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もう知らないあなた
しおりを挟む私はまじまじと殿下のお顔を見詰め返してしまいました。
このような表情をする方だったでしょうか?
もうずっと一緒に過ごしてきたはずなのに、今は知らない人のよう。
「ローズマリー嬢。共にスペアを降り、この先も私と共に歩んでくれないだろうか?」
殿下があえて私をそう呼んでいるのだと分かりました。
これはまもなく王太子殿下となられる尊い身の上の方からのお言葉。
だからそれは、王太子殿下となられる人のお顔なのだと。
私が知らないのもそのせいだと、私は心から納得出来たのです。
もうスペアではないあなた様と、スペアを降ろされる私。
ですのにどうして今はこんなお話に?
胸がばくばくと大きな音を立てているのですが、どうしてか先ほどまでに感じた苦しさのある胸の音ではありません。
けれども胸が詰まったようで、息がしにくい、また違う苦しさはありました。
「君がいかに優秀で善良な令嬢か、それは誰よりもずっと側で過ごした私が知っている。その優れた才を、国や民を想う清い心を、王太子妃、ゆくゆくは王妃として、国と、民と、そして私へと捧げて欲しい」
ごめんなさい、殿下。
お返事をしたくても、声が出せないのです。
私は失礼にも口をぱくぱくと動かすばかりでした。
「というのは建前」
え?
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