上 下
134 / 178
12章 二人の発生と消滅

ケビンの書~消滅・8~

しおりを挟む
 今とんでもない言葉が、ナシャータの口から飛び出た気がしたんだが!?

『ナシャータ! 今、なんて言ったんだ!?』

「? 寄生の鎧は小娘の奴が持って帰っていったと言ったのじゃが……」

 やっぱりとんでもない事を言っていた!

『何でコレットが、あいつを持って帰る必要があるんだよ!?』

 そんな必要まったくないじゃないか。
 見た目は小汚ーい皮の鎧だんだぞ。

「そんな事わしが知らんのじゃ。というか、勢いよく立ち上がるな……普通にバラバラになっただけじゃから治るのも早いが、そんな事をするとまたバラバラになってしまうかもしれんのじゃ」

 そんな事、今どうでもいいっての!

『知った事か! それよりもそれは本当の事なのか!? そもそも、何で持って帰った事をお前が知っているんだよ?』

「そんな事って……まぁお前自身の問題じゃからいいか。本当じゃ、帰るまでずっとこの目で見ておったのじゃからな」

 なんて事だ、よりによってあの鎧がコレットの元に行くだなんて……。

『――っ! なんで見ていただけなんだ!? あの鎧の事はよく知っているだろ!』

「知っておるが、あの時は……って……おい、なんでこっちのにじり寄って来るのじゃ?」

『――っどうしてコレットを止めなかった!?』

「見ていただけなのも、止めなかったのも今のお前と同じじゃ! 飲まれた奴の傍に寄れんかったのじゃ! ……じゃからこっちに来るな! ヘビの臭いがプンプンするからまずは体を洗ってじゃな――」

『――っあの鎧はジャイアントスネークの尻尾に付いていたじゃないか! どうしてコレットが拾うんだよ!?』

「それは尻尾から鎧が外れてじゃな……ああ、もう! いい加減にしろ! それ以上こっちに来たら本気で怒るのじゃ!」

『――っどうしてどうして外れるんだよ!?』

「どうしてと連呼しながら近寄るな! いいか、これが最後の警告じゃぞ! そこで止まるのじゃ、さもないと魔法をぶっ放す――」

『――っどうしてなんだああああああああああ!?』

「ぎゃああああああああああああああああああ!! ストームトルネードオオオオオオオオオオオ!!」

『ぎゃああああああああああああああああああ!!』

「ふたりしてなにやってんだが……エサのやつ、まいかい【はは】マザーのまりょくでおかしくなるな……はあ、たつまきでばらばらにちらばったエサをまたあつめないといけないのか。めんどうさいな~もう~」



 ――ゴシゴシ

 またバラバラにされてしまった……。
 最近こうなってしまうのがやたら多いような気がするんだが、気のせいだろうか。

 ――ゴシゴシ

「その生臭いヘビの臭いが消えるまでしっかり洗うのじゃぞ!」

 ――ゴシゴシ

「……は~い……なんでポチがエサをあらわないといけないんだか……」

 ――ゴシゴシ

『……』

 幸いにも【母】マザーの近場に水路があったおかげで、バラバラでも意識があるんだが……そのせいでこの物のように洗われる感じを味わうはめになるのはすごく嫌だな。

「さて、ケビンが飲まれた後の事を簡単に説明するから、大人しく話を聞くのじゃぞ」

 大人しくも何もこんなバラバラの状態だと、どうしようもないのは見ればわかるだろう。

『……ああ』

 まぁそんな事はいいか、一体何が起きていたのかが大事だ。

「まずケビンが飲まれた後、いきなりヘビが体を曲げたりねじったりと苦しみだしたのじゃ」

 そりゃそうだ。

『その時は、俺が腹の中で噛みついていたからな』

「……お前そんな事を……確かに腹の中で噛みつかれておったら、ああなるのは当たり前じゃな。でじゃ、よほど苦痛だったのか、尻尾をブンブン振り回していて鎧が尻尾からスポーンと抜けたのじゃ」

 なるほど、あいつが外れるくらいの苦痛だったのか。
 やはりスケルトンの噛みつきは気を付けるようにしよう。

「そしてバラバラになったケビンを吐き出し、次に小娘を吐き出したのじゃ」

 そこは覚えている。
 ネバリ草の水分が苦手な所が無ければなー。

「そしてヘビはそそくさと逃げて行き、小娘は皮の鎧とボロイ鎧をもって歩き出したからわしは小娘の後を、ポチにポチにその辺にある宝箱にケビンを詰めるように言ったのじゃ」

 自分が触りたくないからってポチに拾わせたのか。

「ねちょねちょのエサをさわるのはいやだったが、ごしゅじんさまのいいつけだったからな。――よし、これでぜんぶあらいおわり!」

『ああ、ありがとよ……』

 綺麗並べられての陰干し……いよいよ、物になった気分だ。
 まぁ宝箱に詰められる行為自体が物扱いか……ん? ……宝箱? はて、宝箱で何か忘れている様な気がするんだが……ああっそうだ!

『その時、ジャイアントスネークは宝箱を吐き出していなかったか!?』

 あの中にはコレットの絵が、俺の宝が入っているんだ。

「宝箱じゃと? いや、あのヘビはケビンと小娘を吐き出したのみじゃが……」

『何だって!』

 じゃあ、今もジャイアントスネークの腹の中なのか?
 だとすると、もうどこかに逃げてしまったから取り返す事は出来ないじゃないか。

『俺の宝が消えてしまったじゃないかああああああああああ!!』

 そんな事って……。
 ああ……俺も消え去りたい……。

「? 何をそんなに嘆いているのかよくわからんのじゃが話を戻すのじゃ。で、小娘はしばらくうろうろしたのち二つの鎧を持って帰ってしまったわけじゃ」

『……』

「お~い、どうしたのじゃ? 話を聞いておるか?」

『……』

 今は何も考えたくない……何も……。

「なんじゃ? えらく落胆している様に見えるのじゃが……まぁそうち元に戻るじゃろ。ところでポチ、気になった事があるのじゃがいいか」

「なんですか?」

「ケビンのパーツは全て回収したのじゃな?」

「はい。エサのにおいをおいましたから、すべてです」

「わしにはケビンの上の前歯が1本足りんように見えるのじゃが……」

「あ、ほんとうですね。おっかしいな~エサのにおいがするほねはなかったのに」

「そうか……まぁケビンは食べ物を食べないし、前歯1本無くても問題はないじゃろ。ポチ、ケビンが色んな意味で治るまで時間がかかりそうじゃから、一緒に木の実を取りに行くのじゃ。わしはもう腹ペコじゃ……」

「は~い、ポチとしてはエサをたべたいところなんだけどな~。あっまってください、ごしゅじんさま~」

『…………』
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

(完結)夫に浮気されたのは嫁の私が至らないせいだそうです

青空一夏
恋愛
私はパトリシア。両親を早くに亡くし叔父夫妻に育てられた。ギガンテッド男爵家の三男に見初められて結婚したが、その結婚生活は・・・・・・ ギガンテッド元男爵夫妻(夫の両親)が私達夫婦の屋敷に同居し、私はいつも振り回されている。それでも、夫は私に優しくねぎらいの言葉をかけてくれた。だから、我慢できたのだけれど・・・・・・ 夫の浮気が発覚。私は悲しみにくれ夫を責めた。すると、夫の母親は私に言った。 「夫に浮気されるのは嫁のあなたが至らないせいでしょう!」 だから私は・・・・・・ ☆ご注意☆ この小説の舞台は異世界です。ヨーロッパ風ですが、史実に基づいてはおりません。貴族は嫡男だけが爵位や屋敷・財産を継ぎ、次男以下は仕事を持ち自分で生活します。パトリシアの夫は三男である為、パトリシアの屋敷では平民に近い生活になっています。 ※途中タグの追加・変更の可能性あるかもしれません。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

(完)なにも死ぬことないでしょう?

青空一夏
恋愛
ジュリエットはイリスィオス・ケビン公爵に一目惚れされて子爵家から嫁いできた美しい娘。イリスィオスは初めこそ優しかったものの、二人の愛人を離れに住まわせるようになった。 悩むジュリエットは悲しみのあまり湖に身を投げて死のうとしたが死にきれず昏睡状態になる。前世を昏睡状態で思い出したジュリエットは自分が日本という国で生きていたことを思い出す。還暦手前まで生きた記憶が不意に蘇ったのだ。 若い頃はいろいろな趣味を持ち、男性からもモテた彼女の名は真理。結婚もし子供も産み、いろいろな経験もしてきた真理は知っている。 『亭主、元気で留守がいい』ということを。 だったらこの状況って超ラッキーだわ♪ イケてるおばさん真理(外見は20代前半のジュリエット)がくりひろげるはちゃめちゃコメディー。 ゆるふわ設定ご都合主義。気分転換にどうぞ。初めはシリアス?ですが、途中からコメディーになります。中世ヨーロッパ風ですが和のテイストも混じり合う異世界。 昭和の懐かしい世界が広がります。懐かしい言葉あり。解説付き。

頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。

音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。 その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。 16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。 後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。

処理中です...