1 / 1
001.よくある話
しおりを挟む
ああ……俺は死んだのか……。
「ようこそ神の世界へ」
意識が覚めると、そこは一面が白い部屋の中だった。
目の前には、何だかウキウキしているように見える神様がいる。
まるで俺が来たことを、心底嬉しそうに見ている少年のような神様がいたのだ。
ああ、これが死後の世界か…。
不思議と怖くも混乱もない。
俺は穏やかな気持ちのまま、目の前の神を認識した。
その姿は気高く、後光のように背中が輝いていたこともあり、もう神以外には間違いようのないくらい、圧倒的な気配をビンビンに感じていた。
今までにない、別次元の存在感に俺はすべてをゆだねる気持ちになっていた。
「落ち着きましたか」
そう思った俺の心を感じたのか、少年の姿をした神が微笑んだ。
「はい」
自然と返事をした。
…そうか、死んでもこうやってまた話ができるんだ。
俺は死ぬ前とそんなに感覚が変わらないことに、安らぎを覚えているくらいだった。
ありふれた交通事故により、通行人が巻き込まれて死亡。
男の死因はよくあるそれだった。
ああ、死ぬんだ。
と自覚しながら意識を失い、気がつくとここにいたのだ。
現状を理解した俺は素直に返事を返したのだった。
そんな俺の返事に少年の姿をした神は、嬉しそうに微笑んだ後、驚くべき言葉を放った。
「 私は、あなたを後任として【人々に新たな道を案内する神になってもらう】ためにここへ来てもらいました。…という訳で、これからよろしくおねがいしますね」
俺の中で一瞬の時が止まったような気がしたが、少し、いや、かなり考えた後にこう言った。
「……そうですか。ううん、ええっと、すいませんが一つだけ聞いてもいいでしょうか」
「はい、なんでしょうか」
「もしかして、さっき神になってもらうっていいました?」
はっきりと意識を取り戻した今、聞き捨てのならない言葉を思い出し、念のためにも確認する。
「ええ、そう言いました。理解が早くて助かります」
目の前の少年は一点の曇りのない表情で微笑んでいる。
えっ……本気(マジ)ですか!?
「あの……」
「はい、なんでしょうか」
「普通は俺が転生して異世界に行く…みたいな話しじゃないんでしょうか?」
どうにも府に落ちないので、しつこいかもしれないが確認のためにも聞いてみた。
よくある話では、死んだ後に何か能力を貰って、異世界でウエーイ的なアレじゃないのか?
などと思う間もなく、目の前にいる神様は恐ろしい事に、俺に後任の神になれ、と言っているのだ。
混乱し始めている俺に対して、少年の姿をした神は相変わらず微笑んだ表情できっぱりと説明し始めた。
「ええ、違うんですよ。もちろん、あなたがそうおっしゃる事はわかります。でもね、もうそういう事は一切やめたんですよ。だいたい異世界の人をこちらの世界に送り込んでもね、結局みんな一緒なんですよ」
「一緒、といいますと?」
「そうですね。ちょっとチート能力を渡せばすぐ調子に乗って、アレっ俺なんかやっちゃいました? って言ってすぐSランクになってハーレムを作り出すのですよ。もうね、そういうのウンザリなんですよ、もうポイです。ポイポイなんですよ」
よほど嫌な事があったのか。しかめっ面丸出しで心底嫌そうにおっしゃる神様。
確かにそんな話はすでにそこらじゅうにありふれており、もうとっくに飽きられているのだ。
残念ながら俺のチートなウェ-イ転生はないようだ。
「となると、俺はこれからどうなるんですか」
「ええ、だからさっきも言ったとおり、ここで私の変わりにここにやってきた人たちに、どこの世界に転生させるか導いて指導してあげてください。では、私が変わりに異世界に転生しますので、あとはよろしくお願いします」
さっとお辞儀をして爽やかに立ち去ろうとする少年の神様。
「いやいやいや、ちょっと待ってくださいよ、えっ? じゃあ、あなたが異世界に転生するんですか?」
「ええ、もちろんそうですけど」
「いやいやいや、おかしいでしょ、何で神様が転生するんですか」
俺は全力で神様にすがりつく。
「えっ? もしかしてあなた、神様は転生しちゃいけないって言うんですか? いったいなんの権利があってそんな事を言うんですか! 良いですか、私がこれまでここでドンだけ働いてきたと思ってるんですか、やれ大魔法が使えるようにしろだとか、人のスキルを盗めるスキルが欲しいだとか、不老不死にしろなんていう馬鹿もいっぱい相手にしてきたんですよ。もちろんそんな事を言うやつは問答無用でゴブリンにしてやりましたけどね。はっはっはザマーミロです。で、なんでしたっけ?」
なぜか、熱く語る少年の神様。
うーん、よくわからないがとにかくこの御方はだいぶストレスがたまっているらしい。
だが、よく考えてみれば、この神様が転生できると言うのなら、その後任である俺もいずれは転生できると言うことだ。
それに〈神になる〉というのなら、それはすばらしい話じゃないのか。少し冷静になってみると、だんだん俺はこの少年の神様の言うことを聞いたほうがいいような気がしてきた。
というか現状逆らえないだろう。しかたなく俺は運命を受け入れることにした。
「わかりました神様」
「おおっわかってくれましたか」
嬉しそうに微笑む神様。
「ええ、ではあなたの後任になるとして、俺はどんな力を与えてもらえるのでしょうか、その……神にしていただけるんですよね?」
すると少年の神様がフッと笑った。
「そうですね。ではこの神の輪を授けましょう。これをつければあなたもすぐに神格にあがれます。そうすれば必要な力も知識もすべてが備わることでしょう。その分私の力が弱まってしまいますが、転生するためにはいたし方ありません、私も以前はそうでしたからね。ではあなたにお渡しいたします」
少し過去を思い出すようなそぶりをみせながら、神様が自分の頭の上についている(浮いている)金色に光る輪をはずして俺の頭につけてくれた。
光る輪が俺の頭に備わった瞬間。
恐ろしいほどの力とパワー、知識と知恵があふれてきた。そして一瞬にしてこれまでのすべてを理解した。
なりほど。神って結構大変なんだな…。
「では、後はよろしくお願いします」
少年の姿をした元神様が私に丁寧に頭を下げた。
私がうなずいて手をかざすと、少年は白い光に包まれて消えた。
「ようこそ神の世界へ」
意識が覚めると、そこは一面が白い部屋の中だった。
目の前には、何だかウキウキしているように見える神様がいる。
まるで俺が来たことを、心底嬉しそうに見ている少年のような神様がいたのだ。
ああ、これが死後の世界か…。
不思議と怖くも混乱もない。
俺は穏やかな気持ちのまま、目の前の神を認識した。
その姿は気高く、後光のように背中が輝いていたこともあり、もう神以外には間違いようのないくらい、圧倒的な気配をビンビンに感じていた。
今までにない、別次元の存在感に俺はすべてをゆだねる気持ちになっていた。
「落ち着きましたか」
そう思った俺の心を感じたのか、少年の姿をした神が微笑んだ。
「はい」
自然と返事をした。
…そうか、死んでもこうやってまた話ができるんだ。
俺は死ぬ前とそんなに感覚が変わらないことに、安らぎを覚えているくらいだった。
ありふれた交通事故により、通行人が巻き込まれて死亡。
男の死因はよくあるそれだった。
ああ、死ぬんだ。
と自覚しながら意識を失い、気がつくとここにいたのだ。
現状を理解した俺は素直に返事を返したのだった。
そんな俺の返事に少年の姿をした神は、嬉しそうに微笑んだ後、驚くべき言葉を放った。
「 私は、あなたを後任として【人々に新たな道を案内する神になってもらう】ためにここへ来てもらいました。…という訳で、これからよろしくおねがいしますね」
俺の中で一瞬の時が止まったような気がしたが、少し、いや、かなり考えた後にこう言った。
「……そうですか。ううん、ええっと、すいませんが一つだけ聞いてもいいでしょうか」
「はい、なんでしょうか」
「もしかして、さっき神になってもらうっていいました?」
はっきりと意識を取り戻した今、聞き捨てのならない言葉を思い出し、念のためにも確認する。
「ええ、そう言いました。理解が早くて助かります」
目の前の少年は一点の曇りのない表情で微笑んでいる。
えっ……本気(マジ)ですか!?
「あの……」
「はい、なんでしょうか」
「普通は俺が転生して異世界に行く…みたいな話しじゃないんでしょうか?」
どうにも府に落ちないので、しつこいかもしれないが確認のためにも聞いてみた。
よくある話では、死んだ後に何か能力を貰って、異世界でウエーイ的なアレじゃないのか?
などと思う間もなく、目の前にいる神様は恐ろしい事に、俺に後任の神になれ、と言っているのだ。
混乱し始めている俺に対して、少年の姿をした神は相変わらず微笑んだ表情できっぱりと説明し始めた。
「ええ、違うんですよ。もちろん、あなたがそうおっしゃる事はわかります。でもね、もうそういう事は一切やめたんですよ。だいたい異世界の人をこちらの世界に送り込んでもね、結局みんな一緒なんですよ」
「一緒、といいますと?」
「そうですね。ちょっとチート能力を渡せばすぐ調子に乗って、アレっ俺なんかやっちゃいました? って言ってすぐSランクになってハーレムを作り出すのですよ。もうね、そういうのウンザリなんですよ、もうポイです。ポイポイなんですよ」
よほど嫌な事があったのか。しかめっ面丸出しで心底嫌そうにおっしゃる神様。
確かにそんな話はすでにそこらじゅうにありふれており、もうとっくに飽きられているのだ。
残念ながら俺のチートなウェ-イ転生はないようだ。
「となると、俺はこれからどうなるんですか」
「ええ、だからさっきも言ったとおり、ここで私の変わりにここにやってきた人たちに、どこの世界に転生させるか導いて指導してあげてください。では、私が変わりに異世界に転生しますので、あとはよろしくお願いします」
さっとお辞儀をして爽やかに立ち去ろうとする少年の神様。
「いやいやいや、ちょっと待ってくださいよ、えっ? じゃあ、あなたが異世界に転生するんですか?」
「ええ、もちろんそうですけど」
「いやいやいや、おかしいでしょ、何で神様が転生するんですか」
俺は全力で神様にすがりつく。
「えっ? もしかしてあなた、神様は転生しちゃいけないって言うんですか? いったいなんの権利があってそんな事を言うんですか! 良いですか、私がこれまでここでドンだけ働いてきたと思ってるんですか、やれ大魔法が使えるようにしろだとか、人のスキルを盗めるスキルが欲しいだとか、不老不死にしろなんていう馬鹿もいっぱい相手にしてきたんですよ。もちろんそんな事を言うやつは問答無用でゴブリンにしてやりましたけどね。はっはっはザマーミロです。で、なんでしたっけ?」
なぜか、熱く語る少年の神様。
うーん、よくわからないがとにかくこの御方はだいぶストレスがたまっているらしい。
だが、よく考えてみれば、この神様が転生できると言うのなら、その後任である俺もいずれは転生できると言うことだ。
それに〈神になる〉というのなら、それはすばらしい話じゃないのか。少し冷静になってみると、だんだん俺はこの少年の神様の言うことを聞いたほうがいいような気がしてきた。
というか現状逆らえないだろう。しかたなく俺は運命を受け入れることにした。
「わかりました神様」
「おおっわかってくれましたか」
嬉しそうに微笑む神様。
「ええ、ではあなたの後任になるとして、俺はどんな力を与えてもらえるのでしょうか、その……神にしていただけるんですよね?」
すると少年の神様がフッと笑った。
「そうですね。ではこの神の輪を授けましょう。これをつければあなたもすぐに神格にあがれます。そうすれば必要な力も知識もすべてが備わることでしょう。その分私の力が弱まってしまいますが、転生するためにはいたし方ありません、私も以前はそうでしたからね。ではあなたにお渡しいたします」
少し過去を思い出すようなそぶりをみせながら、神様が自分の頭の上についている(浮いている)金色に光る輪をはずして俺の頭につけてくれた。
光る輪が俺の頭に備わった瞬間。
恐ろしいほどの力とパワー、知識と知恵があふれてきた。そして一瞬にしてこれまでのすべてを理解した。
なりほど。神って結構大変なんだな…。
「では、後はよろしくお願いします」
少年の姿をした元神様が私に丁寧に頭を下げた。
私がうなずいて手をかざすと、少年は白い光に包まれて消えた。
0
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
異世界楽々通販サバイバル
shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。
近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。
そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。
そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。
しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。
「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)
ラララキヲ
ファンタジー
乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。
……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。
でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。
ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」
『見えない何か』に襲われるヒロインは────
※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※
※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※
◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる