【R18】黒のエリアマスター

shinko

文字の大きさ
上 下
99 / 104
5章 迷宮の謎

14話 浮島にて

しおりを挟む
 しばらく浮島を掴んで移動しながら進んでいると、ふとあることに気がついた。

 少し大き目な浮島の上に人がいる。数人の女の子が倒れているのだ。

「なぁ、あれ冒険者じゃないか?」

「えっ本当ね、でもちょっと様子がおかしいわ、休憩してる訳じゃなさそうよね」

 魔物にでもやられてしまったのだろうか、ずぶねれのままの女達四人が横たわるように寝ているのだ。

 セーフティーゾーンでも無いのでそのままほっとくのも不味いだろう。念の為に島に上がって近づいてみると、息はあるようだが、彼女達の顔色は悪く疲労感が凄かった。

 かなり深刻なダメージを受けているようだ。

 すぐにアリエールが回復させようと白い杖を出した瞬間。

 突然目を見開いた彼女たちが、素早く飛び跳ねるように起き上がった。その口は裂けたように大きく広がり、恐ろしい魔物のような顔に豹変して牙をむいた。

 そして獣のような雄たけびを上げながら、もの凄い速さでアリエールに噛みつこうとばかりに襲いかかった。

「うわっまじか!?」

「うそっ!?」

 ―――ガツンッ! ガン! ガン! ガン!

 しかしその突撃は、安心の黒い絶対領域に阻まれた。

 当たりが強かった分、彼女達は勢いよく跳ね返されたが、空中で回転しながら着地をし、さらに低姿勢でこちらを睨む。

『ヴヴヴ!?』

 しかし見えない障壁に阻まれたことに驚いているような魔物達。

 最初は人に見えていたがその姿は完全に魔物のようだ。

「ええ!? なによこれ! あんたたち魔物だったの?」

 人だと思いこんでいたアリエールが驚愕の声をあげた。

 いつもなら攻略本で先に情報を仕入れているはずなのだが、これは載ってない情報だったのだろうか、本当に知らなかったようで狼狽している様子のアリエール。


 俺をだますためにやっている訳じゃなさそうだ。

「なんだ、アリエールも知らなかったのか、ドッキリにしちゃあ良く出来てると思ったよ」

「もう、そんな訳ないじゃないの。でもこれ一体何なのかしら……このフロアに出てくるはずの半魚人にしては普通じゃないわ。何かおかしいわね」

「そうなのか……でも確かに何かおかしいな」

 俺はひとまず腕を組む。

 しかし、元々半魚人がどんな魔物かわからない俺にとっては、何がおかしいのか良く分からなかったが、とりあえずアリエールがそう言うので俺もとりあえず言ってみただけだ。


「だってこの子達、冒険者の装備をしてるでしょ」

「確かにそうだな」

 
 どうやら半魚人は冒険者の装備はしていないらしい。

 という事はつまり……これはどういう事なんだ?


 俺はアリエールの顔を見る。

 アリエールも俺の顔を見る。

 しばし見合ったあと、お互いに笑い出した。


 はっはっはっは、平和だなぁ。

 いや、そうじゃない。

「ふふふ、何よケルビン」

「いや、本当は知ってるんだろう? もう、ユー、言っちゃいなよ」

「何よそれ、本当に知らないのよ」

 と二人でじゃれ合っている間にも冒険者の装備をした魔物達は絶対領域に対して何度か攻撃を仕掛けていた。


 もちろんノーダメージなのでしばらくほかっていたのだが、突然急にアリエールが顔色を変えた。

 はっとしてぐっときてぱっと目覚めたのだ。


 これが恋か!?


 とふざけている場合ではない。

 本当に何か思い出したように怖いくらい真剣な顔をすると、俺の両腕を掴んでこう言った。

「はっ!? ケルビン!! あの子達、あれかもしれないわ! ねぇ、あったでしょあれ! あれ出して! あれよ! あれ! 早くして!」

 アリエールが俺を揺さぶりながら取り乱すようにして叫んでいる。

 何か焦っているようだが、さっきかからあれしか言ってないじゃないか。

 少しは落ち着けよ、流石に俺でもあれじゃわからんぞ。


 いや、まてよ、そうかあれか。


 ぐわんぐわんゆさぶられている体を押さえながら、俺は絶対領域の中からアレをだす。


 そうだ。


 熱くて旨い丸いボール。


 そう、タコ焼きだ。


「ほら、落ち着けアリエール」

「馬鹿、違うわよ! それは好きだけど、お腹が空いてるんじゃないわ。精霊の泉の水よ、精霊の水。あの子達、もしかしたら呪われてるかもしれないわ!」


 アリエールがタコ焼きを受け取りながらも説明する。

 結局食べるんじゃないか、と思いながらも、そう言えばアリエールも最初は魔 物アリゲーターだった事を思い出した。

 精霊の泉で呪いから解かれたアリエールの美しさを思い出して、思わず下半身が猛烈に勃起する。

「アリエール!」

 欲情してアリエールに抱き着くが、華麗によけられたうえで叩かれた。

 ちょっとそれはひどくない?

「もう、早くして! とりあえずあの子たちを捕まえてから精霊の泉の水に浸からせてみましょうよ」

 ムラムラとイライラは収まらないが、とにかく今は仕方が無い。

 俺は絶対領域から細いロープ状の腕を出すと、一瞬にして四匹の魔物を捕まえた。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

処理中です...