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10章 二人の黄金の剣と魔力の鎧

コレットの書~魔力の鎧・2~

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 ◇◆アース歴200年 6月20日・朝◇◆

「はい、舌を出してー」

「べ~……」

 結局、朝一で病院に来る羽目に……。
 それにしてもびっくりしたな~、まさかキャシーさんとグレイさんが宿のロビーで私を待っていたなんて思いもしなかった。
 話を聞いたらキャシーさんもグレイさんも帰ろうとしたけど、私が本当に病院に行くのか疑問に思ったらしい。
 それなら待ち伏せしようって事になったらしく、宿に部屋が空いているかを聞いたら何故か丁度二部屋空いて、そのまま泊まって私が起きる前にロビーで待機……普通に考えてそこまでする? 2人の考えている事がわからないわ。
 そもそも、私ってそんなに信用ないのかな? ……昨日の夜は確かに遺跡に行っちゃえとは思ったけど、考え直してちゃんと病院に来るつもりだったのに、何だか失礼しちゃうわ。

「で、一晩経ったがどうだ?」

「んー……やはり昨日の夜同様、何処も異常はないな」

「……本当に治ったのかよ」

 何で元気なったのに驚かれなきゃいけないのよ。
 訳が分からないわ。

「だから言ったじゃないですか、心配はないって」

「いや、しかしだな……俺はお前が倒れる所を2度も見ているんだから心配するに決まっているだろ」

「それは、そうですけど……」

 でも、だからと言って宿屋で待ち伏せまではちょっと……。

「クス。グレイさん、何だかコレットさんの父親みたいですね」

「「それはない(です)」」

「2人して即否定ですか」

「当たり前です」

 グレイさんが私の父親? ないない。
 私的には、近所に住む世話焼きなおっちゃんにしか思えないもの。
 それに……私の父親は神父様だしね。

「おい、キャシー。俺が未だに独身なのを冷かしているのか? 言っておくが子供もいねぇからな」

 グレイさんは独身だったのか。
 でも、もしグレイさんに子供がいたら私と同じくらいよね。
 う~ん、そう考えると父親に……はやっぱりならないや、近所に住むおっちゃんの方がしっくりくる。

「いえ、そんなつもりは無いですよ~」

「本当かよ……」

 待てよ、グレイさんが父親って言うなら……。

「じゃあ、キャシーさんはお母――」

「――お姉ちゃん」

「へ?」

 何か、周りの空気が急にピリピリと。

「お・ね・え・ちゃん……ですよね?」

 キャシーさんは笑顔だけど目が笑っていない。
 昨日の夜よりもっと怖いんですけど!

「……えと、はい、お姉ちゃん……」

 昨日の夜からキャシーさんのキャラ変わっていませんか?

「……家族ごっこをするんだったらここから出た後でやってくれ。……しかし、薬の治癒効果は本当の様だが一体材料は何なんだ? キャシー、中身はギルドで調べるのか?」

「いえ、直接作った神父様から話を伺うつもりです」

 その神父様を売ったのは私です。
 やっぱりちょっと罪悪感が……。

「そうか、わかったら私にも教えてくれると嬉しいんだがな……ほれ、キャシー。頼まれていたコレットさんの診断書だ」

「あっ! それは後で――」

 ん? 私の診断書?

「あの、何で私じゃなくてキャシーさんに渡すんですか?」

「ん? それは――」

「――それはですね! うちで冒険者登録した人には体調面も管理、把握する為にお医者様から診断書を頂いているんですよ!」

 へぇ~そんな事までしていたんだ。
 ギルドも色々管理するのも大変ね。

「はぁ? そんな話、始め――あだっ! キャシーてめぇ、何で俺の足の甲を踏むんだよ!!」

「グレイさん、病院ではお静かに」

 キャシーさんの方が騒がしいと思うんだけど。

「お前ら何をしているんだ……」

 ――コンコン

〈先生、よろしいですか?〉

「どうした?」

〈そろそろ、診察のお時間です〉

「おっと、もうそんな時間か」

 呼ばれていたとはいえ、診察が始まる前に診てくれたんだ。
 ボイコットしなくてよかった~親切心を無碍にしちゃうところだった。

「それでは私達はこれで失礼しますね。今日はありがとうございました」

「それじゃあな」

「あっ二人とも待ってくださいよ。先生、ありがとうございました」

「ああ、体調に異変があればすぐ来い。……しかし、親子か。知らん奴が見たらグレイは確実に父親と思われそうだわな」



「さて、私は一度家に戻ってギルドに行きますね」

 え、それって完全に遅刻じゃない。

「私のせいで遅刻に! すみません!」

 状況的に、今日も休暇だと勝手に思い込んでいたわ。

「大丈夫ですよ。部屋を取った後にギルドに顔を出して、今日は遅れると話をしてありますから」

「そうだったんですか、よかったです」

(まぁ、この薬があったから許されただけなんだけどね……)

「へ?」

「ではでは、私はこれにて~」

 行っちゃった。

「うし、俺らも宿に戻るか。今日はゆっくり休め」

「えっ? 遺跡に行かないんですか!?」

 私は行く気満々だったのに。

「いや、コレットは病み上がりだろ……」

 むしろ好調な位です。

「私なら大丈夫です! 1日でも早くケビンさんを見つけたいんです!」

「しかしだな……」

「お願いします!」

 ここは絶対に引かない!

「……わかったから頭を上げろ。ただし、今日は様子見でちょっとでも調子が悪くなったら戻るし奥まで行かないからな、それが条件だ」

「はい!」

 よ~し! 少しでも遅れを取り戻すぞ!



 って、気合を入れたばかりなのに。

「何で遺跡じゃなくて、鍛冶屋に来ているんですか……」

 私の気合を返してほしいよ。

「何でって、お前寝込んで忘れたか?」

 忘れる?
 何が……あっもしかして!

「魔力の武器防具ですか?」

「そうだ、頼んでいた俺の魔力の剣とコレットの魔力の鎧が完成しているはずだ。 ――親父さん、来たぜ!」

「おう、ちゃんと仕上が……えっ? コレット!? ――アダッ! なっ何でお前さんがここにいるんだ!? 寝込んでいるんじゃなかったのかよ! ままままさか幽霊……!?」

 親父さんが驚いて椅子から転げ落ちた、私が寝込んでいた事を知っていたんだ。
 となると、親父さんに説明しないと駄目だよね……面倒くさいけどこればかりは仕方ないか。
 でもその前に――。

「私は生きています!」

 勝手に殺さないでよ!!
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