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第2章 ドワーフとEランク冒険者
6・ヒトリと盗賊
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ガラの悪い男達の中で、リーダーと思わしき不精ヒゲを生やした男が一歩前に出る。
「おい、金目の物を出しな。そうすれば命は助けてやるぜ」
「ひひひひ」
「ぐへへへ」
「きししし」
リーダーの言葉に周りの男達が下卑た笑いを浮かべる。
男達の態度、アルヴィンに向かって放たれた矢。
男の言葉は到底信じられなかった。
「最悪だ……盗賊と会っちまうなんて……ど、どうする? 逃げるか?」
アルヴィンは覆いかぶさっているヒトリに小声で問いかけた。
「え? あっ……えと……しょ、正面にある大きな木の上に弓を持った人が1人……う、後ろの茂みには5人くらい隠れている気配がありますから……それは難しいと思いますぅ」
「なっ! 10人もいるのか!?」
「し~っ! こっ声が大きいです」
ヒトリの指摘に、アルヴィンは慌てて両手で自分の口を押さえた。
「おい! お前等! 何を話してやがる! オレ様の話を聞いているのかあ? ああん!?」
盗賊達が馬車へと近づいてくる。
「どっどうしよう! 金なんて持ってないし……このままじゃあ!」
アルヴィンはすっかり戦意を失い、及び腰になってしまっている。
どうやってこの場を無傷でやり過ごせるかと必死だ。
一方ヒトリは黙って盗賊達をジッと見つめていた。
「……武器はボロボロ、まともな防具を付けていないし隠れている人達も気配を隠せていない……となると、ただのゴロツキ達の集まりっぽな……Cランク以上になっていたのは人数が多いからか……」
「……」
ヒトリの異様に落ち着いている様子を見て、アルヴィンは怖いと思ってしまった。
盗賊達ではなく、ヒトリに対して何故そう感じたのか全く理解できなかった。
「……あっ……大丈夫です。な、何も問題はありません……ただ、ちょっと時間稼ぎをお願いしますね」
そう言うと、ヒトリはデフォルメされたドクロの仮面を取り出す。
「……時間稼ぎ? てか何だよ、その仮面は……?」
「あっ……これですかぉ? ツバメちゃんが選んでくれた物なんです」
ヒトリがドクロの仮面を顔につけた。
「いや……そういう事じゃなくて……」
「それでは、行ってきますね」
そう言うとヒトリは一瞬で姿を消した。
「…………え? ええっ!?」
アルヴィンが驚きの声をあげる。
両目を擦り辺りを見わたすが、ヒトリの姿は何処にも無かった。
「嘘だろ……何処に行ったんだ? …………あっ! まさか逃げたんじゃ……」
「おいごらっ! オレ様達を無視するんじゃねぇぞ!」
リーダーの男が怒声をあげながら馬車の側面を蹴り飛ばす。
いつの間にか、盗賊達は馬車の前まで近づいていた。
「ッ!」
恐怖でアルヴィンはその場で固まってしまう。
「なめてんじゃねぇぞ、お前…………等……? って、ああん? ガキ1人だけしかいねぇぞ」
荷台にはアルヴィンが1人いるだけ。
それを見てリーダーの男が首を傾げた。
「え? そんなはずないです。真っ黒い奴がい……ない?」
「本当だ、いねぇぞ。逃げたか?」
「いや、ずっと見ていたからそんなわけがねぇ」
盗賊達が馬車の下を覗いたり、周辺を見わたす。
しかし、何処にも姿が見えない。
「おい! ガキ! もう1人はどこに行きやがった!?」
「……さっさあ?」
本当にわからないアルヴィンは両手をあげて困った顔をした。
「――っ!! なめんじゃあねえぞ!!」
リーダーの男は手に持っていた斧を馬車の側面に勢いよく振り下ろした。
木材の割れる音が林道に鳴り響く。
「ああああ……ほ、本当にわからないんだって! 急に消えたんだよ!」
必死にアルヴィンは頭と両手を横に振って知らないアピールをする。
その姿にリーダーの男の顔が真っ赤になっていく。
「うぎぎぎぎ、まだそんな事を……ん? その毛布にくるまっているのは何だ?」
「っ!」
リーダーが毛布でくるまれているカラに指をさした。
その瞬間、アルヴィンの顔がこわばった。
「……な、なんでもない……ただの毛布の塊だ……」
「なんでも……ねぇ。おカシラ、あの毛布の中に隠れているんじゃないですか?」
「ああ、そうかもな。おい」
「へい」
盗賊の1人が馬車を回り込み、毛布へと手を伸ばした。
「っ! 触るな!!」
とっさにアルヴィンが盗賊の手をはじく。
「――いって! このガキ! 何しやがる!!」
「汚い手で触れるな! このくそ野郎が!」
「なっ! 俺は毎日水浴びして綺麗好きなんだぞ! ……おカシラあ!! このガキ殺っちゃってもいいですか!?」
「ガキは高く売れるんだが……まあいいだろう、オレ様も頭に来ているしな。ただ、すぐには殺すなよ……たっぷり虐めてやれ」
「へっへっへ、もちろんでさ」
盗賊が持っていた剣を振り上げる。
「ヒッ!」
アルヴィンは恐怖のあまり全身が震えはじめた。
「まずは逃げれない様に両足をぶった切ってやるぜえええええええええ!」
「――ッ!」
降り下ろされる剣、アルヴィンは顔を伏せ目を固く閉じる。
するとドスンと何かが地面に落ちる音が聞こえてきた。
「あん? 何の音だ?」
「え?」
「な、なんだあ?」
盗賊達の戸惑いの声に、アルヴィンはうっすらと目を開ける。
すると盗賊達が全員後ろを向いていた。
どうしたのだろうと、アルヴィンも盗賊達の見ている方を見た。
「……へっ?」
目線の先には弓を持った男が、白目をむいて地面に倒れている姿があった。
「なっなんだ? おい! どうしたんだ!?」
こん棒を持った男が倒れている男に駆け足で近寄り、体を揺らした。
その瞬間、木の上からヒトリが飛び降りてこん棒を持った男の脳天にカカト落としを決める。
「――ガッ!」
こん棒を持った男も白目をむき、その場に倒れた。
「なんだ!?」
「――こっこの野郎がああああああ!!」
アルヴィンを斬ろうとしていた男が倒れた仲間を見て激昂し、ヒトリに向かって斬りかかる。
降り下ろされた剣をヒトリは身体を捻って避け、そのまま勢いをつけて男の顔面に裏拳を叩き込んだ。
「――うぎゃっ!」
男は1mほど吹き飛び、地面に倒れてピクリとも動かない。
「な、何なんだこいつは……くそっ! おい! お前等! 隠れてないでこいつをやっちまえ!」
リーダーが茂みに向かって叫んだ。
しかし、茂みの中からは誰も出てこない。
「おい! 何してやがる! 早く出て――」
「呼んでも無駄ですよ」
仮面の下から血の凍るような冷たい声が聞こえ、リーダーは一瞬縮み上がった。
「……ど、どういう事だ」
「茂みに隠れていた5人、全員寝ていますから」
「なっ!?」
先ほどのヒトリの動きで、リーダーは嘘を言っていないと直感した。
「これ以上、手荒な事はしたくありません。大人しく捕まってください」
「……クソがっ! 捕まってたまるか!」
リーダーはアルヴィンに向かって走り出した。
アルヴィンを人質にして逃走する為だ。
「残念です」
「――グエッ!」
ヒトリのとび膝蹴りがリーダーの後頭部に叩きこまれる。
リーダーも他の男たち同様に白目をむき地面に倒れた。
「…………嘘……だろ」
目の前で繰り広げられた光景にアルヴィンは只々茫然とするしかなかった。
「おい、金目の物を出しな。そうすれば命は助けてやるぜ」
「ひひひひ」
「ぐへへへ」
「きししし」
リーダーの言葉に周りの男達が下卑た笑いを浮かべる。
男達の態度、アルヴィンに向かって放たれた矢。
男の言葉は到底信じられなかった。
「最悪だ……盗賊と会っちまうなんて……ど、どうする? 逃げるか?」
アルヴィンは覆いかぶさっているヒトリに小声で問いかけた。
「え? あっ……えと……しょ、正面にある大きな木の上に弓を持った人が1人……う、後ろの茂みには5人くらい隠れている気配がありますから……それは難しいと思いますぅ」
「なっ! 10人もいるのか!?」
「し~っ! こっ声が大きいです」
ヒトリの指摘に、アルヴィンは慌てて両手で自分の口を押さえた。
「おい! お前等! 何を話してやがる! オレ様の話を聞いているのかあ? ああん!?」
盗賊達が馬車へと近づいてくる。
「どっどうしよう! 金なんて持ってないし……このままじゃあ!」
アルヴィンはすっかり戦意を失い、及び腰になってしまっている。
どうやってこの場を無傷でやり過ごせるかと必死だ。
一方ヒトリは黙って盗賊達をジッと見つめていた。
「……武器はボロボロ、まともな防具を付けていないし隠れている人達も気配を隠せていない……となると、ただのゴロツキ達の集まりっぽな……Cランク以上になっていたのは人数が多いからか……」
「……」
ヒトリの異様に落ち着いている様子を見て、アルヴィンは怖いと思ってしまった。
盗賊達ではなく、ヒトリに対して何故そう感じたのか全く理解できなかった。
「……あっ……大丈夫です。な、何も問題はありません……ただ、ちょっと時間稼ぎをお願いしますね」
そう言うと、ヒトリはデフォルメされたドクロの仮面を取り出す。
「……時間稼ぎ? てか何だよ、その仮面は……?」
「あっ……これですかぉ? ツバメちゃんが選んでくれた物なんです」
ヒトリがドクロの仮面を顔につけた。
「いや……そういう事じゃなくて……」
「それでは、行ってきますね」
そう言うとヒトリは一瞬で姿を消した。
「…………え? ええっ!?」
アルヴィンが驚きの声をあげる。
両目を擦り辺りを見わたすが、ヒトリの姿は何処にも無かった。
「嘘だろ……何処に行ったんだ? …………あっ! まさか逃げたんじゃ……」
「おいごらっ! オレ様達を無視するんじゃねぇぞ!」
リーダーの男が怒声をあげながら馬車の側面を蹴り飛ばす。
いつの間にか、盗賊達は馬車の前まで近づいていた。
「ッ!」
恐怖でアルヴィンはその場で固まってしまう。
「なめてんじゃねぇぞ、お前…………等……? って、ああん? ガキ1人だけしかいねぇぞ」
荷台にはアルヴィンが1人いるだけ。
それを見てリーダーの男が首を傾げた。
「え? そんなはずないです。真っ黒い奴がい……ない?」
「本当だ、いねぇぞ。逃げたか?」
「いや、ずっと見ていたからそんなわけがねぇ」
盗賊達が馬車の下を覗いたり、周辺を見わたす。
しかし、何処にも姿が見えない。
「おい! ガキ! もう1人はどこに行きやがった!?」
「……さっさあ?」
本当にわからないアルヴィンは両手をあげて困った顔をした。
「――っ!! なめんじゃあねえぞ!!」
リーダーの男は手に持っていた斧を馬車の側面に勢いよく振り下ろした。
木材の割れる音が林道に鳴り響く。
「ああああ……ほ、本当にわからないんだって! 急に消えたんだよ!」
必死にアルヴィンは頭と両手を横に振って知らないアピールをする。
その姿にリーダーの男の顔が真っ赤になっていく。
「うぎぎぎぎ、まだそんな事を……ん? その毛布にくるまっているのは何だ?」
「っ!」
リーダーが毛布でくるまれているカラに指をさした。
その瞬間、アルヴィンの顔がこわばった。
「……な、なんでもない……ただの毛布の塊だ……」
「なんでも……ねぇ。おカシラ、あの毛布の中に隠れているんじゃないですか?」
「ああ、そうかもな。おい」
「へい」
盗賊の1人が馬車を回り込み、毛布へと手を伸ばした。
「っ! 触るな!!」
とっさにアルヴィンが盗賊の手をはじく。
「――いって! このガキ! 何しやがる!!」
「汚い手で触れるな! このくそ野郎が!」
「なっ! 俺は毎日水浴びして綺麗好きなんだぞ! ……おカシラあ!! このガキ殺っちゃってもいいですか!?」
「ガキは高く売れるんだが……まあいいだろう、オレ様も頭に来ているしな。ただ、すぐには殺すなよ……たっぷり虐めてやれ」
「へっへっへ、もちろんでさ」
盗賊が持っていた剣を振り上げる。
「ヒッ!」
アルヴィンは恐怖のあまり全身が震えはじめた。
「まずは逃げれない様に両足をぶった切ってやるぜえええええええええ!」
「――ッ!」
降り下ろされる剣、アルヴィンは顔を伏せ目を固く閉じる。
するとドスンと何かが地面に落ちる音が聞こえてきた。
「あん? 何の音だ?」
「え?」
「な、なんだあ?」
盗賊達の戸惑いの声に、アルヴィンはうっすらと目を開ける。
すると盗賊達が全員後ろを向いていた。
どうしたのだろうと、アルヴィンも盗賊達の見ている方を見た。
「……へっ?」
目線の先には弓を持った男が、白目をむいて地面に倒れている姿があった。
「なっなんだ? おい! どうしたんだ!?」
こん棒を持った男が倒れている男に駆け足で近寄り、体を揺らした。
その瞬間、木の上からヒトリが飛び降りてこん棒を持った男の脳天にカカト落としを決める。
「――ガッ!」
こん棒を持った男も白目をむき、その場に倒れた。
「なんだ!?」
「――こっこの野郎がああああああ!!」
アルヴィンを斬ろうとしていた男が倒れた仲間を見て激昂し、ヒトリに向かって斬りかかる。
降り下ろされた剣をヒトリは身体を捻って避け、そのまま勢いをつけて男の顔面に裏拳を叩き込んだ。
「――うぎゃっ!」
男は1mほど吹き飛び、地面に倒れてピクリとも動かない。
「な、何なんだこいつは……くそっ! おい! お前等! 隠れてないでこいつをやっちまえ!」
リーダーが茂みに向かって叫んだ。
しかし、茂みの中からは誰も出てこない。
「おい! 何してやがる! 早く出て――」
「呼んでも無駄ですよ」
仮面の下から血の凍るような冷たい声が聞こえ、リーダーは一瞬縮み上がった。
「……ど、どういう事だ」
「茂みに隠れていた5人、全員寝ていますから」
「なっ!?」
先ほどのヒトリの動きで、リーダーは嘘を言っていないと直感した。
「これ以上、手荒な事はしたくありません。大人しく捕まってください」
「……クソがっ! 捕まってたまるか!」
リーダーはアルヴィンに向かって走り出した。
アルヴィンを人質にして逃走する為だ。
「残念です」
「――グエッ!」
ヒトリのとび膝蹴りがリーダーの後頭部に叩きこまれる。
リーダーも他の男たち同様に白目をむき地面に倒れた。
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