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湖礁地方
第11話
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『 え・あ・・の・こ・り・ ・? 』
『 可・・続行・せ・よ 』
──悪くない。
少年たちの判断と指揮は、慣れない環境下であっても卒のないものだ。若手ばかりにしては、悪くない。
また、一発目にザクロを罰した以外は、次々に交代していく指揮者の指示に、背く者はいなかった。
それどころか、指揮が最後のラヴァインに至る頃には、誰の指示がなくとも適切な間で、隊員たちは互いのサポートをするまでになっていた。
なぜあんなに特記だらけなんだ、と、ユイガは撃譜を解放しながら思案する。
自分で考える思考力と、命令に従う精神力とのバランス。これが適切である隊ほど、集団として強いと言えよう。
ブリングや宗教都合の軍規違反はさておき、命令違反系の隊員は、その判断力が前隊の調和を乱していたのだろうか。
単に、前の上官との相性が悪かったのか、それとも自分の調教が効いているのか。
内海からの"帰り道"には、専用のルートがある。
先に"1時間"、とエア分量の目安を提示し、しかし入り口の縦孔へと引き返さないことで不安にさせる。それによって、単独行動や命令違反を炙り出そうとしたのだが……
エア残量確認のサインはあれど、続行の令に異を唱える者はいない。ユイガは正直なところ、リアムあたりは反抗すると思っていた。
この隊は、恐怖耐性は高い。となれば、命令違反の原因は、"己の生命を脅かす恐怖"の類ではない可能性がある。
実はそれこそが、一番厄介なのだ。
『 し・き・交代・・全体・自分・に・追従 』
スライムがようやく疎らになってきた深海の底。
武骨な岩肌に、魔晶石がごろごろと生えて、あたりは薄明るい。それを光源に成長した草が水流にそよいでいる。
宵國の草原のような静かな水底に、大きくて深い、渓谷のような地形がある。ユイガは、とある目印を見つけると、ひょいと魔晶石を蹴ってその下と降りていった。
遅れて少年たちも、隊長に追従して降りてきた。だが、うっすらと繋がりかけているユイガの特恵"共振"の効果で、隊員たちの感情が乱れているのが分かる。
無理もない。水圧でエアが急激に減っている。何処まで行くのかと気が気ではないはずだ。
水の温度はうって変わって冷たく、泳いでいる野生生物も様相がガラリと変わった。
『 こ・わ・け・れ・ば・・戻れ 』
しかし逃げ道を示せば、ややあって動揺の波は静まってゆく。と同時に、特恵のシンクロ値がほんの少し上昇した気がした。……皆、難儀な性格をしている。
闇の中で僅かに口角を上げたのは、──いつの間にかユイガのラッシュガードの端っこを掴んで泳いでいたナイリにも、悟られなかった。
海溝を深く深く落ちていくと、そこに突如として人工的に拓けた場所が出現する。
それはまるで、海溝の絶壁に設えられた巨大な神棚。
ユイガはその拓けた場所へ降り立ち、隊員たちを呼び込んだ。
天井はさほど高くない。古い様式の柱が建立の年代を標す。ほんのりと淡い魔晶石の灯りが、石畳に刻まれた魔方陣に陰影をつける。中規模転移の術式だ。
ここが内海からの、帰り道の専用ルートである。
ユイガは腰のツールバッグに手を突っ込んだ。取り出したのは階級章と、手のひらサイズの、厚みのある円盤だ。魔晶石の塊である。
隊員たちが全員、魔方陣の内側に入っていることを確認すると、ユイガはその中心部の窪みに手持ちの円盤を嵌め込んだ。
魔方陣が起動して光を放つ。
ユイガの目前に光の円柱が立ち上る。ユイガはそこへ自らの階級章を翳した。
──転移が発動する。
身体が情報の粒となって、異空間を運ばれる感覚──
一瞬のそれが終わると、11人は急に水中から解放された。身体が、少しだけ重い。
共に転移されてきた一部の水が、ざあ、と落ちる。落ちる……? いや、落ちていない。その落下は妙に緩やかで、水は落ちきる前に、宙に丸く浮いた。
あたりは相変わらずの仄暗い岩肌。祭壇のような空間だ。床面の魔方陣も変わらない。
ただ、その空間は先程よりも二回りは広く、天井も高い。岩肌から伸びる魔晶石の位置や色も違う。
訳が分からない少年たちは隊長を窺い見る。
だが先んじて特恵で見渡したのだろうか、ものすごい変顔でノイだけはユイガを見ていた。謀りやがったな、とでも言いたげだ。
吹き出しそうになったのを飲み込み涼しい顔をつくって、ユイガは階級章だけをバッグにしまう。そして、おもむろにマウスピースを口から外した。
「もう取ってもいいぞ」
「っん、……ここ、何です……か……? っ!!?」
入ってきた方を振り返ったニーノが息を詰めた。次々に振り返る少年たちの顔が驚愕に染まる。
後ろには、教科書で見るような、母星が見える。
ぽっかりと大きく、それは星空に浮いている。
いつも見上げている筈の、三つある小さな月の一つ。その地に第三隊は、足を下ろしていた。
誰が予測できただろう。海底から衛星への転移など。ただの宇宙旅行でないことぐらい、容易く理解できる。
「ッうそ、」
「第一衛星だ。ここから、ミーミスヴルムまで戻る」
「は……はぁ!?」
「うちの隊はちょうど良く、新兵・二期目・三期目が三名ずついるからな。同期三人一組になって、協力して障壁を大きく、かつ分厚く展開しろ。厚みがないと宇宙線で死ぬ。
また、当然ながらエアはここにしかない。十分に障壁内でエアを確保するように。マウスピースは預かる。引き換えに、インカムを配る」
「うっそ……うそおおお、マジの特務隊訓練じゃん……」
「ただの降下訓練だ」
ルチルの嘆きにしれっと答えたユイガは、隊員たちをドン引かせたまま回収と配布をし始めた。そして尚も、話を続ける。
「この晶石円盤を外すと結界が解除されて、外に投げ出される。そうしたらまずは衛星の引力圏を脱する。通常飛行で苦はないだろう。が、初速に全力を出せ。後の移動が楽になる。途中、ヘルーワィムに遭遇しても無視していい。俺が駆除する。
母星大気圏へ突入する時は、躊躇わずにそのまま真っ直ぐ入れ。突入前に怯んでバランスを乱すと制御できないまま落ちて酷い目をみるぞ。
突入後、降下速度は音速を超える。空気の圧熱から身を守りきって、高度20,000まで達したら三人一組を解いて良い。ここまでの目安は1,000秒」
ごくりと喉を鳴らす音が聞こえた。
「いや……ミーミスヴルムどこよ……」
「夜側の、特に暗いエリアを目指せ。ノイ、先導しろ」
「そうなりますよねやっぱ……」
各員、冷や汗を垂らして──同期と組めという指示に、皆お互いをちらりと見やる。
「障壁、張れなくて……ごめん」
「ううん、気にしないで!」
「会敵したら、免疫よろしく頼むね」
「ん、そのときは任せて」
「全力で乗り切ろう」
三期目のリレイド、ニーノ、アルヴィスは穏やかだ。ただ、ニーノの表情がいつもより堅い。障壁の持続に不安があるのを自覚しているのだろう。
「ニーノ、光の出力を一瞬で終わらせるな。魔力を周辺に留め続けて、空っぽになるぐらい出し続けろ」
「はい……!」
アルヴィスが細かい調整を行い、補填できれば何とかなるだろう……ならなくては困る。
さて、ユイガの懸念は新兵と二期目だ。なんとも協力とは縁遠い組み合わせである。もちろんわざとだ。
「なんかあれッスね、このメンツで三人集まるとさ、某ゲームの御三家みたい~」
「意味分かんないこと言うなよ、世界観壊れるだろ……」
「ッ……お前ら分かってるのか、失敗すれば死ぬんだぞ!?」
作者都合でノイがボケる。それにレオンがボケを重ねる。
気楽な様子の二人を見て、事の難しさを本当に理解しているのかと、リアムは怒りがこみ上げた。リアムごめんね。
……なにしろ先程までの魔工具はないのだ。放射線も空気も通さないような、途中で焼け切れないような。綿密で堅固で純度の高い障壁を、1,000秒も維持しなければならない。初めての宇宙空間で。
翠色と赤色の少年は手を繋ぎ、空いた方の手をリアムに差し出した。複数人での繊細な魔力調整は肌が触れていた方がやりやすい。合理的な判断だ。
何故この二人となのか。アルヴィス様とラヴァイン様であればよかったのに、と心中で恨み言を溢し、リアムはレオンを睨み付ける。レオンは、ふい、と顔を反らした。
その態度に更に苛つきを募らせ、だが、嫌々ながら渋々ながら、差し出された手をとる。
初めて繋ぐその手はどちらも──震えていた。水気も相まって、冷たい。リアムは目を見開いて一度瞬きして、黙って二人の手を強く握った。
「でも空気も水もないからなー、どうしよ……」
「……二重障壁にして間にも空気をいれればいい。そうすれば三重障壁になって姿勢制御と温度調整にも役立つ。妥当だろう」
「おー! それだ! じゃあレオンは内側の障壁な、暖房にしよ!」
「……わかった」
新兵が意外なまとまりを見せる一方、ルチルとザクロは後悔していた。海溝に入ってすぐにあったユイガからの『怖ければ戻れ』のサインになぜ従わなかったのか、と。
「言っておくが、引き返していれば丸一日令威だったからな」
「なんかその方がまだマシな気ィしてくるわ」
「新兵みたいに手繋ぐか? あー、自分で言ってゾッとした」
「俺あんなに撃譜連発で撃ったの初だし……今もうかなーりしんどいわ既に。マジで」
「たいちょおー、二期兵は失敗して死ぬわこれぇ」
「お世話になりましたー」
逃避半分、冗談半分。二人が息の合った掛け合いをしていると、ふと身体が楽になった。
「……勝手に注入すんなよ」
「生還率を上げるために当然だろう」
魔力譲渡だ。真っ直ぐに翳した腕を下ろし、ラヴァインは
スッと目を細める。
「二人とも撃譜ができるのか」
「できねーよこいつだけだっつーの」
「ふん、恥もないわけか」
「はぁ……うぜぇなほんと」
「協力してください、ぐらい言えよ」
「言うわけないだろう、そんな事」
白銀の青年は譲りもしなければ、媚びもしない。だが命令も説得もしなかった。
「自由にすればいい。臨機応変に」
堂々たる姿勢は崩さない。背負っている家名にかけて。
「ユイガ隊長、俺は……?」
「ナイリは俺と組む。推進と制御は俺がやる。お前は撃譜で障壁を作れ」
「え……?」
戸惑いの声を流して、ユイガは全員に向き直る。
「最後に俺から全体に特恵を賦与する。まだ効果は薄いだろうが、多少マシだろう。────敬礼!」
腹から声を出して圧を乗せる。少年たちは反射的に敬礼体制をとった。この調整期間で、しっかり身体が反応するようになってきている。
そんな隊員たちに、特恵を賦与する。精神の世界でイメージをする。少年たちから伸ばされかけている信頼の糸。まだ頼りない細さのそれらを自分に結びつけて、力を送る。
今はまだ、ここまでしかできない。
知らず、臥せていた目線を上げると、皆一様にユイガの瞳を見ていた。
「直れ! ──これより降下訓練を行う! 傷一つ作ることなく、目的地へ帰還せよ! 互いを補い合い、死力を尽くせ! 以上! 障壁展開!」
「なんか……胸んとこじわっじわしてちょっと気持ち悪いんだけど」
「最初だけだ。早く障壁を張れ」
「あ、凄! …………出力全然違う!」
「もっと分厚くしろ! 死にたいのか!」
「まぁじか! まだ薄い!?」
「内と外で直接話せる内は死ぬと思え!」
「ぴええ」
「ううっ、ホントに死ぬ気で練らないと……!」
「気負いすぎないで。波力種に力を借りれば、ずっと長く保てるはずだ」
「フィイナ……うん、頼りにしてる」
障壁を厚く、大きく。周りの音は聞こえなくなって行く。ザザ、とインカムが通信を受けた。
《 降下開始! 》
* * *
「っできません、怖い……!!」
「理論上と俺の見立てでは、できる」
障壁が三つできあがる頃になっても、ナイリはチャージができずにいた。ユイガが"できる"と告げても変わらない。震える少年に付き合っていれば他隊員の魔力が持たない。ユイガは自分とナイリを障壁で囲んだ。
「降下開始!」
通信で指示を送り、床の窪みから円盤を外す。真空が空気を貪り、4つの障壁は外へ投げ出された。
「……ッ!!」
「早くチャージを」
「で、できません。やったこと、ない、 から」
「誰でも初めはそうだ」
ナイリは軍学校を出ていない。実力はあれど年齢は低く、圧倒的に覚悟も足りない。
「撃譜は、心象をそのまま顕現させる技術だ。あれだけ何種類もの撃譜が使えて、できないわけがない」
「もし! 巻き込んだら!?」
ナイリは薄く涙を浮かべ、ユイガを見上げて抗議する。少年の視ている世界は暗い。撃譜を放つとき、真っ暗な闇に浮かぶのは自分と、滅ぼす対象だけだ。
「こんな至近距離で、制御不足で、消えて、しまったら」
「消えない」
震える声を、否定し断言して、ユイガは抉じ開ける。
「初陣の英雄戦だって、誰一人、大きな欠損はなかった。無意識にお前は加減している。
……この障壁の外側に、包むように撃て。"自分"の括りに俺と空気を入れろ」
大きな骨ばった手が、少年の手を握る。その力強さに幾分か震えが収まる。けれどもそれでも沸き上がる不安を、ナイリはそのまま感情エネルギーとして練り始めた。
想像し作り出すのはブラックホールの中心点。宇宙線だろうとヘルーワィムだろうと、何も通さず食らう闇の、その一点。
この人は殲滅対象じゃない。ここにある空気も、食べてはいけない、漏らしてもいけない。ユイガの言ったイメージに従って、自己の認識を一度溶かす。この障壁が自分なのだと思い込む。
「────【蝕】……っ」
放出してからやっぱり恐怖が勝り、エネルギーがブレた。黒色の少年は思わずユイガに抱きつく。存在がそこに在るか確かめるように、ぎゅうと身を寄せ背中に手をまわす。
ユイガは掌で、少年の頭をやわらかく撫でた。
二人一塊になったまま身体を浮かせて、少しずつ自分の障壁を薄くして、解除してゆく。真っ暗な中で、小さな灯りだけを魔力で灯す。
「……できるだろうが。そのまま200秒、維持」
「にひゃ、く……?」
「先に行った連中に追い付く」
言うや否やユイガはナイリを抱えたまま、半端ない速度で宇宙空間を飛行しはじめた。隊員たちと繋いだ特恵を手繰るようにして方向を割り出し、辿る。
幸い、進行方向にはヘルーワィムはいない。だが、闇が細かい礫を沢山食うのを感じたナイリは、ユイガにしがみつきながら、展開している撃譜の密度を懸命に上げた。
三つの障壁は直に大気圏へ突入間近な距離まで降りていた。思ったより速い。障壁維持に余裕がない分、速さを出して補ったのだろう。宣言通り先発に追い付いたユイガは、全体への通信を入れ、少年たちに与える魔力を強める。
「第三隊、死んでいないだろうな?」
《 一期兵、ッはぁっ、ギリギリ、死んでません 》
《 三期兵っ、キツそうです……! 》
苦しそうなリアムの声と、いつもはあまり動じないリレイドの焦ったような声が返る。二期兵からの応答がない。
「二期兵?」
《 ……二期兵、問題ありません 》
《 問題、ありまくりだわ、クソッ 》
《 あ"ー……とりあえず、生きてる 》
応答の遅れた二期も生きていた。だが、芳しくない雰囲気が伝わってくる。
「被爆したか」
《 王子サマがね 》
《 ほんの、少量です 》
《 これはなー。ライがやりすぎたわな 》
《 黙れシュアン! ほらッこれで治っただろうがァ! 》
《 お二人方、ラヴァイン様に、また何か、したんですか、こんな状況下で、許しませんよ 》
リアムが通信で噛みつく。その声は絶え絶えだ。
《 とるに足らないことだった。リアム、気にしなくていい 》
《 ハイハイ、二期兵、大気圏突入──うおクソ暑ぅ!! 》
「山場だ、集中しろ」
今、夜空には四つの火球が流れているだろう。障壁にぶつかり急に圧縮された空気が、鉄をも溶かす高温になって襲う。ちょうど、ヘルーワィムの熱線と似た温度だ。
《 障壁の底面積を縮めろ。私は局所的に、時間を引き伸ばして温度対処する 》
《 簡単に、言って、くれンなぁ……! 》
《 ノイ、減速させろ! 障壁っ、もたない……ッ! 》
《 うううあああムリいい!! 空気薄すぎいいいい!! 》
《 はぁっ、ふぅっ、は、あ、ぐ、っうう……ッ!! 》
《 頑張れ、っあと、少し……!! 》
それぞれが必死になって、残る魔力を絞り出す。
「っ、はぁ、っは、ッぅ……」
「きついか」
ナイリも、こんなに長時間撃譜を維持したことなど初めてだった。息が乱れてきている。問われた少年は苦しげに顔を歪めながら、片腕を進行方向へ伸ばした。
「……っ大丈夫、です……! ──【黯】」
チャージし直し、新たに放たれた闇が外気を食らう。
《 高度20,000、全、分隊抜けた!! んにいぃぃいッ止っまれえええ!! 》
《 個に、っ別れた方がいい、障壁を張れ! 》
《 ノイ! ノイ!? 》
《 ふっァ、ごめ、落ちてた!? 》
「ノイ、先導しろ。最後まで気を抜くな!」
《 うっくぅぅ鬼ぃ……!! 》
ノイは鼻血を拭って特恵で視る。今いるのは、ちゃんとミーミスヴルムの上空だ。だが昼間いた飛行挺まではまだ距離も高さもある。必要最低限の障壁で、少年たちは風を切って飛んでゆく。
《 このまま障壁で飛ぼう、ニーノ、……もう、緩めていい 》
《 ぅ、……ふぃいな、ごめ、ん 》
《 アルヴィス! 》
《 大丈夫、もたせる……っ!! 》
通信から力尽きる声が、励ましが、詠唱が、飛び交う。そこへ、やや緊迫したノイの声が加わった。
《 敵、っ発見。進行9C方向、ヘルーワィム3小隊、尖兵なし、敏捷β、γ欠け── 》
『 可・・続行・せ・よ 』
──悪くない。
少年たちの判断と指揮は、慣れない環境下であっても卒のないものだ。若手ばかりにしては、悪くない。
また、一発目にザクロを罰した以外は、次々に交代していく指揮者の指示に、背く者はいなかった。
それどころか、指揮が最後のラヴァインに至る頃には、誰の指示がなくとも適切な間で、隊員たちは互いのサポートをするまでになっていた。
なぜあんなに特記だらけなんだ、と、ユイガは撃譜を解放しながら思案する。
自分で考える思考力と、命令に従う精神力とのバランス。これが適切である隊ほど、集団として強いと言えよう。
ブリングや宗教都合の軍規違反はさておき、命令違反系の隊員は、その判断力が前隊の調和を乱していたのだろうか。
単に、前の上官との相性が悪かったのか、それとも自分の調教が効いているのか。
内海からの"帰り道"には、専用のルートがある。
先に"1時間"、とエア分量の目安を提示し、しかし入り口の縦孔へと引き返さないことで不安にさせる。それによって、単独行動や命令違反を炙り出そうとしたのだが……
エア残量確認のサインはあれど、続行の令に異を唱える者はいない。ユイガは正直なところ、リアムあたりは反抗すると思っていた。
この隊は、恐怖耐性は高い。となれば、命令違反の原因は、"己の生命を脅かす恐怖"の類ではない可能性がある。
実はそれこそが、一番厄介なのだ。
『 し・き・交代・・全体・自分・に・追従 』
スライムがようやく疎らになってきた深海の底。
武骨な岩肌に、魔晶石がごろごろと生えて、あたりは薄明るい。それを光源に成長した草が水流にそよいでいる。
宵國の草原のような静かな水底に、大きくて深い、渓谷のような地形がある。ユイガは、とある目印を見つけると、ひょいと魔晶石を蹴ってその下と降りていった。
遅れて少年たちも、隊長に追従して降りてきた。だが、うっすらと繋がりかけているユイガの特恵"共振"の効果で、隊員たちの感情が乱れているのが分かる。
無理もない。水圧でエアが急激に減っている。何処まで行くのかと気が気ではないはずだ。
水の温度はうって変わって冷たく、泳いでいる野生生物も様相がガラリと変わった。
『 こ・わ・け・れ・ば・・戻れ 』
しかし逃げ道を示せば、ややあって動揺の波は静まってゆく。と同時に、特恵のシンクロ値がほんの少し上昇した気がした。……皆、難儀な性格をしている。
闇の中で僅かに口角を上げたのは、──いつの間にかユイガのラッシュガードの端っこを掴んで泳いでいたナイリにも、悟られなかった。
海溝を深く深く落ちていくと、そこに突如として人工的に拓けた場所が出現する。
それはまるで、海溝の絶壁に設えられた巨大な神棚。
ユイガはその拓けた場所へ降り立ち、隊員たちを呼び込んだ。
天井はさほど高くない。古い様式の柱が建立の年代を標す。ほんのりと淡い魔晶石の灯りが、石畳に刻まれた魔方陣に陰影をつける。中規模転移の術式だ。
ここが内海からの、帰り道の専用ルートである。
ユイガは腰のツールバッグに手を突っ込んだ。取り出したのは階級章と、手のひらサイズの、厚みのある円盤だ。魔晶石の塊である。
隊員たちが全員、魔方陣の内側に入っていることを確認すると、ユイガはその中心部の窪みに手持ちの円盤を嵌め込んだ。
魔方陣が起動して光を放つ。
ユイガの目前に光の円柱が立ち上る。ユイガはそこへ自らの階級章を翳した。
──転移が発動する。
身体が情報の粒となって、異空間を運ばれる感覚──
一瞬のそれが終わると、11人は急に水中から解放された。身体が、少しだけ重い。
共に転移されてきた一部の水が、ざあ、と落ちる。落ちる……? いや、落ちていない。その落下は妙に緩やかで、水は落ちきる前に、宙に丸く浮いた。
あたりは相変わらずの仄暗い岩肌。祭壇のような空間だ。床面の魔方陣も変わらない。
ただ、その空間は先程よりも二回りは広く、天井も高い。岩肌から伸びる魔晶石の位置や色も違う。
訳が分からない少年たちは隊長を窺い見る。
だが先んじて特恵で見渡したのだろうか、ものすごい変顔でノイだけはユイガを見ていた。謀りやがったな、とでも言いたげだ。
吹き出しそうになったのを飲み込み涼しい顔をつくって、ユイガは階級章だけをバッグにしまう。そして、おもむろにマウスピースを口から外した。
「もう取ってもいいぞ」
「っん、……ここ、何です……か……? っ!!?」
入ってきた方を振り返ったニーノが息を詰めた。次々に振り返る少年たちの顔が驚愕に染まる。
後ろには、教科書で見るような、母星が見える。
ぽっかりと大きく、それは星空に浮いている。
いつも見上げている筈の、三つある小さな月の一つ。その地に第三隊は、足を下ろしていた。
誰が予測できただろう。海底から衛星への転移など。ただの宇宙旅行でないことぐらい、容易く理解できる。
「ッうそ、」
「第一衛星だ。ここから、ミーミスヴルムまで戻る」
「は……はぁ!?」
「うちの隊はちょうど良く、新兵・二期目・三期目が三名ずついるからな。同期三人一組になって、協力して障壁を大きく、かつ分厚く展開しろ。厚みがないと宇宙線で死ぬ。
また、当然ながらエアはここにしかない。十分に障壁内でエアを確保するように。マウスピースは預かる。引き換えに、インカムを配る」
「うっそ……うそおおお、マジの特務隊訓練じゃん……」
「ただの降下訓練だ」
ルチルの嘆きにしれっと答えたユイガは、隊員たちをドン引かせたまま回収と配布をし始めた。そして尚も、話を続ける。
「この晶石円盤を外すと結界が解除されて、外に投げ出される。そうしたらまずは衛星の引力圏を脱する。通常飛行で苦はないだろう。が、初速に全力を出せ。後の移動が楽になる。途中、ヘルーワィムに遭遇しても無視していい。俺が駆除する。
母星大気圏へ突入する時は、躊躇わずにそのまま真っ直ぐ入れ。突入前に怯んでバランスを乱すと制御できないまま落ちて酷い目をみるぞ。
突入後、降下速度は音速を超える。空気の圧熱から身を守りきって、高度20,000まで達したら三人一組を解いて良い。ここまでの目安は1,000秒」
ごくりと喉を鳴らす音が聞こえた。
「いや……ミーミスヴルムどこよ……」
「夜側の、特に暗いエリアを目指せ。ノイ、先導しろ」
「そうなりますよねやっぱ……」
各員、冷や汗を垂らして──同期と組めという指示に、皆お互いをちらりと見やる。
「障壁、張れなくて……ごめん」
「ううん、気にしないで!」
「会敵したら、免疫よろしく頼むね」
「ん、そのときは任せて」
「全力で乗り切ろう」
三期目のリレイド、ニーノ、アルヴィスは穏やかだ。ただ、ニーノの表情がいつもより堅い。障壁の持続に不安があるのを自覚しているのだろう。
「ニーノ、光の出力を一瞬で終わらせるな。魔力を周辺に留め続けて、空っぽになるぐらい出し続けろ」
「はい……!」
アルヴィスが細かい調整を行い、補填できれば何とかなるだろう……ならなくては困る。
さて、ユイガの懸念は新兵と二期目だ。なんとも協力とは縁遠い組み合わせである。もちろんわざとだ。
「なんかあれッスね、このメンツで三人集まるとさ、某ゲームの御三家みたい~」
「意味分かんないこと言うなよ、世界観壊れるだろ……」
「ッ……お前ら分かってるのか、失敗すれば死ぬんだぞ!?」
作者都合でノイがボケる。それにレオンがボケを重ねる。
気楽な様子の二人を見て、事の難しさを本当に理解しているのかと、リアムは怒りがこみ上げた。リアムごめんね。
……なにしろ先程までの魔工具はないのだ。放射線も空気も通さないような、途中で焼け切れないような。綿密で堅固で純度の高い障壁を、1,000秒も維持しなければならない。初めての宇宙空間で。
翠色と赤色の少年は手を繋ぎ、空いた方の手をリアムに差し出した。複数人での繊細な魔力調整は肌が触れていた方がやりやすい。合理的な判断だ。
何故この二人となのか。アルヴィス様とラヴァイン様であればよかったのに、と心中で恨み言を溢し、リアムはレオンを睨み付ける。レオンは、ふい、と顔を反らした。
その態度に更に苛つきを募らせ、だが、嫌々ながら渋々ながら、差し出された手をとる。
初めて繋ぐその手はどちらも──震えていた。水気も相まって、冷たい。リアムは目を見開いて一度瞬きして、黙って二人の手を強く握った。
「でも空気も水もないからなー、どうしよ……」
「……二重障壁にして間にも空気をいれればいい。そうすれば三重障壁になって姿勢制御と温度調整にも役立つ。妥当だろう」
「おー! それだ! じゃあレオンは内側の障壁な、暖房にしよ!」
「……わかった」
新兵が意外なまとまりを見せる一方、ルチルとザクロは後悔していた。海溝に入ってすぐにあったユイガからの『怖ければ戻れ』のサインになぜ従わなかったのか、と。
「言っておくが、引き返していれば丸一日令威だったからな」
「なんかその方がまだマシな気ィしてくるわ」
「新兵みたいに手繋ぐか? あー、自分で言ってゾッとした」
「俺あんなに撃譜連発で撃ったの初だし……今もうかなーりしんどいわ既に。マジで」
「たいちょおー、二期兵は失敗して死ぬわこれぇ」
「お世話になりましたー」
逃避半分、冗談半分。二人が息の合った掛け合いをしていると、ふと身体が楽になった。
「……勝手に注入すんなよ」
「生還率を上げるために当然だろう」
魔力譲渡だ。真っ直ぐに翳した腕を下ろし、ラヴァインは
スッと目を細める。
「二人とも撃譜ができるのか」
「できねーよこいつだけだっつーの」
「ふん、恥もないわけか」
「はぁ……うぜぇなほんと」
「協力してください、ぐらい言えよ」
「言うわけないだろう、そんな事」
白銀の青年は譲りもしなければ、媚びもしない。だが命令も説得もしなかった。
「自由にすればいい。臨機応変に」
堂々たる姿勢は崩さない。背負っている家名にかけて。
「ユイガ隊長、俺は……?」
「ナイリは俺と組む。推進と制御は俺がやる。お前は撃譜で障壁を作れ」
「え……?」
戸惑いの声を流して、ユイガは全員に向き直る。
「最後に俺から全体に特恵を賦与する。まだ効果は薄いだろうが、多少マシだろう。────敬礼!」
腹から声を出して圧を乗せる。少年たちは反射的に敬礼体制をとった。この調整期間で、しっかり身体が反応するようになってきている。
そんな隊員たちに、特恵を賦与する。精神の世界でイメージをする。少年たちから伸ばされかけている信頼の糸。まだ頼りない細さのそれらを自分に結びつけて、力を送る。
今はまだ、ここまでしかできない。
知らず、臥せていた目線を上げると、皆一様にユイガの瞳を見ていた。
「直れ! ──これより降下訓練を行う! 傷一つ作ることなく、目的地へ帰還せよ! 互いを補い合い、死力を尽くせ! 以上! 障壁展開!」
「なんか……胸んとこじわっじわしてちょっと気持ち悪いんだけど」
「最初だけだ。早く障壁を張れ」
「あ、凄! …………出力全然違う!」
「もっと分厚くしろ! 死にたいのか!」
「まぁじか! まだ薄い!?」
「内と外で直接話せる内は死ぬと思え!」
「ぴええ」
「ううっ、ホントに死ぬ気で練らないと……!」
「気負いすぎないで。波力種に力を借りれば、ずっと長く保てるはずだ」
「フィイナ……うん、頼りにしてる」
障壁を厚く、大きく。周りの音は聞こえなくなって行く。ザザ、とインカムが通信を受けた。
《 降下開始! 》
* * *
「っできません、怖い……!!」
「理論上と俺の見立てでは、できる」
障壁が三つできあがる頃になっても、ナイリはチャージができずにいた。ユイガが"できる"と告げても変わらない。震える少年に付き合っていれば他隊員の魔力が持たない。ユイガは自分とナイリを障壁で囲んだ。
「降下開始!」
通信で指示を送り、床の窪みから円盤を外す。真空が空気を貪り、4つの障壁は外へ投げ出された。
「……ッ!!」
「早くチャージを」
「で、できません。やったこと、ない、 から」
「誰でも初めはそうだ」
ナイリは軍学校を出ていない。実力はあれど年齢は低く、圧倒的に覚悟も足りない。
「撃譜は、心象をそのまま顕現させる技術だ。あれだけ何種類もの撃譜が使えて、できないわけがない」
「もし! 巻き込んだら!?」
ナイリは薄く涙を浮かべ、ユイガを見上げて抗議する。少年の視ている世界は暗い。撃譜を放つとき、真っ暗な闇に浮かぶのは自分と、滅ぼす対象だけだ。
「こんな至近距離で、制御不足で、消えて、しまったら」
「消えない」
震える声を、否定し断言して、ユイガは抉じ開ける。
「初陣の英雄戦だって、誰一人、大きな欠損はなかった。無意識にお前は加減している。
……この障壁の外側に、包むように撃て。"自分"の括りに俺と空気を入れろ」
大きな骨ばった手が、少年の手を握る。その力強さに幾分か震えが収まる。けれどもそれでも沸き上がる不安を、ナイリはそのまま感情エネルギーとして練り始めた。
想像し作り出すのはブラックホールの中心点。宇宙線だろうとヘルーワィムだろうと、何も通さず食らう闇の、その一点。
この人は殲滅対象じゃない。ここにある空気も、食べてはいけない、漏らしてもいけない。ユイガの言ったイメージに従って、自己の認識を一度溶かす。この障壁が自分なのだと思い込む。
「────【蝕】……っ」
放出してからやっぱり恐怖が勝り、エネルギーがブレた。黒色の少年は思わずユイガに抱きつく。存在がそこに在るか確かめるように、ぎゅうと身を寄せ背中に手をまわす。
ユイガは掌で、少年の頭をやわらかく撫でた。
二人一塊になったまま身体を浮かせて、少しずつ自分の障壁を薄くして、解除してゆく。真っ暗な中で、小さな灯りだけを魔力で灯す。
「……できるだろうが。そのまま200秒、維持」
「にひゃ、く……?」
「先に行った連中に追い付く」
言うや否やユイガはナイリを抱えたまま、半端ない速度で宇宙空間を飛行しはじめた。隊員たちと繋いだ特恵を手繰るようにして方向を割り出し、辿る。
幸い、進行方向にはヘルーワィムはいない。だが、闇が細かい礫を沢山食うのを感じたナイリは、ユイガにしがみつきながら、展開している撃譜の密度を懸命に上げた。
三つの障壁は直に大気圏へ突入間近な距離まで降りていた。思ったより速い。障壁維持に余裕がない分、速さを出して補ったのだろう。宣言通り先発に追い付いたユイガは、全体への通信を入れ、少年たちに与える魔力を強める。
「第三隊、死んでいないだろうな?」
《 一期兵、ッはぁっ、ギリギリ、死んでません 》
《 三期兵っ、キツそうです……! 》
苦しそうなリアムの声と、いつもはあまり動じないリレイドの焦ったような声が返る。二期兵からの応答がない。
「二期兵?」
《 ……二期兵、問題ありません 》
《 問題、ありまくりだわ、クソッ 》
《 あ"ー……とりあえず、生きてる 》
応答の遅れた二期も生きていた。だが、芳しくない雰囲気が伝わってくる。
「被爆したか」
《 王子サマがね 》
《 ほんの、少量です 》
《 これはなー。ライがやりすぎたわな 》
《 黙れシュアン! ほらッこれで治っただろうがァ! 》
《 お二人方、ラヴァイン様に、また何か、したんですか、こんな状況下で、許しませんよ 》
リアムが通信で噛みつく。その声は絶え絶えだ。
《 とるに足らないことだった。リアム、気にしなくていい 》
《 ハイハイ、二期兵、大気圏突入──うおクソ暑ぅ!! 》
「山場だ、集中しろ」
今、夜空には四つの火球が流れているだろう。障壁にぶつかり急に圧縮された空気が、鉄をも溶かす高温になって襲う。ちょうど、ヘルーワィムの熱線と似た温度だ。
《 障壁の底面積を縮めろ。私は局所的に、時間を引き伸ばして温度対処する 》
《 簡単に、言って、くれンなぁ……! 》
《 ノイ、減速させろ! 障壁っ、もたない……ッ! 》
《 うううあああムリいい!! 空気薄すぎいいいい!! 》
《 はぁっ、ふぅっ、は、あ、ぐ、っうう……ッ!! 》
《 頑張れ、っあと、少し……!! 》
それぞれが必死になって、残る魔力を絞り出す。
「っ、はぁ、っは、ッぅ……」
「きついか」
ナイリも、こんなに長時間撃譜を維持したことなど初めてだった。息が乱れてきている。問われた少年は苦しげに顔を歪めながら、片腕を進行方向へ伸ばした。
「……っ大丈夫、です……! ──【黯】」
チャージし直し、新たに放たれた闇が外気を食らう。
《 高度20,000、全、分隊抜けた!! んにいぃぃいッ止っまれえええ!! 》
《 個に、っ別れた方がいい、障壁を張れ! 》
《 ノイ! ノイ!? 》
《 ふっァ、ごめ、落ちてた!? 》
「ノイ、先導しろ。最後まで気を抜くな!」
《 うっくぅぅ鬼ぃ……!! 》
ノイは鼻血を拭って特恵で視る。今いるのは、ちゃんとミーミスヴルムの上空だ。だが昼間いた飛行挺まではまだ距離も高さもある。必要最低限の障壁で、少年たちは風を切って飛んでゆく。
《 このまま障壁で飛ぼう、ニーノ、……もう、緩めていい 》
《 ぅ、……ふぃいな、ごめ、ん 》
《 アルヴィス! 》
《 大丈夫、もたせる……っ!! 》
通信から力尽きる声が、励ましが、詠唱が、飛び交う。そこへ、やや緊迫したノイの声が加わった。
《 敵、っ発見。進行9C方向、ヘルーワィム3小隊、尖兵なし、敏捷β、γ欠け── 》
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