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序章 二人の始り
コレットの書~始まり~
しおりを挟む◇◆アース歴180年6月11日・夜◇◆
「あなた、あなた! こっちに来て下さい!」
「どうしたんだ、そんな大声を出して」
「これを見て下さい!」
「ん? その抱えてる籠がどうかし――何と、中には赤子が居るじゃないか」
「はい、教会の前でこの手紙と一緒に置き去りになっていました……」
「何と、その手紙を見せなさい。何々、『コレットの事をお願いします』……たったこれだけか? これじゃ手紙じゃなくてメモじゃないか」
「あなた、どうします?」
「ふむ、明日の朝に村長の所へ行って相談してくるが……もはや親が見つかるとは思えんが。その場合この子はうちで引き取ろうと思う、これも神の導きなのかもしれんからな。マルシア、お前はどう思う?」
「私はかまいません、ただこの子に贅沢はさせれませんけど」
「そこは私が何とかするさ、さぁコレット! 今日からここが新しい家だぞ!」
「まだなったと決まったわけじゃありませんよ、あなた」
◇◆アース歴190年6月11日・夜◇◆
「コレット! 誕生日おめでとう!」
「コレット! おめでとう!」
「ありがとう! 神父様! シスター!」
今日は私の10歳の誕生日!
本当の誕生日はわからないけど私がこの教会に拾われた日、6月11日が私の誕生日。
「おめでとう、コレット姉ちゃん」
「おめでと~これっとねいちゃん~」
「あう~」
「ありがとう! ヘンリー! マリー! ブレン!」
ヘンリーは7歳の男の子、マリーは4歳の女の子、ブレンは1歳の男の子、3人とも私と同じ孤児でこの教会に引き取られた子供達、私の大切な弟と妹達。
「コレット姉ちゃんこれプレゼントだよ!」
ヘンリーがくれた物は、緑色のリボンだ! かわいい!
「わ~ありがとう! さっそく着けるね――どうかな? 似合う?」
「ええ、コレットのピンクの髪によく似合うわよ……ただ……その2本のくせっ毛をまとめて結ぶのはちょっと……ほら私がまとめてあげるわ」
シスターが後ろ髪をまとめてポニーテールにしてくれた。
「これでよし、まぁかわいい」
「本当? ありがとう、シスター! ねぇ神父様、どう? 似合う?」
「ああ、ますます似合うよコレット」
神父様もすごい笑顔だ。
「わーい!」
「ケビンも生きていれば今頃コレットと一緒に誕生日を迎えてたのかしら……」
「おい、今その話をする様な時じゃないだろ」
「……ごめんなさい、そうね、今日はコレットの誕生日なんだものね」
私にとって嬉しい日ではあるけど、神父様とシスターにとっては悲しい日でもあるみたい。
ケビンさんは神父様とシスターの息子さんで、私と同じ誕生日。
私が拾われた日から数日後に遺跡に入ったまま行方不明の知らせが届き、後日には捜査が打ち切られたらしい、シスターはその日一日中泣いていたと神父様はおっしゃっていました。
◇◆アース歴190年6月12日・朝◇◆
昨日の誕生日会は楽しかったな~。
あれ? ケビンさんのお墓の前に誰かいる……あれはシスターだ、周りに箒や雑巾があるからお墓の掃除でもしてたのかな。
よし、私もお手伝いしに行こう。
「これでよし、綺麗になったわ……」
ありゃ、もう終わりかけだったのか。
「はぁやっぱり形だけのお墓は寂しいものね、ケビン。遺跡よりこの地で貴方を眠らせてあげたいわ。私が冒険者だったら貴方を探しに行けたのかしらね……」
シスターのあの寂しげな顔、時折神父様もするんだよね。
冒険者か……よし、決めた!
「シスター!」
「っ!? コレット、急に大声を出してどうしたの? びっくりしたじゃない」
「私は冒険者になる! そしてケビンさんを探し出す! 必ず!」
「え!?」
それが私を拾って育ててくれた神父様、シスターへの恩返しだ!
◇◆アース歴200年6月1日・朝◇◆
本来、冒険者は15歳でなれるけど物入りを考えるとどうしてもお金がいる。
神父様達に負担をかけたくないからこつこつ貯めてやっと目標の20万ゴールド……あの誓いの日から10年も経っちゃったけど今日、私は冒険者になるべく出発する事に決めました。
「忘れ物はない? コレット……」
「はい、大丈夫です」
シスターは相変わらず心配性だな。
「……グス……コレットお姉ちゃん……グス……」
「……ほら、ブレン泣かないの……ちゃんと渡さないと、貴方が渡すって言ったんでしょ」
渡す? 私に? なんだろ。
「……グス……うん……コレットお姉ちゃん……これ……僕達から……早いけど、誕生日プレゼント……」
ブレンが両手で包装された小包を取り出した、包装はしわになっている部分があるからこの子達が包んだのかな。
「ありがとう……開けてもいい?」
三人がうなずいた、中身は何かな?
「あ、ナイフ……」
中身は小型ナイフで柄の部分に私の名前がある、ブレンが彫ったのかな? 文字が歪んでる……でもすごく想いが伝わってくる。
「冒険者の必要な道具は何かって元冒険者のダイナのじいちゃんに教えてもらったんだ、だけどその中で俺達が買えたのはそんな小さなナイフ1本だけだったんだ……」
そんなって、どんなものだろうとヘンリー、マリー、ブレンが私のために買ってくれた物。
誰がなんと言おうと最高のプレゼントだ。
「何言ってるの、すっごく嬉しいプレゼントだよ! ありがとう三人とも! ギュー」
やっぱりこの子達を抱きしめると気持ちが落ち着く。
「ちょっ苦しい!」
「お姉ちゃん! ブレンが潰れちゃってる!」
「ムキュー!」
でも、もう行かないと。
リリクス行きの馬車が出ちゃう。
「ふぅ……では行ってきます。神父様、シスター」
「ああ」
「気を付けてね、コレット……」
「はい」
2人が心配そうにしてる。
それも当然だよね、ケビンさんと同じ冒険者になろうとしてるんだ。私にも、もしもの事があるかもしれない。
でも――。
「……ヘンリー、マリー、ブレン……神父様達をお願いね」
あの時誓った――。
「ああ、姉さん。俺が必ずこの教会を守るから安心してくれよな!」
「行ってらっしゃい! お姉ちゃん!」
「コレットお姉ちゃん、行ってらっしゃい!」
10年前の約束を――。
「行ってきます!」
――必ず果たすんだ!
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