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終章 私が勇者を追いかける理由
最終話
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まずい、これは非常にまずい。
まさかこんな事でバレちゃうだなんて……。
「シっシオン様、一体何をおっしゃっているのですか?」
「シオンちゃん、どういう事なん?」
そうよ、落ち着くのよ私……こっちは透明になっているからシオン達には見えない。
このままローニを連れて、ここから逃げよう。
「これはお母様が付けている結婚指輪ですわ」
「ふ~ん……あたしには、よくあるゴールドリングにしか見えるけど……」
そこなのよね、どうしてバレたのかしら?
髪の色に合わせた特注品ではある物の、指輪自体の形はごくごく普通なんだけどな。
「この指輪の裏側に、お母様の名前が刻まれていますわ」
あっそうだった。
シオンが指輪の依頼を受けた時点でもうアウトだったと。
我ながら馬鹿ね、本当に……。
「あっ……えーと……そうだ、もしかしたらアリシア様の指輪が大ガラスに取られてしまい、ここまで運ばれてしまったのでは?」
アスター……必死に誤魔化してはいるけど、シオンには通じないわよ。
「いいえ、この結婚指輪はお母様が大事にしている物です。仮に大ガラスに取られたとすれば、すぐに火魔法をぶっ放して焼き鳥にしていますわ」
失礼な、そこまでしないわよ!
風魔法で撃ち落として、指輪を取り返したら空に帰すわよ。
いや、今はそんな事よりも……。
「ローニ。私がシオン達の前に出るから、その間に逃げて」
「へ?」
「あなたがいる事の方が問題でしょうに!」
「あ、ああ……わかった」
はぁ自分のミスとはいえ、シオンに怒られるのがわかっているのに出なきゃいけないのは憂鬱だわ。
とりあえず、笑顔で出ましょう。
「よいしょっと。……あははは、ごめんね……シオン」
「「本当にいたし!!」」
チトちゃんとルイカちゃんが驚いている。
そして、アスターはこの世が終わったかのような絶望の顔をしているし。
シオンは……うう、私を睨みつけているよ~怖いよ~。
「……という事は、お父様もいますわね!! 出て来なさい!!」
「――っ!?」
「「えっ? お父さん!?」」
嘘っ!
「なっ何を言っているの? ここには私一人しか……」
「誤魔化しても無駄ですわ! お母様がここに居るという事は、お父様がわたくしを追いかけて来たという事! それ以外ありえませんわ! さあ早く出て来なさい!!」
シオンが鬼の形相になっている。
これはもう素直に言った方がいいわね……じゃないと、この森一帯がやばい事になりそうだし。
「ローニ……出て来なさい……」
「……はい……」
「「本当にいたし!!」」
ああ、今までどんな不自然な事でもバレなかったのに、こんなしょうもない事でバレるだなんて……これはかなりへこむわ。
※
「では、お母様。後の事はよろしくお願い致しますわ」
「……はい」
いやはや、あんなに怒ったシオンは初めてだわ。
ローニは三日三晩の宿の中でお説教を食らい、その後ローニを引きずり家に帰宅。
そして……。
「シオンちゃん、流石にこれはやりすぎじゃない?」
「あたしもそう思う……」
「いいえ、これくらいしないと駄目ですわ!」
ローニの手持ちやヘソクリ、数か月分のお小遣いを使ってかなり強力な結界石を購入、家の周りに結界を張ってそこから出られなくさせられてしまった。
私は結界石の管理をするから、自由に出入りは出来るけど……解いたり張ったりと実に煩わしい。
「お父様は?」
「怒られたせいか、しょぼくれて部屋から出てこないわ」
あんなに落ち込んだローニは、シオンが旅立つと決めた日以来ね。
「それではお母様、行きますわ。くれぐれも、くれぐれも! お父様から目を離さない用に!」
「はいはい、わかっているから。気を付けて行ってらっしゃい」
ローニのおかげで大変だったわ。
まぁ数日とはいえ、久々に冒険が出来たのは楽しかったかな。
「……さて、ローニの様子を見に行きますか」
※
――コンコン
「ローニ、いつまでしょぼくれているつもり?」
――。
反応が無い。
「ちょっと、返事くらいしてよ!」
――。
「……ローニ?」
何かしら、この異様な静けさは。
まるで部屋の中に誰もいない様な……あれ? この感じ覚えがあるような……。
「いやいや、まさかねぇ」
だって、結界石がある限りシオン達の後を追えるわけもないし……。
――ピシッ
「ん?」
結界石から音がしたような……。
――ピシッパリッ!
「え? え?」
嘘っ!?
結界石にヒビがどんどん入って――。
――パリイイイイン!!
結界石が粉々に砕け散った?
何で!? どうして急に……あっ!
「――っ! やっぱりいない!」
ローニが部屋に居ない、そして結界石が砕けた……となれば、考えられる事は1つだけ。
結界を強引に破壊してシオン達の後をついて行っちゃったんだわ!
はぁ……結界を張っても駄目となると、最初に思った通り連れ戻すだけ無駄なんだわ。
だとしたら、このまま放っておいた方がいいのかしら?
「……いや……待てよ」
前はローニに目がいってたから良かったけど、今回はシオンに念入りに見張るように言われた。
にもかかわらず、いきなり脱走されてしまった。
それをシオンが知れば、次に怒られるのは私ということになっちゃう。
「それは嫌だ! 絶対に嫌だ! ……となると、私のやる事は1つのみ」
ローニの後を追い、ローニの存在をシオンに気付かれない様にするしかない。
前までシオンの干渉を止める目的が、今度は手伝いみたいになっちゃうけど……こればかりは仕方ない。
だって怒られたくないんだもの。
「はぁ……じゃあ行きますか!!」
シオンが冒険している間、私は勇者を追いかけ続ける。
いつか子離れが出来るその日まで――。
私が勇者を追いかける理由。 ――終――
まさかこんな事でバレちゃうだなんて……。
「シっシオン様、一体何をおっしゃっているのですか?」
「シオンちゃん、どういう事なん?」
そうよ、落ち着くのよ私……こっちは透明になっているからシオン達には見えない。
このままローニを連れて、ここから逃げよう。
「これはお母様が付けている結婚指輪ですわ」
「ふ~ん……あたしには、よくあるゴールドリングにしか見えるけど……」
そこなのよね、どうしてバレたのかしら?
髪の色に合わせた特注品ではある物の、指輪自体の形はごくごく普通なんだけどな。
「この指輪の裏側に、お母様の名前が刻まれていますわ」
あっそうだった。
シオンが指輪の依頼を受けた時点でもうアウトだったと。
我ながら馬鹿ね、本当に……。
「あっ……えーと……そうだ、もしかしたらアリシア様の指輪が大ガラスに取られてしまい、ここまで運ばれてしまったのでは?」
アスター……必死に誤魔化してはいるけど、シオンには通じないわよ。
「いいえ、この結婚指輪はお母様が大事にしている物です。仮に大ガラスに取られたとすれば、すぐに火魔法をぶっ放して焼き鳥にしていますわ」
失礼な、そこまでしないわよ!
風魔法で撃ち落として、指輪を取り返したら空に帰すわよ。
いや、今はそんな事よりも……。
「ローニ。私がシオン達の前に出るから、その間に逃げて」
「へ?」
「あなたがいる事の方が問題でしょうに!」
「あ、ああ……わかった」
はぁ自分のミスとはいえ、シオンに怒られるのがわかっているのに出なきゃいけないのは憂鬱だわ。
とりあえず、笑顔で出ましょう。
「よいしょっと。……あははは、ごめんね……シオン」
「「本当にいたし!!」」
チトちゃんとルイカちゃんが驚いている。
そして、アスターはこの世が終わったかのような絶望の顔をしているし。
シオンは……うう、私を睨みつけているよ~怖いよ~。
「……という事は、お父様もいますわね!! 出て来なさい!!」
「――っ!?」
「「えっ? お父さん!?」」
嘘っ!
「なっ何を言っているの? ここには私一人しか……」
「誤魔化しても無駄ですわ! お母様がここに居るという事は、お父様がわたくしを追いかけて来たという事! それ以外ありえませんわ! さあ早く出て来なさい!!」
シオンが鬼の形相になっている。
これはもう素直に言った方がいいわね……じゃないと、この森一帯がやばい事になりそうだし。
「ローニ……出て来なさい……」
「……はい……」
「「本当にいたし!!」」
ああ、今までどんな不自然な事でもバレなかったのに、こんなしょうもない事でバレるだなんて……これはかなりへこむわ。
※
「では、お母様。後の事はよろしくお願い致しますわ」
「……はい」
いやはや、あんなに怒ったシオンは初めてだわ。
ローニは三日三晩の宿の中でお説教を食らい、その後ローニを引きずり家に帰宅。
そして……。
「シオンちゃん、流石にこれはやりすぎじゃない?」
「あたしもそう思う……」
「いいえ、これくらいしないと駄目ですわ!」
ローニの手持ちやヘソクリ、数か月分のお小遣いを使ってかなり強力な結界石を購入、家の周りに結界を張ってそこから出られなくさせられてしまった。
私は結界石の管理をするから、自由に出入りは出来るけど……解いたり張ったりと実に煩わしい。
「お父様は?」
「怒られたせいか、しょぼくれて部屋から出てこないわ」
あんなに落ち込んだローニは、シオンが旅立つと決めた日以来ね。
「それではお母様、行きますわ。くれぐれも、くれぐれも! お父様から目を離さない用に!」
「はいはい、わかっているから。気を付けて行ってらっしゃい」
ローニのおかげで大変だったわ。
まぁ数日とはいえ、久々に冒険が出来たのは楽しかったかな。
「……さて、ローニの様子を見に行きますか」
※
――コンコン
「ローニ、いつまでしょぼくれているつもり?」
――。
反応が無い。
「ちょっと、返事くらいしてよ!」
――。
「……ローニ?」
何かしら、この異様な静けさは。
まるで部屋の中に誰もいない様な……あれ? この感じ覚えがあるような……。
「いやいや、まさかねぇ」
だって、結界石がある限りシオン達の後を追えるわけもないし……。
――ピシッ
「ん?」
結界石から音がしたような……。
――ピシッパリッ!
「え? え?」
嘘っ!?
結界石にヒビがどんどん入って――。
――パリイイイイン!!
結界石が粉々に砕け散った?
何で!? どうして急に……あっ!
「――っ! やっぱりいない!」
ローニが部屋に居ない、そして結界石が砕けた……となれば、考えられる事は1つだけ。
結界を強引に破壊してシオン達の後をついて行っちゃったんだわ!
はぁ……結界を張っても駄目となると、最初に思った通り連れ戻すだけ無駄なんだわ。
だとしたら、このまま放っておいた方がいいのかしら?
「……いや……待てよ」
前はローニに目がいってたから良かったけど、今回はシオンに念入りに見張るように言われた。
にもかかわらず、いきなり脱走されてしまった。
それをシオンが知れば、次に怒られるのは私ということになっちゃう。
「それは嫌だ! 絶対に嫌だ! ……となると、私のやる事は1つのみ」
ローニの後を追い、ローニの存在をシオンに気付かれない様にするしかない。
前までシオンの干渉を止める目的が、今度は手伝いみたいになっちゃうけど……こればかりは仕方ない。
だって怒られたくないんだもの。
「はぁ……じゃあ行きますか!!」
シオンが冒険している間、私は勇者を追いかけ続ける。
いつか子離れが出来るその日まで――。
私が勇者を追いかける理由。 ――終――
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