19 / 28
3章 探せ、アリシアの結婚指輪
その2
しおりを挟む
「――のわっ!!」
はっ! ショックのあまり、つい大きな声をあげてしまった。
居酒屋の主人がびっくりして飛び上がっちゃった。
「……あーびっくりした。おいおい、いきなり叫ぶなよ……。つか、よくもまあ禁酒宣言を居酒屋の前で堂々とできるな……」
おっしゃる通りで……あっそうだわ!
もしかしたら、居酒屋の中に落としているかもしれない!
「あの! 店の中に指輪が落ちていませんでしたか!? ゴールドリングです!」
あの結婚指輪は2人の髪の色に合わせた特注品。
私はゴールドリングを、ローニはシルバーリングを付けた。
「……人がまだ話している時に……はぁーもいいか……で、ゴールドリングだっけか? 残念だが、マント同様にそんな物は無かったな」
「……」
本当かしら?
ゴールドリングだからしらを切っている可能性もある。
「本当に本当ですか!? 実は隠していたりしていませんか!?」
「なっ!? おいこらっ! 人聞きが悪い事を言うな!! 俺は盗みなんてしねぇよ! 何なら今から警備兵の所に行ってもいいんだぜ!?」
「あうっ……」
この感じは嘘を言っているとは思えない。
やってしまった~動揺していたとはいえ、さすがに疑い過ぎた。
大事になる前に素直に謝らなくちゃ!
「――すみません! すみません! つい取り乱してしまい言い過ぎました! 本当に申し訳ありません!!」
これで、収まってくれればいいんだけど……。
「……分かればいいんだよ、全く」
良かった~。
何とか怒りを収めてくれた。
「まぁそこまで動揺するのもわからんでもないな。俺もこの指輪を失くしたら、あんたみたいに疑心暗鬼になっちまうかもしれん……いや、その前に母ちゃんに殺されるか……」
そうね、ローニが指輪を失くしたら私はかなり怒るだろうな。
現状は私が怒られる立場になっているけど。
「とにかく、マントも指輪も家にはないから他を探してみるんだな」
「……はい、そうします……」
と言われても、探すのは指輪だけだけどね。
透明化マントはローニが持っているから……。
にしても、指輪は問題よね……見つかる気が全くしない。
でも奇跡を信じて、昨晩通ったであろう居酒屋から宿までの道のりを丹念に探してみましょう。
※
「はあ~……」
奇跡なんてなかった。
道端に落ちていたのはゴミ、ゴミ、ゴミ。
全く、ゴミを道端に捨てる奴なんて人として最低よね。
「はあ~……」
で、宿に戻ってから部屋も探したけど指輪はなし。
まぁ今朝も宿の部屋中を探しまくっていたから、見当たらないのは当たり前だけど……それでももしかしたら、と思ったんだけどな~。
「はあ~……」
出るのはため息ばかりだわ。
ああ、出来る事なら今すぐ昨日の晩に戻りたい……。
「はあ~……出来ない事をウダウダと考えても仕方ないか」
なら出来る事を考えなくちゃね。
私一人じゃもうどうしようもない。
となれば、ギルドに探し物の依頼として出そう。
それでも見つかる確率は低いと思うけど、やらないよりはましよね。
うう……3日目にして、ローニの自由を許してしまうなんて思いもしなかった。
でも、今回ばかりはそんな事を言っていられないわ。
あの指輪は大事な物だもの! 今すぐギルドに直行よ!
※
……居ないか。
もしかしたら、ギルドの中にシオン達がいるかなとも思ったんだけど良かったわ。
何かしらの依頼を受けてそこに向かったかな?
だとしたら、依頼の登録をさっさと済ませちゃいましょ。
「あの~」
「はい、なにか……今日も金髪の男の人は来ていませんよ~」
受付嬢さんが私を見て、今日もぎこちない笑顔をしつつ聞いてもいないローニ情報。
そして中に入るのを防ぐかの様に、また両手をカウンターの上に乗せてガード。
受付嬢さんの中で私ってそんなに警戒するべき人物なかしら……何かショックだわ。
「いえ、今日は依頼を出しに来たんです……」
「あっそうだったんですか! それは、すみません。……では、この書類に依頼内容と報酬金額の記入をお願い致します」
え~と、依頼内容は結婚指輪の捜索……いや、結婚指輪を探してくれって重いから誰も受けてくれないかもしれない。
よし、ここは普通にゴールドリングにしておきましょう。
後は報酬金額か……大体の相場はいくらなのかしら?
その辺が全くわからないわね。
「すみません。この依頼だと、報酬金額の相場ってどのくらいですかね?」
「拝見しますね」
あまり高くない事を祈るわ。
今の手持ちで足りればいいけど……。
「……なるほど、紛失物の捜索か……あの、いくつか確認をしたいのですがいいですか?」
「あ、はい」
「この街で紛失したのは間違いないのですか?」
「はい……」
昨日の晩、街の外に行っていない保証はないけども。
まぁそこは大丈夫でしょう。
「ランクの制限に指定はありますか?」
「あ~……」
ランクか。
その辺りは別にこだわる必要は無いわよね。
「いえ、無いです」
星1だろうが5だろうが、探してもらえるだけでありがたい。
「となれば……この位が妥当かと」
受付嬢さんが値段を書いた紙を見せてくれた。
どれどれ……ふむ、驚くほど高くもなく、かと言って安いわけでもない値段ね。
受付嬢さんが教えてくれた値段だし、これにしておきましょう。
「それじゃその金額でお願い致します。……これが報酬金額です」
ただ、これで手持ちがかなり不安になっちゃっているから後で家に帰らなくちゃいけないわね。
「はい、承りました。この依頼ですと、すぐに受理されると思います」
「そうですか」
すぐなら助かるわね。
それにしても、色々ありすぎて疲れたわ~。
そこの椅子に座ってしばらく休もっと。
「ふぅ~……」
あ~今頃ローニはシオンにどんな行動をしているのかしら。
こんな事が無ければな~……。
「あっお客様、依頼が受理されましたので掲示板に貼りますね」
「……え? あっありがとうございます!」
はやっ! 行くらなんでも早すぎない?
ちょっと、ちゃんと内容を見て受理したんでしょうね!?
「さてと、今日も頑張ろか!」
んっ? 今のチトちゃんの声が聞こえた様な気がしたんだけど……。
いやいや、そんなはず――。
「申し訳ありませんわ……わたくしのせいで……」
「気にしなくていいよ、シオねぇ」
「そうですよ。気にしないで下さい」
――あったし!
えっ!? どうして!?
どうして、今になってシオン達がギルドに入って来ているのよ!
はっ! ショックのあまり、つい大きな声をあげてしまった。
居酒屋の主人がびっくりして飛び上がっちゃった。
「……あーびっくりした。おいおい、いきなり叫ぶなよ……。つか、よくもまあ禁酒宣言を居酒屋の前で堂々とできるな……」
おっしゃる通りで……あっそうだわ!
もしかしたら、居酒屋の中に落としているかもしれない!
「あの! 店の中に指輪が落ちていませんでしたか!? ゴールドリングです!」
あの結婚指輪は2人の髪の色に合わせた特注品。
私はゴールドリングを、ローニはシルバーリングを付けた。
「……人がまだ話している時に……はぁーもいいか……で、ゴールドリングだっけか? 残念だが、マント同様にそんな物は無かったな」
「……」
本当かしら?
ゴールドリングだからしらを切っている可能性もある。
「本当に本当ですか!? 実は隠していたりしていませんか!?」
「なっ!? おいこらっ! 人聞きが悪い事を言うな!! 俺は盗みなんてしねぇよ! 何なら今から警備兵の所に行ってもいいんだぜ!?」
「あうっ……」
この感じは嘘を言っているとは思えない。
やってしまった~動揺していたとはいえ、さすがに疑い過ぎた。
大事になる前に素直に謝らなくちゃ!
「――すみません! すみません! つい取り乱してしまい言い過ぎました! 本当に申し訳ありません!!」
これで、収まってくれればいいんだけど……。
「……分かればいいんだよ、全く」
良かった~。
何とか怒りを収めてくれた。
「まぁそこまで動揺するのもわからんでもないな。俺もこの指輪を失くしたら、あんたみたいに疑心暗鬼になっちまうかもしれん……いや、その前に母ちゃんに殺されるか……」
そうね、ローニが指輪を失くしたら私はかなり怒るだろうな。
現状は私が怒られる立場になっているけど。
「とにかく、マントも指輪も家にはないから他を探してみるんだな」
「……はい、そうします……」
と言われても、探すのは指輪だけだけどね。
透明化マントはローニが持っているから……。
にしても、指輪は問題よね……見つかる気が全くしない。
でも奇跡を信じて、昨晩通ったであろう居酒屋から宿までの道のりを丹念に探してみましょう。
※
「はあ~……」
奇跡なんてなかった。
道端に落ちていたのはゴミ、ゴミ、ゴミ。
全く、ゴミを道端に捨てる奴なんて人として最低よね。
「はあ~……」
で、宿に戻ってから部屋も探したけど指輪はなし。
まぁ今朝も宿の部屋中を探しまくっていたから、見当たらないのは当たり前だけど……それでももしかしたら、と思ったんだけどな~。
「はあ~……」
出るのはため息ばかりだわ。
ああ、出来る事なら今すぐ昨日の晩に戻りたい……。
「はあ~……出来ない事をウダウダと考えても仕方ないか」
なら出来る事を考えなくちゃね。
私一人じゃもうどうしようもない。
となれば、ギルドに探し物の依頼として出そう。
それでも見つかる確率は低いと思うけど、やらないよりはましよね。
うう……3日目にして、ローニの自由を許してしまうなんて思いもしなかった。
でも、今回ばかりはそんな事を言っていられないわ。
あの指輪は大事な物だもの! 今すぐギルドに直行よ!
※
……居ないか。
もしかしたら、ギルドの中にシオン達がいるかなとも思ったんだけど良かったわ。
何かしらの依頼を受けてそこに向かったかな?
だとしたら、依頼の登録をさっさと済ませちゃいましょ。
「あの~」
「はい、なにか……今日も金髪の男の人は来ていませんよ~」
受付嬢さんが私を見て、今日もぎこちない笑顔をしつつ聞いてもいないローニ情報。
そして中に入るのを防ぐかの様に、また両手をカウンターの上に乗せてガード。
受付嬢さんの中で私ってそんなに警戒するべき人物なかしら……何かショックだわ。
「いえ、今日は依頼を出しに来たんです……」
「あっそうだったんですか! それは、すみません。……では、この書類に依頼内容と報酬金額の記入をお願い致します」
え~と、依頼内容は結婚指輪の捜索……いや、結婚指輪を探してくれって重いから誰も受けてくれないかもしれない。
よし、ここは普通にゴールドリングにしておきましょう。
後は報酬金額か……大体の相場はいくらなのかしら?
その辺が全くわからないわね。
「すみません。この依頼だと、報酬金額の相場ってどのくらいですかね?」
「拝見しますね」
あまり高くない事を祈るわ。
今の手持ちで足りればいいけど……。
「……なるほど、紛失物の捜索か……あの、いくつか確認をしたいのですがいいですか?」
「あ、はい」
「この街で紛失したのは間違いないのですか?」
「はい……」
昨日の晩、街の外に行っていない保証はないけども。
まぁそこは大丈夫でしょう。
「ランクの制限に指定はありますか?」
「あ~……」
ランクか。
その辺りは別にこだわる必要は無いわよね。
「いえ、無いです」
星1だろうが5だろうが、探してもらえるだけでありがたい。
「となれば……この位が妥当かと」
受付嬢さんが値段を書いた紙を見せてくれた。
どれどれ……ふむ、驚くほど高くもなく、かと言って安いわけでもない値段ね。
受付嬢さんが教えてくれた値段だし、これにしておきましょう。
「それじゃその金額でお願い致します。……これが報酬金額です」
ただ、これで手持ちがかなり不安になっちゃっているから後で家に帰らなくちゃいけないわね。
「はい、承りました。この依頼ですと、すぐに受理されると思います」
「そうですか」
すぐなら助かるわね。
それにしても、色々ありすぎて疲れたわ~。
そこの椅子に座ってしばらく休もっと。
「ふぅ~……」
あ~今頃ローニはシオンにどんな行動をしているのかしら。
こんな事が無ければな~……。
「あっお客様、依頼が受理されましたので掲示板に貼りますね」
「……え? あっありがとうございます!」
はやっ! 行くらなんでも早すぎない?
ちょっと、ちゃんと内容を見て受理したんでしょうね!?
「さてと、今日も頑張ろか!」
んっ? 今のチトちゃんの声が聞こえた様な気がしたんだけど……。
いやいや、そんなはず――。
「申し訳ありませんわ……わたくしのせいで……」
「気にしなくていいよ、シオねぇ」
「そうですよ。気にしないで下さい」
――あったし!
えっ!? どうして!?
どうして、今になってシオン達がギルドに入って来ているのよ!
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい
梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
異世界召喚されました……断る!
K1-M
ファンタジー
【第3巻 令和3年12月31日】
【第2巻 令和3年 8月25日】
【書籍化 令和3年 3月25日】
会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』
※ステータスの毎回表記は序盤のみです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる