45 / 56
終幕
しおりを挟む
変わった髪型に妙な眼鏡を付けたまま、くわっと目を見開いた陛下は、何かを悟られたご様子です。
「そういうことか!許さんぞ、侯爵!大臣の罷免もなしだ!」
「事情をお聞きになりましたでしょう?これほどの問題を起こした男を大臣に据え置いて、陛下の治世に良きことは何ひとつありませんよ」
「この場を許したのもそれか!私の悪ふざけが過ぎると止めてきた君が今回はやけにおとなしいのは、反省しているからとばかり……これは許さんぞ、侯爵!」
「許さずに是非厳しく罰してください。ノエルにはすまないことをしたな。息子に仕事を押し付けて、家も守れぬ不甲斐ない父を許せとは言わん。だがどうしてもこのまま息子に私と同じ道を歩ませたくはなかった」
父はもう従者に扮した陛下を見ようともしませんでした。
実は父も大分お強い人かもしれません。
ノエルというのは、弟の名前です。
「いえ、私は父上を許す立場にはありません。こうなったことも私の責任ですし。この三年の間に、私には当主はとても無理だと分かりました。ですからかえって良かったと。その代わりではありませんが、父上にはお願いがあります。お話した通り私を──」
「分かっている。この一年は厳しく鍛えるが覚悟してくれ」
「こちらからもお願いします。これまでの不出来も謝罪します。ですから妹も──」
「私の娘だ。見捨てはせん」
なんでしょう。弟の顔色が良く変わっていますが。
その代わりに侯爵夫人の様子が……。
「へ、陛下ですって……?そんな、わ、わ、わたくしは……」
白目を剥いてぱたんと倒れてしまいまして。
父が支えたので大事にはなりませんでしたけれど、本当に医者を呼ぶ大騒ぎにはなりました。
陛下のおかげでこの場を早々に終えることが出来た、そう思えば有難かったのでしょうか?
その陛下ですけれど……。
まだ沢山話したそうにしておりましたのに、恐ろしいほどに冷たい目をした殿下に引き摺られながら、お城へと戻っていかれたのです。
侯爵が止める役目を放棄するから……すまない。ここに来ている私が言ってはいけないことだな。
私たちがここにいたせいで、夫人を過剰に刺激してしまった。
この件は全面的に父と私が悪いから、侯爵の罰に関してはその分を相殺し……要らんと言わないでくれ。
君を失って誰が一番苦労すると思っている?私はこれから先が怖ろしくてならないのだよ……。
殿下は力なくそう言い残したあとに。
本当に陛下を引き摺って……。
人が人の首根っこを掴んでそれを引き摺るお姿。
私は初めて目にしましたが、王族の方々でこれを見ることになるとは思いませんでした。
それも陛下と殿下ですからね。
まだまだ私には学べることが沢山ありそうです。
世の中にはあのような親子がいることも分かりましたし、王都に来て良かった。
いい母親になれるよう、これからもよく学んでいきましょう。
あら、どうされました旦那さま?
今のは忘れていい?どうしてですか?
あれは特殊過ぎる親子だ?記憶から抹消してくれ?
まぁ拗ねていらっしゃるのですね、可愛らしい旦那さま。
拗ねなくていいのですよ?
私はいつでも旦那さまのことばかり見ていますからね。
大好きです。旦那さま。
まぁ一段とお耳が赤く……。大好きです。
「そういうことか!許さんぞ、侯爵!大臣の罷免もなしだ!」
「事情をお聞きになりましたでしょう?これほどの問題を起こした男を大臣に据え置いて、陛下の治世に良きことは何ひとつありませんよ」
「この場を許したのもそれか!私の悪ふざけが過ぎると止めてきた君が今回はやけにおとなしいのは、反省しているからとばかり……これは許さんぞ、侯爵!」
「許さずに是非厳しく罰してください。ノエルにはすまないことをしたな。息子に仕事を押し付けて、家も守れぬ不甲斐ない父を許せとは言わん。だがどうしてもこのまま息子に私と同じ道を歩ませたくはなかった」
父はもう従者に扮した陛下を見ようともしませんでした。
実は父も大分お強い人かもしれません。
ノエルというのは、弟の名前です。
「いえ、私は父上を許す立場にはありません。こうなったことも私の責任ですし。この三年の間に、私には当主はとても無理だと分かりました。ですからかえって良かったと。その代わりではありませんが、父上にはお願いがあります。お話した通り私を──」
「分かっている。この一年は厳しく鍛えるが覚悟してくれ」
「こちらからもお願いします。これまでの不出来も謝罪します。ですから妹も──」
「私の娘だ。見捨てはせん」
なんでしょう。弟の顔色が良く変わっていますが。
その代わりに侯爵夫人の様子が……。
「へ、陛下ですって……?そんな、わ、わ、わたくしは……」
白目を剥いてぱたんと倒れてしまいまして。
父が支えたので大事にはなりませんでしたけれど、本当に医者を呼ぶ大騒ぎにはなりました。
陛下のおかげでこの場を早々に終えることが出来た、そう思えば有難かったのでしょうか?
その陛下ですけれど……。
まだ沢山話したそうにしておりましたのに、恐ろしいほどに冷たい目をした殿下に引き摺られながら、お城へと戻っていかれたのです。
侯爵が止める役目を放棄するから……すまない。ここに来ている私が言ってはいけないことだな。
私たちがここにいたせいで、夫人を過剰に刺激してしまった。
この件は全面的に父と私が悪いから、侯爵の罰に関してはその分を相殺し……要らんと言わないでくれ。
君を失って誰が一番苦労すると思っている?私はこれから先が怖ろしくてならないのだよ……。
殿下は力なくそう言い残したあとに。
本当に陛下を引き摺って……。
人が人の首根っこを掴んでそれを引き摺るお姿。
私は初めて目にしましたが、王族の方々でこれを見ることになるとは思いませんでした。
それも陛下と殿下ですからね。
まだまだ私には学べることが沢山ありそうです。
世の中にはあのような親子がいることも分かりましたし、王都に来て良かった。
いい母親になれるよう、これからもよく学んでいきましょう。
あら、どうされました旦那さま?
今のは忘れていい?どうしてですか?
あれは特殊過ぎる親子だ?記憶から抹消してくれ?
まぁ拗ねていらっしゃるのですね、可愛らしい旦那さま。
拗ねなくていいのですよ?
私はいつでも旦那さまのことばかり見ていますからね。
大好きです。旦那さま。
まぁ一段とお耳が赤く……。大好きです。
65
お気に入りに追加
3,125
あなたにおすすめの小説
転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?
朱音ゆうひ
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!
「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」
王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。
不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。
もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた?
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)
毒家族から逃亡、のち側妃
チャイムン
恋愛
四歳下の妹ばかり可愛がる両親に「あなたにかけるお金はないから働きなさい」
十二歳で告げられたベルナデットは、自立と家族からの脱却を夢見る。
まずは王立学院に奨学生として入学して、文官を目指す。
夢は自分で叶えなきゃ。
ところが妹への縁談話がきっかけで、バシュロ第一王子が動き出す。
私が我慢する必要ありますか?【2024年12月25日電子書籍配信決定しました】
青太郎
恋愛
ある日前世の記憶が戻りました。
そして気付いてしまったのです。
私が我慢する必要ありますか?
※ 株式会社MARCOT様より電子書籍化決定!
コミックシーモア様にて12/25より配信されます。
コミックシーモア様限定の短編もありますので興味のある方はぜひお手に取って頂けると嬉しいです。
リンク先
https://www.cmoa.jp/title/1101438094/vol/1/
一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。
木山楽斗
恋愛
「君とは一年後に離婚するつもりだ」
結婚して早々、私は夫であるマグナスからそんなことを告げられた。
彼曰く、これは親に言われて仕方なくした結婚であり、義理を果たした後は自由な独り身に戻りたいらしい。
身勝手な要求ではあったが、その気持ちが理解できない訳ではなかった。私もまた、親に言われて結婚したからだ。
こうして私は、一年間の期限付きで夫婦生活を送ることになった。
マグナスは紳士的な人物であり、最初に言ってきた要求以外は良き夫であった。故に私は、それなりに楽しい生活を送ることができた。
「もう少し様子を見たいと思っている。流石に一年では両親も納得しそうにない」
一年が経った後、マグナスはそんなことを言ってきた。
それに関しては、私も納得した。彼の言う通り、流石に離婚までが早すぎると思ったからだ。
それから一年後も、マグナスは離婚の話をしなかった。まだ様子を見たいということなのだろう。
夫がいつ離婚を切り出してくるのか、そんなことを思いながら私は日々を過ごしている。今の所、その気配はまったくないのだが。
いくら時が戻っても
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
大切な書類を忘れ家に取りに帰ったセディク。
庭では妻フェリシアが友人二人とお茶会をしていた。
思ってもいなかった妻の言葉を聞いた時、セディクは―――
短編予定。
救いなし予定。
ひたすらムカつくかもしれません。
嫌いな方は避けてください。
※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。
貴妃エレーナ
無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」
後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。
「急に、どうされたのですか?」
「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」
「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」
そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。
どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。
けれど、もう安心してほしい。
私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。
だから…
「陛下…!大変です、内乱が…」
え…?
ーーーーーーーーーーーーー
ここは、どこ?
さっきまで内乱が…
「エレーナ?」
陛下…?
でも若いわ。
バッと自分の顔を触る。
するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。
懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!
虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?
リオール
恋愛
両親に虐げられ
姉に虐げられ
妹に虐げられ
そして婚約者にも虐げられ
公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。
虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。
それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。
けれど彼らは知らない、誰も知らない。
彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を──
そして今日も、彼女はひっそりと。
ざまあするのです。
そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか?
=====
シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。
細かいことはあまり気にせずお読み下さい。
多分ハッピーエンド。
多分主人公だけはハッピーエンド。
あとは……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる