【完結】とあるポンコツ女神サマの恋愛術!

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6章 とある女神サマ、夏休みを堪能(下旬)

波乱の夏祭り(2)

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 さて、集合場所の神社に着いたけど3人はもう来ているかな。 

「ん~……あっ種島くん、あそこにみんながいるよ」

 神野さんの指をさした方向に義秋、香夏子、星木さんの3人が揃っている。
 どうやら俺達が最後になってしまったらしい。

「そうだ。私達が先に待ち合わせしていた事は、みんなには内緒ねっ」

 神野さんが口元に指を当てて、しーっのポーズをとった。
 なにこれ、すんごく可愛いんですけど。

「う、うん。わかった」

 2人だけの秘密か。
 おおう、その響きだけでドキドキする。

「――でさ~……お、命~! こっちこっち!」

 香夏子がこっちに気が付いて手を振っている。

「あれ? 春彦と一緒なんだ」

「ここに来る途中で出会ったの。ねっ」

「うん、丁度そこでばったりと」

 ここは神野さんの話に合わせておこっと。
 下手にしゃべるとポロっと言っちゃいそうだし。

「ふ~ん……そうなんだ……おっ命の浴衣、かわいいじゃない」

「香夏子ちゃんだって、そのヒマワリの柄よく似合っているよ。美冬ちゃんもかわいい~」

「えへへぇ~」

 香夏子はヒマワリ、星木さんは青い蝶の柄か。
 どうやら女子3人は浴衣で合わせてきたみたいだな。

「よし、みんな集まったんだし屋台まわろうぜ」

「「「お~」」」

 やっぱり、祭りと言えば屋台巡りだよな。
 さて、何から食べようか……待てよ。
 そういえばメイティーの奴、ずっと静かにメモ帖を読んでいるみたいだがどうしたんだろう。
 こいつの食い意地を考えると、こんなに屋台が並んでいるのに食べ物の催促をしてこないのは不気味だぞ。

(なぁ屋台が並んでいるのに、何も食わないのか?)

『はあ? 祭りという最大のイベントなのよ! 食べている場合じゃないわ!』

 嘘だろ!? 食い意地だけが取り柄のメイティーがこんな事を言うなんて……。
 明日は大雨になるに違いない。

『あっかき氷、焼きそば、たこ焼き、フランクフルト、りんご飴、チョコバナナ、わたあめ、ベビーカステラは買っておいてね』

 いや、明日はいい天気になりそうだ。



『あった! 射的! あれで貴方のかっこいいところを見せてあげなさいな!』

 屋台巡りをしている時も、やたらキョロキョロとしていたのは射的屋を探していたからか。
 確かに撃ち落とせればかっこいいとは思う、そう……撃ち落とせればの話。
 俺って射的は超下手なんだよな。

『そんな不安な顔をしなくても大丈夫よ。アタシがいる事を忘れていない?』

 ああ、そうか。
 魔法で絶対に当たる様にしてくれるのか。
 それなら俺でも出来るはずだ。

「なぁなぁ射的をしようぜ」

「射的か。うし、いっちょやるか」

 そういえば、義秋って射的上手かったよな。
 普通に出来る奴は羨ましいよ。

「おっちゃん、1回分」

「俺も、1回」

「らっしゃい! ――がんばってね」

「わ~あのクマのぬいぐるみかわいい~」

 的の台、一番上の中央には大きいサイズのクマのぬいぐるみが陣取っている。
 神野さんの感じから、あれを落として渡せばかっこいいんだが……あれはどう考えてもコルクの弾で落ちるとは思えない。
 いくらメイティーの魔法とはいえ、それは不可能だろうな。

『さぁ撃ちなさい。当たったのを押してあげるから』

 まさかの手動の上に、どストレートな不正行為じゃないか。
 クジの時も思ったけど、何でそういった部分は手動なの?
 全く、魔法ってどういう……って待てよ、手で押すならあの大きいクマのぬいぐるみを簡単に落とせるよな。それに、いくら下手な俺でもあの大きさならどこかしらに当てられる。
 なら、やるしかないか……いや、でもそんな手段で落としたのをプレゼントして、果たしてそれでいいんだろうか。
 うーむ、これは非常に悩む。

「うーん、やっぱりぬいぐるみは無理そうだな」

「全然動かなかったねぇ」

 俺が悩んでいる間に、義秋がクマのぬいぐるみを狙ったようだ。
 このままでは、クマのぬいぐるみを義秋に取られるかもしれない。
 メイティーはすでに押す準備をしているし……ここはもう行くしかない!
 かっこいい所をみせるのみだ!

「っ!」

 ――パンッ!

 お、俺の撃った弾がクマのぬいぐるみの額に当たった。

『今だっ! ……って、あれ? なにこれ、全然動かないじゃない!』

 メイティーは片手で軽めにクマのぬいぐるみを押していたが、少し揺れただけで落ちる気配がない。
 コルクの弾なら落ちなくても不思議じゃないが、手で押したのに落ちないのはどう考えてもおかしい。
 まさか、この親父も何かしらの不正をしているんじゃ。

「おしかったねー」

 だとしても、確かめる手段が無い以上はどうしようもない。

『ぐぬぬぬぬ……もう一度よ! もう一度狙いなさい!!』

 ええ……何度やっても変わらんと思うんだがな。
 まぁもう一度くらいは良いか、やらないとうるさそうだし。

 ――パンッ!

『おりゃああああああああああああああああああああ!』

 ちょっ!
 クマのぬいぐるみに向かって右ストレートだと!?

 ――ベリッ!

 なにか剥がれる音と同時にクマのぬいぐるみが吹っ飛んだ。
 見るからに、コルクの弾の威力じゃないんですけど。

「……ハッ! おっおい、お前! 何をしやがった!? イカサマなんぞしやがって!」

 デスヨネー!
 射的屋のおっちゃんが、すんごい怒ってらっしゃる。
 どうしよう、どう言い訳をしたらいいんだ。

「……んん? ぬいぐるみのケツに何か付いて……あーなるほど、そういう事か。それで、さっきあんな音がしたのか。なぁおっちゃん、」

「ああん!? なんだよ!?」

 義秋、それ以上おっちゃんを刺激しないでくれ!
 おかしいのは間違いないんだから!

「ぬいぐるみのケツと台に付いているのって、マジックテープだよな? これって、固定して落ちない様にしていたって事?」

「んなっ!」

「え?」

 ……本当だ、義秋の言う通りマジックテープが付いている。
 という事は、やっぱり親父も不正をしていたのか。

「こっこれは、そういう仕様のぬいぐるみなんだ! イ、イカサマを誤魔化そうとするな!」

 ぬいぐるみのケツと台にマジックテープが付いているぬいぐるみなんて聞いた事がないぞ。
 それにイカサマを誤魔化そうとしているのはあんたじゃないか……まぁ俺もイカサマをしているからそこに対しては何とも言えないがな。

「イカサマねぇ……あっ丁度そこに警官がいるよぉ。事情を話して判断してもらおうよぉ、それならおじさんも文句はないよねぇ?」

「えっ!?」

 星木さんの言う通り、見回りの中っぽい警官が2人いる。

「だね、そうしよう。お~――」
「わーわー! 待った! 待った!」

 香夏子が警官に声を掛けようとしたら、親父が必死に止めて来た。
 これはもう観念したようだ。

「……っくそがっ! それをくれてやるから、さっさとどっか行きやがれ!」

 射的屋の親父が、クマのぬいぐるみを俺に投げつけて来やがった。
 なんか申し訳ないな気もするが……流石に投げつける事はないだろう。
 とはいえクマのぬいぐるみは手に入ったし、これを……。

「……えと……これ良かったら、神野さんに……」

「えっ? いいの?」

 正直、ケツにマジックテープが付いていたり色々とあった物を渡すのはどうかと思うが、これが目的だったしな。
 まぁ受け取ってもらえなかったら、その時はその時だ。

「うん、こんなぬいぐるみで良ければだけど……」

「ありがとう! 大事にするね!」

 良かった、笑顔で受け取ってくれたよ。

【……ザザ……20時より花火が始まります。誘導に従い……】

 花火のアナウンスだ。

「おっもうじき花火か、俺らも見える所に行こうぜ」

 もう夏祭りも終盤か。
 楽しい時間はあっという間だな。


≪ガヤガヤ≫

「……」

 誘導されるまま、進んだけどすごい人だ。
 これじゃあ、奥に行くまで無理だな。
 仕方ない、この辺りで見るしかないかな。

「みんな、どうする? この辺りで……あれ? 義秋? 神野さん? 香夏子? 星木さん?」

 みんなの姿が見えないし!
 この人集りではぐれちゃったのか。
 おいおい、マジかよ……神野さんと花火を見たかったのに!
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