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5章 迷宮の謎
3話 迷宮10階 冒険者ギルド 1
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メルシーさんからファーストの概要を説明してもらったあと肝心なことを思い出す。
「そうそう、ここにも冒険者ギルドがあるんだろ? 陛下から依頼を受けて攻略に来たんだけど何か聞いてるのかな」
「ええ、お待ちしておりました。やはりお二人が【一撃】様なのですね。三人組と聞いていたので少し躊躇しておりました。ケルビン様、アリエール様。では迷宮ギルドへご案内させていただきますね」
メルシーは俺達を待っていたようだ。
そう言えばPTは三人で登録していたな。
エマールには悪いが、正直足手まといになる、いや、自宅で他の嫁達を守ってもらうためにも残ってもらったのだ。なので今回は二人で挑戦する事にした。
微笑んだお姉さんに案内された場所は、正面に立つ小さな城のような建物だった。
迷宮ギルドがここを管轄しているので、一番いい場所を占有しているのだろう。
「こちらです」
中に入ると広々とした大きな空間があり、ギルド特有のカウンターの周りにはテーブルが置いてある飲食スペースとなっていた。
数組の冒険者達が酒と食事を優雅に楽しんでいるようだ。
上品ないい香りに食欲がそそられる。
せっかくだから食べていこうかと、空席を探すとふいに、奥のテーブルに座っていた騎士のような鎧に包まれた男が声をかけてきた。
強いな……こいつも持っている感じがビンビンする。
「メルシー、それが今回招集されたSランクか? はっ、その割にはずいぶん弱そうだけど大丈夫なのか?」
見た事も無いほど輝くごつい金属の全身鎧。少し長めの茶髪をした長身でいかつい感じの男がこっちを見て馬鹿にする。同じテーブルに座っている三人の女もこちらを向いた。
メルシーがビクっとしながらも、その男に答える。
「勇者アレクライト様、こちらのケルビン様とアリエール様は先日、王都への奇襲軍を撃退した英雄です。陛下の命により……」
「ああ、話は聞いてるさ! だが【一撃】とやらは3人組じゃなかったのか? ただでさえ少ないメンバーしかいねーのに二人だけで迷宮を攻略するもりたぁ、ちょっとばかし舐めてんじゃねーのかって話だよ!」
メルシーの話を遮り、怒ったようにこちらをにらんだ。
こいつが勇者なのか……ちょっと思ってたイメージとは違ってガラが悪いな。
しかし他の三人の女も持っているとは……。
確かに四人ともチート持ちとは羨ましいな。
同テーブルの三人の女を観察しながら、不機嫌な勇者に話しかけた。
「俺達はもともと、二人で活動してたんだよ。二人だけじゃ不安なのか?」
「大いに不安だな、俺達は持ってるフルPTでも攻略には苦労してんだ。弱そうな兄ちゃんと持ってない姉ちゃん二人だけで簡単に最奥まで行ける訳ねーだろ!」
馬鹿にした態度のまま勇者がケンカを売ってくるようだ。
確かに、勇者P Tでチート持ちだ。きっとそれなりには強いのだろう。だが強そうには見えるが、それほどでもない気がする。
むしろ態度を見ると、かませ犬かと思ってしまうのだ。
「そうかなぁ、案外サクっと行けちゃう気がするんだけどな、なぁアリエール」
「そうね、ケルビンならきっとすぐに行けると思うわ」
気楽に答えた俺達に火が付いたのか、勇者とそのPTの顔色が明らかに変わった。
「ほう、えらく調子に乗ってんなぁ! 【領域の主】とやらはそんなに強いのかねぇ」
その男が立ち上がってこちらを向くと、同様に隣にいた黒いローブに包まれた女が敵意を露わにして立ち上がった。
「調子に乗ってる……身の程を知るべき……」
どうやらやる気になっているようだな。
だが、立ったのは二人だけで残りの二人は静観して動かないようだ。
二対二、というつもりだろうか。
その様子を見て周りの冒険者達もスペースを開けて、面白そうにこっちを見ている。
冒険者ギルドではよくある風景だ。
「ちょ、ちょっとやめてくださいよ!」
慌てて止めようとするメルシーを「大丈夫」と遠ざける。
二人対二人で正面に立つ。
さぁSランク勇者とやらの実力を見せてもらおうか。
念のため、俺とアリエールの周りを薄く囲っている黒い領域を広げた瞬間。
「閃 光!」
勇者がつぶやくと同時にその全身が眩しく光り輝いて姿が消えた。
「なっ!?」
そして閃光と共に領域の前面に衝撃が走る!
――ガンっ!!
勇者が凄いスピードで接近し、領域に剣を振り抜いたのだ。
その余りの威力に俺達は【絶対領域】ごと、吹っ飛ぶように跳ね飛ばされて壁に叩きつけられひっくり返った。
「うぉっ!? マジか!」
まさか領域ごと飛ばされるとは……。
思いもよらぬ威力に驚いていると。
「影 移 動!」
さらに黒いローブを纏った女が、長く伸びている俺の影に入り込むように姿を消すと、その影を伝って【絶対領域】で作った囲いの中に侵入した。
倒れている俺の目の前に、その影の下から飛び出して現れたのだ。
「なっ!?」
想定外の出来事の連続に、俺は目を見開いた。
「取った」
そう呟いた女のローブから出た、青銀っぽい肌をした手先に持っていた鋭いナイフが、俺の首筋に当てられていた。
「そうそう、ここにも冒険者ギルドがあるんだろ? 陛下から依頼を受けて攻略に来たんだけど何か聞いてるのかな」
「ええ、お待ちしておりました。やはりお二人が【一撃】様なのですね。三人組と聞いていたので少し躊躇しておりました。ケルビン様、アリエール様。では迷宮ギルドへご案内させていただきますね」
メルシーは俺達を待っていたようだ。
そう言えばPTは三人で登録していたな。
エマールには悪いが、正直足手まといになる、いや、自宅で他の嫁達を守ってもらうためにも残ってもらったのだ。なので今回は二人で挑戦する事にした。
微笑んだお姉さんに案内された場所は、正面に立つ小さな城のような建物だった。
迷宮ギルドがここを管轄しているので、一番いい場所を占有しているのだろう。
「こちらです」
中に入ると広々とした大きな空間があり、ギルド特有のカウンターの周りにはテーブルが置いてある飲食スペースとなっていた。
数組の冒険者達が酒と食事を優雅に楽しんでいるようだ。
上品ないい香りに食欲がそそられる。
せっかくだから食べていこうかと、空席を探すとふいに、奥のテーブルに座っていた騎士のような鎧に包まれた男が声をかけてきた。
強いな……こいつも持っている感じがビンビンする。
「メルシー、それが今回招集されたSランクか? はっ、その割にはずいぶん弱そうだけど大丈夫なのか?」
見た事も無いほど輝くごつい金属の全身鎧。少し長めの茶髪をした長身でいかつい感じの男がこっちを見て馬鹿にする。同じテーブルに座っている三人の女もこちらを向いた。
メルシーがビクっとしながらも、その男に答える。
「勇者アレクライト様、こちらのケルビン様とアリエール様は先日、王都への奇襲軍を撃退した英雄です。陛下の命により……」
「ああ、話は聞いてるさ! だが【一撃】とやらは3人組じゃなかったのか? ただでさえ少ないメンバーしかいねーのに二人だけで迷宮を攻略するもりたぁ、ちょっとばかし舐めてんじゃねーのかって話だよ!」
メルシーの話を遮り、怒ったようにこちらをにらんだ。
こいつが勇者なのか……ちょっと思ってたイメージとは違ってガラが悪いな。
しかし他の三人の女も持っているとは……。
確かに四人ともチート持ちとは羨ましいな。
同テーブルの三人の女を観察しながら、不機嫌な勇者に話しかけた。
「俺達はもともと、二人で活動してたんだよ。二人だけじゃ不安なのか?」
「大いに不安だな、俺達は持ってるフルPTでも攻略には苦労してんだ。弱そうな兄ちゃんと持ってない姉ちゃん二人だけで簡単に最奥まで行ける訳ねーだろ!」
馬鹿にした態度のまま勇者がケンカを売ってくるようだ。
確かに、勇者P Tでチート持ちだ。きっとそれなりには強いのだろう。だが強そうには見えるが、それほどでもない気がする。
むしろ態度を見ると、かませ犬かと思ってしまうのだ。
「そうかなぁ、案外サクっと行けちゃう気がするんだけどな、なぁアリエール」
「そうね、ケルビンならきっとすぐに行けると思うわ」
気楽に答えた俺達に火が付いたのか、勇者とそのPTの顔色が明らかに変わった。
「ほう、えらく調子に乗ってんなぁ! 【領域の主】とやらはそんなに強いのかねぇ」
その男が立ち上がってこちらを向くと、同様に隣にいた黒いローブに包まれた女が敵意を露わにして立ち上がった。
「調子に乗ってる……身の程を知るべき……」
どうやらやる気になっているようだな。
だが、立ったのは二人だけで残りの二人は静観して動かないようだ。
二対二、というつもりだろうか。
その様子を見て周りの冒険者達もスペースを開けて、面白そうにこっちを見ている。
冒険者ギルドではよくある風景だ。
「ちょ、ちょっとやめてくださいよ!」
慌てて止めようとするメルシーを「大丈夫」と遠ざける。
二人対二人で正面に立つ。
さぁSランク勇者とやらの実力を見せてもらおうか。
念のため、俺とアリエールの周りを薄く囲っている黒い領域を広げた瞬間。
「閃 光!」
勇者がつぶやくと同時にその全身が眩しく光り輝いて姿が消えた。
「なっ!?」
そして閃光と共に領域の前面に衝撃が走る!
――ガンっ!!
勇者が凄いスピードで接近し、領域に剣を振り抜いたのだ。
その余りの威力に俺達は【絶対領域】ごと、吹っ飛ぶように跳ね飛ばされて壁に叩きつけられひっくり返った。
「うぉっ!? マジか!」
まさか領域ごと飛ばされるとは……。
思いもよらぬ威力に驚いていると。
「影 移 動!」
さらに黒いローブを纏った女が、長く伸びている俺の影に入り込むように姿を消すと、その影を伝って【絶対領域】で作った囲いの中に侵入した。
倒れている俺の目の前に、その影の下から飛び出して現れたのだ。
「なっ!?」
想定外の出来事の連続に、俺は目を見開いた。
「取った」
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