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2章 強敵、スライムを討伐せよ
その8
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とりあえず、見なかった物は置いといて。
他にローニがやっている事は無いかしら?
「ん~……」
辺りを見渡しても、これといって気になるところが無いわね。
あれ~? 私はてっきりスライム達を目立つ所に固めて、狩りやすくしていると思ったんだけどな……予想が外れちゃった。
とはいえ、見渡すだけじゃ駄目よね。
ちゃんと湖の周りを見て歩かないと。
「さっ、シオン達が来る前に見て回りましょ」
※
湖をざっくりと1周してみたけど、気になるところは特に無かった。
逆にそれが不気味に感じるわね。
ローニの姿はもちろん、スライムの姿も全く……。
「……あれ? ちょっと待てよ」
それっておかしいわ、依頼はこの湖に出るスライムの討伐。
なのに、スライムが1匹も見当たらないなんてありえない。
となると、これは確実にローニの仕業何だろうけど……あっまさか、ローニがスライム達を一掃しちゃったんじゃ!?
だとすれば、あの馬鹿亭主はとんでもない事をしてくれたわ。
シオンの性格上、スライムが居なかった事を自分の手柄にするわけがない。
正直に話して依頼の報酬を諦めるに決まっているわ。
「もう! シオンの性格は分かっているでしょうに!」
いやいや、ここで怒ってもしょうがないわよね。
それよりも今は現状をどうにかしないと。
う~ん……スライムが居ないとなると、どこからかスライムを持ってくるしかないわよね。
けど、一体何処から? というか、そんな事をやっている時間って……。
《――》
「……そうよね、無いわよね」
いま複数の人の声が、森の外から聞こえた。
このタイミングで湖に来る人なんてシオン達しかありえない。
はぁ~もう湖に来ちゃったのか……こうなっちゃうと、もうどうしようもないわね。
仕方ない、隠れてシオン達の様子を見ていましょうか。
「――この奥に、スライムの出る湖があるみたいですね」
来た来た。
「なるほど……あ、あの湖にスライムが出没するのですね」
本当ならそうなんだけどね。
今は全く見当たりません。
「さて、この鼻栓を使う時か……息苦しくなるから嫌なんだけどな……ん? クンクン……確かに臭うけど、これは鼻栓を付けるほどかな?」
お、ちゃんと鼻栓は買ったんだ。
「クンクン……うん、確かに。これくらいなら、別に鼻に詰めなくても何にも問題はないなぁ」
「……え? えと……そっそうですわね!」
シオンが、付けようとしていた鼻栓をしまった。
「こっこんな物はいりませんわよね! アハハハハ!」
あの子は鼻が利くからな~。
本当はこの状態でも辛いんでしょうね……明らかに笑顔が引きつっているし。
でも、他の人は付けないのに自分だけ付けるって状況を嫌ったのね。
全く……それくらい気にする事でもないでしょうに。
「そやな。それにしても、せっかく買ったのに意味がないなんて、勿体ない事をしてもたな~」
いやいや、まだ浄化しきれていない部分や周辺の残り香の察するにちゃんと意味があったと思うわよ。
浄化の輝石に感謝しないとね……こんな使い方をして水の女神様に怒られそうだけど。
「もしかして、あたし達はからかわれたのかな?」
「だとすれば酷いですわ! わたくしたちは真剣ですのに!」
「そや! 今度会ったら、文句を言ってやる!」
見知らずの冒険者さん……ごめんなさい。
貴女の親切が、私の夫のせいで完全におかしな方にいっちゃいました。
「……私達がここに来るまでは、あの方のアドバイスはあっていたと思うな……」
アスター正解です。
とは言っても、そんなのは事情を知っているアスターだからこそ言える事よね。
「アスターさん、今何か言いましたか?」
「あ、いえ何も! それよりスライムを探しましょう!」
探しても無駄なのよね。
う~ん……何かいい解決方法は無いかしら。
「お、さっそく発見!」
えっ?
「さあ狩りの開始やね!」
えっ? えっ?
「わたくしもお2人に負けていられませんわ! とお!」
ええっ!? 嘘でしょ!?
確かにスライムなんて1匹もいなかったわよ!?
「おおお落ち着け! 落ち着くのよ、私! ちゃんとこの目で確かめて……」
シオン達が戦っているあの透明なゼリー状の塊……間違いないスライムだ。
一体何処から湧いて出たのよ。
もしかして、どこかに隠れていた?
「だとすれば、一体何処に……あっ」
あの木の陰からスライムが出て来ているわね。
おかしいな、あの辺りは見たんだけど……こっそりと近づいてみよう。
……。
何もない空間からスライムが飛び出してきている。
スライムは空間転移の魔法なんて使えない。というか、高度すぎて私でも使えない。
ほぼ知能を持たず、魔力の少ないスライムが使っているとなるとショックすぎて寝込むわ。
まぁそれは置いといて……どうやら私の予想は当たっていたようね。
やっぱりローニは、スライム達を1カ所に固めてはいたんだ。
ただその集めた場所は、自分自身の透明化マントの中。
考えたわね、確かにそれなら私に邪魔されない。
「ほいっと! ……それにしても、このスライムってなんか動きが鈍いよね? まぁおかげで倒しやすいんだけどさっ!」
「そうですね、まるで瀕死の様な……瀕死? あーそいう事か……やれやれ」
そして、倒しやすい様にある程度スライム達を弱らしてあると。
スライム達を回復させることは出来ないし、この時点でローニの妨害をするには見つかるリスクがある。
く~何もできないだなんて、悔しいな……ん? 一部のスライムがシオン達の方には行かず木の上へと登っているわ。
で、その登ったそのスライム達は1本の枝に集まってスライムの塊が出来ているわ。
「ん~?」
あの行動は何かしら……あ、その塊が水滴の様に落ちた。
「――モガッ!?」
「――っ!?」
落ちて来たスライム達が空中に浮いた!?
いや、あれは――。
「ガボガボガボ!!」
スライムに頭を包まれて、息が出来ず藻掻くローニが現れた!
そういえば、スライムの攻撃手段として上から奇襲するんだっけ……。
ローニの姿は見えなくても、マントの中にいる同胞の気配めがけて落ちて来たんだろう。
いや~たかがスライムと侮っちゃ駄目ね。
「ガボガボガボ!!」
勇者と言えども油断していると、スライム相手でも脅威となる。
改めて勉強になったわ……。
他にローニがやっている事は無いかしら?
「ん~……」
辺りを見渡しても、これといって気になるところが無いわね。
あれ~? 私はてっきりスライム達を目立つ所に固めて、狩りやすくしていると思ったんだけどな……予想が外れちゃった。
とはいえ、見渡すだけじゃ駄目よね。
ちゃんと湖の周りを見て歩かないと。
「さっ、シオン達が来る前に見て回りましょ」
※
湖をざっくりと1周してみたけど、気になるところは特に無かった。
逆にそれが不気味に感じるわね。
ローニの姿はもちろん、スライムの姿も全く……。
「……あれ? ちょっと待てよ」
それっておかしいわ、依頼はこの湖に出るスライムの討伐。
なのに、スライムが1匹も見当たらないなんてありえない。
となると、これは確実にローニの仕業何だろうけど……あっまさか、ローニがスライム達を一掃しちゃったんじゃ!?
だとすれば、あの馬鹿亭主はとんでもない事をしてくれたわ。
シオンの性格上、スライムが居なかった事を自分の手柄にするわけがない。
正直に話して依頼の報酬を諦めるに決まっているわ。
「もう! シオンの性格は分かっているでしょうに!」
いやいや、ここで怒ってもしょうがないわよね。
それよりも今は現状をどうにかしないと。
う~ん……スライムが居ないとなると、どこからかスライムを持ってくるしかないわよね。
けど、一体何処から? というか、そんな事をやっている時間って……。
《――》
「……そうよね、無いわよね」
いま複数の人の声が、森の外から聞こえた。
このタイミングで湖に来る人なんてシオン達しかありえない。
はぁ~もう湖に来ちゃったのか……こうなっちゃうと、もうどうしようもないわね。
仕方ない、隠れてシオン達の様子を見ていましょうか。
「――この奥に、スライムの出る湖があるみたいですね」
来た来た。
「なるほど……あ、あの湖にスライムが出没するのですね」
本当ならそうなんだけどね。
今は全く見当たりません。
「さて、この鼻栓を使う時か……息苦しくなるから嫌なんだけどな……ん? クンクン……確かに臭うけど、これは鼻栓を付けるほどかな?」
お、ちゃんと鼻栓は買ったんだ。
「クンクン……うん、確かに。これくらいなら、別に鼻に詰めなくても何にも問題はないなぁ」
「……え? えと……そっそうですわね!」
シオンが、付けようとしていた鼻栓をしまった。
「こっこんな物はいりませんわよね! アハハハハ!」
あの子は鼻が利くからな~。
本当はこの状態でも辛いんでしょうね……明らかに笑顔が引きつっているし。
でも、他の人は付けないのに自分だけ付けるって状況を嫌ったのね。
全く……それくらい気にする事でもないでしょうに。
「そやな。それにしても、せっかく買ったのに意味がないなんて、勿体ない事をしてもたな~」
いやいや、まだ浄化しきれていない部分や周辺の残り香の察するにちゃんと意味があったと思うわよ。
浄化の輝石に感謝しないとね……こんな使い方をして水の女神様に怒られそうだけど。
「もしかして、あたし達はからかわれたのかな?」
「だとすれば酷いですわ! わたくしたちは真剣ですのに!」
「そや! 今度会ったら、文句を言ってやる!」
見知らずの冒険者さん……ごめんなさい。
貴女の親切が、私の夫のせいで完全におかしな方にいっちゃいました。
「……私達がここに来るまでは、あの方のアドバイスはあっていたと思うな……」
アスター正解です。
とは言っても、そんなのは事情を知っているアスターだからこそ言える事よね。
「アスターさん、今何か言いましたか?」
「あ、いえ何も! それよりスライムを探しましょう!」
探しても無駄なのよね。
う~ん……何かいい解決方法は無いかしら。
「お、さっそく発見!」
えっ?
「さあ狩りの開始やね!」
えっ? えっ?
「わたくしもお2人に負けていられませんわ! とお!」
ええっ!? 嘘でしょ!?
確かにスライムなんて1匹もいなかったわよ!?
「おおお落ち着け! 落ち着くのよ、私! ちゃんとこの目で確かめて……」
シオン達が戦っているあの透明なゼリー状の塊……間違いないスライムだ。
一体何処から湧いて出たのよ。
もしかして、どこかに隠れていた?
「だとすれば、一体何処に……あっ」
あの木の陰からスライムが出て来ているわね。
おかしいな、あの辺りは見たんだけど……こっそりと近づいてみよう。
……。
何もない空間からスライムが飛び出してきている。
スライムは空間転移の魔法なんて使えない。というか、高度すぎて私でも使えない。
ほぼ知能を持たず、魔力の少ないスライムが使っているとなるとショックすぎて寝込むわ。
まぁそれは置いといて……どうやら私の予想は当たっていたようね。
やっぱりローニは、スライム達を1カ所に固めてはいたんだ。
ただその集めた場所は、自分自身の透明化マントの中。
考えたわね、確かにそれなら私に邪魔されない。
「ほいっと! ……それにしても、このスライムってなんか動きが鈍いよね? まぁおかげで倒しやすいんだけどさっ!」
「そうですね、まるで瀕死の様な……瀕死? あーそいう事か……やれやれ」
そして、倒しやすい様にある程度スライム達を弱らしてあると。
スライム達を回復させることは出来ないし、この時点でローニの妨害をするには見つかるリスクがある。
く~何もできないだなんて、悔しいな……ん? 一部のスライムがシオン達の方には行かず木の上へと登っているわ。
で、その登ったそのスライム達は1本の枝に集まってスライムの塊が出来ているわ。
「ん~?」
あの行動は何かしら……あ、その塊が水滴の様に落ちた。
「――モガッ!?」
「――っ!?」
落ちて来たスライム達が空中に浮いた!?
いや、あれは――。
「ガボガボガボ!!」
スライムに頭を包まれて、息が出来ず藻掻くローニが現れた!
そういえば、スライムの攻撃手段として上から奇襲するんだっけ……。
ローニの姿は見えなくても、マントの中にいる同胞の気配めがけて落ちて来たんだろう。
いや~たかがスライムと侮っちゃ駄目ね。
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