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38.お役に立てるときが来たのではないでしょうか
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邸内が騒然としましたのは、朝食からしばらくあとのこと。
今朝はユージーン様と楽しくお話をしながら、和やかに朝食を終えることが出来ました。
食べ過ぎることもなく、ようやく夫人らしく振る舞えたのではないかと私も安堵していたところです。
一度お部屋に戻って、準備を整えてから、また庭でも歩こうと。
そんなお約束をして、ユージーン様とお出掛けする準備をはじめました。
行く先はお庭ですから、準備など必要ないと言ったのですが。
侍女たちが言うところ、今朝は私の体調を考慮して準備をあえて軽めにしていたそうで。
私にはよく分かりませんが、侍女たちが「元気になられたようですから」とはりきり出せば、もう私はなすがままです。
さっそく湯浴みからはじまりまして、身体中磨かれていきました。
確かに昨日は湯浴みもせずに寝てしまい……大変です。そんなお姿を朝からユージーン様に見せてしまっていたのですね。
ほとんど背中を向けられていたとはいえ……はっ、そうです。朝食前には侍女たちが身体を拭いてくれましたが、もしや湯浴みをせずに、食事をご一緒してはいけなかったのではないかしら?
お庭の散歩ひとつで、ここまで磨かなければならないのですもの。
朝食を無事に済ませられたとほっとしている場合ではなかったのかもしれないわ!
まだ結婚式を終えて二日目の朝……こんなことで大丈夫ですの、私?
このように考えてごとをしているうちに、いつの間にか部屋の椅子に座っておりまして。
何度も侍女たちが「今日こそは」「今日こそね」と繰り返しているのを意味が分からず聞き流しておりましたら、今度こそ、すべての準備が終わっていました。
すると、まるで見ていたかのようなちょうどいいタイミングで、ユージーン様がお部屋まで迎えに来てくださったのです。
それですぐにお庭に向かうのかと思いましたら、何故かまた私のお部屋でお茶の時間が始まりまして。
準備で疲れたでしょう、ということらしいです。
ユージーン様とソファーに並び、お喋りをしておりましたら。
急に何やら邸内が騒がしくなりまして。
現れたタナトスは焦った顔をしてユージーン様のお側に駆け寄ると、耳元で何かを報告しておりました。
今回は口元を手で隠されておりましたので、目を逸らすことはしませんでしたが、私の耳にも届かなかったので、タナトスが何を言っていたかは分かりません。
けれどもそれは、とても重大な事項だったのでしょう。
ユージーン様はすぐに立ち上がると、私の部屋から出て行かれてしまったのです。
「すぐに追い返してくるからな!」
と言い残して。
追い返す?
敵襲ならば、共に闘いますよ?
ついに私もお役に立てるときが来たのではないでしょうか?
今こそですっ!
今こそ、私の力をっ!
「大丈夫ですよ、奥様。旦那様にすべてお任せください。奥様はこちらでお待ちを」
シシィに止められたので、立ち上がることはしませんでした。
おかげでしばし考える時間が生じます。
そうですね。
ことを焦ってはいけません。
何が起きているのか、考えておくことにいたしましょう。
タナトスが報告を始めたときには、関所からもう着いたのか、さすがです、とも思っておりましたが。
お二人の姿があまりに速く消えてしまったことで、そこで思考が止まっていました。
冷静にユージーン様のあの態度を顧みますに、その名を騙る偽物が現れたということかもしれません。
しかもこの短期間でこちらに移動したとすれば、その者はユージーン様からの指示を待たずに砦から逃げ出した……?いえ、もしかしたらすでにこのお屋敷の近くに仲間が潜伏……。
それは是非、成敗に参加させていただきたく──。
やはり後を追い掛けようと、立ち上がる寸でのところで、遠くから声が届きました。
扉は何故か、ユージーン様が厳重に閉めていかれたので、まだ言葉としてはっきりとは聞き取れません。
そういえば、あれだけ慌てていたのに扉を閉める物音はなく、ユージーン様は素晴らしい貴族なのですね。
私はそれに見合う夫人になれるのかしら?
いえ、ならなくては。
だからこそっ。
今こそ、私が力を振るうときっ!
「奥様、すぐに旦那様は戻られますよ。ですからこちらでお待ちくださいませね?」
今朝はユージーン様と楽しくお話をしながら、和やかに朝食を終えることが出来ました。
食べ過ぎることもなく、ようやく夫人らしく振る舞えたのではないかと私も安堵していたところです。
一度お部屋に戻って、準備を整えてから、また庭でも歩こうと。
そんなお約束をして、ユージーン様とお出掛けする準備をはじめました。
行く先はお庭ですから、準備など必要ないと言ったのですが。
侍女たちが言うところ、今朝は私の体調を考慮して準備をあえて軽めにしていたそうで。
私にはよく分かりませんが、侍女たちが「元気になられたようですから」とはりきり出せば、もう私はなすがままです。
さっそく湯浴みからはじまりまして、身体中磨かれていきました。
確かに昨日は湯浴みもせずに寝てしまい……大変です。そんなお姿を朝からユージーン様に見せてしまっていたのですね。
ほとんど背中を向けられていたとはいえ……はっ、そうです。朝食前には侍女たちが身体を拭いてくれましたが、もしや湯浴みをせずに、食事をご一緒してはいけなかったのではないかしら?
お庭の散歩ひとつで、ここまで磨かなければならないのですもの。
朝食を無事に済ませられたとほっとしている場合ではなかったのかもしれないわ!
まだ結婚式を終えて二日目の朝……こんなことで大丈夫ですの、私?
このように考えてごとをしているうちに、いつの間にか部屋の椅子に座っておりまして。
何度も侍女たちが「今日こそは」「今日こそね」と繰り返しているのを意味が分からず聞き流しておりましたら、今度こそ、すべての準備が終わっていました。
すると、まるで見ていたかのようなちょうどいいタイミングで、ユージーン様がお部屋まで迎えに来てくださったのです。
それですぐにお庭に向かうのかと思いましたら、何故かまた私のお部屋でお茶の時間が始まりまして。
準備で疲れたでしょう、ということらしいです。
ユージーン様とソファーに並び、お喋りをしておりましたら。
急に何やら邸内が騒がしくなりまして。
現れたタナトスは焦った顔をしてユージーン様のお側に駆け寄ると、耳元で何かを報告しておりました。
今回は口元を手で隠されておりましたので、目を逸らすことはしませんでしたが、私の耳にも届かなかったので、タナトスが何を言っていたかは分かりません。
けれどもそれは、とても重大な事項だったのでしょう。
ユージーン様はすぐに立ち上がると、私の部屋から出て行かれてしまったのです。
「すぐに追い返してくるからな!」
と言い残して。
追い返す?
敵襲ならば、共に闘いますよ?
ついに私もお役に立てるときが来たのではないでしょうか?
今こそですっ!
今こそ、私の力をっ!
「大丈夫ですよ、奥様。旦那様にすべてお任せください。奥様はこちらでお待ちを」
シシィに止められたので、立ち上がることはしませんでした。
おかげでしばし考える時間が生じます。
そうですね。
ことを焦ってはいけません。
何が起きているのか、考えておくことにいたしましょう。
タナトスが報告を始めたときには、関所からもう着いたのか、さすがです、とも思っておりましたが。
お二人の姿があまりに速く消えてしまったことで、そこで思考が止まっていました。
冷静にユージーン様のあの態度を顧みますに、その名を騙る偽物が現れたということかもしれません。
しかもこの短期間でこちらに移動したとすれば、その者はユージーン様からの指示を待たずに砦から逃げ出した……?いえ、もしかしたらすでにこのお屋敷の近くに仲間が潜伏……。
それは是非、成敗に参加させていただきたく──。
やはり後を追い掛けようと、立ち上がる寸でのところで、遠くから声が届きました。
扉は何故か、ユージーン様が厳重に閉めていかれたので、まだ言葉としてはっきりとは聞き取れません。
そういえば、あれだけ慌てていたのに扉を閉める物音はなく、ユージーン様は素晴らしい貴族なのですね。
私はそれに見合う夫人になれるのかしら?
いえ、ならなくては。
だからこそっ。
今こそ、私が力を振るうときっ!
「奥様、すぐに旦那様は戻られますよ。ですからこちらでお待ちくださいませね?」
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