3 / 10
ねぇ分かるよね?
しおりを挟む
その日、ご機嫌にのこのこと王都の公爵邸へとやって来た男は、案内された応接室で、出された茶菓子にも手を付けて、大分くつろいで過ごしていた。
この時点で大物だな。
だがそんな男も、しばらくして姿を見せた若造を見るや背筋を伸ばした。
「公爵はどうされたので?」
うん、残念。背筋を伸ばす理由がこちらの予想とはかけ離れていた。
そんなに伸びて若造の後ろを見たってな、背が低いわけでもない公爵が隠れているわけはなかろうよ。
それよりもだ。
まずは立て。立って挨拶だ。
貴族の基本だぞ?
いや庶民だって人の家を訪問したら、立って挨拶を交わす。
それがなんだ、足を組んで動かないとは。
「今は旅行中でね。今日君を呼び出したのは私だよ」
男の無礼は華麗に見逃して自分も座り、にこにこと微笑むルーカス。
一瞬は青ざめた男だが、ルーカスのこの笑顔を見て、まさかの安堵の息を吐いた。
こやつ、本物だ。本物の大物に違いない。
シャーロットの鋼の心臓は父親譲りだった。
「あの手紙はルーカス殿からでしたか。公爵と書いてあったものだからてっきり」
それは偽装文書なルーカス。
そこに何の疑問を持たない男が相手で良かったな。
え?分かっていてあえてだ?本物の公爵が泣くぞ。
「では不在中のお父上から話を聞いていらっしゃると?うちとそちらで提携する事業のお話ですな?」
娘をやるのだから、それくらいもっと早くに融通してくれればいいものを。
ここまで待たせやがって。
そんな長きに渡る恨み辛みを隠して、男はとてつもなく嘘くさい笑顔を浮かべてそう聞いた。
ここは胡散臭い笑顔選手権の会場なんだな?
「今日はそんな話はしないよ」
笑顔のままのルーカスにそう冷たく言い放たれて、男の笑みが大分崩れた。
結婚して四日目にして花嫁の父親に対しこの対応。
おのれあの娘。何か失態を犯したに違いない。
あれほど気に入られているからと、仕方なく未来の公爵夫人という高い身分を与えてやったというのに!
この役立たずが!
罵る相手が目の前にいない男は、急ぎ娘に会わねばと考えた。
「娘はどうしているでしょうか?せっかく伺ったので、会っておきたいのですが」
「会わせるわけがないよね」
「え?会わせるわけがない?」
男も少しは考え始めた。
その幸せそうな頭の中でどういう経緯でそこに至ったのかは知らないし、知りたくもないが。
あぁ、分かったぞ。そっちか!
悟りを得た男は、急にへらへらと作り笑いを浮かべて語り出す。
「分かりますよ。たとえ父親にでも新妻を会わせたくないお気持ち。私も新婚の頃にはありましたからなぁ」
そう来たか。
いやこれはなかなかいい線を言っているぞ?
少しは考えることも出来たんだな!
だがな、足りていないんだ。
発言前に考える時間を長く長く、それは長く取っておけ?
これからがあったらの話だけどな。
「へぇ。君も経験があるんだ。それはどちらの新婚のときに?」
「は?え?あぁ、えぇ。それはもちろん最初のときも……その次も……ははは。二度も経験してしまいましたな」
「ふぅん。そう。二度も経験したんだ。それなら分かってくれるね?」
今度こそ男も自分の置かれた状況を理解したのか、笑顔が大分引き攣っている。
元から無理やり作った笑顔にしか見えなかったから、それは酷い顔だった。
「あの契約については覚えているね?」
「もちろんですとも。いやぁ、懐かしいですなぁ」
この国では婚約時にあえて正式な契約を交わさないことになっている。
当人たちの気が変わった場合に、絶対となる契約書が問題となるからだ。
婚約における各家同士での取り決めについては、契約書を交わすことはあるけれど。
あくまで婚約自体は口約束として捉えられた。
だから男も、状況が変わったからと娘の婚約の解消を願い出ることが出来たのだ。
この男だって、それくらいの理解はあった。
シャーロットとルーカスの婚約に関して、両家と王家がどんな契約を交わしているかまでは知らなかったけれど。
それがどうだ。
子どもだと思って甘く見ていたら、あわや家ごと潰されそうになったあの日。
男にとっても忘れられない苦い記憶だ。
とても黙っていられなかった男は、満足そうに契約書を抱えたルーカスが引き上げて行った直後に、公爵家に不満の手紙を送っている。
遠回しでもなんでもない、嫡男をどうにかしろよ!という抗議の手紙だ。
ほらな、やっぱり大物だったぞ。
しかしルーカスの父親もなかなかの男だった。
幼い息子のしたことだから目を瞑れと返したのだ。
息子に甘いろくでもない貴族だな!と自分を棚に上げて憤っていたあの頃のことなんか、男は今の今まで忘れていたのだけれど。
ちょっと待て。忘れられない苦い記憶だったのに、忘れていたのかよ。
そんな忘れっぽい男は、今さらに思い出して憤る。
甘やかし続けたせいで、この若造はあの頃と何も変わっていないのでないか?
高位にあるなら、子どもを厳しく躾けておけよ!
だんだんと蘇った過去も合わせてイライラしてきた男。
自分をそんなに棚に上げていたら、そろそろ聳え立つ棚の頂上に上り詰めて誰からも見えなくなるぞ。
今まさに消えようとしているからむしろいいか?
だが男がそのように心の中で威勢良くいられたのも、ここまでだった。
「へぇ。忘れていなかったんだ。それなのに会えないようにしていたとはね」
ルーカスの言う通りだ。
契約は絶対なんだから、ルーカスの初恋が幼い気まぐれだったとしても、結婚は回避出来なかったのだぞ?
なんのためにシャーロットを遠くにやったんだ?
「いや、ははは。娘がどうしてもと言いましたから」
「へぇ。そうなんだ。へぇ」
男の目が分かりやすく泳いでいた。
何も考えていなかったに違いない。
「何であれ、あの契約は確かに果たされた。それについては礼を言うよ。でもねぇ、私とシャーロットが新たに契約を結んだことを君は理解しているかな?」
「へ?それはもちろん」
結婚は契約だ。
この国でこれを知らない者はないだろう。
いや、これがいたんだったな。
そういやシャーロットもその一人か……。
彼女の場合は偽装だから契約していないと思い込んでいたわけだが。
契約が絶対のこの国で偽装なんて無理だろ。
ん?ここにも偽装文書に手を掛けた男がいたな!
結婚前から夫の行動をよく理解する妻だったのか?知っているよ、それだけはない!
「ふぅん。分かっているのに、あんなことを言ったんだね?」
「あんなこと……とはどれのことでしょうか?」
嫁ぐ娘にあれもこれもと言い聞かせていた男は、ルーカスがどれの話をしているか分からなかった。
そこはもっと隠せ。
「私の妻は結婚式が終わったら家に戻るようにと言われていたのだよ?」
「は?」
「あぁ、やっぱり知らなかったのだね。駄目だねぇ。君が選んだ妻子すら掌握出来ないなんてさ」
ルーカスにも妻を掌握出来ているかといえば、甚だ疑問だが。
まぁ今は身体的には掌握していたな……。
「それもね、朝食を作るために帰って来いと言われていたそうなのだよ。ねぇ、君たちは私の妻を何だと思っているのかな?」
「……申し訳ない。すぐに戻って確認を。お詫びは日を改めて」
しばらく絶句したあとに、やっと言葉を出したときには、男はもう真っ白い顔をしていた。
この国では契約が絶対だからだ。
「あぁ、それはいいよ。二人を連れて来て、ここで釈明させるといい」
「え、いや、それは少々……」
粒の汗が男の額に光った。
妻子の振舞いが貴族としてまずいことを男は理解していたのだ。
何故そんな女性を後妻にして子ども共々放置している?と聞きたいが、こちらも惚れた弱みというもの。
この二人、愛妻家同士で意外と気が合うかもしれないぞ。
よく話し合ってみたらどうだ?
うん、ごめん。言ってみただけだからやめておけ。
こちらが辛いから、そろそろ会話を終えてくれると嬉しいぞ。
「私が直々に話を聞いてあげようと言っているのだよ?」
「いや、しかし我が妻は元々平民であったこともあり、公爵家に連れて来るには礼儀が足りず、あまりに無礼となりますので、すべてこちらで……」
よく言えたものだな。
人のふり見て~という遠い東の国のあれ、誰かこの男に教えてやってくれ。
「ふぅん、元々ねぇ。それで?」
「それでとは?」
汗は止まらないが、その汗を拭くこともままならない。
男は頬を伝う汗になすすべもなく、ぐっしょりと濡れていった。
「父が不在にしていると言ったよね?しばらく戻らない予定なんだ。ねぇ、分かるよね?」
「いやしかしでも」
「時間が惜しいから今すぐ連れて来いと言いたいところだけど。そうだな。向かう用意をする時間くらいは与えようか。明日でいいね?」
「さすがにそれは。貴族とはまず打診を受けてそれから予定を詰めるものですし」
「貴族ねぇ。君だって今日すぐに来たではないか」
お前たち、本当に暇なんだな……。
それからもしばらく男は先延ばしの交渉を試みていたが。
健闘虚しく渋々と承諾した男は、来たときよりもずっと身体を小さくして帰って行った。
げっそりとやつれてもいたが、大物でも落ち込みはするのだな。
「事業提携の話が出来ると信じていたなんてさ。どうしたらそれほどに愉快に考えられるのだろうね?父上だって話にならないと切り捨ててきたというのに。もしかしてまだシャーロットの父親だとでも思っているのかな?うん、やっぱり。彼らはもう要らないよね?」
にんまりと微笑むルーカスに、静かに頷く侍従。
君はなんでそう代理に従順なんだ?本当の公爵が泣くぞ?帰って来たら号泣だぞ?
この時点で大物だな。
だがそんな男も、しばらくして姿を見せた若造を見るや背筋を伸ばした。
「公爵はどうされたので?」
うん、残念。背筋を伸ばす理由がこちらの予想とはかけ離れていた。
そんなに伸びて若造の後ろを見たってな、背が低いわけでもない公爵が隠れているわけはなかろうよ。
それよりもだ。
まずは立て。立って挨拶だ。
貴族の基本だぞ?
いや庶民だって人の家を訪問したら、立って挨拶を交わす。
それがなんだ、足を組んで動かないとは。
「今は旅行中でね。今日君を呼び出したのは私だよ」
男の無礼は華麗に見逃して自分も座り、にこにこと微笑むルーカス。
一瞬は青ざめた男だが、ルーカスのこの笑顔を見て、まさかの安堵の息を吐いた。
こやつ、本物だ。本物の大物に違いない。
シャーロットの鋼の心臓は父親譲りだった。
「あの手紙はルーカス殿からでしたか。公爵と書いてあったものだからてっきり」
それは偽装文書なルーカス。
そこに何の疑問を持たない男が相手で良かったな。
え?分かっていてあえてだ?本物の公爵が泣くぞ。
「では不在中のお父上から話を聞いていらっしゃると?うちとそちらで提携する事業のお話ですな?」
娘をやるのだから、それくらいもっと早くに融通してくれればいいものを。
ここまで待たせやがって。
そんな長きに渡る恨み辛みを隠して、男はとてつもなく嘘くさい笑顔を浮かべてそう聞いた。
ここは胡散臭い笑顔選手権の会場なんだな?
「今日はそんな話はしないよ」
笑顔のままのルーカスにそう冷たく言い放たれて、男の笑みが大分崩れた。
結婚して四日目にして花嫁の父親に対しこの対応。
おのれあの娘。何か失態を犯したに違いない。
あれほど気に入られているからと、仕方なく未来の公爵夫人という高い身分を与えてやったというのに!
この役立たずが!
罵る相手が目の前にいない男は、急ぎ娘に会わねばと考えた。
「娘はどうしているでしょうか?せっかく伺ったので、会っておきたいのですが」
「会わせるわけがないよね」
「え?会わせるわけがない?」
男も少しは考え始めた。
その幸せそうな頭の中でどういう経緯でそこに至ったのかは知らないし、知りたくもないが。
あぁ、分かったぞ。そっちか!
悟りを得た男は、急にへらへらと作り笑いを浮かべて語り出す。
「分かりますよ。たとえ父親にでも新妻を会わせたくないお気持ち。私も新婚の頃にはありましたからなぁ」
そう来たか。
いやこれはなかなかいい線を言っているぞ?
少しは考えることも出来たんだな!
だがな、足りていないんだ。
発言前に考える時間を長く長く、それは長く取っておけ?
これからがあったらの話だけどな。
「へぇ。君も経験があるんだ。それはどちらの新婚のときに?」
「は?え?あぁ、えぇ。それはもちろん最初のときも……その次も……ははは。二度も経験してしまいましたな」
「ふぅん。そう。二度も経験したんだ。それなら分かってくれるね?」
今度こそ男も自分の置かれた状況を理解したのか、笑顔が大分引き攣っている。
元から無理やり作った笑顔にしか見えなかったから、それは酷い顔だった。
「あの契約については覚えているね?」
「もちろんですとも。いやぁ、懐かしいですなぁ」
この国では婚約時にあえて正式な契約を交わさないことになっている。
当人たちの気が変わった場合に、絶対となる契約書が問題となるからだ。
婚約における各家同士での取り決めについては、契約書を交わすことはあるけれど。
あくまで婚約自体は口約束として捉えられた。
だから男も、状況が変わったからと娘の婚約の解消を願い出ることが出来たのだ。
この男だって、それくらいの理解はあった。
シャーロットとルーカスの婚約に関して、両家と王家がどんな契約を交わしているかまでは知らなかったけれど。
それがどうだ。
子どもだと思って甘く見ていたら、あわや家ごと潰されそうになったあの日。
男にとっても忘れられない苦い記憶だ。
とても黙っていられなかった男は、満足そうに契約書を抱えたルーカスが引き上げて行った直後に、公爵家に不満の手紙を送っている。
遠回しでもなんでもない、嫡男をどうにかしろよ!という抗議の手紙だ。
ほらな、やっぱり大物だったぞ。
しかしルーカスの父親もなかなかの男だった。
幼い息子のしたことだから目を瞑れと返したのだ。
息子に甘いろくでもない貴族だな!と自分を棚に上げて憤っていたあの頃のことなんか、男は今の今まで忘れていたのだけれど。
ちょっと待て。忘れられない苦い記憶だったのに、忘れていたのかよ。
そんな忘れっぽい男は、今さらに思い出して憤る。
甘やかし続けたせいで、この若造はあの頃と何も変わっていないのでないか?
高位にあるなら、子どもを厳しく躾けておけよ!
だんだんと蘇った過去も合わせてイライラしてきた男。
自分をそんなに棚に上げていたら、そろそろ聳え立つ棚の頂上に上り詰めて誰からも見えなくなるぞ。
今まさに消えようとしているからむしろいいか?
だが男がそのように心の中で威勢良くいられたのも、ここまでだった。
「へぇ。忘れていなかったんだ。それなのに会えないようにしていたとはね」
ルーカスの言う通りだ。
契約は絶対なんだから、ルーカスの初恋が幼い気まぐれだったとしても、結婚は回避出来なかったのだぞ?
なんのためにシャーロットを遠くにやったんだ?
「いや、ははは。娘がどうしてもと言いましたから」
「へぇ。そうなんだ。へぇ」
男の目が分かりやすく泳いでいた。
何も考えていなかったに違いない。
「何であれ、あの契約は確かに果たされた。それについては礼を言うよ。でもねぇ、私とシャーロットが新たに契約を結んだことを君は理解しているかな?」
「へ?それはもちろん」
結婚は契約だ。
この国でこれを知らない者はないだろう。
いや、これがいたんだったな。
そういやシャーロットもその一人か……。
彼女の場合は偽装だから契約していないと思い込んでいたわけだが。
契約が絶対のこの国で偽装なんて無理だろ。
ん?ここにも偽装文書に手を掛けた男がいたな!
結婚前から夫の行動をよく理解する妻だったのか?知っているよ、それだけはない!
「ふぅん。分かっているのに、あんなことを言ったんだね?」
「あんなこと……とはどれのことでしょうか?」
嫁ぐ娘にあれもこれもと言い聞かせていた男は、ルーカスがどれの話をしているか分からなかった。
そこはもっと隠せ。
「私の妻は結婚式が終わったら家に戻るようにと言われていたのだよ?」
「は?」
「あぁ、やっぱり知らなかったのだね。駄目だねぇ。君が選んだ妻子すら掌握出来ないなんてさ」
ルーカスにも妻を掌握出来ているかといえば、甚だ疑問だが。
まぁ今は身体的には掌握していたな……。
「それもね、朝食を作るために帰って来いと言われていたそうなのだよ。ねぇ、君たちは私の妻を何だと思っているのかな?」
「……申し訳ない。すぐに戻って確認を。お詫びは日を改めて」
しばらく絶句したあとに、やっと言葉を出したときには、男はもう真っ白い顔をしていた。
この国では契約が絶対だからだ。
「あぁ、それはいいよ。二人を連れて来て、ここで釈明させるといい」
「え、いや、それは少々……」
粒の汗が男の額に光った。
妻子の振舞いが貴族としてまずいことを男は理解していたのだ。
何故そんな女性を後妻にして子ども共々放置している?と聞きたいが、こちらも惚れた弱みというもの。
この二人、愛妻家同士で意外と気が合うかもしれないぞ。
よく話し合ってみたらどうだ?
うん、ごめん。言ってみただけだからやめておけ。
こちらが辛いから、そろそろ会話を終えてくれると嬉しいぞ。
「私が直々に話を聞いてあげようと言っているのだよ?」
「いや、しかし我が妻は元々平民であったこともあり、公爵家に連れて来るには礼儀が足りず、あまりに無礼となりますので、すべてこちらで……」
よく言えたものだな。
人のふり見て~という遠い東の国のあれ、誰かこの男に教えてやってくれ。
「ふぅん、元々ねぇ。それで?」
「それでとは?」
汗は止まらないが、その汗を拭くこともままならない。
男は頬を伝う汗になすすべもなく、ぐっしょりと濡れていった。
「父が不在にしていると言ったよね?しばらく戻らない予定なんだ。ねぇ、分かるよね?」
「いやしかしでも」
「時間が惜しいから今すぐ連れて来いと言いたいところだけど。そうだな。向かう用意をする時間くらいは与えようか。明日でいいね?」
「さすがにそれは。貴族とはまず打診を受けてそれから予定を詰めるものですし」
「貴族ねぇ。君だって今日すぐに来たではないか」
お前たち、本当に暇なんだな……。
それからもしばらく男は先延ばしの交渉を試みていたが。
健闘虚しく渋々と承諾した男は、来たときよりもずっと身体を小さくして帰って行った。
げっそりとやつれてもいたが、大物でも落ち込みはするのだな。
「事業提携の話が出来ると信じていたなんてさ。どうしたらそれほどに愉快に考えられるのだろうね?父上だって話にならないと切り捨ててきたというのに。もしかしてまだシャーロットの父親だとでも思っているのかな?うん、やっぱり。彼らはもう要らないよね?」
にんまりと微笑むルーカスに、静かに頷く侍従。
君はなんでそう代理に従順なんだ?本当の公爵が泣くぞ?帰って来たら号泣だぞ?
118
お気に入りに追加
1,444
あなたにおすすめの小説

10年間の結婚生活を忘れました ~ドーラとレクス~
緑谷めい
恋愛
ドーラは金で買われたも同然の妻だった――
レクスとの結婚が決まった際「ドーラ、すまない。本当にすまない。不甲斐ない父を許せとは言わん。だが、我が家を助けると思ってゼーマン伯爵家に嫁いでくれ。頼む。この通りだ」と自分に頭を下げた実父の姿を見て、ドーラは自分の人生を諦めた。齢17歳にしてだ。
※ 全10話完結予定
【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない
春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。
願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。
そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。
※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

【完結】真実の愛だと称賛され、二人は別れられなくなりました
紫崎 藍華
恋愛
ヘレンは婚約者のティルソンから、面白みのない女だと言われて婚約解消を告げられた。
ティルソンは幼馴染のカトリーナが本命だったのだ。
ティルソンとカトリーナの愛は真実の愛だと貴族たちは賞賛した。
貴族たちにとって二人が真実の愛を貫くのか、それとも破滅へ向かうのか、面白ければどちらでも良かった。

厄災の王女の結婚~今さら戻って来いと言われましても~
春風由実
恋愛
生まれたときから「厄災の王女」と呼ばれ疎まれてきたフロスティーン。
両親の顔は知らず、たまに部屋へとやって来る兄や姉からは虐げられた。
生きるための最低限の暮らしをしながら、王族の務めとして書類仕事に追われる日々。
そんなフロスティーンが外国へと嫁ぐことになろうとも、おかしな王女を温かく迎え入れてくれる国などあるわけが──あれ?
温かいご飯。温かいお湯。温かい部屋。温かいベッド。
「天に召されたのね」
フロスティーンはかつての自分は死んだものとして、天に召された後の暮らしを楽しみ始めた。
「いや、召されていないからな?」
夫となったゼインは、フロスティーンを見ていつも楽しそうに笑っている。
「やっぱり召されているわ」
「目のまえにいる俺はどうなる?」
「……召されていらっしゃるの?」
「そこは聞くのだな」
夫婦で楽しく暮らしているのですから。
今さら帰って来い?
無理ですよ。もうこの国の王妃なので。
※カクヨムにも掲載しています。
※長編としましたが、そこまで長くはないです。
※師走でばたばた。更新は出来るときにばばば~っといきます!
※誤字報告いただいた方へ
承認不要とのことで、ここにお礼を書かせてください。
ご指摘ありがとうございます。助かります!
完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。
『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』
『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』
公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。
もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。
屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは……
*表紙絵自作

離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。

婚約者を追いかけるのはやめました
カレイ
恋愛
公爵令嬢クレアは婚約者に振り向いて欲しかった。だから頑張って可愛くなれるように努力した。
しかし、きつい縦巻きロール、ゴリゴリに巻いた髪、匂いの強い香水、婚約者に愛されたいがためにやったことは、全て侍女たちが嘘をついてクロアにやらせていることだった。
でも前世の記憶を取り戻した今は違う。髪もメイクもそのままで十分。今さら手のひら返しをしてきた婚約者にももう興味ありません。

溺愛されている妹がお父様の子ではないと密告したら立場が逆転しました。ただお父様の溺愛なんて私には必要ありません。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるレフティアの日常は、父親の再婚によって大きく変わることになった。
妾だった継母やその娘である妹は、レフティアのことを疎んでおり、父親はそんな二人を贔屓していた。故にレフティアは、苦しい生活を送ることになったのである。
しかし彼女は、ある時とある事実を知ることになった。
父親が溺愛している妹が、彼と血が繋がっていなかったのである。
レフティアは、その事実を父親に密告した。すると調査が行われて、それが事実であることが判明したのである。
その結果、父親は継母と妹を排斥して、レフティアに愛情を注ぐようになった。
だが、レフティアにとってそんなものは必要なかった。継母や妹ともに自分を虐げていた父親も、彼女にとっては排除するべき対象だったのである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる