303 / 349
♥選ぶもの
86.はたして有能なのか
しおりを挟む
力なく問うアイリーンに、シーラは疑問を返す。
「イルハ以外にレンスター卿という人がいるの?」
「この国にはいないはずですが……」
イルハにだって遠縁の者はいるが、この国でレンスターを名乗れる者は本家の者だけ。
つまり両親を亡くした今となっては、レンスターの名の付く者はタークォンではイルハだけだった。
そして結婚すれば、これが二人になる。
ということをシーラはまだ知らないのだとキリムは把握した。
アイリーンは俯くと黙り込んでしまい、代わりにキリムが口を開く。
「刺激が強過ぎたみたいね」
「刺激?」
「ふふ。慣れる時間が必要なのよ。もっと話を聞かせて欲しいわ、シーラ。卿からはよく贈りものをされているの?」
「そうなんだ。そんなに要らないと言っているんだけどね」
「どんなものを頂いているのかしら?」
「色々だよ!毎日お家に何か届いているの。いつも一緒に出掛けて、お仕事をして、それで一緒に帰っているのに。いつの間に買ったんだろうね?だって休日も一緒にいるんだよ?」
「そちらの方面にも有能さを発揮されているのね。殿下が言っていた意味が分かったわ」
「王子が何か言っていた?」
「うふふ。何だったかしら。それよりどんなものが届いているか聞かせてくださる?」
あいつ、女で身を滅ぼす男だったぞ。
そんな話を聞いたときには、またご冗談をと笑って流していたものだが。
おそらく勤務時間中に、仕事と称して好き勝手にしているのだろう。
もちろんついでに街で仕事も片付けているに違いない。
誰が見て、聞いているか、分かったものではないのに。
それでも問題ないように対処しているとすれば、有能過ぎて嫌になるわとキリムは心中で冷ややかに判じた。
だが、だからこそ夫の臣下であり続けて欲しいと願う。
「服と靴とリボンと本とそれからお花と……」
シーラが子どもみたいに指折り数えながら、贈られたものを思い出していく姿をキリムはくすくすと笑いながら眺め、それから一口紅茶を味わった。
「イルハ以外にレンスター卿という人がいるの?」
「この国にはいないはずですが……」
イルハにだって遠縁の者はいるが、この国でレンスターを名乗れる者は本家の者だけ。
つまり両親を亡くした今となっては、レンスターの名の付く者はタークォンではイルハだけだった。
そして結婚すれば、これが二人になる。
ということをシーラはまだ知らないのだとキリムは把握した。
アイリーンは俯くと黙り込んでしまい、代わりにキリムが口を開く。
「刺激が強過ぎたみたいね」
「刺激?」
「ふふ。慣れる時間が必要なのよ。もっと話を聞かせて欲しいわ、シーラ。卿からはよく贈りものをされているの?」
「そうなんだ。そんなに要らないと言っているんだけどね」
「どんなものを頂いているのかしら?」
「色々だよ!毎日お家に何か届いているの。いつも一緒に出掛けて、お仕事をして、それで一緒に帰っているのに。いつの間に買ったんだろうね?だって休日も一緒にいるんだよ?」
「そちらの方面にも有能さを発揮されているのね。殿下が言っていた意味が分かったわ」
「王子が何か言っていた?」
「うふふ。何だったかしら。それよりどんなものが届いているか聞かせてくださる?」
あいつ、女で身を滅ぼす男だったぞ。
そんな話を聞いたときには、またご冗談をと笑って流していたものだが。
おそらく勤務時間中に、仕事と称して好き勝手にしているのだろう。
もちろんついでに街で仕事も片付けているに違いない。
誰が見て、聞いているか、分かったものではないのに。
それでも問題ないように対処しているとすれば、有能過ぎて嫌になるわとキリムは心中で冷ややかに判じた。
だが、だからこそ夫の臣下であり続けて欲しいと願う。
「服と靴とリボンと本とそれからお花と……」
シーラが子どもみたいに指折り数えながら、贈られたものを思い出していく姿をキリムはくすくすと笑いながら眺め、それから一口紅茶を味わった。
0
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
英国紳士の熱い抱擁に、今にも腰が砕けそうです
坂合奏
恋愛
「I love much more than you think(君が思っているよりは、愛しているよ)」
祖母の策略によって、冷徹上司であるイギリス人のジャン・ブラウンと婚約することになってしまった、二十八歳の清水萌衣。
こんな男と結婚してしまったら、この先人生お先真っ暗だと思いきや、意外にもジャンは恋人に甘々の男で……。
あまりの熱い抱擁に、今にも腰が砕けそうです。
※物語の都合で軽い性描写が2~3ページほどあります。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる
奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。
両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。
それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。
夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる