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謝罪の言葉は受け取れません
しおりを挟む「このたびは王太子殿下……いいえ、かつて婚約者だった方がご迷惑をおかけしました。心よりお詫びいたしますわ」
私との時間を望んでいることを伝え聞きまして、私は王太子妃殿下となる方に用意されているお城のお部屋を訪問しました。
この方がこちらに留まっておられるのは、スペアではないからです。
廃太子の発表と共にお二人の婚約は解消となりましたけれど、未来の王妃様となるお立場には変わりがないということ。
歴代の王太子妃様専用の応接室は、この方らしく洗練された雰囲気にありました。
お部屋にあるものは昔から王家で大事に利用されてきたであろう趣きある家具ばかりですのに、その歴史的重みが柔らかくお部屋に溶け込んでいます。
それはお花の配置が素晴らしいからではないでしょうか。
選ばれている花器も見事で、お花を引き立てつつも主張し過ぎることはなくお部屋と完全に融合しており、また素晴らしいのです。
私は不覚にも、応接室に通されてから立ち止まったままその室内の様子にうっとりと魅入ってしまいそうになりました。
声を掛けられ我に返った私は、急いで促されたソファーに腰を落とします。
そうして挨拶もそこそこに、先ほどの謝罪の言葉を受け取ったのです。
私は即座にこれをお断りしました。
「ヴァイオレット様からの謝罪は受け取れません」
この方は何も悪いことをしていません。
それにスペアである私に謝る立場の方ではないのです。
そしてもしこの方が悪いとすれば、スペアであった私たちもまた責任を感じなければなりません。
任されていた対象学年が違っていたとしても、学園でのお仕事を同じように請け負っていたのですから。
異変に気付けなかった私たちもまた、同罪ということになります。
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