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5章 迷宮の謎
8話 試しの門から11階
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炎の壁を難なく突破すると、次は青い壁の門だった。
形は同じようだが、これも問題ないだろう。
そう思ってそのまま通ると、今度は大量の滝のようにアホみたいな量の水が、上下左右から吹き出すように流れ込んだ。
――どっばぁああん!
「うぉおおおっ!?」
「わぁあああっ!」
小さな領域に入って細い足で歩いた俺達は、大量の水に流されて、いとも簡単に押しもどされてしまった。
驚いた俺達は、思わず領域から飛び出した。
立ちふさがる門を見る。
「へぇー水壁か、面白いな」
「あはは、本当ね、意外と手ごわい門かもね」
全然そうとは思ってないが、少しだけどうしようか考える。
しかし、意外と考えつかない。
「うーん。皆はどうやって突破したんだ?」
「そうね……もしかしたら泳ぐんじゃない?」
「そうか! よし、やってみよう」
「嘘! ケルビン、冗談よ……」
――どっばぁああん!
「うわぁあああああ!」
ズサァー。
「ダメだった……」
「でしょうね」
ずぶぬれになった俺は、一度【絶対領域】に入って乾かして戻ってきた。
これでスッキリだ。
頭が冷えたところでいい事を思いついた。
「よし、こうしよう」
俺は右手の絶対領域を薄く延ばして広げると、門と同じサイズ、縦3メートル、横4メートル、奥行き5メートルに変形させた。そのまま領域を門に入れる。
―――どっぱああああああああああ
と、同時に水が大量に飛び出すが、それを吸い取り回収する。領域とともに歩いていくと、正面の水壁が消えていきそのうち綺麗に消え去った。
門をすっぽり内側から覆っているのだ。
「すごい、水が消えた! どうやったのケルビン」
黒い領域が見えないアリエールが驚いた。
「領域を広げて水を吸い取ってるんだよ、さぁ行こう」
「うん! 流石ね」
領域で出来た膜を踏みながら歩いて、水門を無事通過した。
大量の水がゲットできたが、これは飲めるのかな?
小さくしておけば問題ないので、そのまま歩いて次へ向かった。
次は黄色の門だった。
火、水、とくれば今度は土か。
分かってきた法則に、いくらにぶい俺でも流石に理解できた。
ここは土の槍でも飛び出すか?
試しに落ちていた石ころを投げてみると。
―――ズガーンッ!
重そうな黄色の天井が凄い速さで落下した。トンネルがすべて埋まり黄色のブロックになってしまった。
カタカタカタカタ。
その後しばらくして落ちてきた天井が元に戻っていく。
後には粉々になった石ころが、砂のように砕けて散乱していた。
なるほど、これも手ごわいな。
「これは通過するスピードを試しているのかな、それとも天井を持つパワーを求めているのかな」
「そうねぇ、そんな感じよね。それで、今度はどうするのケルビン」
「どうしようか、アリエール」
「……」
「……」
見詰め合う二人。
お互いに探りあうように顔色をうかがった後、アリエールが噴出した。
「ぷっ、ふふふ。何よもう、私は普通に障壁を張っていけばいいような気がするけど、それじゃだめなの?」
「ふふ、そうだよな」
特に意味は無いが、なんだか楽しくなってきた。
普通に薄く領域を伸ばして障壁を作るとそのまま二人で手をつないで突っ込んだ。
―――ズガーンッ!
重そうな天井が落下してきたが、黒い障壁が支えて難なく止めた。試しに押し戻すように持ち上げてみたがそれも普通に可能だった。
Bランクでも超えられる門なのだ。
属性によって相性はあるが、ここを通れないようでは先へ進めない。
それほどの難問ではないようだ。
門だけに……。
サクッと黄色の門を通り抜けると、今度は白っぽい灰色の門が待っていた。
ここは風の門なのだろう。
すでにトンネルの中には暴風が吹き荒れている。渦を巻くようにゴウゴウとうなりを上げた切り裂くような風が中に溢れていた。
「これも、水と同じでいけるな」
「そうね」
領域でトンネルを内側から包んで防御すると、ここも難なく突破した。
四つの門を通過すると、洞窟の入口がハッキリ見えた。
「ようやく入口か、じゃぁ行こうか」
「うん、気をつけてね」
珍しい事を言うアリエールに少し首をかしげる。
何かあるのかと、一応警戒感を強めた。
とはいえ、やることはいつもと変わらない。
俺達を黒い領域の薄い障壁で包むと、中へと入った。
洞窟はさらに暗いが、アリエールが出した光の玉が照らしてくれるので問題ない。
じっとりとした嫌な湿度のある通路を進んで行くと、上から何か降ってきた。
―――ベチョ~。
領域の上にねとっと半透明の緑色の物質がへばりついた。
「うんっ? ああ、スライムかぁ」
「うわぁ、気持ち悪いわねぇ」
ゼリー状のドロドロを見上げてアリエールが変な顔をする。
「ふっ」
普段は見せない美女の変顔がツボにはまって笑えてくる。
「なによ」
「いや、可愛いな、と思って」
「ふ~ん、こんな気持ち悪いにねぇ」
いや、スライムじゃなくてその、すっぱいような変顔が。
まぁ、どうでもいいな。
その後も続々と振ってくる、スライム。
うにょうにょとした粘液が、障壁についてまとわりつく。
なんかエロいな。
変な事を想像していると、急に足がもつれた。
「――なっ!? うわっ!」
「あっ!? ケルビン!」
スライムに気を取られていたら、急に右足首を掴まれて転びそうになったのだ。
体勢は崩れたが、何とか左足で踏ん張って耐える。
ロックした右足首を見ると、地面から不思議な土の手首が生えて掴んでいた。
「おぉっと、なんじゃこりゃ!」
「地面の手よ!」
これも魔物の一種らしい。
すぐに絶対領域で回収し、ついでにスライムもまとめて一掃した。
「地味な攻撃だけど、結構やっかいなコンビだな」
障壁を持たない普通のPTなら、意外と手ごわい相手になるだろう。
「そうね、足止めされて溶かされるわね」
どうも服が溶かされてエロい事になるイメージしか沸いてこないが、スライムは意外と怖いのだ。
形は同じようだが、これも問題ないだろう。
そう思ってそのまま通ると、今度は大量の滝のようにアホみたいな量の水が、上下左右から吹き出すように流れ込んだ。
――どっばぁああん!
「うぉおおおっ!?」
「わぁあああっ!」
小さな領域に入って細い足で歩いた俺達は、大量の水に流されて、いとも簡単に押しもどされてしまった。
驚いた俺達は、思わず領域から飛び出した。
立ちふさがる門を見る。
「へぇー水壁か、面白いな」
「あはは、本当ね、意外と手ごわい門かもね」
全然そうとは思ってないが、少しだけどうしようか考える。
しかし、意外と考えつかない。
「うーん。皆はどうやって突破したんだ?」
「そうね……もしかしたら泳ぐんじゃない?」
「そうか! よし、やってみよう」
「嘘! ケルビン、冗談よ……」
――どっばぁああん!
「うわぁあああああ!」
ズサァー。
「ダメだった……」
「でしょうね」
ずぶぬれになった俺は、一度【絶対領域】に入って乾かして戻ってきた。
これでスッキリだ。
頭が冷えたところでいい事を思いついた。
「よし、こうしよう」
俺は右手の絶対領域を薄く延ばして広げると、門と同じサイズ、縦3メートル、横4メートル、奥行き5メートルに変形させた。そのまま領域を門に入れる。
―――どっぱああああああああああ
と、同時に水が大量に飛び出すが、それを吸い取り回収する。領域とともに歩いていくと、正面の水壁が消えていきそのうち綺麗に消え去った。
門をすっぽり内側から覆っているのだ。
「すごい、水が消えた! どうやったのケルビン」
黒い領域が見えないアリエールが驚いた。
「領域を広げて水を吸い取ってるんだよ、さぁ行こう」
「うん! 流石ね」
領域で出来た膜を踏みながら歩いて、水門を無事通過した。
大量の水がゲットできたが、これは飲めるのかな?
小さくしておけば問題ないので、そのまま歩いて次へ向かった。
次は黄色の門だった。
火、水、とくれば今度は土か。
分かってきた法則に、いくらにぶい俺でも流石に理解できた。
ここは土の槍でも飛び出すか?
試しに落ちていた石ころを投げてみると。
―――ズガーンッ!
重そうな黄色の天井が凄い速さで落下した。トンネルがすべて埋まり黄色のブロックになってしまった。
カタカタカタカタ。
その後しばらくして落ちてきた天井が元に戻っていく。
後には粉々になった石ころが、砂のように砕けて散乱していた。
なるほど、これも手ごわいな。
「これは通過するスピードを試しているのかな、それとも天井を持つパワーを求めているのかな」
「そうねぇ、そんな感じよね。それで、今度はどうするのケルビン」
「どうしようか、アリエール」
「……」
「……」
見詰め合う二人。
お互いに探りあうように顔色をうかがった後、アリエールが噴出した。
「ぷっ、ふふふ。何よもう、私は普通に障壁を張っていけばいいような気がするけど、それじゃだめなの?」
「ふふ、そうだよな」
特に意味は無いが、なんだか楽しくなってきた。
普通に薄く領域を伸ばして障壁を作るとそのまま二人で手をつないで突っ込んだ。
―――ズガーンッ!
重そうな天井が落下してきたが、黒い障壁が支えて難なく止めた。試しに押し戻すように持ち上げてみたがそれも普通に可能だった。
Bランクでも超えられる門なのだ。
属性によって相性はあるが、ここを通れないようでは先へ進めない。
それほどの難問ではないようだ。
門だけに……。
サクッと黄色の門を通り抜けると、今度は白っぽい灰色の門が待っていた。
ここは風の門なのだろう。
すでにトンネルの中には暴風が吹き荒れている。渦を巻くようにゴウゴウとうなりを上げた切り裂くような風が中に溢れていた。
「これも、水と同じでいけるな」
「そうね」
領域でトンネルを内側から包んで防御すると、ここも難なく突破した。
四つの門を通過すると、洞窟の入口がハッキリ見えた。
「ようやく入口か、じゃぁ行こうか」
「うん、気をつけてね」
珍しい事を言うアリエールに少し首をかしげる。
何かあるのかと、一応警戒感を強めた。
とはいえ、やることはいつもと変わらない。
俺達を黒い領域の薄い障壁で包むと、中へと入った。
洞窟はさらに暗いが、アリエールが出した光の玉が照らしてくれるので問題ない。
じっとりとした嫌な湿度のある通路を進んで行くと、上から何か降ってきた。
―――ベチョ~。
領域の上にねとっと半透明の緑色の物質がへばりついた。
「うんっ? ああ、スライムかぁ」
「うわぁ、気持ち悪いわねぇ」
ゼリー状のドロドロを見上げてアリエールが変な顔をする。
「ふっ」
普段は見せない美女の変顔がツボにはまって笑えてくる。
「なによ」
「いや、可愛いな、と思って」
「ふ~ん、こんな気持ち悪いにねぇ」
いや、スライムじゃなくてその、すっぱいような変顔が。
まぁ、どうでもいいな。
その後も続々と振ってくる、スライム。
うにょうにょとした粘液が、障壁についてまとわりつく。
なんかエロいな。
変な事を想像していると、急に足がもつれた。
「――なっ!? うわっ!」
「あっ!? ケルビン!」
スライムに気を取られていたら、急に右足首を掴まれて転びそうになったのだ。
体勢は崩れたが、何とか左足で踏ん張って耐える。
ロックした右足首を見ると、地面から不思議な土の手首が生えて掴んでいた。
「おぉっと、なんじゃこりゃ!」
「地面の手よ!」
これも魔物の一種らしい。
すぐに絶対領域で回収し、ついでにスライムもまとめて一掃した。
「地味な攻撃だけど、結構やっかいなコンビだな」
障壁を持たない普通のPTなら、意外と手ごわい相手になるだろう。
「そうね、足止めされて溶かされるわね」
どうも服が溶かされてエロい事になるイメージしか沸いてこないが、スライムは意外と怖いのだ。
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