【完結】これからはあなたに何も望みません

春風由実

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誤解

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 しばらくして顔を上げた父は、目を瞠り私を見詰めています。
 この知らない人を知ってみたいと、私は考えていたのかもしれません。

 そしてそれは、私が今学んでいることへと必ず繋がっていく、そのように信じられるものでした。


「片や拷問、片やお話。両極端過ぎるだろう。悪魔と天使の夫妻なのか?不釣り合いにも程があるぞ?」

 小声でそう仰った陛下に、旦那さまが「誰と誰が不釣り合いだと?」と怒りながら言えば。
 殿下もまた「怒りに任せてそのまま辺境伯領に連れて帰るといい」と。それはとても冷たいお声でお言葉を重ねておりました。

 今日は様々な旦那さまのお顔も見られましたし、学べることも沢山あって嬉しいです。

「息子よ、頼むから貢物にはしないでくれ。父でもあるし、これでもこの国の王なのだぞ。何?私を貢げばこの国も安泰?自分の治世が安心出来る?喜んで早く差し出したい?それくらいにしておいてくれ。私だって泣くぞ?」

 一方の父は、陛下のその嘆きも聞こえていない様子で、ただ私ばかりを見詰め、「話したいか……そうか……話したいか……」と、どこか満足そうに繰り返していたのでした。


 どうも皆さまとの間に大変な誤解が生じているように感じます。
 そしてそれを今さら指摘しにくいことも感じていました。

 私はお話をしてから決めたいと言っただけです。
 謝罪の受け入れも含め、罰についても、少し時間を頂いて考えるつもりでした。

 私が目指す結果は、辺境伯家にとってもっともよい形です。

 ですのに、そのようにすべて許されたようなお顔をされますと。
 大変言いにくくなりますので、そろそろやめていただますと有難いです、お父さま。

 そういえば、一度くらいは目のまえでお父さまと呼んでみたかったのですよね。
 今はお義父さまがいらっしゃるからでしょうか。
 呼んではみたものの、それほどに感じるものはなく、こんなものなのかと拍子抜けした気分です。


 あら、旦那さま?
 そのお顔はどうされましたか?

 また拗ねていらっしゃるのですね?
 いつ見てもそのお顔はとても可愛らしいです旦那さま。

 ふふ。すぐに元気になられて良かった。
 お耳も真っ赤でとても可愛いですよ旦那さま。




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