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2章 強敵、スライムを討伐せよ
その3
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シオンが膝をついちゃった。
そんなにエヤマを食べたかったのか……。
まぁお腹が減っている状態で、好きな食べ物が目の前にあったのに取り上げられたらそりゃあショックよね。
「あ~……え~と……シッシオンちゃん、元気出しぃ! そうや、チトと半分こしような! これ、おっきいから全部は食べきられへんし!」
そのシオンの姿に、チトちゃんが自分の分を分けてくれている。
「……うう……チトちゃあああああああん!! ありがとうございますううううう!!」
「へっ? ――ハブアッ!!」
シオンが喜びのあまりチトちゃんに抱き付いたけど、装備している胸当てのでチトちゃんの顔面を思いっきり強打しちゃった。
チトちゃんの顔が、丁度シオンの胸くらいの位置だったもんね……あれは痛そうだわ。
「嬉しいですわ! ……って、あれ? チトちゃん? どうしましたの!?」
「むきゅ~……」
あれ? チトちゃんが白目を向いちゃっている。
確かに痛そうではあったけど、そこまで……もしかして、今のでシオンのリミッターが外れちゃった!?
「チトちゃん! 返事をしてください!」
「チトさん!?」
だとしたら大変だわ! 首の骨は大丈夫かしら!?
早く教会に連れて行って治療魔法を!
「あうあうあうあ~……はわ? ……あいたたた……」
あ、チトちゃんが首を擦りながら目を覚ました。
首は擦っているけど折れている様子もない、他に外傷もなさそうね……あ~良かったわ~。
「いや~……今の衝撃はすごかったわ……一瞬お星さまが見えて意識が飛んでしもた……もう~シオンちゃんってば、ちょっと力の加減をしてほしいわ……やないと意識やのうてチトの頭が吹っ飛んでまうわ」
一瞬だけ意識が飛んだだけって言うのもすごいわね。
流石ロイドの娘、頑丈だわ。
「えっ? いや、わたくしそんなに力なんて入れていないのですが……」
シオンが困惑している。
それもそうだ、普通ならあれしきの事で意識が飛ぶわけがないものね。
でもね、貴女はローニと私の娘……当然と言うべきか、一般人より遥かに身体能力も魔力も高い。
危険な力だから本来は特訓をして力の制御をするのだけれど、そんな特訓は危険だ! とローニが間に入ってきては、甘々になったり、中止になったりとまともに出来なかった。
当初は私もそれでかなり不安だったけれど、幼いながらシオンの体が本能的にまずいだと感じたのか、シオンの意思とは関係なしにリミッターがついて一定以上の力が出せなくなってしまった。
「なんにせよ申し訳ありませんわ……」
「まぁこうして頭は付いとるし気にせんとって。……ただ、今後からは気い付けてね」
「はいですわ……」
ただ、ごくたま~に感情的になるとそのリミッターが外れる時があるのよね。
今の突進はまさにそれ、チトちゃん的に鈍器で殴られたような衝撃があったと思うわ。
「チトさん、本当に大丈夫なのですね?」
「はいい! しょっと……ほら、この通り!」
チトちゃんが立ち上がって、屈伸をしたり両手を回したりをして元気アピールをしている。
「――おっとと……」
あ~足元がふらついちゃっている。
まだダメージが残っているみたいね。
「おっと! チトちゃん、無理をしてはいけませんわ」
「大丈夫やって、ちょっと足元がもつれただけ。さっ朝ごはんを食べてギルドに行こか」
いやいや、その状態を見て行こかと言われても誰も行けないって。
「駄目です! シオン様、今教会に行ってチトさんを診てもらいましょう」
うん、その方がいい。
「そうですわね」
「えっ!? いや、そんなんせんでええやで! 時間が勿体ないし!」
「何を言っていますの、時間なんて関係ありませんわ! さ、行きますわよ!」
「ちょっと!シオンちゃん!」
「はい、暴れないで下さい!」
「はうっ! アスターさんがチトの体に触り……やのうて、いやほんまに大丈夫で――」
「……2人がチトちゃんを引きずって行っちゃったわ」
あの調子なら私がついて行かなくてもよさそうね。
ふむ……それじゃあ私は服屋に寄ってからギルドに向かおうっと。
ローニとシオンのやり取りを見ていていい事を思いついちゃった~。
それが、ローニびおかげだと思うとちょっと癪だけど……。
※
「よしよし、理想のマントを買えたわ~」
これマントを羽織って、フードを深々と被って顔を隠せば完璧。
ふっふふ……これでもう、余計な事をしない限りはシオンの近くに居てもバレる事は無いわ。
後は冒険者のふりをして掲示板の前に居れば、受付カウンターの裏に隠れなくてもシオン達の依頼を知る事が出来るわね。
「さて、ギルドに向かいますか」
まぁでも、ローニが警備兵の前に連れて行かれたから、今日は見守るだけで良さそうだけどね。
「だーかーらー! この目で見たんだって!」
「いや……そう言われてもな……」
あら? 何やら男2人が言い争いをしている。
一体どうしたんだろう、止めたに入った方がいいかしら?
「屋台の親父が、そんな事出来るわけがないだろ……」
…………んん? 屋台の親父ですって?
何だろう、何かすごく嫌な予感がするのだけど……。
「屈強な警備兵3人を一瞬で気絶させて? その後に親父の姿が突然消えた? ……いやいや、そんな事を信じろって言う方が無理あるぞ」
「本当なんだってば! 信じてくれよ!」
「……」
私は信じますよ、それ。
つまりローニが警備兵を倒して、透明化マントで逃げたわけですね。
はぁ……だとしたら、今日は見守るだけでは済まなくなっちゃったわ。
そんなにエヤマを食べたかったのか……。
まぁお腹が減っている状態で、好きな食べ物が目の前にあったのに取り上げられたらそりゃあショックよね。
「あ~……え~と……シッシオンちゃん、元気出しぃ! そうや、チトと半分こしような! これ、おっきいから全部は食べきられへんし!」
そのシオンの姿に、チトちゃんが自分の分を分けてくれている。
「……うう……チトちゃあああああああん!! ありがとうございますううううう!!」
「へっ? ――ハブアッ!!」
シオンが喜びのあまりチトちゃんに抱き付いたけど、装備している胸当てのでチトちゃんの顔面を思いっきり強打しちゃった。
チトちゃんの顔が、丁度シオンの胸くらいの位置だったもんね……あれは痛そうだわ。
「嬉しいですわ! ……って、あれ? チトちゃん? どうしましたの!?」
「むきゅ~……」
あれ? チトちゃんが白目を向いちゃっている。
確かに痛そうではあったけど、そこまで……もしかして、今のでシオンのリミッターが外れちゃった!?
「チトちゃん! 返事をしてください!」
「チトさん!?」
だとしたら大変だわ! 首の骨は大丈夫かしら!?
早く教会に連れて行って治療魔法を!
「あうあうあうあ~……はわ? ……あいたたた……」
あ、チトちゃんが首を擦りながら目を覚ました。
首は擦っているけど折れている様子もない、他に外傷もなさそうね……あ~良かったわ~。
「いや~……今の衝撃はすごかったわ……一瞬お星さまが見えて意識が飛んでしもた……もう~シオンちゃんってば、ちょっと力の加減をしてほしいわ……やないと意識やのうてチトの頭が吹っ飛んでまうわ」
一瞬だけ意識が飛んだだけって言うのもすごいわね。
流石ロイドの娘、頑丈だわ。
「えっ? いや、わたくしそんなに力なんて入れていないのですが……」
シオンが困惑している。
それもそうだ、普通ならあれしきの事で意識が飛ぶわけがないものね。
でもね、貴女はローニと私の娘……当然と言うべきか、一般人より遥かに身体能力も魔力も高い。
危険な力だから本来は特訓をして力の制御をするのだけれど、そんな特訓は危険だ! とローニが間に入ってきては、甘々になったり、中止になったりとまともに出来なかった。
当初は私もそれでかなり不安だったけれど、幼いながらシオンの体が本能的にまずいだと感じたのか、シオンの意思とは関係なしにリミッターがついて一定以上の力が出せなくなってしまった。
「なんにせよ申し訳ありませんわ……」
「まぁこうして頭は付いとるし気にせんとって。……ただ、今後からは気い付けてね」
「はいですわ……」
ただ、ごくたま~に感情的になるとそのリミッターが外れる時があるのよね。
今の突進はまさにそれ、チトちゃん的に鈍器で殴られたような衝撃があったと思うわ。
「チトさん、本当に大丈夫なのですね?」
「はいい! しょっと……ほら、この通り!」
チトちゃんが立ち上がって、屈伸をしたり両手を回したりをして元気アピールをしている。
「――おっとと……」
あ~足元がふらついちゃっている。
まだダメージが残っているみたいね。
「おっと! チトちゃん、無理をしてはいけませんわ」
「大丈夫やって、ちょっと足元がもつれただけ。さっ朝ごはんを食べてギルドに行こか」
いやいや、その状態を見て行こかと言われても誰も行けないって。
「駄目です! シオン様、今教会に行ってチトさんを診てもらいましょう」
うん、その方がいい。
「そうですわね」
「えっ!? いや、そんなんせんでええやで! 時間が勿体ないし!」
「何を言っていますの、時間なんて関係ありませんわ! さ、行きますわよ!」
「ちょっと!シオンちゃん!」
「はい、暴れないで下さい!」
「はうっ! アスターさんがチトの体に触り……やのうて、いやほんまに大丈夫で――」
「……2人がチトちゃんを引きずって行っちゃったわ」
あの調子なら私がついて行かなくてもよさそうね。
ふむ……それじゃあ私は服屋に寄ってからギルドに向かおうっと。
ローニとシオンのやり取りを見ていていい事を思いついちゃった~。
それが、ローニびおかげだと思うとちょっと癪だけど……。
※
「よしよし、理想のマントを買えたわ~」
これマントを羽織って、フードを深々と被って顔を隠せば完璧。
ふっふふ……これでもう、余計な事をしない限りはシオンの近くに居てもバレる事は無いわ。
後は冒険者のふりをして掲示板の前に居れば、受付カウンターの裏に隠れなくてもシオン達の依頼を知る事が出来るわね。
「さて、ギルドに向かいますか」
まぁでも、ローニが警備兵の前に連れて行かれたから、今日は見守るだけで良さそうだけどね。
「だーかーらー! この目で見たんだって!」
「いや……そう言われてもな……」
あら? 何やら男2人が言い争いをしている。
一体どうしたんだろう、止めたに入った方がいいかしら?
「屋台の親父が、そんな事出来るわけがないだろ……」
…………んん? 屋台の親父ですって?
何だろう、何かすごく嫌な予感がするのだけど……。
「屈強な警備兵3人を一瞬で気絶させて? その後に親父の姿が突然消えた? ……いやいや、そんな事を信じろって言う方が無理あるぞ」
「本当なんだってば! 信じてくれよ!」
「……」
私は信じますよ、それ。
つまりローニが警備兵を倒して、透明化マントで逃げたわけですね。
はぁ……だとしたら、今日は見守るだけでは済まなくなっちゃったわ。
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