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10章 二人の黄金の剣と魔力の鎧

ケビンの書~黄金の剣・2~

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 今度があるのかどうかわからんが、皮の鎧を着る時は十分に注意しよう。

「――よっと。ごしゅじんさま、おかしをもってきました」

「お、ご苦労さんなのじゃ」

 ポチの奴、どこか行ったと思ったら朝菓子を取りに行っていたのか。
 ナシャータのペットも大変なもんだな。

「褒美に頭を撫でてやるのじゃ、ほれほれ」

「く~ん、く~ん!」

 少女に頭を撫でられて、すごく喜んでいる大人の女……。
 あの二人の事を知らない人が見たら勘違いされそうだな。

「では、いただきますなのじゃ。あ~ん、パクッ――モグモグ。ふぃかし、ふぁにふぁでふぁらだを……」

 食べながら喋るから何を言っているのかわからん。
 つか、一気に口に入れすぎだっての。

『喋るなら飲み込んでから喋れ、行儀が悪いぞ』

「モガ? ――モグモグ……ゴックン。しかし、体を守るというのは案はいいと思うのじゃがな……パクッ――モグモグ……あっふぉうじゃ」

 ナシャータが何かを思い付いた様だが。

『……何でもいいが、喋るなら――』

「ふぁかふぇふぉる――モグモグ……ゴックン。もしかしたらあの部屋にそういった物があったかもしれないのじゃ」

『あの部屋?』

 って、どの部屋の事だよ。
 この遺跡は部屋がたくさんありすぎてまったくわからんぞ。

「そうじゃ、物を色々と仕舞いこんでいる部屋があるのじゃ。まぁその部屋も崩れてしまっているかもしれんがの」

『そんな部屋があったのか』

 この遺跡で物に溢れている部屋があったという話は聞いた事がないし、俺が遺跡をうろついた時にも見た事はない。
 となると、その部屋も隠してあるってわけか……もはや、ここまで来ると隠し部屋があったとしても驚かなくなって来たな。
 むしろ、まだあるのが当たり前って感覚になってきたぞ……あれ? ちょっと待てよ。

『……色々って言っていたが、何を部屋に入れているんだ?』

 ナシャータが、部屋に仕舞い込む位に物を作るとは到底思えないんだが。

「ん? 入れてあるのは人間達がわしの元へ持って来た奴じゃよ」

『お前の元にって……それは貢物的な奴か?』

「そう、それじゃな」

 貢物だとすればお宝といった価値がある物も混じっている……。
 だから隠し部屋に入れたのか……何だ、以外にもナシャータは物の価値がわかっているじゃないか。

「じゃがな~食べ物以外は邪魔でしかなかったし、かといってせっかく持ってきたのをその辺に捨てられる物でもないのじゃろ? で、この遺跡が完成した時に丁度いいとそれらを全部その部屋に入れたわけじゃよ」

『……』
 
 おーい!! それ別の意味で隠しただけじゃないか!
 前言撤回、こいつ食べ物以外の価値なんてまったくわかってない! ちょっとでも感心した俺が馬鹿だった!

『しかし、貢物を入れた部屋か……。なあ、その部屋を見てみたいんだがいいか?』

「ん、この菓子を食べ終わったらその部屋に案内してやるのじゃ。――あっ、さっきも言ったが部屋が崩れているかもしれんし、鎧のような物があるかもしれんじゃからな。わしも何を入れたのかはっきりと覚えておらんのじゃ」

『いや、別にどうなって様が文句はいわねぇって』

 ただ、冒険者として部屋の中身がすごく気になるだけなんだから。
 崩れていたら入れなくて残念だが、そればかりは仕方ない。

「ならいいのじゃ。モグモグ、ん~やっぱりうまいのじゃ~」

 それにしても、良かれと思って持ってきた物が食べ物じゃなかったら邪魔な物扱いとは。
 食べ物だったら、この笑顔を出して大喜びで受け取っただろうに……なんと哀れな話だ。



「ここじゃ」

 今回は瓦礫の間の近場ではなく、結構遺跡の奥に入った場所だな。
 目の前はいつもの様に壁あるだけだけど。

「ここもわしの魔力で反応して開くのじゃ」

 なるほど、物を隠すにはうってつけな部屋だ。
 遺跡の奥だし、ナシャータしか開けられないからな。

 ――ビクッ!

 ん? 何だ、今ポチの体が跳ねたような……。
 あっそうか、ポチが閉じ込められていたのもこの仕組みの部屋だったな。

「……あの、ごしゅじんさま。ポチをおいていかないですよね? ね!?」

 この部屋の仕組みがポチにとってトラウマになっているみたいだ。
 気持ちはわからんでもないが。

「へ? 何を言っておるのじゃ? よくわからんがそんな事はしないのじゃ」

 トラウマを植え付けた本人はまったく気が付いていないと来たもんだ。

「ならいいのですが……」

「……? とにかく開けるのじゃ」

 ――ガコン

 お、壁が扉のように開いた。
 さてさて、中はどうなっているかな。

『……ふむ』

 部屋の中は多少崩れている所があるが、原型は保たれているな。
 で、入れてある物はっと……。

『……まじかよ』

 床を埋め尽くすほどに物がいっぱいある……一体どれだけ貢物を貰っていたんだ。
 しかし、これは――。

『発掘の甲斐があるってもんだ!』

 瓦礫の間と違ってこっちは常に物だからな!
 お宝発見できるか楽しみだ。



 と、1時間ほど前まではそう思っていました。

『はぁ……』

 出てくるのは劣化した人形や、劣化した木彫りや、よくわからない劣化したアクセサリーといった値打ち物何てまったくない物ばかり。
 本来の目的である体を守る物も鎧らしきものはあった、あったんだが……無論これも劣化していて穴だらけ。
 そりゃそうだよ、200年も経っているんだから劣化しているのは当たり前。
 研究室で使われていた紙みたいな特殊な物じゃないとな……。

『時間の無駄だったか……お?』

 かなり汚れているが、鎧みたいな物が下から顔を出した。
 この場所では形が残っているなんて異様だな……ふむ、何か気になる。
 ちょっとこの元マントらしき布で拭いてみるか。

 ――キュッキュッ

 お、黄色の塗装が見えてきたぞ。

 ――キュッキュッ

 ……いや、黄色じゃなくて金色だな。

 ――キュッキュッ

 ……おいおい! これってまさか!

 ――キュッキュッ

 ま、間違いない!!
 これは――。

 ――キュッ!

『――金! 金で出来た鎧だ!! 何でこんなゴミの中から!?』

 こんなとんでもないお宝が出てくるなんて思いもしなかったぞ!!
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