9 / 21
コメディ
『バレンタイン・デスローリング』(男3:女1:不問1)
しおりを挟む
『バレンタイン・デスローリング』
作 / 鳳月 眠人
狩る側
A:Cのことが好きなドロデレ女(教員)
B:リア充この世から滅ぼしたいマン(理事長)女性でも可
狩られる側
C:Aに狙われるモテメン(養護教諭)
D:Bに狙われるイケメン(教員)
E:巻き込まれた生徒。男女どちらでも
どうぞ演者様ご自身のお名前を入れて遊んでください。
男女変更、言い回し変更、本筋を変えない程度のアドリブ可能。
◆◇ここから台本◇◆
E:
これは、リア充イベントの終わった、夜の学校の出来事。いや、凄惨な事件の記録だ。
── 間
── 舞台は、とある学園──
B:
「出てきてください先生方。あなた方にもう逃げ場なんて、残されちゃいないんですよ」
A:
「ねぇ……このあたりに隠れてらっしゃるんでしょう、C先生?
命までは……取りませんよ? ただあなたの存在を、私だけのものにしたいだけ……」
C:
ごく一般的な。──否。自分にとっては毎年、そわそわしつつも少し、憂鬱な日。
誰かから好かれることは決して、嬉しい事ばかりではない。
D:
なんでこうなった? もう、今日も一日お疲れ様でしたぁーの流れだったろうが!
なんでこんな恐怖体験、しなきゃならないんだ……っ
C:
「……ハァッ、はぁ、くそっ……D先生、大丈夫ですか」
D:
「っつぅ……すみませんC先生、派手に捻挫しました、痛ぇ……」
C:
「内出血でどんどん腫れてきている……すぐにでもアイシングしたいところですが」
A:
「C先生、C先生、C先生……? ふふっ」
C:
「……A先生……完全にハイになってるな、いつもは優しくて生徒思いで……素敵な先生なのに」
D:
「……あの人、実はプロレス好きで好戦的だって噂が……」
── C、D、ハッと息を飲み
── 廊下に響く足音に押し黙る。間
B:
「やはり我が校の二大モテメンは、確かにここへ逃げ込んだようだ」
A:
「ええ、……先程の理事長の撃った射角と、
封鎖してある校舎との位置関係からも、この北棟で間違いありません。
なによりこの……はぁっ、この、医薬品の微かな香り……ふふ」
C:
「ッ!」
── C、慌てて白衣を脱ぎ捨てる。
B:
「うむ、衣服を囮として、別棟へ投げ込んで逃げるほどの余裕はない」
A:
「早く……このウイスキーボンボン弾を……あの麗しいおクチにぶちこみたぁい……ウフッ」
D:
「校舎から脱出するしかない……けど俺は、ちょっと走れそうにないです」
C:
「肩、貸しますから……頑張りましょう」
E:
「……D先生?」
D:
「! E? 下校時刻はとっくに過ぎて」
E:
「(遮って)どうしたんですか、これどういう……うわ、大丈夫ですか」
C:
「(Eに被せて)シーッ!」
──(銃声)
E:
「ヒッ! ひぇ」
C:
「いま、俺とD先生は、何故か武装したB理事長とA先生に……狙われている」
E:
担任と保健室の先生が、理事長と数学の先生に?
「狙われ……? 武装……? 何コレ、……チョコ?」
── E、先刻、壁に小さな穴を穿って転がった弾丸をつまむ。
C:
「そう見えるんだけどね」
D:
「チョコだと思うか? チョコなんかじゃ発砲の衝撃に耐えられない。
砕けるか溶けるはずだ……」
B:
「声がしましたねぇ」
A:
「教室はすべて施錠されている、ということは」
B:
「どんつきの曲がりカドの死角……階段に潜んでいるのかな。この校舎の階段は二つ」
A:
「はい、上階に逃げられてしまえば、反対側の、今私達のいる方の
階段から下りることができる……外に逃げられてしまいますね」
B:
「では二手に別れるかね」
A:
「承知しました。理事長? D先生だけにしてくださいね?」
B:
「はっはっは分かっているとも。C先生はくれてやりますよ」
C:
「……移動しましょう。Eさん、一緒についてきてくれるかな」
E:
「は、はい」
D:
「くそ……早く帰りたい。家で猫が待ってんだよぉ……」
E:
「え、ねこ? バレンタインなのに彼女じゃないんだ……」
D:
「うるさいよ、E。ハァ、せめてこっちにも、防具だの武器だの、あれば」
C:
「……消化器、一本持っとこうか……」
E:
「重くないですか? D先生担いだままだと」
C:
「そうだね……Eさんがコレ装備していてくれる? ピン抜いとこう」
E:
「おお……始めて使うかも……」
C:
「躊躇わずに使ってね、殿を頼めるかな」
E:
「了解っス」
D:
「お前そんなに従順だったか、」
E:
「え? うーんなんだろ、人徳の差ってやつかな?」
D:
「ぐぬ……」
── 階段をひたひたと昇る三人。
── その後を余裕の足取りで追う理事長。
B:
「ふむ、脱ぎ捨てられた白衣……やはり昇って行ったか」
── 階段を昇りながら、インカムで通信を行うAとB。
B:
「A先生? 対象は……二階をスルーしているね。そして、消化器を装備しているようだ」
A:
「かしこまりました。情報、ありがとうございます……ウフ」
B:
「物好きだねぇ君……どうしてあんな男を欲しがるのか、
そもそもアレが、何故あんなにモテるのか……」
A:
「モテるモテないは関係ないのです、理事長。
その存在が、恋しくて欲しくて耐えられないのです……
手に入らなければ……手に入る方法をとるまで」
B:
「フン、忌々しい……忌々しいが、まあいい。思う存分、食らわせてやりなさい」
A:
「ええ」
B:
「フフフ……これが彼らの、最期のチョコになるのだと思うと、
最高に気分がいい……フハハハハハハハ……」
E:(少し息を荒くしながら小声で)
「実は、図書室でさっきまで寝ちゃってたんですよ、自分、鍵持ってます。
ひとまずそこでD先生、休ませた方がいいかも」
D:
「今回ばかりは、助かる……図書室なら、死角も多そうだし」
C:
「よし、理事長とA先生が昇って来る前に、急ぎましょう」
── 四階、図書室。
C:
「図書室、始めて入りましたが広いですね」
E:
「よし、鍵かけた。先生、こっち」
D:
「なるほど、貸出カウンター乗り越えた奥に……司書室があるんだな」
E:
「そそ。あんまり思いつかないでしょ? ここは番号認証だし、図書室常連には楽勝……
ぴっぴっぴっぴーっとな。はい開いた」
D:
「この学校のセキュリティ、だめだな」
E:
「入って入って」
C:
「よし。応急処置します、座ってくださいD先生」
D:
「ありがとうございます……う、痛ぇ……」
C:
「思いっきり、くじきましたね」
D:
「情けない……」
C:
「仕方ないですよ、あんな急に撃たれたら」
── 間
A:
「おかしいですね……二人に出会わなければ人の気配もない……」
B:
「A先生」
A:
「はい、理事長」
B:
「どうやら二人は図書室のようだね」
A:
「図書室……? どうやって中に」
B:
「今も施錠されている。なぜ入れたのかはわからない。だが二人分の足跡が──
ブラックライトパウダーを踏みしめた足跡が、図書室の中に続いているのだよ」
A:
「そう仰られるなら、間違いないのでしょうね」
B:
「二人の足跡の距離が、やけに近い。どちらか負傷でもしているのかな。フフフ」
A:
「理事長のマスターキーの出番ですね。そういえば、図書室には──」
E:
「ここには避難用救助袋が搭載されてるのですっ! ほら」
D:
「お前、ファインプレーすぎるぞ、どうした」
E:
「そうでしょう、内申上げてくれてもいいんですよ?」
D:
「それとこれとは別かな」
E:
「ええーっ巻き込まれ損じゃん」
── 図書室の引き戸を開ける音
C:
「ん? 今……ガラガラって扉開ける音、聞こえませんでした?」
E:
「え……え? 入ってきた?」
D:
「まさか……」
B:
「うーん番号認証ドアか。共通解除コードは……なんだったかな。まぁいい」
── 司書室のドアを、弾丸が破壊してゆく。
E:
「うわわわわ! 来てる来てる!」
D:
「なんでこんなに最短で居場所がバレて……」
C:
「降下しましょう」
D:
「C先生、Eを頼みます。二人だけでも走って先に逃げてくれ」
C:
「何を……そんなことできません!」
D:
「俺は残って、追われないように救助袋を使えなくします。走れねーし」
C:
「なら俺も残ります」
D:
「ッ……」
── 銃尾が、弱ったドアを突き破る。
D:(小声)
「E、隠れてろ」
E:
「先生……」
B:
「フゥ。ようやく相対できましたなぁお二方……ようやっと、悲願を達成出来る」
C:
「B理事長、こんな物騒なこと……犯罪ですよ」
B:
「ふっふっふ、私はねぇ……人の好意を独占し、それをあたかも当然のように振る舞い、
無下にするような傲慢な人間が、心底嫌いなのだよ」
D:
「そんなこと、思ってないですし! 第一、なんなんですかその銃!」
B:
「趣味さ。銃身も弾もお手製だ。保有免許もある。
そして、そういう輩を消し去れるなら、何だってする。
利用できるものは何でも、誰でも利用する……
ヤンデレを拗らせた教員を巻き込んで、勝率を上げる」
D:
「A先生……」
B:
「弾はちゃんとチョコだよ? 細工はしてあるが、紛れもなくね……
二大モテメンにふさわしい弾だろう? ほら大量連射チョコだ、お望み通りくれてやる!
チョコにトラウマを刻みつけてやろう!」
D:
「チッ! なんで俺らを採用したんだよっ!」
C:
「Eさん、消化器!」
E:
「はいっ! んらぁぁぁあ!」
B:
「! 生徒? クッ、煙幕と攻撃を同時に……ゴホッゴホッ」
D:
「E、いいぞ貸して。オラァァァッ」
B:
「グゥッッフ」
C:
「消化器を鈍器として……! D先生、なかなか……やりますね」
D:
「正当防衛の範囲ですよ」
E:
「よーし逃げましょっ、一番、E選手滑りまーす! あああ怖っこわい!」
── 救助袋を降下する三人。
A:
「んふっ、ここから降りてくると思いました」
── 銃声
E:
「ヒィッ!」
C:
「地上で待ち伏せられていたか! 二人とも下がって」
D:
「っ! C先生!? 突っ込んだら危ない!」
A:
「C先生……っ!」
E:
「うおっ、す、すごいスライディング! からの」
D:
「銃をカチ上げて拾った! 速い!」
E:
「そのまま壁ドン!?」
D:
「いや、アレは銃ドンだ! これが、モテメンのチカラ……!」
C:
「──A先生。なぜ、こんなことを」
A:
「──あなたが欲しいからです、C先生」
C:
「なら、なぜ堂々と来ないんです」
A:
「……心の奥底では……手に入ると、思っていないから、でしょうか。
あなたの心に傷を遺したい。
引きずり込んで、噛みちぎるようにしながら、あなたの存在を味わいたい……」
E:
「いや、とんでもねぇサイコパスじゃん……A先生嘘でしょ」
C:
「──俺は。あなたのことをずっと見てましたよ。
こんな手段をとられて後手に回るとは思いませんでしたが……率直に言えば、好きです」
A:
「……? 誰が? 誰を?」
C:
「俺が、あなたを」
── 短い間
A:
「本当に? その場しのぎの言い逃れでは、なく?」
C:
「ええ」
A:
「信じ……られません」
C:
「なら改めて言おう。俺もあなたが、欲しかった。ずっと。
焼けるような想いを持て余していた」
A:
「……」
── 間
A:
「まさかこんなことをして、受け入れられるとは……思いませんでした」
B:
「A先生、何をしている……さっさと討ち取りなさい」
E:
「うわっ、理事長生きてた」
D:
「あの負傷で降りて来たのか、しぶといな」
B:
「君はそれぐらいの拘束、抜けられるだろう。討ち取りなさい」
A:
「……理事長……申し訳ありません。できません……
本当は! そりゃあ健全に生きて、幸せを享受したいに、決まっています!」
── 短い間
B:
「ふ……フフフ、フハハハハハハハ……
よもやよもやだよ……君が裏切るとはね。買い被っていたようだ。
よろしい……リア充となった以上、君も討伐対象だ。A先生」
A:
「……昨日の友は今日の敵、ですね……? 構いませんわ。
私は勝って、未来を掴み取ってみせますB理事長……」
C:
「A先生! あんな弾丸を食らったら……」
A:
「手刀で捌いて、肘へ受け流せば……大丈夫です」
D:
「それアウト! アウトなやつだよ色々と!」
B:
「その意気や良し! バレンタインなどっ! リア充など!
目の前から消え去れえええ」
A:
「奥義ッ! ジャンピング・デスローーール!」
C:
「やめろーっ!」
D:(かぶせて)
「C先生ッ、巻き込まれ……!」
E:(さらにかぶせて)
「ダメです先生! 間に合わな……っ」
──間
D:
「──っえ? アレ?」
A:(Dの猫)
「にゃ~ん」
── 間
D:
「……なんだ。夢か」
E:
ゆ、夢オチなんてサイテー!
D:
「やっべ寝汗やっべ……シャワー浴びよ」
── 完w
作 / 鳳月 眠人
狩る側
A:Cのことが好きなドロデレ女(教員)
B:リア充この世から滅ぼしたいマン(理事長)女性でも可
狩られる側
C:Aに狙われるモテメン(養護教諭)
D:Bに狙われるイケメン(教員)
E:巻き込まれた生徒。男女どちらでも
どうぞ演者様ご自身のお名前を入れて遊んでください。
男女変更、言い回し変更、本筋を変えない程度のアドリブ可能。
◆◇ここから台本◇◆
E:
これは、リア充イベントの終わった、夜の学校の出来事。いや、凄惨な事件の記録だ。
── 間
── 舞台は、とある学園──
B:
「出てきてください先生方。あなた方にもう逃げ場なんて、残されちゃいないんですよ」
A:
「ねぇ……このあたりに隠れてらっしゃるんでしょう、C先生?
命までは……取りませんよ? ただあなたの存在を、私だけのものにしたいだけ……」
C:
ごく一般的な。──否。自分にとっては毎年、そわそわしつつも少し、憂鬱な日。
誰かから好かれることは決して、嬉しい事ばかりではない。
D:
なんでこうなった? もう、今日も一日お疲れ様でしたぁーの流れだったろうが!
なんでこんな恐怖体験、しなきゃならないんだ……っ
C:
「……ハァッ、はぁ、くそっ……D先生、大丈夫ですか」
D:
「っつぅ……すみませんC先生、派手に捻挫しました、痛ぇ……」
C:
「内出血でどんどん腫れてきている……すぐにでもアイシングしたいところですが」
A:
「C先生、C先生、C先生……? ふふっ」
C:
「……A先生……完全にハイになってるな、いつもは優しくて生徒思いで……素敵な先生なのに」
D:
「……あの人、実はプロレス好きで好戦的だって噂が……」
── C、D、ハッと息を飲み
── 廊下に響く足音に押し黙る。間
B:
「やはり我が校の二大モテメンは、確かにここへ逃げ込んだようだ」
A:
「ええ、……先程の理事長の撃った射角と、
封鎖してある校舎との位置関係からも、この北棟で間違いありません。
なによりこの……はぁっ、この、医薬品の微かな香り……ふふ」
C:
「ッ!」
── C、慌てて白衣を脱ぎ捨てる。
B:
「うむ、衣服を囮として、別棟へ投げ込んで逃げるほどの余裕はない」
A:
「早く……このウイスキーボンボン弾を……あの麗しいおクチにぶちこみたぁい……ウフッ」
D:
「校舎から脱出するしかない……けど俺は、ちょっと走れそうにないです」
C:
「肩、貸しますから……頑張りましょう」
E:
「……D先生?」
D:
「! E? 下校時刻はとっくに過ぎて」
E:
「(遮って)どうしたんですか、これどういう……うわ、大丈夫ですか」
C:
「(Eに被せて)シーッ!」
──(銃声)
E:
「ヒッ! ひぇ」
C:
「いま、俺とD先生は、何故か武装したB理事長とA先生に……狙われている」
E:
担任と保健室の先生が、理事長と数学の先生に?
「狙われ……? 武装……? 何コレ、……チョコ?」
── E、先刻、壁に小さな穴を穿って転がった弾丸をつまむ。
C:
「そう見えるんだけどね」
D:
「チョコだと思うか? チョコなんかじゃ発砲の衝撃に耐えられない。
砕けるか溶けるはずだ……」
B:
「声がしましたねぇ」
A:
「教室はすべて施錠されている、ということは」
B:
「どんつきの曲がりカドの死角……階段に潜んでいるのかな。この校舎の階段は二つ」
A:
「はい、上階に逃げられてしまえば、反対側の、今私達のいる方の
階段から下りることができる……外に逃げられてしまいますね」
B:
「では二手に別れるかね」
A:
「承知しました。理事長? D先生だけにしてくださいね?」
B:
「はっはっは分かっているとも。C先生はくれてやりますよ」
C:
「……移動しましょう。Eさん、一緒についてきてくれるかな」
E:
「は、はい」
D:
「くそ……早く帰りたい。家で猫が待ってんだよぉ……」
E:
「え、ねこ? バレンタインなのに彼女じゃないんだ……」
D:
「うるさいよ、E。ハァ、せめてこっちにも、防具だの武器だの、あれば」
C:
「……消化器、一本持っとこうか……」
E:
「重くないですか? D先生担いだままだと」
C:
「そうだね……Eさんがコレ装備していてくれる? ピン抜いとこう」
E:
「おお……始めて使うかも……」
C:
「躊躇わずに使ってね、殿を頼めるかな」
E:
「了解っス」
D:
「お前そんなに従順だったか、」
E:
「え? うーんなんだろ、人徳の差ってやつかな?」
D:
「ぐぬ……」
── 階段をひたひたと昇る三人。
── その後を余裕の足取りで追う理事長。
B:
「ふむ、脱ぎ捨てられた白衣……やはり昇って行ったか」
── 階段を昇りながら、インカムで通信を行うAとB。
B:
「A先生? 対象は……二階をスルーしているね。そして、消化器を装備しているようだ」
A:
「かしこまりました。情報、ありがとうございます……ウフ」
B:
「物好きだねぇ君……どうしてあんな男を欲しがるのか、
そもそもアレが、何故あんなにモテるのか……」
A:
「モテるモテないは関係ないのです、理事長。
その存在が、恋しくて欲しくて耐えられないのです……
手に入らなければ……手に入る方法をとるまで」
B:
「フン、忌々しい……忌々しいが、まあいい。思う存分、食らわせてやりなさい」
A:
「ええ」
B:
「フフフ……これが彼らの、最期のチョコになるのだと思うと、
最高に気分がいい……フハハハハハハハ……」
E:(少し息を荒くしながら小声で)
「実は、図書室でさっきまで寝ちゃってたんですよ、自分、鍵持ってます。
ひとまずそこでD先生、休ませた方がいいかも」
D:
「今回ばかりは、助かる……図書室なら、死角も多そうだし」
C:
「よし、理事長とA先生が昇って来る前に、急ぎましょう」
── 四階、図書室。
C:
「図書室、始めて入りましたが広いですね」
E:
「よし、鍵かけた。先生、こっち」
D:
「なるほど、貸出カウンター乗り越えた奥に……司書室があるんだな」
E:
「そそ。あんまり思いつかないでしょ? ここは番号認証だし、図書室常連には楽勝……
ぴっぴっぴっぴーっとな。はい開いた」
D:
「この学校のセキュリティ、だめだな」
E:
「入って入って」
C:
「よし。応急処置します、座ってくださいD先生」
D:
「ありがとうございます……う、痛ぇ……」
C:
「思いっきり、くじきましたね」
D:
「情けない……」
C:
「仕方ないですよ、あんな急に撃たれたら」
── 間
A:
「おかしいですね……二人に出会わなければ人の気配もない……」
B:
「A先生」
A:
「はい、理事長」
B:
「どうやら二人は図書室のようだね」
A:
「図書室……? どうやって中に」
B:
「今も施錠されている。なぜ入れたのかはわからない。だが二人分の足跡が──
ブラックライトパウダーを踏みしめた足跡が、図書室の中に続いているのだよ」
A:
「そう仰られるなら、間違いないのでしょうね」
B:
「二人の足跡の距離が、やけに近い。どちらか負傷でもしているのかな。フフフ」
A:
「理事長のマスターキーの出番ですね。そういえば、図書室には──」
E:
「ここには避難用救助袋が搭載されてるのですっ! ほら」
D:
「お前、ファインプレーすぎるぞ、どうした」
E:
「そうでしょう、内申上げてくれてもいいんですよ?」
D:
「それとこれとは別かな」
E:
「ええーっ巻き込まれ損じゃん」
── 図書室の引き戸を開ける音
C:
「ん? 今……ガラガラって扉開ける音、聞こえませんでした?」
E:
「え……え? 入ってきた?」
D:
「まさか……」
B:
「うーん番号認証ドアか。共通解除コードは……なんだったかな。まぁいい」
── 司書室のドアを、弾丸が破壊してゆく。
E:
「うわわわわ! 来てる来てる!」
D:
「なんでこんなに最短で居場所がバレて……」
C:
「降下しましょう」
D:
「C先生、Eを頼みます。二人だけでも走って先に逃げてくれ」
C:
「何を……そんなことできません!」
D:
「俺は残って、追われないように救助袋を使えなくします。走れねーし」
C:
「なら俺も残ります」
D:
「ッ……」
── 銃尾が、弱ったドアを突き破る。
D:(小声)
「E、隠れてろ」
E:
「先生……」
B:
「フゥ。ようやく相対できましたなぁお二方……ようやっと、悲願を達成出来る」
C:
「B理事長、こんな物騒なこと……犯罪ですよ」
B:
「ふっふっふ、私はねぇ……人の好意を独占し、それをあたかも当然のように振る舞い、
無下にするような傲慢な人間が、心底嫌いなのだよ」
D:
「そんなこと、思ってないですし! 第一、なんなんですかその銃!」
B:
「趣味さ。銃身も弾もお手製だ。保有免許もある。
そして、そういう輩を消し去れるなら、何だってする。
利用できるものは何でも、誰でも利用する……
ヤンデレを拗らせた教員を巻き込んで、勝率を上げる」
D:
「A先生……」
B:
「弾はちゃんとチョコだよ? 細工はしてあるが、紛れもなくね……
二大モテメンにふさわしい弾だろう? ほら大量連射チョコだ、お望み通りくれてやる!
チョコにトラウマを刻みつけてやろう!」
D:
「チッ! なんで俺らを採用したんだよっ!」
C:
「Eさん、消化器!」
E:
「はいっ! んらぁぁぁあ!」
B:
「! 生徒? クッ、煙幕と攻撃を同時に……ゴホッゴホッ」
D:
「E、いいぞ貸して。オラァァァッ」
B:
「グゥッッフ」
C:
「消化器を鈍器として……! D先生、なかなか……やりますね」
D:
「正当防衛の範囲ですよ」
E:
「よーし逃げましょっ、一番、E選手滑りまーす! あああ怖っこわい!」
── 救助袋を降下する三人。
A:
「んふっ、ここから降りてくると思いました」
── 銃声
E:
「ヒィッ!」
C:
「地上で待ち伏せられていたか! 二人とも下がって」
D:
「っ! C先生!? 突っ込んだら危ない!」
A:
「C先生……っ!」
E:
「うおっ、す、すごいスライディング! からの」
D:
「銃をカチ上げて拾った! 速い!」
E:
「そのまま壁ドン!?」
D:
「いや、アレは銃ドンだ! これが、モテメンのチカラ……!」
C:
「──A先生。なぜ、こんなことを」
A:
「──あなたが欲しいからです、C先生」
C:
「なら、なぜ堂々と来ないんです」
A:
「……心の奥底では……手に入ると、思っていないから、でしょうか。
あなたの心に傷を遺したい。
引きずり込んで、噛みちぎるようにしながら、あなたの存在を味わいたい……」
E:
「いや、とんでもねぇサイコパスじゃん……A先生嘘でしょ」
C:
「──俺は。あなたのことをずっと見てましたよ。
こんな手段をとられて後手に回るとは思いませんでしたが……率直に言えば、好きです」
A:
「……? 誰が? 誰を?」
C:
「俺が、あなたを」
── 短い間
A:
「本当に? その場しのぎの言い逃れでは、なく?」
C:
「ええ」
A:
「信じ……られません」
C:
「なら改めて言おう。俺もあなたが、欲しかった。ずっと。
焼けるような想いを持て余していた」
A:
「……」
── 間
A:
「まさかこんなことをして、受け入れられるとは……思いませんでした」
B:
「A先生、何をしている……さっさと討ち取りなさい」
E:
「うわっ、理事長生きてた」
D:
「あの負傷で降りて来たのか、しぶといな」
B:
「君はそれぐらいの拘束、抜けられるだろう。討ち取りなさい」
A:
「……理事長……申し訳ありません。できません……
本当は! そりゃあ健全に生きて、幸せを享受したいに、決まっています!」
── 短い間
B:
「ふ……フフフ、フハハハハハハハ……
よもやよもやだよ……君が裏切るとはね。買い被っていたようだ。
よろしい……リア充となった以上、君も討伐対象だ。A先生」
A:
「……昨日の友は今日の敵、ですね……? 構いませんわ。
私は勝って、未来を掴み取ってみせますB理事長……」
C:
「A先生! あんな弾丸を食らったら……」
A:
「手刀で捌いて、肘へ受け流せば……大丈夫です」
D:
「それアウト! アウトなやつだよ色々と!」
B:
「その意気や良し! バレンタインなどっ! リア充など!
目の前から消え去れえええ」
A:
「奥義ッ! ジャンピング・デスローーール!」
C:
「やめろーっ!」
D:(かぶせて)
「C先生ッ、巻き込まれ……!」
E:(さらにかぶせて)
「ダメです先生! 間に合わな……っ」
──間
D:
「──っえ? アレ?」
A:(Dの猫)
「にゃ~ん」
── 間
D:
「……なんだ。夢か」
E:
ゆ、夢オチなんてサイテー!
D:
「やっべ寝汗やっべ……シャワー浴びよ」
── 完w
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説



体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。





どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる