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33.耳を疑うことを言われました
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ようやくお腹には何も入らなくなりまして。
紅茶ももういいかなというところで、ユージーン様が耳を疑うことを仰いました。
「従姉妹たちが来る?」
私はついユージーン様のお言葉を繰り返してしまったのです。
お人柄を疑っていたわけではないのですが、それだけ信じられない内容でしたから。
「そのような連絡があってな。ミシェルは事前にそんな話を聞かされていたか?」
すぐに首を振り、後悔します。
身内のことですから、もう少し考えてからお返事をすべきでした。
何か特別な事情あるいは裏の意図が……何も思いつきませんね。
従姉妹たちって、あのレーネとミーネのことなのかしら?
他に従姉妹はおりませんけれど。
本当に彼女たちがここへ来るというのでしょうか?
王都大好きなあの子たちなのですよ?
「やはりそうか。うん、そんな気はしていたよ」
「と言いますと?」
ユージーン様は眉間にぐっと皺を寄せて今まで以上に渋いお顔をされておりました。
「ミシェルは彼女たちをどう思っている?」
どう、と言われますと……どう思っているのでしょうね。
自分でもよく分かっておりません。
アルとは違いますし、アルの婚約者ともまた違います。
従姉妹は従姉妹でしかありません。
「申し訳ないが、私は追い返そうと考えている。侯爵領に入れるつもりもない」
「それは申し訳ありません」
嫁いだ私の身内が連絡もなしにやって来たら、それは不快な気持ちにもなるでしょう。
私はもう侯爵家の人間ですもの、振舞いには気を付けなければ。
お許しもなく身内を勝手に呼び寄せるなどもってのほか……呼んではおりませんね。
そもそも従姉妹たちは何故こちらに来るのでしょう?
海沿いの遠くの領地に嫁ぐことを、可哀想だと言っておりましたし。
あんな遠い場所に私たちが行くことはありませんけどね!って、何故か怒ったように言っていました。
私に何か用事があるとも思えません。
領地によく戻って来ていましたが、私に会いたくて帰って来ているわけではないと聞いていました。
よく騎士団の訓練を見学しておりましたし。
私はいつも感心していたものです。
見ているだけなんてとても辛いことでしょう?
それをあんなに苦しいコルセットを巻いて、重々しいドレスを身に付け、じっと座っているだなんて。
二人は何の修業をしているのかしら?と思っていたものでした。
「謝ることはない。君のせいではないことは分かっているんだ。ただ──君が私の決定に気分を害さないかどうか、それだけが心配でな。彼女たちを側に置きたいと思っているか?」
「側に……?」
どういうことなのでしょう?
従姉妹たちを側に置く?
「まぁ、つまり。場合によっては侍女にしても良いと。そう書いてきた」
従姉妹たちが侍女?
あのレーネとミーネが侯爵家の侍女になると?
「場合によってはというと、そうでない場合もあるのですか?」
「うん、まぁ、それはおいおい、だな」
おいおい?
あら?シシィのいる方向からオーラを感じましたよ。
振り向けば、やはりあの目をしていました。
真直ぐにユージーン様を射抜いております。
シシィ、本当に素敵……。
侯爵様がごほんと咳をなさいます。
これは癖ですから、心配は要りません。
「先に言っておくが。私は第二夫人など考えたこともないし、そもそもこの領地にそんな文化や価値観もない」
「はぁ」
急にどうなさったのでしょうか?
夫人としてのお勉強かしら?
「それから昨夜も言った通り、他に想い人はいないし、これからも妾は不要。妻は君だけだと思っている」
首を傾げてしまいました。
どういう話の流れでこんな会話になったのかしら?
「つまり──つまりだな」
「はい」
「つまりその──」
「失礼します!」
ユージーン様のお話は中断されてしまいました。
紅茶ももういいかなというところで、ユージーン様が耳を疑うことを仰いました。
「従姉妹たちが来る?」
私はついユージーン様のお言葉を繰り返してしまったのです。
お人柄を疑っていたわけではないのですが、それだけ信じられない内容でしたから。
「そのような連絡があってな。ミシェルは事前にそんな話を聞かされていたか?」
すぐに首を振り、後悔します。
身内のことですから、もう少し考えてからお返事をすべきでした。
何か特別な事情あるいは裏の意図が……何も思いつきませんね。
従姉妹たちって、あのレーネとミーネのことなのかしら?
他に従姉妹はおりませんけれど。
本当に彼女たちがここへ来るというのでしょうか?
王都大好きなあの子たちなのですよ?
「やはりそうか。うん、そんな気はしていたよ」
「と言いますと?」
ユージーン様は眉間にぐっと皺を寄せて今まで以上に渋いお顔をされておりました。
「ミシェルは彼女たちをどう思っている?」
どう、と言われますと……どう思っているのでしょうね。
自分でもよく分かっておりません。
アルとは違いますし、アルの婚約者ともまた違います。
従姉妹は従姉妹でしかありません。
「申し訳ないが、私は追い返そうと考えている。侯爵領に入れるつもりもない」
「それは申し訳ありません」
嫁いだ私の身内が連絡もなしにやって来たら、それは不快な気持ちにもなるでしょう。
私はもう侯爵家の人間ですもの、振舞いには気を付けなければ。
お許しもなく身内を勝手に呼び寄せるなどもってのほか……呼んではおりませんね。
そもそも従姉妹たちは何故こちらに来るのでしょう?
海沿いの遠くの領地に嫁ぐことを、可哀想だと言っておりましたし。
あんな遠い場所に私たちが行くことはありませんけどね!って、何故か怒ったように言っていました。
私に何か用事があるとも思えません。
領地によく戻って来ていましたが、私に会いたくて帰って来ているわけではないと聞いていました。
よく騎士団の訓練を見学しておりましたし。
私はいつも感心していたものです。
見ているだけなんてとても辛いことでしょう?
それをあんなに苦しいコルセットを巻いて、重々しいドレスを身に付け、じっと座っているだなんて。
二人は何の修業をしているのかしら?と思っていたものでした。
「謝ることはない。君のせいではないことは分かっているんだ。ただ──君が私の決定に気分を害さないかどうか、それだけが心配でな。彼女たちを側に置きたいと思っているか?」
「側に……?」
どういうことなのでしょう?
従姉妹たちを側に置く?
「まぁ、つまり。場合によっては侍女にしても良いと。そう書いてきた」
従姉妹たちが侍女?
あのレーネとミーネが侯爵家の侍女になると?
「場合によってはというと、そうでない場合もあるのですか?」
「うん、まぁ、それはおいおい、だな」
おいおい?
あら?シシィのいる方向からオーラを感じましたよ。
振り向けば、やはりあの目をしていました。
真直ぐにユージーン様を射抜いております。
シシィ、本当に素敵……。
侯爵様がごほんと咳をなさいます。
これは癖ですから、心配は要りません。
「先に言っておくが。私は第二夫人など考えたこともないし、そもそもこの領地にそんな文化や価値観もない」
「はぁ」
急にどうなさったのでしょうか?
夫人としてのお勉強かしら?
「それから昨夜も言った通り、他に想い人はいないし、これからも妾は不要。妻は君だけだと思っている」
首を傾げてしまいました。
どういう話の流れでこんな会話になったのかしら?
「つまり──つまりだな」
「はい」
「つまりその──」
「失礼します!」
ユージーン様のお話は中断されてしまいました。
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