25 / 56
誤解
しおりを挟む
しばらくして顔を上げた父は、目を瞠り私を見詰めています。
この知らない人を知ってみたいと、私は考えていたのかもしれません。
そしてそれは、私が今学んでいることへと必ず繋がっていく、そのように信じられるものでした。
「片や拷問、片やお話。両極端過ぎるだろう。悪魔と天使の夫妻なのか?不釣り合いにも程があるぞ?」
小声でそう仰った陛下に、旦那さまが「誰と誰が不釣り合いだと?」と怒りながら言えば。
殿下もまた「怒りに任せてそのまま辺境伯領に連れて帰るといい」と。それはとても冷たいお声でお言葉を重ねておりました。
今日は様々な旦那さまのお顔も見られましたし、学べることも沢山あって嬉しいです。
「息子よ、頼むから貢物にはしないでくれ。父でもあるし、これでもこの国の王なのだぞ。何?私を貢げばこの国も安泰?自分の治世が安心出来る?喜んで早く差し出したい?それくらいにしておいてくれ。私だって泣くぞ?」
一方の父は、陛下のその嘆きも聞こえていない様子で、ただ私ばかりを見詰め、「話したいか……そうか……話したいか……」と、どこか満足そうに繰り返していたのでした。
どうも皆さまとの間に大変な誤解が生じているように感じます。
そしてそれを今さら指摘しにくいことも感じていました。
私はお話をしてから決めたいと言っただけです。
謝罪の受け入れも含め、罰についても、少し時間を頂いて考えるつもりでした。
私が目指す結果は、辺境伯家にとってもっともよい形です。
ですのに、そのようにすべて許されたようなお顔をされますと。
大変言いにくくなりますので、そろそろやめていただますと有難いです、お父さま。
そういえば、一度くらいは目のまえでお父さまと呼んでみたかったのですよね。
今はお義父さまがいらっしゃるからでしょうか。
呼んではみたものの、それほどに感じるものはなく、こんなものなのかと拍子抜けした気分です。
あら、旦那さま?
そのお顔はどうされましたか?
また拗ねていらっしゃるのですね?
いつ見てもそのお顔はとても可愛らしいです旦那さま。
ふふ。すぐに元気になられて良かった。
お耳も真っ赤でとても可愛いですよ旦那さま。
この知らない人を知ってみたいと、私は考えていたのかもしれません。
そしてそれは、私が今学んでいることへと必ず繋がっていく、そのように信じられるものでした。
「片や拷問、片やお話。両極端過ぎるだろう。悪魔と天使の夫妻なのか?不釣り合いにも程があるぞ?」
小声でそう仰った陛下に、旦那さまが「誰と誰が不釣り合いだと?」と怒りながら言えば。
殿下もまた「怒りに任せてそのまま辺境伯領に連れて帰るといい」と。それはとても冷たいお声でお言葉を重ねておりました。
今日は様々な旦那さまのお顔も見られましたし、学べることも沢山あって嬉しいです。
「息子よ、頼むから貢物にはしないでくれ。父でもあるし、これでもこの国の王なのだぞ。何?私を貢げばこの国も安泰?自分の治世が安心出来る?喜んで早く差し出したい?それくらいにしておいてくれ。私だって泣くぞ?」
一方の父は、陛下のその嘆きも聞こえていない様子で、ただ私ばかりを見詰め、「話したいか……そうか……話したいか……」と、どこか満足そうに繰り返していたのでした。
どうも皆さまとの間に大変な誤解が生じているように感じます。
そしてそれを今さら指摘しにくいことも感じていました。
私はお話をしてから決めたいと言っただけです。
謝罪の受け入れも含め、罰についても、少し時間を頂いて考えるつもりでした。
私が目指す結果は、辺境伯家にとってもっともよい形です。
ですのに、そのようにすべて許されたようなお顔をされますと。
大変言いにくくなりますので、そろそろやめていただますと有難いです、お父さま。
そういえば、一度くらいは目のまえでお父さまと呼んでみたかったのですよね。
今はお義父さまがいらっしゃるからでしょうか。
呼んではみたものの、それほどに感じるものはなく、こんなものなのかと拍子抜けした気分です。
あら、旦那さま?
そのお顔はどうされましたか?
また拗ねていらっしゃるのですね?
いつ見てもそのお顔はとても可愛らしいです旦那さま。
ふふ。すぐに元気になられて良かった。
お耳も真っ赤でとても可愛いですよ旦那さま。
85
お気に入りに追加
3,120
あなたにおすすめの小説

立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~
矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。
隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。
周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。
※設定はゆるいです。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。



女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜
流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。
偶然にも居合わせてしまったのだ。
学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。
そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。
「君を女性として見ることが出来ない」
幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。
その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。
「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」
大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。
そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。
※
ゆるふわ設定です。
完結しました。

あらまあ夫人の優しい復讐
藍田ひびき
恋愛
温厚で心優しい女性と評判のカタリナ・ハイムゼート男爵令嬢。彼女はいつもにこやかに微笑み、口癖は「あらまあ」である。
そんなカタリナは結婚したその夜に、夫マリウスから「君を愛する事は無い。俺にはアメリアという愛する女性がいるんだ」と告げられる。
一方的に結ばされた契約結婚は二年間。いつも通り「あらまあ」と口にしながらも、カタリナには思惑があるようで――?
※ なろうにも投稿しています。

氷の貴婦人
羊
恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。
呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。
感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。
毒の強めなお話で、大人向けテイストです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる