上 下
35 / 178
5章 二人の接触と仲間

間の書~ナシャータとグレイ~

しおりを挟む
 ~ナシャータ~

 さて、ケビンの位置は大丈夫じゃな。
 後はあの3人の前に行ってと――よっと。 

「え? うそっ? 何でここに……」

 小娘は恐怖の顔に歪んでおるの。

「ちっ、今はドラゴニュートとの接触は避けたかったんだがな!」

 親父は苦虫を噛んだ様な顔をしておるな。

「ほえーあれがドラゴニュートっスか。見た目は子供みたいっスね」

 くっさい男は飄々とした顔か、臭いといい、本当にいけすかない奴じゃ。
 まぁよい、用事があるのは小娘だけじゃからな。

「では小娘、お前だけ飛んで行ってもらうぞ」

 狙いはケビンの所じゃ!

「「「『え?』」」」

「エアーショット!!」

「うそおおおおおおおおおおおお!?」

「コレット!?」
「コレットさん!?」

 お~我ながら綺麗に飛ばせたのじゃ。
 そのまままっすぐケビンの元へ飛んでいくのじゃぞ~。

『――ダハッ!!』
「――グエッ!!」

 よし、計算通り小娘をケビンに届けられたのじゃ。
 後はわしの魔力を送って――。

 ――ガコン。

 扉を開いて――。

『――え? 壁が動いて……』
「――え? 今度は何なのおおおおお!?」

  ――バタン。

 そして閉める。
 うむ、我ながら完璧じゃな。

「コレット! ――くっドラゴニュート! 貴様一体何をした!?」

 あ~あの親父が剣を抜いてこっちに向けてきたのじゃ、相手をするのは面倒じゃし。
 あの扉はこいつらにどうこう出来るはずもないしここは――。

「悪いの、わしは無益な争いは好まぬし用事があるのは小娘だけなのじゃ。じゃあの!」

 逃げる1択じゃ。

「なっ待て! ドラゴニュート!!」

 誰が待つか。
 さて、後はケビン次第じゃな。
 中の様子が気になるがわしまで入るのは野暮ってもんじゃから……ってあれ? そういえばあの部屋に何かあったような気がするが……何じゃったかな?
 ふ~む……思い出せないのなら大した問題ではないって事じゃな、さっさと身を隠して木の実を食べるのが一番じゃ。



 ~グレイ・ガードナー~

「悪いの、わしは無益な争いは好まぬし用事があるのは小娘だけなのじゃ。じゃあの!」

 こいつ飛んで逃げる気だ!

「なっ待て! ドラゴニュート!!」

 くそ! あっという間に奥に飛んでいってしまった。
 あれじゃ追いつけない。

「いやーすごい速さで飛んでいったっスねー。あれがドラゴニュートなんスか、俺はじめて見たっスよ、感激!」

 いやいや、感激しとる場合か。
 つかこいつはこいつで喋るだけで剣すら抜いてないし、やる気あるのか?

「まぁいい。おい、町に戻る準備をするんだ」

 壁の前にはスケルトンが待機していて、コレットと一緒に壁の中に入って行ってしまった。
 恐らくあれがコレットの言ってたおかしなスケルトンだろうか?
 だがコレットには緊急時用のアイテムを渡してある、今頃はそれを使って町に戻ってるはず。

「え? コレットさんをほっといていいっスか?」

 まったく、何を言ってるんだこいつは。

「コレットにもお前にも緊急時用のアイテムを渡したがろうが、だから――」

「その一式が入ったコレットさんの袋がここに落ちてるっス、さっきの衝撃で落としたみたいっスね」

 あの袋は間違いなくコレットの奴だ。

「…………マジかよ!!」

 ――大問題じゃねぇか!
 まずいまずい、非常にまずい!

「っおい! 早くコレットを助けるぞ!」

 ……くそっ俺とした事が!
 だが、まだ飛ばされたのが直線でよかったかもしれん。
 もしテレポート系だったら見つからなかったぞ。

「えーと、確かこの辺りの壁が開いたっスよね。よいしょ! ふん! ……駄目っスね、押してもまったく動かない」

 ここに隠し扉、この遺跡にはどれだけ隠し扉や部屋があるんだ。
 そもそもそこまで必要か? ここを作った奴らは何がしたかったんだ。
 っと今はそんな事を考えてる場合じゃねぇ。

「おい、そこをどけ」

「うっス……ってグレイ先輩、何鎧を脱いでるんっスか!? あ、俺はそんな趣味ないっスよ!?」

 こんな非常時に何を言ってんだこいつ!?

「アホか! 俺もそんな趣味はねぇよ! 鎧が邪魔だから脱いだんだ」

 鎧を脱いだだけで、そんな発想が出て来るなんてどんな頭をしてるんだこいつは!?
 仕方がなかったとはいえ、こんな奴連れて来なければよかった。

「とにかく――フン!」

「おお、すごい筋肉」

 こんな壁如き、俺のタックルでぶち破ってやる。

「すーっ……どりゃあああああああああああああ!!」

 ――ドスン!!

「……音だけで壁に変化はないっスね」

 くそが! 今度こそ!

「どりゃあああああああああああああ!!」

 ――ドスン!!

「…………」

 何だ、この壁。
 硬すぎるだろ……。

「おい、お前も見てないで手伝え」

「ええ……まぁ、しょうがないっスね」

 中のコレットが心配だ、早くこの壁を――。

《ガアアアアアアアアアアアアアアアア!》

 は?

「……今の雄叫びは何だ?」

「何っスかねぇ……」

 雄叫びはこの壁の向こうから聞こえた。
 すごく嫌な予感がする、コレット無事でいてくれよ!


 ~ナシャータ~

《ガアアアアアアアアアアアアアアアア!》

「んぐ!? ゲホゲホッ! 何じゃ!?」

 びっくりして種まで飲んでしまったのじゃ。
 まったく、どの獣が吠えてるん……獣?
 ……あああああああああああ!!

「しまったのじゃ!! あの部屋には!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

(完結)夫に浮気されたのは嫁の私が至らないせいだそうです

青空一夏
恋愛
私はパトリシア。両親を早くに亡くし叔父夫妻に育てられた。ギガンテッド男爵家の三男に見初められて結婚したが、その結婚生活は・・・・・・ ギガンテッド元男爵夫妻(夫の両親)が私達夫婦の屋敷に同居し、私はいつも振り回されている。それでも、夫は私に優しくねぎらいの言葉をかけてくれた。だから、我慢できたのだけれど・・・・・・ 夫の浮気が発覚。私は悲しみにくれ夫を責めた。すると、夫の母親は私に言った。 「夫に浮気されるのは嫁のあなたが至らないせいでしょう!」 だから私は・・・・・・ ☆ご注意☆ この小説の舞台は異世界です。ヨーロッパ風ですが、史実に基づいてはおりません。貴族は嫡男だけが爵位や屋敷・財産を継ぎ、次男以下は仕事を持ち自分で生活します。パトリシアの夫は三男である為、パトリシアの屋敷では平民に近い生活になっています。 ※途中タグの追加・変更の可能性あるかもしれません。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

(完)なにも死ぬことないでしょう?

青空一夏
恋愛
ジュリエットはイリスィオス・ケビン公爵に一目惚れされて子爵家から嫁いできた美しい娘。イリスィオスは初めこそ優しかったものの、二人の愛人を離れに住まわせるようになった。 悩むジュリエットは悲しみのあまり湖に身を投げて死のうとしたが死にきれず昏睡状態になる。前世を昏睡状態で思い出したジュリエットは自分が日本という国で生きていたことを思い出す。還暦手前まで生きた記憶が不意に蘇ったのだ。 若い頃はいろいろな趣味を持ち、男性からもモテた彼女の名は真理。結婚もし子供も産み、いろいろな経験もしてきた真理は知っている。 『亭主、元気で留守がいい』ということを。 だったらこの状況って超ラッキーだわ♪ イケてるおばさん真理(外見は20代前半のジュリエット)がくりひろげるはちゃめちゃコメディー。 ゆるふわ設定ご都合主義。気分転換にどうぞ。初めはシリアス?ですが、途中からコメディーになります。中世ヨーロッパ風ですが和のテイストも混じり合う異世界。 昭和の懐かしい世界が広がります。懐かしい言葉あり。解説付き。

頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。

音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。 その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。 16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。 後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。

処理中です...