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「お義兄さま!お会いしたかったわ!」

 部屋に飛び込んで来た瞬間に、妹はとても嬉しそうにそう言いました。

 すっかり旦那さまを気に入ってしまったのね?
 旦那さまは素敵ですからそれは分かります。

「下の娘ですの。婿殿はこの子のお相手をお願いしますわ。リーチェ、行きますよ」

「私は妻と離れるつもりはない!」

 旦那さま、旦那さま。
 お声が低くなっておりますよ、旦那さま。

 今日は好青年風で頼むと言われてきたではありませんか。

 珍しい旦那さまのお姿をもっと見ていたかったですのに。

「くっ……家族なのですから。ここで四人で話せばよろしいかと」

 侯爵夫人と旦那さまが、しばらくの間見詰め合っておりました。
 ここで私は、少しだけ旦那さまのいつものお気持ちが理解出来たのです。

 私も拗ねたい気持ちになりました、旦那さま。

「お母さま、聞いたでしょう?私も家族だと言ってくださったわ!ねぇ、早くあのお話をして!」

「……そうね。ではこちらでお話ししましょうか。誰か、あの子も呼んで来てちょうだい」

 壁際に立つ人たちが喜んでいるのが分かりました。
 いえ、喜んでいらっしゃるのはお一人かもしれません。
 私たちだけで部屋を移動せずに済んだことは、旦那さまのお手柄でしょう。

 そういえば、侯爵夫人は一度も彼らのことを気にしておりませんね。
 使用人は空気でいなさい、とよく言っておりましたから。
 他家の従者もまた、空気として捉えているのかもしれません。

 通常訪問時に三名も従者を引き連れて来ることはまずないと思うのですが。
 空気なら見えませんものね。疑問もないはずです。


「先日振りですね、辺境伯殿」

 すぐに弟も顔を出しましたが、私はその顔色がとても気になってしまいました。
 侯爵夫人よりもずっと青白い顔をして現れたからです。

 体調が悪いのは弟の方では?

 と私は久しぶりに姉として心配しながら、同時にまだ姉の気持ちはあったのだなぁと少しの感動も覚えていました。
 こんなときに気付くだなんて、私はとても酷い姉かもしれません。


 三年間この子たちを放置したのは、私も同じだから。




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