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5章 迷宮の謎
2話 地下10階 迷宮の町 ファースト
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アリエールと二人で迷宮入りした俺達は、前回以上にサクサクと攻略という名の散歩をし、いよいよ地下9階の階層ボス、ミノタウロスと対面する。
前はここに至る直前に、青龍に襲われて押し戻されているのだ。
一応ここまではCランクでも到達できる階層で、このボスを超えればBランクと認定される節目でもあった。
しかし、すでにSランクになっている俺達には大した難関でもないだろう。
「ケルビン、一応聞いとくけど補助しとく?」
アリエールが分かっていて俺に聞く。
「いや、いいや」
「そうよね。じゃあ行くわよ」
アリエールがうなずいてそっと扉に手を触れると、バタン! と勢いよく大きな扉が内側に開いた。結構大きな音が響く。
「これ、もし外側に開いたら吹っ飛ばされるよな?」
「ふふ、そうね。そのうちそんな 罠 があるかもね」
地味だけど嫌な罠だな。
しょうもないことを話しながら二人はボスの待つ部屋へと入って行った。
青い岩壁に覆われた広い部屋の真ん中には、C+クラスの守 護 者。牛の頭を持ち筋肉隆々の体をした、ミノタウルスが凶悪な牛刀を右手に持ち立っていた。
挑戦者を確認した鋭い目が怪しく光り、3メートルはありそうな全身から敵意のこもったオーラが噴出した。
「なるほど、確かにキングにそっくりだな」
「そうよね、これが進化してキングになったのよね」
のん気に感想を述べる俺達に対して、戦闘態勢に入ったミノタウルスが咆哮をあげる。
――ズバーン!
「!?」
黒い領域から飛び出した見えない槍に貫かれて、早々にボスは魔石と宝箱をドロップした。
「ちっ宝箱一つか、鍵だろうな」
一つしかないので、どうせいつもの鍵だろうと思って、さっと宝箱を開けると、中には何と宝箱が入っていた。
「おっまた宝箱があるぞ?」
「へぇー」
アリエールも覗き込む。
中から現れた、一回り小さな少し高価そうな宝箱を取り出すと、期待してそのフタをパカっとあけた。
すると中には鍵が入っていた。
「なんじゃこりゃ!」
結局いつもの鍵だった。
少し期待した俺が馬鹿だったようだ。
「本当、何がしたいのかしらね」
興味を失って呆れた表情をしながら鍵を取り出したアリエールが、それを使って前の扉を開錠した。
扉を開ける。
その先の小さな部屋は、正面に大き目の水晶が置かれているシンプルな部屋だった。
「ワープ部屋か」
水晶に手を当てると、地下10階、地上1階という表示が浮かび上がった。
ここから一瞬で移動できるのだろう。アリエールの手を握って俺は迷わず10階を選択すると一瞬で視界の前に小奇麗な町並みが広がった。
「おおっ」
「わおっ」
夕日が沈んだ宵の口あたりだろうか、かすかに薄明るい夜の町に魔道具に照らされた店の明かりが、なんとも言えない高級感を醸し出している。
正面には噴水のある広場があり、その周りに高級な商店街が並んでいる。広場から出た石畳の道路の先には小さめな城のような建物が立っていた。
ここがBランク以上しか入れない迷宮の街、ファーストに違いない。
限られた者しか入れないため滞在人は多くない。だが、その分金持ちしかいない為か、町並みは贅沢な造りであった。
その広場周辺を歩いている人々は、皆高級な衣装着ている者ばかりだ。
それはそうだろう。Bランク以上の冒険者しか入れない、という事は、一流以上の金持ちしかいない。という事でもある。
一度ここに入れた冒険者は、水晶によってこの町と迷宮入口とを自由に移動できる。つまり迷宮の外にある町で購入できる安い物など需要があるはずも無く、必要なのはここでしか買えないような高価な物ばかり、となるだろう。
しかし、少しだけ疑問を感じた。
「あれっ? その割にはエロい綺麗なお姉さんがいっぱいだな、あの人達も冒険者なのか?」
「ホントね、それに店員さんも結構いるみたいだし……ケルビン、ねぇ、あそこの店って娼館じゃない?」
アリエールの視線の先には、高級ながらもエロい雰囲気がビンビンに漂う、見慣れた興味深い建物があった。
Bランク以上しか入れないはずの町にしてはそれなりの人々が行きかっている。
それに娼館にまさかBランクの冒険者が勤めているとは思えない。そんな実力があるのなら余程の好き者じゃないかぎり、Hするより狩りをするほうが簡単に稼げるからだ。
金があるなら男でも奴隷でも、何でも買ってしまえばいいはずだが。
二人で不思議に思って話していると。
「迷宮の町ファーストへようこそ。案内は必要でしょうか」
ふいに可愛い声をかけられた。そこにはメイドの服を着た美人の女の子が立っていた。
もちろんその子も凄腕冒険者にはまったく見えない。
もしかしたらメイドとしてBランクなのだろうか?
いや、待てよ! だとしたら、ここの娼婦はBランク以上しか居ないのでは無いだろうか!?
とするとこの娘は。
「ああ、初めてなんだ。優しくしてくれないか?」
俺は期待をこめて、まるで何も知らない処女のように、顔を赤らめてその娘を見た。
アリエールは半分あきれているが、同時にクスリと笑っている。
「ふふふ、やっぱりお二人は初めてなのですね」
初めて訪れた感じなのを見抜かれたのだろう、お姉さんが優しく微笑んだ。
細身でモデル系なブウラウンの長髪。高級なメイド服を着た20歳位の女性だった。
うーん、娼婦には見えないな。
「もしかして……冒険者ギルドの方ですか?」
「はい。案内役のメルシーと申します」
やっぱり冒険者ギルドの人だった。
「メルシーさんもBランクなんですか? とてもそうは見えないけど」
俺は失礼と思いながらも聞いてみた。
「いいえ、とんでもありません! 私はEランクなんですよ。よく聞かれるのですが、この町は迷宮冒険者ギルドが管轄していますので、その管理下にある商人や、商売人などはBランクではなくてもこの町に入れるのですよ。でないと上級の冒険者達のサポートができませんからね」
なるほど、ギルドの許可があれば冒険者ではなくともこの町に入れるようだ。
確かにそうでなければ町が運営できるはずもない。Bランク冒険者が店でバイトする訳がないからな。
俺達は話を聞いて大いに納得した。
前はここに至る直前に、青龍に襲われて押し戻されているのだ。
一応ここまではCランクでも到達できる階層で、このボスを超えればBランクと認定される節目でもあった。
しかし、すでにSランクになっている俺達には大した難関でもないだろう。
「ケルビン、一応聞いとくけど補助しとく?」
アリエールが分かっていて俺に聞く。
「いや、いいや」
「そうよね。じゃあ行くわよ」
アリエールがうなずいてそっと扉に手を触れると、バタン! と勢いよく大きな扉が内側に開いた。結構大きな音が響く。
「これ、もし外側に開いたら吹っ飛ばされるよな?」
「ふふ、そうね。そのうちそんな 罠 があるかもね」
地味だけど嫌な罠だな。
しょうもないことを話しながら二人はボスの待つ部屋へと入って行った。
青い岩壁に覆われた広い部屋の真ん中には、C+クラスの守 護 者。牛の頭を持ち筋肉隆々の体をした、ミノタウルスが凶悪な牛刀を右手に持ち立っていた。
挑戦者を確認した鋭い目が怪しく光り、3メートルはありそうな全身から敵意のこもったオーラが噴出した。
「なるほど、確かにキングにそっくりだな」
「そうよね、これが進化してキングになったのよね」
のん気に感想を述べる俺達に対して、戦闘態勢に入ったミノタウルスが咆哮をあげる。
――ズバーン!
「!?」
黒い領域から飛び出した見えない槍に貫かれて、早々にボスは魔石と宝箱をドロップした。
「ちっ宝箱一つか、鍵だろうな」
一つしかないので、どうせいつもの鍵だろうと思って、さっと宝箱を開けると、中には何と宝箱が入っていた。
「おっまた宝箱があるぞ?」
「へぇー」
アリエールも覗き込む。
中から現れた、一回り小さな少し高価そうな宝箱を取り出すと、期待してそのフタをパカっとあけた。
すると中には鍵が入っていた。
「なんじゃこりゃ!」
結局いつもの鍵だった。
少し期待した俺が馬鹿だったようだ。
「本当、何がしたいのかしらね」
興味を失って呆れた表情をしながら鍵を取り出したアリエールが、それを使って前の扉を開錠した。
扉を開ける。
その先の小さな部屋は、正面に大き目の水晶が置かれているシンプルな部屋だった。
「ワープ部屋か」
水晶に手を当てると、地下10階、地上1階という表示が浮かび上がった。
ここから一瞬で移動できるのだろう。アリエールの手を握って俺は迷わず10階を選択すると一瞬で視界の前に小奇麗な町並みが広がった。
「おおっ」
「わおっ」
夕日が沈んだ宵の口あたりだろうか、かすかに薄明るい夜の町に魔道具に照らされた店の明かりが、なんとも言えない高級感を醸し出している。
正面には噴水のある広場があり、その周りに高級な商店街が並んでいる。広場から出た石畳の道路の先には小さめな城のような建物が立っていた。
ここがBランク以上しか入れない迷宮の街、ファーストに違いない。
限られた者しか入れないため滞在人は多くない。だが、その分金持ちしかいない為か、町並みは贅沢な造りであった。
その広場周辺を歩いている人々は、皆高級な衣装着ている者ばかりだ。
それはそうだろう。Bランク以上の冒険者しか入れない、という事は、一流以上の金持ちしかいない。という事でもある。
一度ここに入れた冒険者は、水晶によってこの町と迷宮入口とを自由に移動できる。つまり迷宮の外にある町で購入できる安い物など需要があるはずも無く、必要なのはここでしか買えないような高価な物ばかり、となるだろう。
しかし、少しだけ疑問を感じた。
「あれっ? その割にはエロい綺麗なお姉さんがいっぱいだな、あの人達も冒険者なのか?」
「ホントね、それに店員さんも結構いるみたいだし……ケルビン、ねぇ、あそこの店って娼館じゃない?」
アリエールの視線の先には、高級ながらもエロい雰囲気がビンビンに漂う、見慣れた興味深い建物があった。
Bランク以上しか入れないはずの町にしてはそれなりの人々が行きかっている。
それに娼館にまさかBランクの冒険者が勤めているとは思えない。そんな実力があるのなら余程の好き者じゃないかぎり、Hするより狩りをするほうが簡単に稼げるからだ。
金があるなら男でも奴隷でも、何でも買ってしまえばいいはずだが。
二人で不思議に思って話していると。
「迷宮の町ファーストへようこそ。案内は必要でしょうか」
ふいに可愛い声をかけられた。そこにはメイドの服を着た美人の女の子が立っていた。
もちろんその子も凄腕冒険者にはまったく見えない。
もしかしたらメイドとしてBランクなのだろうか?
いや、待てよ! だとしたら、ここの娼婦はBランク以上しか居ないのでは無いだろうか!?
とするとこの娘は。
「ああ、初めてなんだ。優しくしてくれないか?」
俺は期待をこめて、まるで何も知らない処女のように、顔を赤らめてその娘を見た。
アリエールは半分あきれているが、同時にクスリと笑っている。
「ふふふ、やっぱりお二人は初めてなのですね」
初めて訪れた感じなのを見抜かれたのだろう、お姉さんが優しく微笑んだ。
細身でモデル系なブウラウンの長髪。高級なメイド服を着た20歳位の女性だった。
うーん、娼婦には見えないな。
「もしかして……冒険者ギルドの方ですか?」
「はい。案内役のメルシーと申します」
やっぱり冒険者ギルドの人だった。
「メルシーさんもBランクなんですか? とてもそうは見えないけど」
俺は失礼と思いながらも聞いてみた。
「いいえ、とんでもありません! 私はEランクなんですよ。よく聞かれるのですが、この町は迷宮冒険者ギルドが管轄していますので、その管理下にある商人や、商売人などはBランクではなくてもこの町に入れるのですよ。でないと上級の冒険者達のサポートができませんからね」
なるほど、ギルドの許可があれば冒険者ではなくともこの町に入れるようだ。
確かにそうでなければ町が運営できるはずもない。Bランク冒険者が店でバイトする訳がないからな。
俺達は話を聞いて大いに納得した。
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