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2章 強敵、スライムを討伐せよ
その2
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とりあえず、アスターには後でこの件の事をきちいいんっと説明しておかないといけないわ。
でないと、シオンならず私の名誉も危ういもの。
――クゥ~
「はうっ!」
シオンがまた顔を赤くして、お腹を押さえた。
どうやらお腹の虫が鳴いちゃったみたいね。
「あ~……稼ぐのも大事やけど、腹が減ってはなんとやら。朝ごはんを食べに行こか」
「そうですね」
「うう……はいですわ……」
シオンってば、耳も真っ赤っ赤にしちゃっている。
寝巻登場はともかく、お腹の音は仕方のない事だと思うんだけどな……。
「どこに食べに行きます?」
「そうやね~この辺りだと……」
おっと、いけない。3人がこっちに来たわ。
早く外に出なくちゃ。
「さて、3人が朝ごはんを食べに行くとなると私はギルドに……ん? ――クンクン……この匂いは……あっ」
宿の前に魚の串焼きを売っている屋台がある。
その焼かれている魚はエヤマと言う種類、そこまで珍しくないけどこの辺りで採れるのは私たちが住んでいる山にある川の上流のみ。
で、その屋台でエヤマを焼いているのは昨日ヨギ草を売っていたフードを深々とかぶった人物……こんなの考えなくても一目見ただけでわかるわよ! ねぇローニ!
「でも、なんでまた屋台でエヤマを? ……あ~そうか、シオンの好きな食べ物だからか」
え? だとすると、わざわざシオンに食べさせる為に山に戻って採って来たわけ!?
しかも、屋台やら焼く道具やらと色々と揃えてもいるし……一体いくらお金を使い込んだのか、聞くのが恐ろしいわ。
「あっ!」
はうっ!? 後ろからシオンの声が!
しまった! この光景に足が止まってしまっていた。
やっちゃった……私がいる事がバレ――。
「エヤマの串焼きですわ!」
……シオンが私の横を素通りして、屋台に一直線に走って行った。
母親よりも食べ物に目が行きますか、そうですか。
「――っ」
……いや、ショックを受けている場合じゃないわ。
ここはバレなくて良かったと、前向きに考えましょう。
だから、今のうちに建物の陰に隠れるのよアリシア!
「ええ匂いがするね~おいしそうやわ」
「……え? どうして、こんな所にこんな屋台があるんだ?」
シオンに続いて2人も屋台に近づいて行った。
アスターだけは不審に思っている様ね。
「ん? あのフードの人物は昨日の……あっ! そうか、そういう事かー」
アシターがローニの姿を見て、即理解したみたいね。
それにしてもあの目、『ここまでやるか?』って心底思ってそうな感じだ。
甘いわよ、なんたってその人は愛娘の枕を持ってくるほどなんだから……。
「いらっしゃいませー」
昨日と違う人物だと思わせたいのか、ローニが声をかなり低く出している。
一応考えてはいるのね……かなり底が浅い考えだけど。
「お2人とも、朝ごはんはこのエヤマを買いませんか?」
シオンの目がめちゃくちゃ輝いている。
そういえば、この最近バタバタしていてエヤマを採りに行けなかったものね。
「あ、うん、チトはかまへんよ」
「まぁ別に買うのは問題無いよな……ええ、私も構いません」
「じゃあ決まりですわね! やった~!!」
シオンが飛び上がって喜んでいる。
お願いだから、魚程度でそこまで喜ばないでほしい。
見ていて恥ずかしいわ。
「おじさん、エヤマを3匹頂きますわ!」
「おっおおおじさん!?」
あ、ローニがシオンにおじさんと言われてショックを受けたみたい。
いやいや……シオンからしたら貴方はおじさんなんだから仕方がないでしょう。
にしても、こうしてローニの姿を見ていると、とても勇者がやる事じゃないわね~。
「? えと……どうかされましたか?」
シオンが戸惑っている。
そりゃそうだ、おじさん相手におじさんと言っただけなのにあの反応だもの。
「いっいや、何もないですよ! アッハハハハ!」
どう見ても、カラ元気。
しっかりしてよね、おじさん。
シオンにバレちゃうでしょ。
「……」
というか、シオンもシオンよ。
昨日よりもローニに接近しているのに、これまた気付く気配が全く無い……。
あの子、あんなに鈍感な子だったかしら?
「ハハハハ……はぁ……はい、どうぞ」
ローニがエヤマの串焼きをシオンに渡したけど、なんで2匹なのかしら?
注文したのは3匹なのに。
「ありがとうございますわ……あれ? 1匹足りないのですが……」
「ちょっと待ってて下さい」
「はあ……わかりましたわ」
待っててって、今焼いているのを出せばいいだけじゃない。
あれ、待てよ……ローニ……シオン……魚……あっもしかして!
「ちょっと!? 何をしていますの!」
「骨と身を分けているんです」
ああ! やっぱり!
ローニったら、エヤマの骨と身を分けてる!
馬鹿! そのせいでシオンを怒らせるきっかけになったのに、何で同じ事を繰り返すのよ!
「見ればわかりますわ! そんな事はしなくてもいいです!」
「これはサービスですので気にしないで下さい」
どんなサービスよ!
串焼きを売っている屋台が、わざわざ身をほぐすなんて聞いた事が無いわよ!
「ああ、もう! 何だかお父様と会話をしている様ですわああああああ!」
げっ! これはまずい!!
早く何とかしないと、様なじゃなく本人だって事がバレちゃう!
「――おい! そこの屋台!!」
あら、男女数人がローニの屋台の前に出て来た。
その中にはボッタ屋の主人まで居るじゃない。
「ん? 私に何か?」
「私に何か? じゃねぇ! この辺りで屋台を出すのは禁止だと取り決めがあるんだ! 誰の許可で出している!」
「えっ!?」
あら、そうだったんだ。
ローニったらまた恥を……。
「わかったのなら、さっさと店を閉めてここから出て行け!」
でも、やったわ。
自滅してくれたおかげで、私が手を出さずに済んだ。
「わかったわかった。この骨と身を分けたら出ていくから」
ちょっと! もう~ローニったら~!
……ああ、頭が痛くなってきたわ……。
「はあ!? ふざけるな! こうなったら、こいつをとっ捕まえて警備兵に突き出してやろうぜ!」
《おう!》
「――え? おい! 離せ!! これじゃあ作業が出来ないじゃないか!」
ローニが男達に羽交い絞めにされた。
「おい! 話を聞け! おーーーい!」
で、そのまま屋台と共に連れて行かれちゃったわ。
まぁ別に助けなくてもいいわよね、自業自得なんだし。
「…………わたくしはまだエヤマの串焼きを受け取っていなかったのですが、どうなりますの?」
シオンが受け取る前に、ローニも屋台も連れて行かれちゃった。
つまり……。
「どうなりますのおおおおおおおおおおおお!?」
……食べられないと。
シオンは何も悪い事をしていないのに、とんだとばっちりよね。
でないと、シオンならず私の名誉も危ういもの。
――クゥ~
「はうっ!」
シオンがまた顔を赤くして、お腹を押さえた。
どうやらお腹の虫が鳴いちゃったみたいね。
「あ~……稼ぐのも大事やけど、腹が減ってはなんとやら。朝ごはんを食べに行こか」
「そうですね」
「うう……はいですわ……」
シオンってば、耳も真っ赤っ赤にしちゃっている。
寝巻登場はともかく、お腹の音は仕方のない事だと思うんだけどな……。
「どこに食べに行きます?」
「そうやね~この辺りだと……」
おっと、いけない。3人がこっちに来たわ。
早く外に出なくちゃ。
「さて、3人が朝ごはんを食べに行くとなると私はギルドに……ん? ――クンクン……この匂いは……あっ」
宿の前に魚の串焼きを売っている屋台がある。
その焼かれている魚はエヤマと言う種類、そこまで珍しくないけどこの辺りで採れるのは私たちが住んでいる山にある川の上流のみ。
で、その屋台でエヤマを焼いているのは昨日ヨギ草を売っていたフードを深々とかぶった人物……こんなの考えなくても一目見ただけでわかるわよ! ねぇローニ!
「でも、なんでまた屋台でエヤマを? ……あ~そうか、シオンの好きな食べ物だからか」
え? だとすると、わざわざシオンに食べさせる為に山に戻って採って来たわけ!?
しかも、屋台やら焼く道具やらと色々と揃えてもいるし……一体いくらお金を使い込んだのか、聞くのが恐ろしいわ。
「あっ!」
はうっ!? 後ろからシオンの声が!
しまった! この光景に足が止まってしまっていた。
やっちゃった……私がいる事がバレ――。
「エヤマの串焼きですわ!」
……シオンが私の横を素通りして、屋台に一直線に走って行った。
母親よりも食べ物に目が行きますか、そうですか。
「――っ」
……いや、ショックを受けている場合じゃないわ。
ここはバレなくて良かったと、前向きに考えましょう。
だから、今のうちに建物の陰に隠れるのよアリシア!
「ええ匂いがするね~おいしそうやわ」
「……え? どうして、こんな所にこんな屋台があるんだ?」
シオンに続いて2人も屋台に近づいて行った。
アスターだけは不審に思っている様ね。
「ん? あのフードの人物は昨日の……あっ! そうか、そういう事かー」
アシターがローニの姿を見て、即理解したみたいね。
それにしてもあの目、『ここまでやるか?』って心底思ってそうな感じだ。
甘いわよ、なんたってその人は愛娘の枕を持ってくるほどなんだから……。
「いらっしゃいませー」
昨日と違う人物だと思わせたいのか、ローニが声をかなり低く出している。
一応考えてはいるのね……かなり底が浅い考えだけど。
「お2人とも、朝ごはんはこのエヤマを買いませんか?」
シオンの目がめちゃくちゃ輝いている。
そういえば、この最近バタバタしていてエヤマを採りに行けなかったものね。
「あ、うん、チトはかまへんよ」
「まぁ別に買うのは問題無いよな……ええ、私も構いません」
「じゃあ決まりですわね! やった~!!」
シオンが飛び上がって喜んでいる。
お願いだから、魚程度でそこまで喜ばないでほしい。
見ていて恥ずかしいわ。
「おじさん、エヤマを3匹頂きますわ!」
「おっおおおじさん!?」
あ、ローニがシオンにおじさんと言われてショックを受けたみたい。
いやいや……シオンからしたら貴方はおじさんなんだから仕方がないでしょう。
にしても、こうしてローニの姿を見ていると、とても勇者がやる事じゃないわね~。
「? えと……どうかされましたか?」
シオンが戸惑っている。
そりゃそうだ、おじさん相手におじさんと言っただけなのにあの反応だもの。
「いっいや、何もないですよ! アッハハハハ!」
どう見ても、カラ元気。
しっかりしてよね、おじさん。
シオンにバレちゃうでしょ。
「……」
というか、シオンもシオンよ。
昨日よりもローニに接近しているのに、これまた気付く気配が全く無い……。
あの子、あんなに鈍感な子だったかしら?
「ハハハハ……はぁ……はい、どうぞ」
ローニがエヤマの串焼きをシオンに渡したけど、なんで2匹なのかしら?
注文したのは3匹なのに。
「ありがとうございますわ……あれ? 1匹足りないのですが……」
「ちょっと待ってて下さい」
「はあ……わかりましたわ」
待っててって、今焼いているのを出せばいいだけじゃない。
あれ、待てよ……ローニ……シオン……魚……あっもしかして!
「ちょっと!? 何をしていますの!」
「骨と身を分けているんです」
ああ! やっぱり!
ローニったら、エヤマの骨と身を分けてる!
馬鹿! そのせいでシオンを怒らせるきっかけになったのに、何で同じ事を繰り返すのよ!
「見ればわかりますわ! そんな事はしなくてもいいです!」
「これはサービスですので気にしないで下さい」
どんなサービスよ!
串焼きを売っている屋台が、わざわざ身をほぐすなんて聞いた事が無いわよ!
「ああ、もう! 何だかお父様と会話をしている様ですわああああああ!」
げっ! これはまずい!!
早く何とかしないと、様なじゃなく本人だって事がバレちゃう!
「――おい! そこの屋台!!」
あら、男女数人がローニの屋台の前に出て来た。
その中にはボッタ屋の主人まで居るじゃない。
「ん? 私に何か?」
「私に何か? じゃねぇ! この辺りで屋台を出すのは禁止だと取り決めがあるんだ! 誰の許可で出している!」
「えっ!?」
あら、そうだったんだ。
ローニったらまた恥を……。
「わかったのなら、さっさと店を閉めてここから出て行け!」
でも、やったわ。
自滅してくれたおかげで、私が手を出さずに済んだ。
「わかったわかった。この骨と身を分けたら出ていくから」
ちょっと! もう~ローニったら~!
……ああ、頭が痛くなってきたわ……。
「はあ!? ふざけるな! こうなったら、こいつをとっ捕まえて警備兵に突き出してやろうぜ!」
《おう!》
「――え? おい! 離せ!! これじゃあ作業が出来ないじゃないか!」
ローニが男達に羽交い絞めにされた。
「おい! 話を聞け! おーーーい!」
で、そのまま屋台と共に連れて行かれちゃったわ。
まぁ別に助けなくてもいいわよね、自業自得なんだし。
「…………わたくしはまだエヤマの串焼きを受け取っていなかったのですが、どうなりますの?」
シオンが受け取る前に、ローニも屋台も連れて行かれちゃった。
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