6 / 28
1章 初依頼、薬草を採取せよ
その4
しおりを挟む
ああ~もっと麓に降りて、シオンを遊ばせるべきだったわ。
今更ながら反省……。
「えーと、お二人は知り合いですか?」
アスターはチトちゃんの事を知らないから、疑問に思うわよね。
「ええ、昔一緒に遊んだ仲ですわ!」
その遊んだのは1ヶ月間だけどね。
う~ん、今まで一言それを言ってくれればロイドの所に遊びに行ったりしてたんだけど。
いや……当時の幼いシオンを、あのローニが長旅をさせる事はしないか。
多分、シオンもそれを分かっていたから言わなかったのかもしれないわね。
気付けなかった私の馬鹿馬鹿!
「そうやねん。チトのお父ちゃんがシオンちゃんの家に呼ばれて、そこで……って! イ、イケメンがいつの間にか目の前におるし!!」
チトちゃんがアスターを見て、すごい驚いている。
いつの間にかって……いやいや、ずっとシオンの横に居たわよ。
今更アスターの存在に気が付くなんて、どれだけ周りを見てなかったのかしら?
「えーと……何やら驚かれているようですが、私の顔に何かついています?」
何かが付いていて驚かれるなんて、よっぽどの物が付いている事になるわよ!
アスターは頼りになるけど、こういうちょっとしたズレがあるのよね。
「いっいえ! 気にせんとって下さい! 持病のシャクが出ただけです!」
目にハートの形が浮かぶ持病なんて、初めて聞いたわ。
しかも顔がにやけちゃっているし。
……チトちゃんって面食いな所があるのかも、ロイドも美人に対して鼻の下を伸ばしていたし。
「あははは……なっなあ! シオンちゃん!
「なんですの?」
「このイケメンの男の人はシオンちゃんの恋人なんか!?」
あ~チトちゃんは事情を知らないからね。
男女2人でいれば、そう思われてもおかしくはないわ。
「……へ? ここっ恋人おおおお!?」
あら~シオンったら恋人って言われただけで顔を真っ赤にしているわ。
あの子もウブねぇ……ってっ! これはまずい!
恋人なんて単語、ローニが聞いたら絶対に飛び出しちゃうわ!!
「――っ!」
一か八か、ローニが飛び出てきた瞬間に私の風魔法で吹き飛ばして――。
「…………?」
あれ? 空の彼方までぶっ飛ばしてやろうと身構えたけど、ローニが全く飛び出てくる気配が無いわ。
「……もしかして、この場にはもういないのかしら?」
だとすると消えた時に逃げ出して、目的地の西の森に向かったのかもしれないわ。
う~ん……もしそうだとしたら今すぐ追いかけて止めたいところだけど、3人がギルドの目の前で話し込んでいるからここから出るに出られない……隠れる場所を間違えた。
「ここここ恋人だなんて! ちっちちち違いますわ!」
シオンがますます顔を真っ赤にしつつ、ブンブンと頭を左右に振っている。
あれはテレなのか、顔を振っているせいなのか……両方かな?
「えと……このお方は、色々事情がありまして仕方なくわたくしの護衛をしてくれているお人ですの……けっ決して……そのような、こっここ恋人の……関係性ではありませんわ」
今度はうつむいてモジモジと。
たかが恋人と言われただけなのに、この有り様になるとは。
「そうなんや、ちゃうのか~(……っちゅう事は、チトもチャンスがあるって事か……ウヒッ)」
何だろう、チトちゃんのあの笑顔。
「? 何か言いましたか?」
「いや、何も言ってへんよ~」
私には、獲物を見つけた時の魔物のみたいに見えるんだけど……。
私の気のせいかしら?
「申し遅れました、私はシオン様の護衛を務めているアスターと言います。よろしくお願い致します」
アスターが胸に片手を当ててお辞儀をした。
え? いつの間にあんな仕草を覚えたの?
私の護衛をしていた時、あんな動きをしなかったじゃない。
なんか腑に落ちない。
「はい! こちらこそよろしゅうお願い致します! チトと言います! お父ちゃんはロイド、お母ちゃんはミンクです! 趣味は鉱山を掘って鉱石を集める事です!」
アスターにつられてなのか、チトちゃんも胸に手を当ててお辞儀をしているし。
というか、穴を掘って鉱石集めって女の子の趣味としてどうなのよ。
あ~でも、ハーフとはいえチトちゃんもドワーフだからおかしくはない……のかな?
「父親がロイド……? しかもシオン様達とお知り合い……もしかして、英雄の1人であるロイド様の事ですか?」
「そうです!」
邪竜を倒した英雄の子供に挟まれているアスターって、ある意味すごい光景ね。
「やはりそうですか。ご両親はどこに居られるのですか? ご挨拶をしたいのですが……」
そうそう、私もそこが知りたい。
場合によっては、私の助けになってほしいし。
「お父ちゃんとお母ちゃんもドワーフの村にいますから、ここにはいませんよ?」
え? ロイドもミンクさんも村に居る?
……じゃあ、チトちゃんは1人でこの街に来たわけ!?
「え? どうして、チトちゃんだけがこの街にいるのですか? まさか、親と喧嘩して家出をしたんじゃ!?」
それだとシオンとほぼ同じね。
ロイド相手だとあり得そうだわ……。
「ちゃうちゃう。この街に来たのは、そこの道具屋へ届け物をする依頼があったからや」
依頼ですって?
という事はまさか……。
「依頼? という事は、チトさんって……」
「そうやで、チトは冒険者や」
チトちゃんが懐から冒険者のプレートを取り出した、本当に冒険者なのね。
へぇ~まさかチトちゃんも冒険者になっているとは思いもしなかったわ。
ロイドはローニと違って、別の意味で厳し処があるのによく許したわね。
でも、あのプレートに描かれている星は1つ……つまり、まだ見習い。
「わあ!! それじゃあ、わたくしと同じですわね!」
シオンがすごく嬉しそうだわ。
「同じって……だとしたら、シオンちゃんも冒険者なんか!?」
「はいですわ! 先ほど冒険者になったところなんですわ!」
「へぇ~そうなんか! それじゃあチトは冒険者としても先輩やね」
ん~エルフの私からしたら、たかが1歳上なんて誤差程度しか思えない。
でも、人間族はそれを尊重する……そこがいまいちわからないわ。
「はいですわ! ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致しますわ!」
シオンが頭を下げた。
ご指導ご鞭撻って……チトちゃんも、まだ見習いなんだけど。
「よっしゃ任せといて! チトが教えたるわ!」
チトちゃんが、大きな胸を叩いて踏ん反り返る。
よく見習いであんな大きな態度を取れるわね……。
それほど先輩って言うのが嬉しいのかしら? やっぱり私にはわからないわ……。
今更ながら反省……。
「えーと、お二人は知り合いですか?」
アスターはチトちゃんの事を知らないから、疑問に思うわよね。
「ええ、昔一緒に遊んだ仲ですわ!」
その遊んだのは1ヶ月間だけどね。
う~ん、今まで一言それを言ってくれればロイドの所に遊びに行ったりしてたんだけど。
いや……当時の幼いシオンを、あのローニが長旅をさせる事はしないか。
多分、シオンもそれを分かっていたから言わなかったのかもしれないわね。
気付けなかった私の馬鹿馬鹿!
「そうやねん。チトのお父ちゃんがシオンちゃんの家に呼ばれて、そこで……って! イ、イケメンがいつの間にか目の前におるし!!」
チトちゃんがアスターを見て、すごい驚いている。
いつの間にかって……いやいや、ずっとシオンの横に居たわよ。
今更アスターの存在に気が付くなんて、どれだけ周りを見てなかったのかしら?
「えーと……何やら驚かれているようですが、私の顔に何かついています?」
何かが付いていて驚かれるなんて、よっぽどの物が付いている事になるわよ!
アスターは頼りになるけど、こういうちょっとしたズレがあるのよね。
「いっいえ! 気にせんとって下さい! 持病のシャクが出ただけです!」
目にハートの形が浮かぶ持病なんて、初めて聞いたわ。
しかも顔がにやけちゃっているし。
……チトちゃんって面食いな所があるのかも、ロイドも美人に対して鼻の下を伸ばしていたし。
「あははは……なっなあ! シオンちゃん!
「なんですの?」
「このイケメンの男の人はシオンちゃんの恋人なんか!?」
あ~チトちゃんは事情を知らないからね。
男女2人でいれば、そう思われてもおかしくはないわ。
「……へ? ここっ恋人おおおお!?」
あら~シオンったら恋人って言われただけで顔を真っ赤にしているわ。
あの子もウブねぇ……ってっ! これはまずい!
恋人なんて単語、ローニが聞いたら絶対に飛び出しちゃうわ!!
「――っ!」
一か八か、ローニが飛び出てきた瞬間に私の風魔法で吹き飛ばして――。
「…………?」
あれ? 空の彼方までぶっ飛ばしてやろうと身構えたけど、ローニが全く飛び出てくる気配が無いわ。
「……もしかして、この場にはもういないのかしら?」
だとすると消えた時に逃げ出して、目的地の西の森に向かったのかもしれないわ。
う~ん……もしそうだとしたら今すぐ追いかけて止めたいところだけど、3人がギルドの目の前で話し込んでいるからここから出るに出られない……隠れる場所を間違えた。
「ここここ恋人だなんて! ちっちちち違いますわ!」
シオンがますます顔を真っ赤にしつつ、ブンブンと頭を左右に振っている。
あれはテレなのか、顔を振っているせいなのか……両方かな?
「えと……このお方は、色々事情がありまして仕方なくわたくしの護衛をしてくれているお人ですの……けっ決して……そのような、こっここ恋人の……関係性ではありませんわ」
今度はうつむいてモジモジと。
たかが恋人と言われただけなのに、この有り様になるとは。
「そうなんや、ちゃうのか~(……っちゅう事は、チトもチャンスがあるって事か……ウヒッ)」
何だろう、チトちゃんのあの笑顔。
「? 何か言いましたか?」
「いや、何も言ってへんよ~」
私には、獲物を見つけた時の魔物のみたいに見えるんだけど……。
私の気のせいかしら?
「申し遅れました、私はシオン様の護衛を務めているアスターと言います。よろしくお願い致します」
アスターが胸に片手を当ててお辞儀をした。
え? いつの間にあんな仕草を覚えたの?
私の護衛をしていた時、あんな動きをしなかったじゃない。
なんか腑に落ちない。
「はい! こちらこそよろしゅうお願い致します! チトと言います! お父ちゃんはロイド、お母ちゃんはミンクです! 趣味は鉱山を掘って鉱石を集める事です!」
アスターにつられてなのか、チトちゃんも胸に手を当ててお辞儀をしているし。
というか、穴を掘って鉱石集めって女の子の趣味としてどうなのよ。
あ~でも、ハーフとはいえチトちゃんもドワーフだからおかしくはない……のかな?
「父親がロイド……? しかもシオン様達とお知り合い……もしかして、英雄の1人であるロイド様の事ですか?」
「そうです!」
邪竜を倒した英雄の子供に挟まれているアスターって、ある意味すごい光景ね。
「やはりそうですか。ご両親はどこに居られるのですか? ご挨拶をしたいのですが……」
そうそう、私もそこが知りたい。
場合によっては、私の助けになってほしいし。
「お父ちゃんとお母ちゃんもドワーフの村にいますから、ここにはいませんよ?」
え? ロイドもミンクさんも村に居る?
……じゃあ、チトちゃんは1人でこの街に来たわけ!?
「え? どうして、チトちゃんだけがこの街にいるのですか? まさか、親と喧嘩して家出をしたんじゃ!?」
それだとシオンとほぼ同じね。
ロイド相手だとあり得そうだわ……。
「ちゃうちゃう。この街に来たのは、そこの道具屋へ届け物をする依頼があったからや」
依頼ですって?
という事はまさか……。
「依頼? という事は、チトさんって……」
「そうやで、チトは冒険者や」
チトちゃんが懐から冒険者のプレートを取り出した、本当に冒険者なのね。
へぇ~まさかチトちゃんも冒険者になっているとは思いもしなかったわ。
ロイドはローニと違って、別の意味で厳し処があるのによく許したわね。
でも、あのプレートに描かれている星は1つ……つまり、まだ見習い。
「わあ!! それじゃあ、わたくしと同じですわね!」
シオンがすごく嬉しそうだわ。
「同じって……だとしたら、シオンちゃんも冒険者なんか!?」
「はいですわ! 先ほど冒険者になったところなんですわ!」
「へぇ~そうなんか! それじゃあチトは冒険者としても先輩やね」
ん~エルフの私からしたら、たかが1歳上なんて誤差程度しか思えない。
でも、人間族はそれを尊重する……そこがいまいちわからないわ。
「はいですわ! ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致しますわ!」
シオンが頭を下げた。
ご指導ご鞭撻って……チトちゃんも、まだ見習いなんだけど。
「よっしゃ任せといて! チトが教えたるわ!」
チトちゃんが、大きな胸を叩いて踏ん反り返る。
よく見習いであんな大きな態度を取れるわね……。
それほど先輩って言うのが嬉しいのかしら? やっぱり私にはわからないわ……。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説

【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい
梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話7話。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる