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♠国にあるもの
3.探り合う男たち
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それから休憩を終えて、シーラが書類部屋での仕事を再開したことを確認してから、イルハもまた部屋を辞そうとしたときだ。
「なぁ、イルハ。人が無理だって言うときは、どういうときだ?」
王子は去ろうとするイルハを引き留め、わざわざ聞いた。
二人の男が、じっと見つめ合った時間は短い。
イルハは悩む素振りを見せず、それが最初から決まっていたように淡々と主君へと答えを伝えた。
「外的な条件が実現不能を示すとき、あるいは心情として出来ないと決めるに相応しい理由を持つ場合になるでしょうか」
「あいつは前者だな?」
「考え過ぎではありませんか。国に囚われず自由に暮らしたいという想いが強いのでしょう」
「それなら嫌だって言わねぇか?」
そんなことはもう十分に分かっている。
何せ毎晩、話し込んでいるのだから。
それも合間には共に奏でる音楽まで使って気を引きながら。
「まずは長く居るようにしてみるかね」
「お遊びはほどほどになさってください」
「そこは礼を言うところだろうよ。お前はこのまま俺に協力を願わねぇでいる気か?」
イルハはしばし王子を見詰めたあと、「では、私はこれで」と言って、さっさと退室していく。
王子が「やれやれ」と首を振ったのは、重々しい石の扉が完全に閉まってからだった。
机に戻り、王子は後ろへと振り返る。
「意外と頑固そうだからなぁ……それもお似合いということか」
独り言ちて前へ向き直ると、イルハが重ねていった書類の山を見据えた。
うん、仕事をしたくない。
シーラと遊びたくなった王子は、もう一度振り返る。
こちらの視線にも気付かず、夢中で書類を飛ばす娘を見ていたら……。
「仕方ねぇ。少しは働いやるか」
部屋にいた者たちがそれぞれ胸を撫で下ろし、新しく雇われた魔術師の娘に感謝した。
この王子に遊んでばかりいられたら、皆が困るからだ。
「なぁ、イルハ。人が無理だって言うときは、どういうときだ?」
王子は去ろうとするイルハを引き留め、わざわざ聞いた。
二人の男が、じっと見つめ合った時間は短い。
イルハは悩む素振りを見せず、それが最初から決まっていたように淡々と主君へと答えを伝えた。
「外的な条件が実現不能を示すとき、あるいは心情として出来ないと決めるに相応しい理由を持つ場合になるでしょうか」
「あいつは前者だな?」
「考え過ぎではありませんか。国に囚われず自由に暮らしたいという想いが強いのでしょう」
「それなら嫌だって言わねぇか?」
そんなことはもう十分に分かっている。
何せ毎晩、話し込んでいるのだから。
それも合間には共に奏でる音楽まで使って気を引きながら。
「まずは長く居るようにしてみるかね」
「お遊びはほどほどになさってください」
「そこは礼を言うところだろうよ。お前はこのまま俺に協力を願わねぇでいる気か?」
イルハはしばし王子を見詰めたあと、「では、私はこれで」と言って、さっさと退室していく。
王子が「やれやれ」と首を振ったのは、重々しい石の扉が完全に閉まってからだった。
机に戻り、王子は後ろへと振り返る。
「意外と頑固そうだからなぁ……それもお似合いということか」
独り言ちて前へ向き直ると、イルハが重ねていった書類の山を見据えた。
うん、仕事をしたくない。
シーラと遊びたくなった王子は、もう一度振り返る。
こちらの視線にも気付かず、夢中で書類を飛ばす娘を見ていたら……。
「仕方ねぇ。少しは働いやるか」
部屋にいた者たちがそれぞれ胸を撫で下ろし、新しく雇われた魔術師の娘に感謝した。
この王子に遊んでばかりいられたら、皆が困るからだ。
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