101 / 104
5章 迷宮の謎
16話 変化の魔王
しおりを挟む
空から凄いスピードで飛んで来た紫色の魔物が、島の上空でピタっと止まった。
右手に三又の鉾を持ち、悪魔のような鎧に包まれた、でかくてマッチョな魔人のようだ。
怪しく光る赤い目が俺達の姿を確認すると、ゆっくりと下降して俺達の目の前に上陸した。
こいつが変化の魔王だろうか。
そう思った瞬間、マッチョな魔人は黒い三又の鉾先を俺に向けながら、大きな声で叫んだ。
「おいお前! たかが人間の分際でえらいチカラを持ってやがるな! さてはお前、あのじじいの髪の毛、相当引き抜いただろ!」
うん? じじいの髪の毛?
それはもしかしてチート神の事を言っているのか?
確かに偶然とはいえ、引っ張るようにして何か掴んだような気がするが……。
「うーん、良く分からんが、とりあえずお前、誰なんだ?」
俺は人としてまず、名乗らない奴をとがめてみた。
まぁそもそも人じゃないので、そんな常識は端から関係ないかもしれないのだが。
「ほう、俺様を見ても平然としているとは、やはり大した度胸だな。だが聞いて驚くな。俺様は変化の魔しょう、じゃなかった、変化の魔王だ!」
周りがビリビリするような大声で、紫色の魔族が得意げに吠えた。
やはりこいつが変化の魔王か。
そう思ってアリエールの顔を見た俺は驚いた。
可哀そうなほどにえらく怯えていたのだ。
今にも倒れそうなくらいに顔が真っ青だ。
俺にしがみつきながら、なんとか震えるように立っている。
「だ、大丈夫か!? アリエール」
「ご、ごめん、ケルビン、もうダメ……」
俺はすぐにアリエールを守るように小さくして回収すると、奴を鋭く睨みつけた。
やはり昔、魔物にされた経験があるせいで、奴が本当に怖かったのだろう。
俺は腹の底から、燃えるような怒りがふつふつと沸き上がってくるのを感じていた。
よくもここまでアリエールを脅かしやがったな!
「おいお前! 偉そうな口ぶりだが、進化の魔王じゃねーのかぁ。変化の魔王なんて聞いたこともないぞ?」
「なんだと? 俺様を知らないとはお前、ひょっとしてモグリかぁ? まぁいい、どうせ一緒だ。お前もすぐに魔物になるんだからな」
「まぁザコが慌てるな。俺はSランク、ケルビン・シルバーだ。お前、変化の魔王だか、魔将軍だが知らないが、本当の名前は無いのかよ。倒した相手の名前もわからないんじゃ、陛下に報告しようがねーじゃねーか」
俺は相手を怒らせるように、わざと偉そうに言ってみたが、魔王はふんと鼻で笑ったような顔をして。
「ふふ、お前調子に乗るなよ! たかがじじいから、少し多めに力を貰ったからって所詮は偽物、借物にすぎん。生まれ持った本物の力と、偽物の違いをすぐに判らせてやる。精々あがいて見せてみろ!」
そう言って変化の魔王はグッと体に力をいれると、全身から紫色の禍々しいオーラを噴出させた。
まるで沸騰する湯気がブシューっと舞い上がるかのように、奴の体から恐ろしいほどに大量の魔力が溢れてきた。
―――むむ、これは強い。
マジで強いぞ。
何かヤバイ感じがする。
危険を感じた俺は、大きく深呼吸をすると、自分の左手でさっと右手首を掴んで力を入れた。
精神を集中させ、右手から黒い絶対領域を全力で最大限に噴出させたのだ。
その黒い絶対領域で俺の周りをしっかりと覆う。
それを見た変化の魔王がニヤリと笑う。
「そうそう、全力で来いよ、ケルビンとか言ったな。出ないと一瞬で終わっちまうぜ?」
―――ズガーン!
とたんに、物凄い衝撃が俺の領域にぶつかった。
魔王は言い終わると同時に一瞬にして三又の槍を勢いよくブッ刺して来たのだ。
そのあまりの威力に、領域に包まれた俺ごと数十メートルは吹っ飛んでいた。
「くそっ、やはりこうなるのか!」
前回勇者にやられた時のように領域ごと吹っ飛ばされた俺は、地面を勢いよくゴロゴロと転がりながらも、すぐ近くに迫っている魔王を見ながら文句を言った。
絶対領域の中は自由になっても、力のある者にその絶対領域自体が攻撃されれば、それごと飛ばされてしまうのだ。
―――ズガーン! ドガーン! ガン!ドカ!ゴン!ガン!
「オラオラ、閉じこもってるだけじゃどうしようもねーぜ!」
まるでサンドバックになったボールのような感じで、魔王から鉾でメッタ打ちに吹っ飛ばされる。
領域の膜に守られているとはいえ、中にいる俺自身には吹っ飛んで転がった分だけのダメージがあるのだ。
息も出来ないような威力の連続攻撃にヤバさを感じた俺はすぐに必殺技を繰り出した。
そう、領域をソフトボール大の大きさに集約し、その中に小さくした自分が入るのだ。
「……ほう、それが本当の大きさか」
小さな黒い絶対領域に入った俺を見て変化の魔王が立ち止まった。
「ああ、この中ではすべてが俺の自由になる。いいか、俺がこの大きさになったらもうおしまいだ。もうお前の攻撃は絶対に効かんぞ」
俺は絶対領域の中で完全にそう思っていた。
右手に三又の鉾を持ち、悪魔のような鎧に包まれた、でかくてマッチョな魔人のようだ。
怪しく光る赤い目が俺達の姿を確認すると、ゆっくりと下降して俺達の目の前に上陸した。
こいつが変化の魔王だろうか。
そう思った瞬間、マッチョな魔人は黒い三又の鉾先を俺に向けながら、大きな声で叫んだ。
「おいお前! たかが人間の分際でえらいチカラを持ってやがるな! さてはお前、あのじじいの髪の毛、相当引き抜いただろ!」
うん? じじいの髪の毛?
それはもしかしてチート神の事を言っているのか?
確かに偶然とはいえ、引っ張るようにして何か掴んだような気がするが……。
「うーん、良く分からんが、とりあえずお前、誰なんだ?」
俺は人としてまず、名乗らない奴をとがめてみた。
まぁそもそも人じゃないので、そんな常識は端から関係ないかもしれないのだが。
「ほう、俺様を見ても平然としているとは、やはり大した度胸だな。だが聞いて驚くな。俺様は変化の魔しょう、じゃなかった、変化の魔王だ!」
周りがビリビリするような大声で、紫色の魔族が得意げに吠えた。
やはりこいつが変化の魔王か。
そう思ってアリエールの顔を見た俺は驚いた。
可哀そうなほどにえらく怯えていたのだ。
今にも倒れそうなくらいに顔が真っ青だ。
俺にしがみつきながら、なんとか震えるように立っている。
「だ、大丈夫か!? アリエール」
「ご、ごめん、ケルビン、もうダメ……」
俺はすぐにアリエールを守るように小さくして回収すると、奴を鋭く睨みつけた。
やはり昔、魔物にされた経験があるせいで、奴が本当に怖かったのだろう。
俺は腹の底から、燃えるような怒りがふつふつと沸き上がってくるのを感じていた。
よくもここまでアリエールを脅かしやがったな!
「おいお前! 偉そうな口ぶりだが、進化の魔王じゃねーのかぁ。変化の魔王なんて聞いたこともないぞ?」
「なんだと? 俺様を知らないとはお前、ひょっとしてモグリかぁ? まぁいい、どうせ一緒だ。お前もすぐに魔物になるんだからな」
「まぁザコが慌てるな。俺はSランク、ケルビン・シルバーだ。お前、変化の魔王だか、魔将軍だが知らないが、本当の名前は無いのかよ。倒した相手の名前もわからないんじゃ、陛下に報告しようがねーじゃねーか」
俺は相手を怒らせるように、わざと偉そうに言ってみたが、魔王はふんと鼻で笑ったような顔をして。
「ふふ、お前調子に乗るなよ! たかがじじいから、少し多めに力を貰ったからって所詮は偽物、借物にすぎん。生まれ持った本物の力と、偽物の違いをすぐに判らせてやる。精々あがいて見せてみろ!」
そう言って変化の魔王はグッと体に力をいれると、全身から紫色の禍々しいオーラを噴出させた。
まるで沸騰する湯気がブシューっと舞い上がるかのように、奴の体から恐ろしいほどに大量の魔力が溢れてきた。
―――むむ、これは強い。
マジで強いぞ。
何かヤバイ感じがする。
危険を感じた俺は、大きく深呼吸をすると、自分の左手でさっと右手首を掴んで力を入れた。
精神を集中させ、右手から黒い絶対領域を全力で最大限に噴出させたのだ。
その黒い絶対領域で俺の周りをしっかりと覆う。
それを見た変化の魔王がニヤリと笑う。
「そうそう、全力で来いよ、ケルビンとか言ったな。出ないと一瞬で終わっちまうぜ?」
―――ズガーン!
とたんに、物凄い衝撃が俺の領域にぶつかった。
魔王は言い終わると同時に一瞬にして三又の槍を勢いよくブッ刺して来たのだ。
そのあまりの威力に、領域に包まれた俺ごと数十メートルは吹っ飛んでいた。
「くそっ、やはりこうなるのか!」
前回勇者にやられた時のように領域ごと吹っ飛ばされた俺は、地面を勢いよくゴロゴロと転がりながらも、すぐ近くに迫っている魔王を見ながら文句を言った。
絶対領域の中は自由になっても、力のある者にその絶対領域自体が攻撃されれば、それごと飛ばされてしまうのだ。
―――ズガーン! ドガーン! ガン!ドカ!ゴン!ガン!
「オラオラ、閉じこもってるだけじゃどうしようもねーぜ!」
まるでサンドバックになったボールのような感じで、魔王から鉾でメッタ打ちに吹っ飛ばされる。
領域の膜に守られているとはいえ、中にいる俺自身には吹っ飛んで転がった分だけのダメージがあるのだ。
息も出来ないような威力の連続攻撃にヤバさを感じた俺はすぐに必殺技を繰り出した。
そう、領域をソフトボール大の大きさに集約し、その中に小さくした自分が入るのだ。
「……ほう、それが本当の大きさか」
小さな黒い絶対領域に入った俺を見て変化の魔王が立ち止まった。
「ああ、この中ではすべてが俺の自由になる。いいか、俺がこの大きさになったらもうおしまいだ。もうお前の攻撃は絶対に効かんぞ」
俺は絶対領域の中で完全にそう思っていた。
0
お気に入りに追加
570
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる