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4章 凱旋と旅
23話 急襲、新たな敵
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物凄い重さが上からのしかかってきた。
「なっなんだこりゃ!?」
「こっこれは領域!? 重力領域攻撃を受けてます!」
人型に戻っていたタンドリーが驚愕して叫んだ。
上を見ると、確かに俺の黒い領域を押しつぶすように薄い青いモヤモヤが覆っているように見えた。
俺達が黒い領域ごとすごい速度で落下している。
地面がグングン近づいてくる。このままだと地表に叩きつけられる!
「何の! これでどうだ!」
――ガシャーン!
俺は【絶対領域】から長い両手両足を出して、衝撃を吸収するように地面に着地した。
「うおっ!?」
痛ッッく……ない、な。
びっくりはしたが、無傷で着地できたようだ。そもそも【絶対領域】の中は俺の思い通りになるので衝撃も吸収できるのだ。
無事、着地は出来たのだが、押しつぶそうとする青いモヤモヤはさらに上から圧力をかけ続けている。
俺の【黒い領域】を包囲するかのように青い領域がまとわりつく。
なんなんだこれは。
と、思うと同時に前方から青い鎧に包まれた男が歩いて来た。
「これはこれは、初めましてかな? どうやら君も【領域の主】のようだが、えらく領域が小さいな。体も小さいし、もしかして小人族なのかい」
若い男が不思議そうな顔を見せた。
青い髪に青い瞳、長身で細身の騎士のような男だった。
そんな訳ねーだろ、と思ったが、今の俺達の姿は親指位の大きさしかない。
この大きさを見ればそう思うのも無理は無いが、敵にワザワザ説明してやるつもりもない。
さっきから覆っている【青い領域】、押しつぶそうとするこの圧力をこいつがやってるとすると、重力を自由に出来る【重力マスター】か。
だが上から押されているとはいえ、青龍に噛まれた時程の圧力はない。
これなら動ける。
俺は【絶対領域】から細長い両手を出して青い男を捕まえようとする。
これでも食らえ!
――シュバッ!
黒い手がその男に届く!
そう思った瞬間に手先がグワンと重くなり、地面にビタンと押さえつけられてしまった。
「おっと! 危ないなぁ、これは不思議な形の領域だねぇ、僕の領域内で動けるとは大したもんだ。やるもんだなぁ」
そう言って余裕の表情を見せながら、さらにこちらへ近づいてくる。
危ないと言いながらも全く警戒している様子は無い。
よほど能力に自信があるのだろうか。
奴が近づくにつれてさらに圧力が強くなっていく。
やはり領域は本人に近いほど威力を発揮するようだ。
だが、それはこちらも同じだ。今のところ俺の領域がつぶされるような感じはしない。両腕も重たいが動かないことはない。ズルズルとひっぱるように細い腕を元に戻した。ソフトボール大の大きさにして防御に専念する。
これなら命の危険はなさそうだ。
「へー、お前も【領域の主】か、初めて見たよ、俺はケルビン・シルバーって言うんだ」
相手の情報が欲しいのでとりあえず自己紹介してみた。
「君がケルビン・シルバーねぇ、青龍とミノタウロスキングを倒したそうじゃないか、そんなに強そうには見えないけどねぇ」
向こうも自分の領域に絶対の自信があるのだろう、無造作にこちらに近づいて、対峙する距離まで接近した。
「ああ、大変だったよ。何とか運よく倒せただけだ。ところでお前は、すごいと噂の重力マスターか?」
その言葉に嬉しそうに瞳を輝かせると。
「そうだよ、僕はゴールドブルグ王国の【領域の主】、【重力マスター】のヘクト・パスカルだ。やっぱりこの国でも噂になっているのかい」
食い気味に自己紹介してくれた。
噂は全く知らないが、メシリアからそう聞いたので言ってみただけだ。
「そりゃあ噂になってるよ、すごく強いらしいな」
すると本人はさらに嬉しそうにテレ笑いしながら、分かりやすく上機嫌になった。
「それほどでもあるけどねぇ、ハッキリ言われると照れてしまうじゃないか、いやいやぁ、やっぱり噂になってるんだねぇ」
噂にされるのが好きらしい。こいつはアホっぽい、まるで子供だ。
「そりゃあそうだよ、重力を操れるんだろ、すごいじゃないか、どれくらいの範囲を操れるんだ?」
情報を引き出しながら、俺は奴をどう処理するかを必死に考えていた。
「そうだねぇ、僕が本気になれば100メートル位までは範囲に入れられるかも知れないねぇ、そうすれば他の奴らはもう逃げられないのさ、今の君達みたいにねぇ」
すでに捕らえていると思っているからこそのこの余裕か。確かに自由に動けないくらいの圧力は感じている。
だが、ヘクトでも俺の領域には手出しできないはずだ。どうするつもりなんだろうか。
「確かに逃げられないかもしれないが、ヘクトも俺の領域には入れないだろ、どうするつもりなんだ」
お互いの領域には干渉できないんじゃないか。
「確かにそうだねぇ、【領域】の中には入れないだろうが、【領域】ごと押しつぶせるんじゃないかと思っているんだ」
やはりこのまま押しつぶすつもりか、重力しか操れないならそうなるよな。
「どうするのよケルビン」
話を聞いていたアリエールが心配そうに俺を見た。タンドリーや、他のメンバーも不安な表情を見せている。
「まぁ、心配するな。この中なら大丈夫だ」
皆を落ち着かせるように平気な顔でそう答える。
「では一度実験してみようかねぇケルビン君。君の領域は余りにも小さい、その分僕の力を集中できると思うんだよねぇ」
そう言うと、ヘクトは両手を俺達の方にむけ、なにやら力を集中させているようだ。
青いモヤモヤが密集してきてだんだん濃い色になってきた。範囲を俺達の周りだけに集中させているのだ。
それにつれて俺の領域を押しつぶす力もどんどん大きくなってきた。
「力比べか、受けて立つぜ、ヘクト!」
俺も黒い領域を少し膨らませて障壁のように薄い壁を一枚覆わせた。
「勝負だケルビン君! うぉおおお! 【超大重力波】!」
――ドバァーン!
青いものすごい重力が襲って来た。
「なっなんだこりゃ!?」
「こっこれは領域!? 重力領域攻撃を受けてます!」
人型に戻っていたタンドリーが驚愕して叫んだ。
上を見ると、確かに俺の黒い領域を押しつぶすように薄い青いモヤモヤが覆っているように見えた。
俺達が黒い領域ごとすごい速度で落下している。
地面がグングン近づいてくる。このままだと地表に叩きつけられる!
「何の! これでどうだ!」
――ガシャーン!
俺は【絶対領域】から長い両手両足を出して、衝撃を吸収するように地面に着地した。
「うおっ!?」
痛ッッく……ない、な。
びっくりはしたが、無傷で着地できたようだ。そもそも【絶対領域】の中は俺の思い通りになるので衝撃も吸収できるのだ。
無事、着地は出来たのだが、押しつぶそうとする青いモヤモヤはさらに上から圧力をかけ続けている。
俺の【黒い領域】を包囲するかのように青い領域がまとわりつく。
なんなんだこれは。
と、思うと同時に前方から青い鎧に包まれた男が歩いて来た。
「これはこれは、初めましてかな? どうやら君も【領域の主】のようだが、えらく領域が小さいな。体も小さいし、もしかして小人族なのかい」
若い男が不思議そうな顔を見せた。
青い髪に青い瞳、長身で細身の騎士のような男だった。
そんな訳ねーだろ、と思ったが、今の俺達の姿は親指位の大きさしかない。
この大きさを見ればそう思うのも無理は無いが、敵にワザワザ説明してやるつもりもない。
さっきから覆っている【青い領域】、押しつぶそうとするこの圧力をこいつがやってるとすると、重力を自由に出来る【重力マスター】か。
だが上から押されているとはいえ、青龍に噛まれた時程の圧力はない。
これなら動ける。
俺は【絶対領域】から細長い両手を出して青い男を捕まえようとする。
これでも食らえ!
――シュバッ!
黒い手がその男に届く!
そう思った瞬間に手先がグワンと重くなり、地面にビタンと押さえつけられてしまった。
「おっと! 危ないなぁ、これは不思議な形の領域だねぇ、僕の領域内で動けるとは大したもんだ。やるもんだなぁ」
そう言って余裕の表情を見せながら、さらにこちらへ近づいてくる。
危ないと言いながらも全く警戒している様子は無い。
よほど能力に自信があるのだろうか。
奴が近づくにつれてさらに圧力が強くなっていく。
やはり領域は本人に近いほど威力を発揮するようだ。
だが、それはこちらも同じだ。今のところ俺の領域がつぶされるような感じはしない。両腕も重たいが動かないことはない。ズルズルとひっぱるように細い腕を元に戻した。ソフトボール大の大きさにして防御に専念する。
これなら命の危険はなさそうだ。
「へー、お前も【領域の主】か、初めて見たよ、俺はケルビン・シルバーって言うんだ」
相手の情報が欲しいのでとりあえず自己紹介してみた。
「君がケルビン・シルバーねぇ、青龍とミノタウロスキングを倒したそうじゃないか、そんなに強そうには見えないけどねぇ」
向こうも自分の領域に絶対の自信があるのだろう、無造作にこちらに近づいて、対峙する距離まで接近した。
「ああ、大変だったよ。何とか運よく倒せただけだ。ところでお前は、すごいと噂の重力マスターか?」
その言葉に嬉しそうに瞳を輝かせると。
「そうだよ、僕はゴールドブルグ王国の【領域の主】、【重力マスター】のヘクト・パスカルだ。やっぱりこの国でも噂になっているのかい」
食い気味に自己紹介してくれた。
噂は全く知らないが、メシリアからそう聞いたので言ってみただけだ。
「そりゃあ噂になってるよ、すごく強いらしいな」
すると本人はさらに嬉しそうにテレ笑いしながら、分かりやすく上機嫌になった。
「それほどでもあるけどねぇ、ハッキリ言われると照れてしまうじゃないか、いやいやぁ、やっぱり噂になってるんだねぇ」
噂にされるのが好きらしい。こいつはアホっぽい、まるで子供だ。
「そりゃあそうだよ、重力を操れるんだろ、すごいじゃないか、どれくらいの範囲を操れるんだ?」
情報を引き出しながら、俺は奴をどう処理するかを必死に考えていた。
「そうだねぇ、僕が本気になれば100メートル位までは範囲に入れられるかも知れないねぇ、そうすれば他の奴らはもう逃げられないのさ、今の君達みたいにねぇ」
すでに捕らえていると思っているからこそのこの余裕か。確かに自由に動けないくらいの圧力は感じている。
だが、ヘクトでも俺の領域には手出しできないはずだ。どうするつもりなんだろうか。
「確かに逃げられないかもしれないが、ヘクトも俺の領域には入れないだろ、どうするつもりなんだ」
お互いの領域には干渉できないんじゃないか。
「確かにそうだねぇ、【領域】の中には入れないだろうが、【領域】ごと押しつぶせるんじゃないかと思っているんだ」
やはりこのまま押しつぶすつもりか、重力しか操れないならそうなるよな。
「どうするのよケルビン」
話を聞いていたアリエールが心配そうに俺を見た。タンドリーや、他のメンバーも不安な表情を見せている。
「まぁ、心配するな。この中なら大丈夫だ」
皆を落ち着かせるように平気な顔でそう答える。
「では一度実験してみようかねぇケルビン君。君の領域は余りにも小さい、その分僕の力を集中できると思うんだよねぇ」
そう言うと、ヘクトは両手を俺達の方にむけ、なにやら力を集中させているようだ。
青いモヤモヤが密集してきてだんだん濃い色になってきた。範囲を俺達の周りだけに集中させているのだ。
それにつれて俺の領域を押しつぶす力もどんどん大きくなってきた。
「力比べか、受けて立つぜ、ヘクト!」
俺も黒い領域を少し膨らませて障壁のように薄い壁を一枚覆わせた。
「勝負だケルビン君! うぉおおお! 【超大重力波】!」
――ドバァーン!
青いものすごい重力が襲って来た。
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