上 下
24 / 56

謝罪

しおりを挟む
「リーチェ。いや、辺境伯夫人。今さらだが……、これまで何も知らず申し訳なかった。疑ったことも心から謝罪する。先は手を上げようとしたことも……どんな罰も受け入れる所存だ」

 私があの人について考えていたところ、父は一人用のソファーから立ち上がって、床に膝を付き、頭を下げていました。

 そんな父の姿を見ても、私には困惑しかありません。

「謝罪など受け入れなくていいぞ、リーチェ。当主として何も知らなかったことは罪だ。そのうえ先には君を殴ろうとまでした男だからな。うちの法で処分してもいい」

「言い分は分かるが、落ち着け辺境伯。ここは王都でな?しかも城の中なんだ」

「私の妻を殴ろうとしたのですよ?我が領であれば数多の拷問のうえ処刑です」

 あの、旦那さま。
 確かに領内で辺境伯家の人間を害そうとすれば処刑もありえますが。

 うちでも拷問はなかったかと。
 そのうえ数多とは一体……。

「ご立腹はもっともだよ。だがな、数多の拷問はちとまずい。もちろん罪はしかと裁くが、すまぬがここは王家に任せてくれないか?」

「父上。それに辺境伯。裁き云々の前に、ここはまず夫人のお気持ちを聞くところでしょう」

 はっとされた旦那さまが私を見ます。
 落ち着かれたようで良かったです、旦那さま。

 穏やかで優しいいつものお顔も素敵で大好きですよ旦那さま。

「リーチェはどうしたい?」

 正直なところ、謝罪に対しては何も感じていなければ、何も望んではおりませんでした。
 けれども辺境伯夫人としてはここで何らかの罰を望むべきなのだと分かります。

 どうしましょうか。

 父はずっと頭を下げていました。
 その頭を見ていたら、何故かそれは口から零れていたのです。


とお話をしてから決めたいです」


 この後に続いた長い沈黙はまた、とても気まずい時間となりました。



しおりを挟む
感想 57

あなたにおすすめの小説

生まれ変わっても一緒にはならない

小鳥遊郁
恋愛
カイルとは幼なじみで夫婦になるのだと言われて育った。 十六歳の誕生日にカイルのアパートに訪ねると、カイルは別の女性といた。 カイルにとって私は婚約者ではなく、学費や生活費を援助してもらっている家の娘に過ぎなかった。カイルに無一文でアパートから追い出された私は、家に帰ることもできず寒いアパートの廊下に座り続けた結果、高熱で死んでしまった。 輪廻転生。 私は生まれ変わった。そして十歳の誕生日に、前の人生を思い出す。

転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?

朱音ゆうひ
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!  「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」 王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。 不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。 もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた? 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

無価値な私はいらないでしょう?

火野村志紀
恋愛
いっそのこと、手放してくださった方が楽でした。 だから、私から離れようと思うのです。

陛下から一年以内に世継ぎが生まれなければ王子と離縁するように言い渡されました

夢見 歩
恋愛
「そなたが1年以内に懐妊しない場合、 そなたとサミュエルは離縁をし サミュエルは新しい妃を迎えて 世継ぎを作ることとする。」 陛下が夫に出すという条件を 事前に聞かされた事により わたくしの心は粉々に砕けました。 わたくしを愛していないあなたに対して わたくしが出来ることは〇〇だけです…

地獄の業火に焚べるのは……

緑谷めい
恋愛
 伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。  やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。  ※ 全5話完結予定  

貴妃エレーナ

無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」 後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。 「急に、どうされたのですか?」 「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」 「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」 そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。 どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。 けれど、もう安心してほしい。 私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。 だから… 「陛下…!大変です、内乱が…」 え…? ーーーーーーーーーーーーー ここは、どこ? さっきまで内乱が… 「エレーナ?」 陛下…? でも若いわ。 バッと自分の顔を触る。 するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。 懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!

鈍感令嬢は分からない

yukiya
恋愛
 彼が好きな人と結婚したいようだから、私から別れを切り出したのに…どうしてこうなったんだっけ?

処理中です...