【完結】とあるポンコツ女神サマの恋愛術!

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7章 とある女神サマ、運命の文化祭へ

蓮華祭!(1)

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『お~! すごい人だし、すごく楽しそうね!』

 メイティーが浮かれるのもわかる、なんたって今日は蓮華祭当日だ。
 夕方まで一般公開されているから大人の人も多い。
 夜以降は生徒のみで、運動場の真ん中にキャンプファイヤーを盛大に燃やす。
 そして、屋外に建ててあるステージでバカ騒ぎをして締めくくる。
 それが蓮華高校の文化祭、蓮華祭。

「今年の蓮華祭も盛り上がっているね~」

「そうだね」

 神野さんの大切な人。
 それを聞いた時は色々と動揺したが、メイティーの言葉ですんなりとおさまってしまった。

『あの娘の大切な人の事を気になったから調べてみたけど、男か女かもわからなかったわ~。これ以上探りを入れるとお父様に怒られそうだし、ここまでね』

 と言っていた。
 そう、男と決めて付けていた自分は馬鹿すぎる。
 大切な人って言うのは老若男女関係ない。
 メイティーの言葉で、当たり前の事を思い出すとは思いもしなかったな。

「さて、俺等もさっさと回ろうぜ。時間がもったいないしな」

 義秋のクラスは焼きそば屋になったが、買出し班の為呼び出しがあるまでフリーらしい。
 けど俺、神野さん、香夏子、星木さんは昼からお化け屋敷で入れ替わりをしないといけない。

「だな。どこから回るよ?」

 だから、5人で回れるのは午前中の時間に限られている。
 少しでも多く回って楽しみたい。

『やっぱ屋台でしょ! 外から見て回りましょ!』

 お前には聞いていません。
 つか、どこに行っても食い物に走るんだな。

「そうね~今のうちにお腹に入れておきたいし、屋台のある外からまわらない?」

 あー確かに香夏子の言う通り、今のうちに腹に何か入れといた方がいいかもな。
 メイティーの言う通りになってしまうのは悔しいが。

「じゃあそうするか」



 お好み焼き、焼きそば、たこ焼き、フランクフルト、りんご飴、チョコバナナ。
 定番の出店がいっぱいだな。

「よう、調子はどうだ?」

 義秋が焼きそば屋の前で声を掛けている。
 となると、あの焼きそば屋が義秋達のクラスの奴か。

「まあまあだな。まだ買出し班が動く事はなさそうだ」

「そうか、わかった」

 やっぱり、ここは焼きそばを買った方がいいよな。
 えーと……財布、財布……。

「焼きそば1個くださいなぁ」

 って、星木さんはもう買っているし!

「あっちょっと、私も1つ!」

「私も!」

 神野さんと香夏子も俺と同じ事を考えていたのか、財布を出そうとしている。

「俺も1つ!」

「お、4人ともありがとな。まいどありー」



「ずるずる……焼きそば、美味しいよぉ」

「うん、おいしいね」

「うま~」

「お~それは良かった。まぁ俺が作ったわけじゃないけどな」

 皆の言う通り、この焼きそばはなかなかうまいな。
 義秋のクラスに料理上手の人が居るみたいだ。

『チュルルル……モグモグ……ん~確かにおいしいけど、もうちょっとソースが欲しいわね。あと私は生卵を乗せてほしいわ』

 こそこそと俺から盗み食いしている奴が何を言うか。
 そもそも、生徒が作っているんだから色々言うのは野暮ってもんだろう。
 ……まぁそれは置いといて、気になる事が一つ。

「じゃあぁ今度作ってみてよぉ」

「はあ? 俺が焼そばを? それはまた難しい事を言うな……」

「あぁ~真っ黒になっちゃいそうだねぇ」

「失礼な! 流石に焦がすまではいかんわ!」

 義秋と星木さんだ。
 やっぱり何だか距離近いよな。

「ねぇねぇ。私思ったんだけど、何かあの2人って雰囲気良くない?」

 香夏子もそう思っていたか。

「あっ私もそう思った」

 神野さんもか。
 3人とも思っているのなら、これはほぼ間違いなしかな。

「やっぱ? ……ニヒッ」

 あー……香夏子がすごく悪い笑顔になっているよ。
 これは義秋と星木さんを茶化す気だな。

「ヘイヘ~イ、お2人さん~此間から仲が実に良いねぇ~」

「「へ?」」

 やっぱり。
 こういうのはあまり茶化さない方がいいと思うんだけどな。

「いっその事、付き合っちゃえば? な~んて……」

『あっ!』

 なんか、メイティーが両手を口に押さえているぞ。
 おいおい、食い過ぎか? こんな時に辞めてくれよ。

「あー……えーと……」

 ん? この義秋の反応は何かおかしい。
 困ったようで、照れ臭そうで……あれ? まさか、これって……。

「わたしたちぃもう付き合ってるよぉ」

「――っ!?」

 俺は予想通りの回答が出て来た事に絶句し。

「――えっ?」

 神野さんは驚きのあまり焼きそばを落としてしまい。

「……」

 香夏子は笑顔のまま固まってしまった。

「そうだったんだ! おめでとう! いつ? いつから付き合っていたの?」

「ありがとう~付き合い出したのはぁ夏祭りの時だよぉ」

「あの時からなんだ! ねっねっどっちから告白したの!?」

 神野さんが質問攻めしている。
 意外だ、こういうのは神野さんより香夏子が食いつきそうなのに。

「……えと、俺から……」

「おお! どんな告白をしたの!?」

「メイっち! 少し落ち着いてよぉ」

 神野さんが、こんなにも興奮するとは。
 にしても、義秋と星木さんがねぇ……全然気が付かなかっ……あ、待てよ……さっきメイティーの様子がおかしかったのって、2人が付き合っていた事を知っていたからか!?

「っ!」

『ハッ! ピュ~ピュ~』

 俺がメイティーを見た瞬間、メイティーは目を逸らしてわざとらしく口笛を吹き出した。
 間違いない、知っていたんだ! だったら教えてくれよなー減るもんじゃなあるまいし。
 あーでも、こういうのは当人から聞いた方がいいか……複雑な気分だ。

「……」

 つか香夏子の奴、まだ固まっているし。
 とりあえず、肩を揺らして目覚めさせよう。

「おーい、香夏子。いい加減、目を覚ませ」

「――はっ! あれ? 今私夢を見ていた? 義秋と美冬が付き合って……」

 そう思うくらい衝撃的だったのか。

「夢じゃない。現実だ」

「……そっか、夢じゃないんだ………………羨ましいな……」

 ……最後の香夏子の声は聞こえなかったことにしよう。
 その方がいい……お互いに……。
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