4 / 21
あたたかい話(ヒューマンドラマ)
『有痛性泡沫症』(男0:女3)
しおりを挟む
のんびり病み病み会話劇。どんなことを想って言葉を発しているのかの解釈は、演者様に委ねます。無駄なセリフはございません。
『有痛性泡沫症』
─ゆうつうせい うたかたしょう─
作 / 鳳月 眠人
◇◆登場人物◆◇
蓮:れん
雪祈:ゆき
宿里:やどり
◇◆ここから台本◆◇
雪祈:
……わ、すごぉい、エントランスからもう、水族館みたい……きれい……
宿里:
へぇー、このビル、一棟ぜんぶ?
蓮:
そうそう。ねー! すごいっしょ?
雪祈:
【個室水族館カフェ】おひるねアクアリウム……!
蓮:
えーと、利用時間、2時間で。あ、ハイ。
ねぇユキ、ヤドリ、どの階に行きたい?
宿里:
なんか違うの?
蓮:
上の階に行くほど、部屋の感じも鑑賞する水槽も
明るくなってて、3階とかは水面近く、だね~
地下は海底をイメージしてる感じ。かなり暗い。
雪祈:
んー?
3階、水面Larimar
2階、浅瀬Aquamarine
1階、海中Kyanite
地下、深海Labradorite……
宿里:
ぜんぶ宝石の名前だぁ。
雪祈:
私は……ゆっくりしたいし明るすぎない方が。
宿里:
そうねぇ、漫喫ぐらいの暗さのほうが落ち着く。
蓮:
漫喫て、例えw
ならこの階かな。ここ一部屋で。
宿里:
ん? 『お荷物はすべてロッカーへ』?
蓮:
そうそう、スマホもNGなの、ここ。
雪祈:
スマホも? 徹底してるね~
宿里:
うわ、空港のやつ!!
蓮:
そ、金属探知機。ふふ。装飾品はトレイにねー。
宿里:
トンネルを抜けると、そこは……
雪祈:
通路が全部、アーチ水槽……
宿里:
でした……
雪祈:
水槽の中に建物の柱が……すごいね。
蓮:
ねー。維持費ヤバそう。
宿里:
現実に戻っちゃうからぁ。
雪祈:
あ、……この部屋だね。開けるよ……!
── ドアを開ける
宿里:(息を飲む)
き、れい。
雪祈:
壁一面、水槽なんだ。映画館のスクリーンみたい……
あ、これってカイヤナイト?
蓮:
そう、ちゃんとお部屋に各階の宝石が飾られてるんだよね。
雪祈:
なんか書いてある……
『カイヤナイトは、人生の岐路において、
直感力と判断力を高めて持ち主を導き、
勇気と自信を与えるとされています』
宿里:
『光のレースが揺らめく、海中のようなこの石は、
固定観念やしがらみといった心の呪縛を解き放ち、
あなたの疲れを癒します』
蓮:
ほんとに、海の中に光が差してるみたい。石も、水槽の方も。
宿里:
くるくる、ゆらゆら、光の帯が青色になびいて深い海にいるみたい……
あっ、マンタが張り付いてる、可愛い。
雪祈:
この水槽、上下の階とぜーんぶ繋がってるんだね。
魚が自由に行き来してる。
これは癒される。すごい好き……
あ! 人をダメにするソファだぁ~
宿里:
のぁあ~……沈むぅ。
蓮:
んふふ。あ、BGMいろいろ変えれるよ。どうする?
宿里:
お任せする!
蓮:
んー、んー、じゃあ、ヒーリング音楽ありの、海中の音。
── 短い間
雪祈:
あ、いいね……
宿里:
──はぁ、落ち着く……
──会話の途切れる、少しの間
雪祈:
こうやって、ずっと……ゆっくりしてたい……
蓮:
うん……
宿里:
ぼこぼこって、泡の音が、なんかいいね。
包まれてるみたいで……気持ちいい。
蓮:
泡……
── 間
── 目の前の大きな水槽を見つめる蓮
── おもむろに静かに話し始める。
蓮:
私さ、
宿里:
うん?
蓮:(ゆっくりした口調)
…………
誰にも、迷惑を掛けずに。
泡みたいにそっと、消える様に逝けるなら
それは理想の終わり方に近いのかもしれない
って、思うの。
──あくまで自分の理想であってさ。
他の人がそれを望むとは限らないけれど。
私は確かに存在してて、急に消えちゃったら
いろんなところに迷惑かける。
悲しんでくれる人もさ、ありがたいことに、いる。
でも誰にも迷惑、掛けたくないの。だから『消えたい』。
初めから居なかったように、
誰からの記憶からも消えるような消え方が理想だと、思うのよね……
宿里:
わかるわぁ。
雪祈:
わかる……
蓮:
わかってくれるか……!
けどさ、誰かひとりでもいいから、消えた時に……
悲しんで、くれたら。それは幸せだなって思うの。このジレンマ。
雪祈:
蓮が消えたら、わたしたち、めちゃめちゃ悲しむよ……
宿里:
そうだよめっちゃ泣くよ。
蓮:
うん、……しってる。ありがと……
その涙と一緒に、泡に……なっちゃいたいって。
それでも、思っちゃう。
雪祈:
うん……
──そんな人、いたっけ?
なんて言われるくらいの消え方をしてもいいって思うのに
心の何処かでは泣いてくれる人が、いて欲しい。
むしろ本当はずっと、傷として遺りたい。
想われたい、って思うよね。
蓮:
ねー。人間の心って、(似非外国人風に)ムズカシイネ。
雪祈:
突然のカタコト。
宿里:
──病むぐらいは悲しまないでほしいけれど、
いつまでも引きずるほどの悲しみは、あたえたくないけど、
しばらくの間だけは、自分を思って泣いて欲しい。
そういう複雑さ、すごくわかる。
文学的で尊いよね……わかりすぎて、ハゲそう。
蓮:
はげんでもろて……
宿里:
おせっせ?
蓮:
ちがう。
雪祈:
んふっ。
蓮:
──まぁねこれがね、人として、ままならない部分だってわかってる。
わかってても、それを求めてしまうのも人間だからこそ、なのかな。って。
宿里:
はぁあ、深い。
雪祈:
うん、うん。
蓮:
雪祈は……落ち着いてきた?
雪祈:
うん。何とか色々、解決に向かってるし……
ちょっとずつ、快復してきたよ。
宿里:
……良かった……
雪祈:
去年の、今頃は……ほんとに、しんどかった……
幸せに、なるはず、だと思ってた。
幸せになるために……歩いてきたつもりだったのに。
どうして、なんで、上手くできないんだろう。
頑張れないんだろう。
みんなは、上手に頑張ってるのに。
支え合って乗り越えて、行くのに。
生きていくことって、こんなに大変なんだって……
絶望した。
宿里:
慣れって、一番怖いのよ。
もう自分は必要とされてないんだ、って感じた瞬間にさ、
私なんかいなくても、いいんじゃない? って。思っちゃうよ。
生きなきゃいけないのに、定型で満たされない日々が、
終わらせても終わらせても、ずっと沸いてくる。
毎日ずっと、死ぬまで永遠に続く日々が、途方もなくて。
前を見たら、足がすくんで。
必要とされない、他人にとって価値のない存在の自分なのに
どうして生きなきゃいけないんだろう。
苦しい。悲しい。もういっその事、消えてしまいたい。
消えたら……ねぇ、泣いてくれる? って。
求められたかった、必要とされたい。それだけなのになぁ。
雪祈:
…………う、(鼻をすする)
宿里:
…………辛くて、痛かったね……
蓮:
頑張ってるよ、頑張りすぎてるよ……泣け泣けぇ。
宿里:
ユキ、はいティッシュ。あと、はい。ミュート。
雪祈:
ありがと行ってくる(ミュート)
蓮:
必要とされすぎて、依存されて搾取されても、消えたくなるんだろうね。
つまりはぜんぶぜーんぶ、投げ出したいのよ。いっぱいいっぱいなの。
生きるのが辛くなるくらい。
だから生きるためには結局、何かを断ち切るしかないんだろうな。
宿里:
幸せのために、ラクになるために、諦めなきゃいけないこともあるのよね。
わかってた、はずなんだけどなぁ。
蓮:
ヤドリも頑張りすぎ。
宿里:
いやー、欲張りなくせに精神的ヒットポイントなさすぎなんよ。
雪祈:
ただいま。ねねね、お手洗は天井が海月(クラゲ)の水槽だった!
星空みたいだったよ!
宿里:
おかえり、ユキ。マジで!
雪祈:
アメニティーも揃ってるし、小物も可愛いし、スマホあったら確実に写真撮っちゃう……
宿里:
あとで行こー!
蓮:
あ、そういえば、軽食注文できるよ。
宿里:
最高か? やだメニュー表まで可愛い。
雪祈:
アフタヌーンティーセット……!
蓮:
だよねそこ行くよね!
宿里:
決定ですわ。
── 5秒程度の間
雪祈:
のんびりできたねぇ~絶対また来たい。
蓮:
なんかあの場所に行くとさ、時間がゆっくりに感じるんだよね。
宿里:
確かに。フリートーク4本と比べたらめちゃくちゃゆっくり充実した気がする。
蓮:
それな? 一瞬で時間溶けちゃうからねフリト。
雪祈:
全ボイコネ民思ってるそれ、多分きっと。
蓮:
ははは。あー。夕陽が綺麗だ!
宿里:
こんな時間なんだね、もう。
雪祈:
私……
宿里:
ん?
雪祈:
夕焼けと夜の紺色の境目って、空が白っぽくなってるじゃない?
宿里:
ああ、淡く光ってる白っぽいところ?
雪祈:
うん。あの空の色彩に、溶けちゃいたいなって、時々思うの。
苦痛とか嫌な感情、ぜーんぶ浄化されて
身体も心も白い色に溶けられたらいいのに。
宿里:
……うん、似合う。
雪祈:
ありがと。
蓮:
……私は。逆にあの、夕陽のまわりの、一番赫いところ。
灼熱の残り火に燃やされて融けて、蒸発したい。
宿里:
レン……
蓮:
ふふ。ヤドリは?
宿里:
どの空の色も、キレイだなぁ。
けど私は……もう何色にもなりたくない……
蓮:
そっか、それもアリだなぁ。
雪祈:
お疲れ様、だったね。
宿里:
ありがとう……
蓮:
ねぇ。
雪祈:
うん。
蓮:
枯れて、朽ちた花なんて、……忘れてね。
雪祈:
忘れ、られるかな。
宿里:
ドライフラワーにしちゃう。
蓮:
色褪せてまで飾られたくないよぉ。
宿里:
あは。そうなんだよね~
雪祈:
うん……
雪祈:
大変だ、生きるのって。生きてくのって。
蓮:
早く終わらせたい……
宿里:
さくっとね!
雪祈:
物騒w
宿里:
消えたくないって、思える日が
雪祈:
いつかちゃんと、来ますように。
蓮:
今日も現実に打ちのめされて、生きていく。
── 5秒以上待って、終演
モデルのろころこ様、ねねちゃ様に感謝を込めて
『有痛性泡沫症』
─ゆうつうせい うたかたしょう─
作 / 鳳月 眠人
◇◆登場人物◆◇
蓮:れん
雪祈:ゆき
宿里:やどり
◇◆ここから台本◆◇
雪祈:
……わ、すごぉい、エントランスからもう、水族館みたい……きれい……
宿里:
へぇー、このビル、一棟ぜんぶ?
蓮:
そうそう。ねー! すごいっしょ?
雪祈:
【個室水族館カフェ】おひるねアクアリウム……!
蓮:
えーと、利用時間、2時間で。あ、ハイ。
ねぇユキ、ヤドリ、どの階に行きたい?
宿里:
なんか違うの?
蓮:
上の階に行くほど、部屋の感じも鑑賞する水槽も
明るくなってて、3階とかは水面近く、だね~
地下は海底をイメージしてる感じ。かなり暗い。
雪祈:
んー?
3階、水面Larimar
2階、浅瀬Aquamarine
1階、海中Kyanite
地下、深海Labradorite……
宿里:
ぜんぶ宝石の名前だぁ。
雪祈:
私は……ゆっくりしたいし明るすぎない方が。
宿里:
そうねぇ、漫喫ぐらいの暗さのほうが落ち着く。
蓮:
漫喫て、例えw
ならこの階かな。ここ一部屋で。
宿里:
ん? 『お荷物はすべてロッカーへ』?
蓮:
そうそう、スマホもNGなの、ここ。
雪祈:
スマホも? 徹底してるね~
宿里:
うわ、空港のやつ!!
蓮:
そ、金属探知機。ふふ。装飾品はトレイにねー。
宿里:
トンネルを抜けると、そこは……
雪祈:
通路が全部、アーチ水槽……
宿里:
でした……
雪祈:
水槽の中に建物の柱が……すごいね。
蓮:
ねー。維持費ヤバそう。
宿里:
現実に戻っちゃうからぁ。
雪祈:
あ、……この部屋だね。開けるよ……!
── ドアを開ける
宿里:(息を飲む)
き、れい。
雪祈:
壁一面、水槽なんだ。映画館のスクリーンみたい……
あ、これってカイヤナイト?
蓮:
そう、ちゃんとお部屋に各階の宝石が飾られてるんだよね。
雪祈:
なんか書いてある……
『カイヤナイトは、人生の岐路において、
直感力と判断力を高めて持ち主を導き、
勇気と自信を与えるとされています』
宿里:
『光のレースが揺らめく、海中のようなこの石は、
固定観念やしがらみといった心の呪縛を解き放ち、
あなたの疲れを癒します』
蓮:
ほんとに、海の中に光が差してるみたい。石も、水槽の方も。
宿里:
くるくる、ゆらゆら、光の帯が青色になびいて深い海にいるみたい……
あっ、マンタが張り付いてる、可愛い。
雪祈:
この水槽、上下の階とぜーんぶ繋がってるんだね。
魚が自由に行き来してる。
これは癒される。すごい好き……
あ! 人をダメにするソファだぁ~
宿里:
のぁあ~……沈むぅ。
蓮:
んふふ。あ、BGMいろいろ変えれるよ。どうする?
宿里:
お任せする!
蓮:
んー、んー、じゃあ、ヒーリング音楽ありの、海中の音。
── 短い間
雪祈:
あ、いいね……
宿里:
──はぁ、落ち着く……
──会話の途切れる、少しの間
雪祈:
こうやって、ずっと……ゆっくりしてたい……
蓮:
うん……
宿里:
ぼこぼこって、泡の音が、なんかいいね。
包まれてるみたいで……気持ちいい。
蓮:
泡……
── 間
── 目の前の大きな水槽を見つめる蓮
── おもむろに静かに話し始める。
蓮:
私さ、
宿里:
うん?
蓮:(ゆっくりした口調)
…………
誰にも、迷惑を掛けずに。
泡みたいにそっと、消える様に逝けるなら
それは理想の終わり方に近いのかもしれない
って、思うの。
──あくまで自分の理想であってさ。
他の人がそれを望むとは限らないけれど。
私は確かに存在してて、急に消えちゃったら
いろんなところに迷惑かける。
悲しんでくれる人もさ、ありがたいことに、いる。
でも誰にも迷惑、掛けたくないの。だから『消えたい』。
初めから居なかったように、
誰からの記憶からも消えるような消え方が理想だと、思うのよね……
宿里:
わかるわぁ。
雪祈:
わかる……
蓮:
わかってくれるか……!
けどさ、誰かひとりでもいいから、消えた時に……
悲しんで、くれたら。それは幸せだなって思うの。このジレンマ。
雪祈:
蓮が消えたら、わたしたち、めちゃめちゃ悲しむよ……
宿里:
そうだよめっちゃ泣くよ。
蓮:
うん、……しってる。ありがと……
その涙と一緒に、泡に……なっちゃいたいって。
それでも、思っちゃう。
雪祈:
うん……
──そんな人、いたっけ?
なんて言われるくらいの消え方をしてもいいって思うのに
心の何処かでは泣いてくれる人が、いて欲しい。
むしろ本当はずっと、傷として遺りたい。
想われたい、って思うよね。
蓮:
ねー。人間の心って、(似非外国人風に)ムズカシイネ。
雪祈:
突然のカタコト。
宿里:
──病むぐらいは悲しまないでほしいけれど、
いつまでも引きずるほどの悲しみは、あたえたくないけど、
しばらくの間だけは、自分を思って泣いて欲しい。
そういう複雑さ、すごくわかる。
文学的で尊いよね……わかりすぎて、ハゲそう。
蓮:
はげんでもろて……
宿里:
おせっせ?
蓮:
ちがう。
雪祈:
んふっ。
蓮:
──まぁねこれがね、人として、ままならない部分だってわかってる。
わかってても、それを求めてしまうのも人間だからこそ、なのかな。って。
宿里:
はぁあ、深い。
雪祈:
うん、うん。
蓮:
雪祈は……落ち着いてきた?
雪祈:
うん。何とか色々、解決に向かってるし……
ちょっとずつ、快復してきたよ。
宿里:
……良かった……
雪祈:
去年の、今頃は……ほんとに、しんどかった……
幸せに、なるはず、だと思ってた。
幸せになるために……歩いてきたつもりだったのに。
どうして、なんで、上手くできないんだろう。
頑張れないんだろう。
みんなは、上手に頑張ってるのに。
支え合って乗り越えて、行くのに。
生きていくことって、こんなに大変なんだって……
絶望した。
宿里:
慣れって、一番怖いのよ。
もう自分は必要とされてないんだ、って感じた瞬間にさ、
私なんかいなくても、いいんじゃない? って。思っちゃうよ。
生きなきゃいけないのに、定型で満たされない日々が、
終わらせても終わらせても、ずっと沸いてくる。
毎日ずっと、死ぬまで永遠に続く日々が、途方もなくて。
前を見たら、足がすくんで。
必要とされない、他人にとって価値のない存在の自分なのに
どうして生きなきゃいけないんだろう。
苦しい。悲しい。もういっその事、消えてしまいたい。
消えたら……ねぇ、泣いてくれる? って。
求められたかった、必要とされたい。それだけなのになぁ。
雪祈:
…………う、(鼻をすする)
宿里:
…………辛くて、痛かったね……
蓮:
頑張ってるよ、頑張りすぎてるよ……泣け泣けぇ。
宿里:
ユキ、はいティッシュ。あと、はい。ミュート。
雪祈:
ありがと行ってくる(ミュート)
蓮:
必要とされすぎて、依存されて搾取されても、消えたくなるんだろうね。
つまりはぜんぶぜーんぶ、投げ出したいのよ。いっぱいいっぱいなの。
生きるのが辛くなるくらい。
だから生きるためには結局、何かを断ち切るしかないんだろうな。
宿里:
幸せのために、ラクになるために、諦めなきゃいけないこともあるのよね。
わかってた、はずなんだけどなぁ。
蓮:
ヤドリも頑張りすぎ。
宿里:
いやー、欲張りなくせに精神的ヒットポイントなさすぎなんよ。
雪祈:
ただいま。ねねね、お手洗は天井が海月(クラゲ)の水槽だった!
星空みたいだったよ!
宿里:
おかえり、ユキ。マジで!
雪祈:
アメニティーも揃ってるし、小物も可愛いし、スマホあったら確実に写真撮っちゃう……
宿里:
あとで行こー!
蓮:
あ、そういえば、軽食注文できるよ。
宿里:
最高か? やだメニュー表まで可愛い。
雪祈:
アフタヌーンティーセット……!
蓮:
だよねそこ行くよね!
宿里:
決定ですわ。
── 5秒程度の間
雪祈:
のんびりできたねぇ~絶対また来たい。
蓮:
なんかあの場所に行くとさ、時間がゆっくりに感じるんだよね。
宿里:
確かに。フリートーク4本と比べたらめちゃくちゃゆっくり充実した気がする。
蓮:
それな? 一瞬で時間溶けちゃうからねフリト。
雪祈:
全ボイコネ民思ってるそれ、多分きっと。
蓮:
ははは。あー。夕陽が綺麗だ!
宿里:
こんな時間なんだね、もう。
雪祈:
私……
宿里:
ん?
雪祈:
夕焼けと夜の紺色の境目って、空が白っぽくなってるじゃない?
宿里:
ああ、淡く光ってる白っぽいところ?
雪祈:
うん。あの空の色彩に、溶けちゃいたいなって、時々思うの。
苦痛とか嫌な感情、ぜーんぶ浄化されて
身体も心も白い色に溶けられたらいいのに。
宿里:
……うん、似合う。
雪祈:
ありがと。
蓮:
……私は。逆にあの、夕陽のまわりの、一番赫いところ。
灼熱の残り火に燃やされて融けて、蒸発したい。
宿里:
レン……
蓮:
ふふ。ヤドリは?
宿里:
どの空の色も、キレイだなぁ。
けど私は……もう何色にもなりたくない……
蓮:
そっか、それもアリだなぁ。
雪祈:
お疲れ様、だったね。
宿里:
ありがとう……
蓮:
ねぇ。
雪祈:
うん。
蓮:
枯れて、朽ちた花なんて、……忘れてね。
雪祈:
忘れ、られるかな。
宿里:
ドライフラワーにしちゃう。
蓮:
色褪せてまで飾られたくないよぉ。
宿里:
あは。そうなんだよね~
雪祈:
うん……
雪祈:
大変だ、生きるのって。生きてくのって。
蓮:
早く終わらせたい……
宿里:
さくっとね!
雪祈:
物騒w
宿里:
消えたくないって、思える日が
雪祈:
いつかちゃんと、来ますように。
蓮:
今日も現実に打ちのめされて、生きていく。
── 5秒以上待って、終演
モデルのろころこ様、ねねちゃ様に感謝を込めて
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説



体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。





どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる