鳳月眠人のシナリオ台本

鳳月 眠人

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『光輝燦然に雨①』(男4 or 女4)

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『光輝燦然に雨①』
─こうきさんぜん に あめ①─

      作 / 鳳月 眠人


!注意!
※軽いブロマンスです(たぶん)
※ぼかした性的暴力の表現あり
※オリジナル宝石バースです(設定は劇中にあり)
 既存設定のハンマーの人はいません
※全て女性役に変更して女声で演じてもOK
※一人称変更OK
※無線の感じとかいろいろ間違ってたらすみません

数字が出てくる箇所が多いので横書き表示推奨


~+~ 登場人物 ~+~

トリウム:
 主人公。宝石バースの【ホウセキ】。
 モデルはトール石。
 雷神トールが由来とされるトリウムを多く含む。

オーバン:●を付けています
 基地責任者。宝石バースの【所有者】。

アダマス:◆をつけています
 トリウムの所属する隊の班長。
 オーバンと所有契約を結んでいる【ホウセキ】。
 「アダマス」はダイヤモンドの語源。

エメリー:◇をつけています
 アダマス班所属の【ホウセキ】。衛生兵。
 モデルはエメリー鉱石。研磨剤などに使われる石。



~+~ ここから台本 ~+~


●オーバン:
 「よく来た、トリウム二等兵。どうだ。
  ホウセキの命が次々に消費される実際の戦場は」

トリウム:
 「……綺麗だ」

●オーバン:
 「なんだと?」

トリウム:
 「ホウセキとして生まれて良かったと思ったのは
  初めてです、少佐!
  えーっと、オーバン・バーナー少佐!」

●オーバン:(苛立った様子で)
 「……おまえ」

トリウム:
 「ぼくも……この! 花火になれるんですね!」

●オーバン:
  先程までの暗い瞳は、爛々と輝き
  少年は嬉々として腕を広げた──
  地獄の戦場を背景に屈託くったくなく笑って。


──(戦場から駐屯宿舎へ場面転換)


トリウム:
 「え!? ぼくみたいな反応したホウセキ、
  他にはいないんですか?」

◆アダマス:
 「オーバン、お疲れ様です。
  えらく元気なホウセキが補充されましたね?」

●オーバン:
 「アダマス、ご苦労。なあ、こいつは本当に
  ホウセキの人種か?」

◆アダマス:
 「鑑定士を呼んできましょうか?」

トリウム:
 「診てもらわずとも鑑定書持参しております、サー!」

◆アダマス:
 「なんてイキの良い」

●オーバン:
 「今日のあの爆弾投下を見るまでは、
  まあよくいるホウセキと
  似たような表情をしていたんだがな。それが、
  僕も花火になれるんですね、なんぞ言いよって」

◆アダマス:
 「ほう……きみ、名前は」

トリウム:
 「ハッ! トリウム・ウルフ二等兵です!」

◆アダマス:
 「いくつだ?」

トリウム:
 「十四です!」

◆アダマス:
 「十四! 若すぎる」

●オーバン:
 「ああ、最年少だ。戦況が良くないからな。
  物資も人も形振なりふり構ってられんのだろう」

◆アダマス:
 「……違いありませんね」


──(控えめなノックの音)


◇エメリー:
 「エメリーです。失礼、します」

◆アダマス:
 「ああ、入っていいぞ。
  エメリー。そいつの世話を頼む」

◇エメリー:
 「かしこまりました」

◆アダマス:
 「エメリーも今は非戦闘員ですが、
  上に目をつけられればどうなるやら」

●オーバン:
 「そうだな」

◇エメリー:
 「……新入り、こっちへ」

●オーバン:
 「トリウム、行って良い。
  明日あすから作戦に参加する。
  ここにいるアダマスが、お前の隊長だ」

◆アダマス:
 「アダマスだ。階級は大尉。よろしくな」

トリウム:
 「よろしくお願いします!」

◇エメリー:
 「では、失礼します」

トリウム:
 「失礼します!」


──(扉の閉まる音)


◆アダマス:
 「……彼が『花火』と言った今日の爆発ですが。
  実際は爆弾ではなく……調べによると
  臨界状態にさせられたホウセキが6体、続けて
  投下されたようです。それも、民間の居住区へ。
  被害は甚大。
  落下地点は穢れが充満し、焼け野原です」

●オーバン:
 「馬鹿な。そんな非人道を!?」

◆アダマス:
 「ええ……」


──(部屋を出て廊下を歩く二人のホウセキ)


トリウム:
 「えっと、エメリー、さん?
  その腕章って非戦闘員だっけ。
  キミは戦わないの?」

◇エメリー:
 「ぼくはホウセキ専門の衛生兵です。
  あなたが負傷したら治します」

トリウム:
 「ふぅん。すごー。
  あ、オーバン少佐って、複数の宝石と契約を
  結んでるの? キミも少佐のホウセキ?」

◇エメリー:
 「……いえ。
  オーバン少佐の所有はアダマス大尉だけですよ。
  あとは預かりの契約だけ。やったでしょ?」

トリウム:
 「え、アレ? 血判捺けっぱんおしたやつ? アレだけ!?
  ここ来る前の身体検査の方がよっぽど
  えげつなかったくない?
  身体には七つの穴があるぅ、とか言って全身、」

◇エメリー:(遮って)
 「あなた。どうしてそんなに元気なんですか?
  ここは戦地で前線で、そしてただでさえ僕たちは
  『所有者』不在のホウセキなんですよ」

トリウム:
 「僕も不思議」

◇エメリー:
 「……今日の配給食です。あなたの部屋はここ」

トリウム:
 「ありがとう」

◇エメリー:
 「では」

トリウム:
 「……綺麗だったからかな」

◇エメリー:
 「はい?」

トリウム:
 「この戦場で花火になるために生まれてきたんだ
  って思ったら、今まで辛かったことぜーんぶ
  頭からスッとんじゃって」

◇エメリー:
 「また、これから辛くなりますよ」

トリウム:
 「そうかな」

◇エメリー:
 「ほとんどのホウセキは、手放された悲しみだとか
  被所有欲の満たされなさとか、戦場の恐怖で
  濁って鬱屈うっくつした目をしているから」

トリウム:
 「えー、キミもあの光を見たら……」

◇エメリー:
 「見ましたよ、今日。遠かったけど。
  すごいエネルギーで騒ぎになりましたし」

トリウム:
 「めちゃくちゃ綺麗だったでしょ!
  ぼくあんな風になりたいなー!」

◇エメリー:
 「いや、あんなのなったら死ぬし……
  あの。言いにくいですけど、あれって……」


──(間。翌日)


トリウム:
 「昨日の花火って敵国の攻撃なのですか!」

◆アダマス:
 「そうだが」

トリウム:
 「ガァァッデム」

◆アダマス:
 「まずもって、花火ではない……
  きみ、軍学校で何を習ってきたのだ」

トリウム:
 「戦況、戦術が変わったのかと」

◆アダマス:
 「あの爆発は、敵国がホウセキを極限まで
  精神的に不安定にさせて崩壊爆発させたようだ。
  投下された者は、捕虜であった可能性も否めない。
  恐らく、そうとう残忍な拷問と
  精神攻撃を受けている」

トリウム:
 「それは……しんどそうですね」

◆アダマス:
 「我が国はホウセキをあからさまな捨て駒には
  してはいない。それも今のところは、の話だが」

トリウム:
 「ではやはり、基本は航空戦ですかぁ」

◆アダマス:
 「そうだ。きみの機体はこいつ。
  今日から大事に飛ぶんだぞ」

トリウム:
 「はい!」


──(間)


トリウム:
 「コックピットチェック開始。
  計器起動、異常なし。
  ……エンジン始動許可をリクエスト」

●オーバン:
 「コールサイン・イーグレットエイト
  エンジン始動許可」

トリウム:
 「エンジン始動。出力正常。
  システムオールグリーン。
  ……アフターバーナーテスト完了」

◆アダマス:
 「こちらコールサイン・イーグレットワン
  全機準備完了」

●オーバン:
 「風、方位50より11ノット。
  イーグレット隊、ランウェイ20Rからの
  離陸を許可。各機、気をつけて行ってこい」

◆アダマス:
 「ランウェイ20R了解。これより哨戒しょうかいに向かう。
  ──イーグレットワン、発進します」

トリウム:
  「──イーグレットエイト、発進します」

  上昇開始。実戦の初めての飛行だ。
  うん、順調、いい天気。

  ぼくは今、空の一部になっている。
  空が好きだ。
  同じ空模様は、色は二度とない。
  飽きなくていい。ずっと見ていられる。
  だから敵機の発見も、すぐできる。

 「敵機確認タリー
  イーグレットエイト、視界に敵機。

  ブルズアイ140/50 9,000 BEAMワンフォーティ・フィフティ・ナインサウザン・ビーム
  (基準地より方位140、距離50マイル、
   高度9千フィート、直角進路)

  ……かな?
  4機視認、編隊飛行中。
  機体はラーストチカの……29?」


◆アダマス:
 「こちらイーグレットワン……視認できずノージョイ

トール:
 「あ、出てきた。雲の合間です」

◆アダマス:
  雲の……驚異的な視力だな。
  レーダーに未だ、かからない。
  ステルス重爆撃機か。

 「イーグレット1、敵機確認タリー
  ……ラーストチカ29で間違いない。2機3編隊。
  タワー、交戦準備をリクエスト」

●オーバン:
 「タワー了解。まだ侵犯していない。
  敵機の動きを監視せよ、交戦許可を待て」

◆アダマス:
 「了解。……敵機、旋回し高度を下げて接近。
  交戦許可を待機」

●オーバン:
 「タワー了解。イーグレット隊の交戦を許可。
  ジャミングに警戒しろ。ファイアの使用を許可。
  敵機を捕捉次第、自由に迎撃せよ」

◆アダマス:
 「イーグレットワン、了解。ファイア解放。
  敵機のエネルギー砲反応あり! 気をつけろ!
  イーグレットツースリー、私と左に回れ。
  フォーからシックスは右からだ!」


トリウム:
  向こうも陣形を変えてきた。
 「イーグレットエイト下方に回り援護します!
  セブン、上方から挟めますか」

◆アダマス
  下方から……
  初の戦闘で判断が思い切っているな。

 「イーグレットセブン、上方へ行け。
  圧力をかけて援護しつつ
  未確認敵機バンディットを警戒せよ。
  エイト、撃てそうであればやれ」

トリウム
 「イーグレットエイト、了解。ファイア解放
  ロックオン開始」

  ファイア。
  ホウセキが戦闘機で行使できる
  指向性エネルギー兵器での攻撃。
  解放のスイッチを入れると、どんどん戦闘機に
  ホウセキの能力が吸い上げられていく。

◆アダマス
 「ファイア発射! 追尾確認。
  スリー、被弾したか。高度と速度は維持できるか?
  シックス、そのままスリーを正面より援護しろ」

トリウム:
  アダマスさんのファイアはエネルギーの
  桁が違う……!

 「後方の敵が回避行動マニューバ開始! 追跡します。
  ……ファイア発射! 撃墜スプラッシュまで待機」

◆アダマス:
 「撃墜スプラッシュ確認。一機ダウン。うまいな。
  イーグレットフォー上後方うえこうほうにも一機。
  挟まれるぞ!」

トリウム:
 「フォー、左方、任せてください。
  前に出て引き付けます!」

◆アダマス:
  あの小さい体でよく重力に耐える。
  なんだその動きは……

トリウム
 「あ、2機食いつきました!
  ロックオンされてます。
  フレア撃って回避、! ははッ 
  すいません、左翼かすりました。
  飛行には問題なし。フレア展開!」

◆アダマス:
 「5秒耐えろ!
  イーグレットセブン、やれるか!」
 
トリウム:
 「──セブンツー了解! 離脱します。
  撃墜スプラッシュ確認! 2機ダウン。
  はー、助かりました。ありがとうございます。

◆アダマス:
  少々の不安があったものの、
  戦闘機乗り込み前の彼の元気の良い返事は
  自信の表れだったらしい。
  天才。
  その域に達する、戦闘機の操縦とエイム。
  高火力の雷撃。他の隊員の邪魔もせず
  援護や おとりの動きまでする余裕。

 「敵機の一掃を完了。
  他敵機は今のところ視認せず。
  レーダー反応無し。
  イーグレットスリーファイブが任務続行不能の損傷」

●オーバン:
 「タワー了解。イーグレット隊の帰還を許可。
  付近に母艦があるかもしれん。別隊を送る」

◆アダマス:
 「了解。これより帰還します」

  哨戒しょうかいが終わり基地へ帰ると
  トリウムは隊員数名に揉みくちゃにされていた。

トリウム:
 「ぼく、航空兵科だけは成績良かったんです。
  それで座学、中途半端で卒業できちゃって。
  でも訓練とはやっぱり違いますね。ファイアが
  めちゃくちゃ吸い取られる感じします」

◆アダマス:
 「預かり契約であることも関係しているが……
  気になるようなら整備士に言って調整していい」
  
トリウム:
 「調整できるんですね、了解しました!」

◆アダマス:
 「では解散。各自、整備確認を怠らないように。
  連絡事項があるため、
  トリウムは私に着いてきなさい」


──(報告室で)


●オーバン:
 「ご苦労。初陣はどうだった、トリウム二等兵」

トリウム:
 「ハッ! ベストを尽くせました!」

●オーバン:
 「よろしい。すぐ死なずに戻ってくるとはな。
  よくやった」

トリウム:
 「ハッ! ありがとうございます!」

●オーバン:
 「ところで。おまえ、軍学校で座学を一部、
  修めていないらしいな。おもに計算の単元を」

トリウム:
 「はっ……はい」

●オーバン:
 「俺が教えることになった」

トリウム:
 「……卒業したのに?」

◆アダマス:
 「修めていないんだろう?」

●オーバン:
 「本日より夕食後、
  夜番よばんがない日は講義をする。
  フタマルマルマル、ここ報告室へ来るように」

トリウム:
 「本日、から……」

◆アダマス:
 「昨日今日の元気はどうした?」

トリウム:
 「イエス、サー!」 

●オーバン:
 「では、行ってよろしい」

トリウム:
 「失礼します!」


──(ドアの閉まる音)


◆アダマス:
 「……荒れそうですからね」

●オーバン:
 「ああ。次の週にはガエルとルロワの隊が
  合流するしな。お前の隊の様子はどうだ?」

◆アダマス:
 「既に一人二人、よく思わない者がいそうです」

●オーバン:
 「ストレスのぐちがないと
  環境が悪くなるな。気遣ってやれ」

◆アダマス:
 「承知しました」

●オーバン:
 「……なんだ?」

◆アダマス:
 「ホウセキにここまで配慮する己のあるじ
  誇りに思うと同時に、わずかに嫉妬しています」

●オーバン:
 「フ、いい歳をして何を言ってる」

◆アダマス:
 「くく、本当に」

●オーバン:
 「久しぶりに構ってやろうか?」

◆アダマス:
 「大変そうして頂きたいのですが……
  預かりのホウセキたちの手前、
  堪えることにします」

●オーバン:
 「お前ならそう言うと思ったよ
  その堅牢な真面目さを、俺は好いている」


──(間)


◇エメリー:
  この世には少数の、特別な二種類のひとがいる。
  ひとつは、ホウセキ。特定の条件下で、
  人智を超える能力を使うことができるひと。

  もうひとつは、所有者。
  ホウセキと契約を結ぶことで、ホウセキの能力を
  引き出すことができるひと。

  ホウセキは所有者から所有されなければ
  どんどん意志薄弱の抑鬱状態となり、
  最後には目覚めなくなる。
  
  所有者も、自分のホウセキがいない状態が続けば
  精神が安定せず、発狂に至る。
  他人のホウセキを誘拐監禁することもある。

  信頼関係で結ばれ、正しい所有の契約を結ぶと
  ホウセキは強く輝いて
  所有者を護る、剣にも弾丸にもなる。
  所有者の傷の、肩代わりまでする。


トリウム:
 「でもクズ鉄系はあーんま人気ないから、
  このご時世、戦地投入されやすい、と」

◇エメリー:
 「適材適所でしょ。
  それにクズ鉄じゃなくて、鉱石」

トリウム:
 「そうねー」

◇エメリー:
 「けれど僕らは基本的に、手放されたホウセキだ。
  よくそんな、お気楽で明るくいられる。
  はぁ、まったく。どんな飛び方をすれば
  こんなアザになるんだか。はい、癒えましたよ」

トリウム:
 「どうも。わー、すごー、消えてる消えてる」

◇エメリー:
 「僕の能力なので」

トリウム:
 「いいな、攻撃しかできないぼくの能力より
  よっぽどいい」

◇エメリー:
 「……」

トリウム:
 「変な顔」

◇エメリー:
 「失礼ですね。……そんなふうに言われたのは
  初めてだったので」

トリウム:
 「え、そうなの」

◇エメリー:
 「所有者は癒せず、他のホウセキだけ癒せるなんて
  そんな能力、使いどころが限られすぎているし」

トリウム:
 「きみ、美人だから普通に、高位のホウセキ
  やってそうなのにね。髪も目も、
  黒いけどツヤツヤで、コランダム系でしょ?
  そのちょっと赤いとこ。鉄っぽくないよね」

◇エメリー:
 「……」

トリウム:
 「変な顔」

◇エメリー:
 「あなたも悪くない容貌ようぼうですよ。
  深い緑色で澄んでいて」

トリウム:
 「ほんと? わーい」

◇エメリー:
 「阿呆面アホヅラ……」

トリウム:
 「阿呆なんで今日も少佐の補講、行ってきまーす」

◇エメリー:
 「粗相そそうのないように」

トリウム:
 「はーい」

◇エメリー:
 「変なホウセキ」


──(報告室で補講)


●オーバン:
 「トリウム二等兵」

トリウム:
 「ッはっ痛ぇ!」

●オーバン:
 「寝ていたな。死にたいか」

トリウム:
 「申し訳ありませんッ」

●オーバン:
 「腹筋百回、はじめ」

トリウム:
 「イエスサー!」

●オーバン:
 「腹筋しながら、問題を解け。
  速度ブイで直進している戦闘機。
  これをめがけて、この場所から
  ファイアで距離アールに収束させる時。
  自分の機体からみる攻撃の軌道曲線と、
  命中までの微小時間は」

トリウム:
 「はっ、はっ、んん、えーっとお!」

●オーバン:
 「遅い。気の抜けた声を出すな」

トリウム:
 「軌道は、こういうぅ、」

●オーバン:(笑いを堪えて)
 「式で示せ」

トリウム:
 「クッ、えっと、ううう
  サインだっけコスだっけぇぇ」


──(補講終わり)


トリウム:
 「失礼します!
  はぁ……やっと終わった、ねむ……」


──(しばらく歩いたところで大きな物音)


◇エメリー:
 「……治療目的でないのなら出ていってください」

トリウム:
 「……ん? エメリーさんの声? まだいたんだ」

◇エメリー:
 「やめ、や……やめろ! ガッ、う、ぅ、ハァ
  離せ、痛ッ……」


──(治療室の扉を開けるトリウム)


トリウム:
 「わぁ、先輩方……なにやってんですか。
  治療室って、そういうのも治療できる感じ?」

◇エメリー:
 「トリウム、」

トリウム:
 「たのしそー、混ぜてくださいよ」

◇エメリー:
 「っ、え」

トリウム:
 「ぼく、先輩方に構って欲しいなー。
  ……教えてください、いろんなこと」

◇エメリー:
 「トリ、」

トリウム:(小声)
 「大丈夫、任せて。
  殴られ方うまいって軍学校でも褒められたし。
  場所だけ貸してくださいねぇ」

◇エメリー:
 「ぁ、」

トリウム:(小声)
 「行って」

◇エメリー:
 「ぅ、ふっう、」

  どうする、アダマス大尉に報告……
  行こう、行かなきゃ。


──(少し間)


トリウム:
 「生意気でチビで、調子のってて、ごめんなさい」
 「汚い石ころで、ごめんなさい」
 「先輩たちのほうが、ずっと強くて綺麗です」
 「こんなところが気持ちいい変態でごめんなさい」
 「少佐から可愛がられないようにします、
  ごめんなさい」
 「大尉に告げ口しません、大丈夫です」
 「先輩の傷、全部ぼくに下さい」
 「ぼく先輩たちのこと、大好きです」
 「もっともっと、可愛がってください」
 「ぼくはこれがいいんです、安心してください」
 「これからもよろしくお願いします」


──(間)

◇エメリー:
 「トリ、ゥム……」

トリウム:
 「ふぁ……ああ、寝てました」

◆アダマス:
 「……ハァ、配属されて5日でこんな……
  私の監督不足だ。すまない」

◇エメリー:
 「治療します」

トリウム:
 「お願いしまーす」

◇エメリー:
 「……ひど、い。僕ここまでされたこと、ない」

トリウム:
 「そうなんですか? そりゃあよかった」

◇エメリー:
 「なにが!」

トリウム:
 「ホウセキのガス抜きに大いに貢献できた
  ってことでしょ?」

◇エメリー:
 「えっ……」

トリウム:
 「ホウセキってストレス抱えると
  能力落ちますよね」

◆アダマス:
 「ああ」

トリウム:
 「こんなもんで隊員のメンタル安定して、
  戦争に勝てたら最高じゃないですか。
  あ、原因も、ちょっとぼくかもしれないけど」

◆アダマス:
 「きみがそんなに器用で強いなホウセキだと
  思わなかったよ」

トリウム:
 「今までの扱いに比べれば、ぬるいぬるいです。
  まだだいぶいけます」

◆アダマス:
 「きみの……親か、所有者が、そんなことを?」

トリウム:
 「地域によっては、珍しくないです。ホウセキの
  人身売買とかも全然、まだやってますし」

◆アダマス:
 「…………」

◇エメリー:
 「トリウム、ごめん……」

トリウム:
 「なんで謝るの。僕の代わりにーとか思ってる?
  ほんと気にしなくていいし、治してくれるし」

◇エメリー:
 「だって……心が……穢れるじゃないですか……
  身体は癒えても、
  あなたの、名誉は、精神は、踏みつけられて」

トリウム:
 「こんなので穢れない」

◇エメリー:
 「!」

トリウム:
 「悲しいとか不安とか、腹が立つとか。
  他人からそういうの擦り付けられた所で
  ぼくは穢れない」

◇エメリー:
 「そんな、」

トリウム:
 「むしろちょっと楽しいまである」

◇エメリー:
 「変態じゃん……」


──(間)


◇エメリー:
 「トリウムの治療と着替え、終わりました」

◆アダマス:
 「うん。 では、トリウム二等兵。
  特別な措置も処罰も……いらないんだな?」

トリウム:
 「はい。チクらないって言っちゃいましたので」

◆アダマス:
 「今後エスカレートしても?」

トリウム:
 「んー、切断とか、ない限りは」

◆アダマス:
 「切断……ハァ。ならば、観察とする。
  ただ、オーバン少佐に報告はする。
  不安定になっていないかの確認のためにもまた
  被害を受けたら必ず治療と検査を受けること。
  
  エメリーは今後、
  同様の被害があればきちんと報告するように。
  そうだな……衛生兵を調達しておく。
  一人になることは避けなさい。特に夜は」

◇エメリー:
 「はい……ありがとうございます」

トリウム:
 「では、失礼します。おやすみなさい」

◇エメリー:
 「おやすみ……」

◆アダマス:
 「しっかり休みなさい」


トリウム:
  今夜は新月かぁ。
  月浴びながら寝て浄化が手っ取り早いのにな。
  さっき持たされたセージで
  一応、モクいて寝よっかな。
  あ、まてよ? めっちゃ品質いいぞこれ。

 「──いい香り」


──(間)


◆アダマス:
 「ただいま戻りました」

●オーバン:
 「アダマス……クソッタレなしらせが入った」

◆アダマス:
 「オーバン、珍しく顔色が……
  そんなに悪いしらせだったのですか?」

●オーバン:
 「ディール鉱山が襲撃を受けた。
  壊滅的とのことだ」

◆アダマス:
 「なッ、もしや燃料庫が? かなり内陸ですが
  索敵網にかからずどうやって」

●オーバン:
 「高度6万以上から地上降下したとみられている」

◆アダマス:
 「高度6万から!?」

●オーバン:
 「そこから地上戦で最終的に自爆だ。
  あの国はホウセキの捨て身戦法が多すぎる……
  そもそも重要拠点のここはカモフラージュして
  通信経路も暗号も複雑にしているはずだが」

◆アダマス:
 「……内通を疑ってしまいます」

●オーバン:
 「あるいは特殊なホウセキの能力か、だ。
  敵国はホウセキ産出が
  徹底管理されているからな。
  問題は、燃料や物資が」

◆アダマス:
 「厳しくなりますね」

●オーバン:
 「嫌な動きが、高まっている」


──(続く)
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上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

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