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♠国にあるもの
15.どこまでも子どもだった
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ここで使用人がそっと近付いて、イルハに進言を行った。
こんなことは、普段の使用人たちならば決してしないことである。
彼らは常々自分の意見を出すことを控えているものだから。
だから今は、やはり緊急事態で。
「お着換えをご用意してあります。お医者様の診療の後にお着換え頂きまして、今着ていらっしゃるお洋服はこちらで預からせていただけないでしょうか?洗濯に関してはこの国一と自負する仲間がおりますから、わたくし共に任せていただけますと幸いでございます」
「あぁ、それがいいな。服のことはこいつらに任せてくれ」
後ろで聞いていた王子がやっと役に立った瞬間である。
王子が同意したおかげで、イルハもシーラに「皆さまに任せてみましょうか」と言えたのだから。
「綺麗になるの?」
シーラは泣きながら使用人へと直接聞いた。
使用人はやはり普段しないことをする。
王子が先にしていたように膝を軽く曲げて顔をシーラの見やすい位置に置くと、優しく微笑んだのだ。
この変化には、シーラがこれまで反応の薄い彼らに熱心に話し掛け続けてきた影響も少しは含まれていようか。
使用人はシーラを安心させようと自信たっぷりに言い切った。
「見事綺麗にしてお返しすることをお約束しましょう。我々も力を発揮する機会を待ち望んでおりましたので、どうか気兼ねなく、その機会をお与えくださればと」
「うぅ……お仕事を増やしてごめんなさい」
結局シーラはまた違う理由で泣くのだ。
使用人がとんでもない、是非に、と言っているが、もう聞こえていないのではないか。
うっ、うっ、ぐすん、ぐすんと、泣きじゃくる子どもからよく出る音が続いていく。
もうこうなってしまったら、何を言っても泣くのだ。
そう悟ったイルハは言葉を控え、頭を撫でるなどしていたのだが。
「どうしよう、イルハ?」
イルハが語り掛けずとも、シーラは泣きながら問い掛けてくる。
そうすれば、イルハがこれを無視出来るわけはない。
もっと泣くとしてもだ。
「もう何も気にしなくていいのですよ。すぐに医者が来てくれますから、心配も要りません。またお茶を頂きますか?」
同じような言葉を何度重ねていようか。
それでもイルハは、あと百万回だって同じ言葉を伝えようと思っている。
泣き止まないとしても、もっと泣いてしまうとしても、イルハの言葉を聞きたいとシーラが望む限りは。
だがシーラは今までにないことを言い出して、イルハを慌てさせるのであった。
「違うの。おでこが痛いよ。凄く痛い。どうしよう、イルハ?痛いよぉ」
イルハがぎゅんと音を鳴らしそうな勢いで王子を振り返った。
その目が早くしろと語っている。
暇をしていた王子もまた、すぐに部屋を移動して医者を急かす通信を入れていた。
まったく騒がしい娘だと思いながらも、シーラのためにと自身も声を張り上げるのである。
今日の執務室には、まだまだ騒がしい時間が続きそうだ。
こんなことは、普段の使用人たちならば決してしないことである。
彼らは常々自分の意見を出すことを控えているものだから。
だから今は、やはり緊急事態で。
「お着換えをご用意してあります。お医者様の診療の後にお着換え頂きまして、今着ていらっしゃるお洋服はこちらで預からせていただけないでしょうか?洗濯に関してはこの国一と自負する仲間がおりますから、わたくし共に任せていただけますと幸いでございます」
「あぁ、それがいいな。服のことはこいつらに任せてくれ」
後ろで聞いていた王子がやっと役に立った瞬間である。
王子が同意したおかげで、イルハもシーラに「皆さまに任せてみましょうか」と言えたのだから。
「綺麗になるの?」
シーラは泣きながら使用人へと直接聞いた。
使用人はやはり普段しないことをする。
王子が先にしていたように膝を軽く曲げて顔をシーラの見やすい位置に置くと、優しく微笑んだのだ。
この変化には、シーラがこれまで反応の薄い彼らに熱心に話し掛け続けてきた影響も少しは含まれていようか。
使用人はシーラを安心させようと自信たっぷりに言い切った。
「見事綺麗にしてお返しすることをお約束しましょう。我々も力を発揮する機会を待ち望んでおりましたので、どうか気兼ねなく、その機会をお与えくださればと」
「うぅ……お仕事を増やしてごめんなさい」
結局シーラはまた違う理由で泣くのだ。
使用人がとんでもない、是非に、と言っているが、もう聞こえていないのではないか。
うっ、うっ、ぐすん、ぐすんと、泣きじゃくる子どもからよく出る音が続いていく。
もうこうなってしまったら、何を言っても泣くのだ。
そう悟ったイルハは言葉を控え、頭を撫でるなどしていたのだが。
「どうしよう、イルハ?」
イルハが語り掛けずとも、シーラは泣きながら問い掛けてくる。
そうすれば、イルハがこれを無視出来るわけはない。
もっと泣くとしてもだ。
「もう何も気にしなくていいのですよ。すぐに医者が来てくれますから、心配も要りません。またお茶を頂きますか?」
同じような言葉を何度重ねていようか。
それでもイルハは、あと百万回だって同じ言葉を伝えようと思っている。
泣き止まないとしても、もっと泣いてしまうとしても、イルハの言葉を聞きたいとシーラが望む限りは。
だがシーラは今までにないことを言い出して、イルハを慌てさせるのであった。
「違うの。おでこが痛いよ。凄く痛い。どうしよう、イルハ?痛いよぉ」
イルハがぎゅんと音を鳴らしそうな勢いで王子を振り返った。
その目が早くしろと語っている。
暇をしていた王子もまた、すぐに部屋を移動して医者を急かす通信を入れていた。
まったく騒がしい娘だと思いながらも、シーラのためにと自身も声を張り上げるのである。
今日の執務室には、まだまだ騒がしい時間が続きそうだ。
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