわけがないっての! つか、せめて大きい檻にしろよ! 何でまだ小さな檻のままなんだよ!」

 ジャイアントスネークの時と同じような感じで冒険者がいっぱいだけど、今度はドラゴニュートだからあの時よりも殺気だってる気がする……。

「――コレットさん、おはようございます!」

「おはようございます、キャシーさん」

 今回も、キャシーさんが紙の束を持ってカウンターの奥から出て来た。
 相変わらずバタバタして忙しそうだし、私は邪魔しない様にグレイさんの所へ行こっと。

「それじゃあ、私はグレイさんの所にいきますね」

「あっコレットさん、ちょっと待ってください!」

「――? なんですか?」

 キャシーさんに呼び止められたけど、どうしたんだろう?
 別に頼み事や、頼まれ事は無かったはずなんだけど……。

「グレイさんなら2階にいますので、上に行ってください」

「えっ? 2階ですか?」

 いつもの席にいるんじゃないんだ。

「はい、2階の――」

「おーい! 俺にも資料をくれないか!!」

「あっは~い、いますぐ! ――とにかく、グレイさんは2階に居ますから~! でわ~!」

「はあ……わかりました」

 行っちゃった。
 とりあえず、言われた通り2階に行きますか。
 私にとってはあんまり2階にいい思い出が無いんだけどね……。

「さて、2階に上がったけど……」

 しまったな~どの部屋にグレイさんがいるのか聞いてなかった。
 仕方ない、まずは前にグレイさんが爆睡していた部屋に行ってみよう。

≪――A班はここ、B班はこっちを頼む≫

 お、グレイさんの声がする。当たりのようだけど、今入っていいのかな?
 ん~私がギルドにいる事を伝えときたいし、ノックして聞いてみよう。

 ――コンコン

《ん? 誰だ?》

「あ、コレットです。今ギルドに来た所なんですけど……」

《おお、そうか。廊下にいるのもあれだ、中に入ってくれ》

 私は別に廊下で待っていてもいいんだけど。
 まぁ入れと言われたから入りますか。

「はい、それじゃあ失礼しま……すっ!?」

【……】

 なんかグレイさんみたいなに大きくてガタイのいいザ・漢! って感じの人達が10人でテーブルを取り囲んでいる。
 しかも、そこまで広くないこの部屋にグレイさんを合わせて11人もいると部屋の酸素と熱気がかなりやばい……。

「すまんな、もう少しで終わるからそこの椅子にでも座って待っていてくれ」

「は、はい……」

 これは廊下で待っていたかったかも……。
 グレイさんの気遣いは嬉しんだけど、この状況での気遣いは全く嬉しくない。

「で、C班はここ。DからG班は山脈を通ってくれ。HからJ班はリリクスに残り防衛……以上だが何か質問はあるか?」

【……】

「……無いようだな。では、各自頼んだぞ」

【――おう!】

 皆出て行っちゃった。
 出て行く時にちらっと見えたけど、さっきの人たちって三つ星級だったわね。

「あー慣れねぇ事をすると肩が凝るぜ」

「あの、何の会議をしていたんですか?」

「カルロフの奴がまだ病院にいるせいで、今回の指揮は俺がとることになったんだよ……こればかりは逃げられんかった」

 ああ、そうか。カルロフさんがいない状態だとグレイさんが最高ランクだものね。
 まぁ最高ランクで言えばホートンさんが五つ星だけど……現役から離れているし、執事だしね。

「うし、俺らも遺跡に行くとするか」

「あれ? カルロフさんみたいに1階で会議はしないんですか?」

「大丈夫だ、指示ならさっき各部隊の隊長に済ませたからな」

 あ~なるほど、あの人達って隊長さん達だったんだ。

「それに、あんな時間がかかる事やってられないっての。ほら、行くぞ」

「……」

 それでいいのか四つ星級。
 本当に各部隊は大丈夫なのかしら。



「――あっ来たっスね! おはようございまっス!」

「おはようですな! グレイ氏、コレット氏」

 あれ? 何でジゴロ所長さんがギルドにいるんだろ?
 てかジゴロ所長さんでいいのかな? エフゴロさんの方? いやいや、ここまで来たらジゴロ一族の誰かかもしれない……。

「なんで爺さんがここにいるんだ? ドラゴニュートの話なら昨日済ませただろう」

 グレイさんが爺さんと呼んだって事は、ジゴロ所長さんで間違いないわね。
 ただ、グレイさんの反応から見るにジゴロ所長さんが来る事は知らなかったみたいね。

「それはもちろん、遺跡捜索へ一緒に行くためですな!」

「「はい!?」」

 ええ! また、いきなり何を言い出すのこの人は?
 昨日は研究室で分析とか言っていたから、ずっと籠っていそうだったのに。
 いや、それ以前に年寄りの科学者が冒険とか無謀すぎでしょ!

「なんだそりゃ? 俺は聞いてねぇぞ、そんな事!」

「そりゃそうですな、今朝決めた事ですな」

 いくらなんでも急も急すぎでしょ、それ。

「あの、急にどうしてですか?」

「それが不思議なんですな。今日皆さんについて行かないと、ものすごく後悔する気がしたんですな。そのせいか分析にも集中が出来ず、仕方なく息子に任せてここに来たという事ですな」

 ええ……なにその理由……。

「なんじゃそれ……」

「大丈夫ですな! ギルドの許可は取ってあるですな!」

「そういう問題じゃねぇよ……まじか……はあー……」

 グレイさんが右手で顔を隠しちゃった。
 ジゴロ所長さんの性格上、ついてくるなと言っても言う事を聞かないのは目に見えているしね。
 ただでさえ一つ星が2人もいるのに、そこに非戦闘員の科学者(しかも問題児)が1人追加……。

「では、白竜の遺跡にレッツゴーですな!」

「おーっス!」

「「……」」

 これはもう、ドラゴニュートが遺跡にいない事を祈るしかないわね。
 本当に頼みますよ、神様!!
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