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4章 凱旋と旅
16話 初勝利
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「やったー!」
セリーが飛び跳ねて喜んだ。
「すごい、さっきと全然違う、補助魔法ってこんなに違う物なのね」
モニカも手ごたえを感じたようだ。
「これならいくらでもいけそうだわ、せっかくだからジャンジャン行きましょう」
マニエルのテンションも上がっている。苦戦したハウンドドッグを難なく倒したのだ。
アリエールが三人に【風の歩行補助】 【風の攻撃補助】 【風の防御補助】をかけたおかげだ。
動きがさっきまでと全然違う。
俺は倒れたハウンドドッグを回収すると、喜ぶ三人について行った。
快進撃は続き、FランクPT【三姫】は二時間位狩りをして四匹のハウンドドッグと三匹の一角ラットを討伐した。
その後はモニカ先生の元、すべての魔物を綺麗に解体した。流石冒険者ギルド歴十年のベテランだ。
流れるような手つきでさばいて毛皮、肉、魔石、角、と切り分けた。
「さすがギルド職員、プロの技ね」
「モニカさん、上手です」
皆が拍手してその技術を教わった。
回収してギルドへ戻り、受付で報告する。
三人が解体した魔物をどさっとカウンターに出すと。
「こりゃ、たまげた……綺麗に解体してあるな。これはプロの仕事だぞ、俺よりも上手だな。ハウンドドッグ四匹で90×4で360ドロル、一角ラット三匹で70×3で210ドロル、合計570ドロル獲得だ。女三人で大したもんだ。これが毎日続くようならすぐにEランクに昇格だな」
ギルドのおっさんも驚いたようだ。そりゃそうだ、元プロだからな。
解体手数料が引かれないので収入もその分多くなる。
三人で190ドロルずつ分けてそのお金を握りしめた。
初めて貰った給金に特にモニカは感動している。すごく嬉しそうな表情だ。
装備を買ったあげたせいなのか、三人とも俺にお金を渡そうとしてくれた。だが、気持ちだけ受け取ってそのまま返した。
「頑張ったな、初トリオ給金おめでとう。モニカ、特に初めての魔物狩りだから嬉しいだろ」
「うん、ありがとうケルビン様、アリエール様。マニエルさんもセリーさんもありがとう」
すでにウルウルしていたモニカは話しながら泣いてしまった。あまりに可愛いので抱きしめる。
セリーもマニエルもモニカに抱き着いて泣いていた。
これはいいPTになるかもしれないな。
アリエールは微笑ましそうに笑っている。
初狩も無事終わり、そろそろ日も暮れてきた。今日の寝床を探す為、宿屋街に歩いて行く。
いい宿屋にしてもいいのだが、装備に合うようそこそこのランクの宿屋に決めた。ペンション風の小ぎれいな宿だ。いかにもEランク冒険者が使いそうな感じがする。
五人用の部屋が無かったのと、嫁じゃないマニエルもいるので二人部屋と三人部屋を取り、俺とアリエールで二人部屋に入った。
宿のお風呂は浴槽がなく、お湯をかけて洗えるタイプのかけ湯風呂だった。料金も安いので仕方がない。
さっと汗を流して食堂に集まった。
テーブルに五人で座って果実酒で乾杯する。料理も適当に頼んで皆でつまむ。
初めての狩りと補助魔法のすごさを語り、盛り上がっていると近くの冒険者達から話声が聞こえてきた。
「おい、聞いたか、戦の話」
「ああ、トリビア伯爵軍がいよいよ北の砦を攻略したって話だろ、スターテルの町ももうすぐトリビア伯爵様の支配下だな」
「それなんだがな、どうやら雲行きが怪しいんだ。スターテルの町を襲うはずだったニュエロ男爵様の軍勢が、突如消えたらしいんだよ」
二人の男達が話し合っているようだ。盗賊風の格好をした男が戦士風の男に情報を伝えているように見える。面白そうなので気づかれないように聞き耳を立てる。
「ええっ!? あの『雷帝』ニュエロ男爵様が? 自慢の精鋭三百騎はどうしたんだよ、バーデル軍に対抗できる戦力なんかないだろ」
驚いたように戦士が言った。
あれが雷帝だったのか、確かに雷の魔法だったな。精鋭の三百とやらも多分俺が持っているのだが……そう言えばこれどうしようかな。
「それがわからねぇんだよ、いきなり跡形もなく消えたらしいんだ。その間にバーデル軍にも援軍が到着、チッキーナ男爵軍も応援に来たらしく、攻めてたマラケス準男爵軍は敗走した。スターテルの町どころか落とした北の砦まで放棄して自分の領地に戻ったって話だぜ」
「マジか、そいつは急展開だな、チッキーナ男爵軍か……大方そこにやられたんだろうな」
「そうなのかねぇ、そこまでの力があるとは思えねぇが、実際負けたんだ。そうかもしれねぇな」
「負けたのか、おいもしかして、バーデル軍がこの町まで攻めてくるとかねぇだろうな」
戦士の男が盗賊風の男に確かめるようにわめきたてる。
よく見ると俺達だけじゃなく周りの人達も話を聞いていた。大声で話しているし、気になる話題だからだろう。
「追撃はそこまでなかったようだぜ。ここまで来ることはないだろうとは言ってたさ、まあ今の所はな」
その言葉を聞いて安心したのか、戦士風の男は落ち着いたように酒を飲み干した。周りの人達も安心したようにため息を吐いた。
戦になれば無関係では済まないからな。
「ねぇ、ケルビン様、今の話ってあれのことでしょう」
左に座っているモニカがこそっと耳打ちする。やはり心配だったようだ。長く住んだ町だからな。
俺も実はほっとしていた。
「そうだろうな、まあ、タンドリーが間に合ったんだろう。結果的には良かったじゃないか」
スターテルの町が無事だった事に、俺達はもう一度乾杯して果実酒を飲み干した。
セリーが飛び跳ねて喜んだ。
「すごい、さっきと全然違う、補助魔法ってこんなに違う物なのね」
モニカも手ごたえを感じたようだ。
「これならいくらでもいけそうだわ、せっかくだからジャンジャン行きましょう」
マニエルのテンションも上がっている。苦戦したハウンドドッグを難なく倒したのだ。
アリエールが三人に【風の歩行補助】 【風の攻撃補助】 【風の防御補助】をかけたおかげだ。
動きがさっきまでと全然違う。
俺は倒れたハウンドドッグを回収すると、喜ぶ三人について行った。
快進撃は続き、FランクPT【三姫】は二時間位狩りをして四匹のハウンドドッグと三匹の一角ラットを討伐した。
その後はモニカ先生の元、すべての魔物を綺麗に解体した。流石冒険者ギルド歴十年のベテランだ。
流れるような手つきでさばいて毛皮、肉、魔石、角、と切り分けた。
「さすがギルド職員、プロの技ね」
「モニカさん、上手です」
皆が拍手してその技術を教わった。
回収してギルドへ戻り、受付で報告する。
三人が解体した魔物をどさっとカウンターに出すと。
「こりゃ、たまげた……綺麗に解体してあるな。これはプロの仕事だぞ、俺よりも上手だな。ハウンドドッグ四匹で90×4で360ドロル、一角ラット三匹で70×3で210ドロル、合計570ドロル獲得だ。女三人で大したもんだ。これが毎日続くようならすぐにEランクに昇格だな」
ギルドのおっさんも驚いたようだ。そりゃそうだ、元プロだからな。
解体手数料が引かれないので収入もその分多くなる。
三人で190ドロルずつ分けてそのお金を握りしめた。
初めて貰った給金に特にモニカは感動している。すごく嬉しそうな表情だ。
装備を買ったあげたせいなのか、三人とも俺にお金を渡そうとしてくれた。だが、気持ちだけ受け取ってそのまま返した。
「頑張ったな、初トリオ給金おめでとう。モニカ、特に初めての魔物狩りだから嬉しいだろ」
「うん、ありがとうケルビン様、アリエール様。マニエルさんもセリーさんもありがとう」
すでにウルウルしていたモニカは話しながら泣いてしまった。あまりに可愛いので抱きしめる。
セリーもマニエルもモニカに抱き着いて泣いていた。
これはいいPTになるかもしれないな。
アリエールは微笑ましそうに笑っている。
初狩も無事終わり、そろそろ日も暮れてきた。今日の寝床を探す為、宿屋街に歩いて行く。
いい宿屋にしてもいいのだが、装備に合うようそこそこのランクの宿屋に決めた。ペンション風の小ぎれいな宿だ。いかにもEランク冒険者が使いそうな感じがする。
五人用の部屋が無かったのと、嫁じゃないマニエルもいるので二人部屋と三人部屋を取り、俺とアリエールで二人部屋に入った。
宿のお風呂は浴槽がなく、お湯をかけて洗えるタイプのかけ湯風呂だった。料金も安いので仕方がない。
さっと汗を流して食堂に集まった。
テーブルに五人で座って果実酒で乾杯する。料理も適当に頼んで皆でつまむ。
初めての狩りと補助魔法のすごさを語り、盛り上がっていると近くの冒険者達から話声が聞こえてきた。
「おい、聞いたか、戦の話」
「ああ、トリビア伯爵軍がいよいよ北の砦を攻略したって話だろ、スターテルの町ももうすぐトリビア伯爵様の支配下だな」
「それなんだがな、どうやら雲行きが怪しいんだ。スターテルの町を襲うはずだったニュエロ男爵様の軍勢が、突如消えたらしいんだよ」
二人の男達が話し合っているようだ。盗賊風の格好をした男が戦士風の男に情報を伝えているように見える。面白そうなので気づかれないように聞き耳を立てる。
「ええっ!? あの『雷帝』ニュエロ男爵様が? 自慢の精鋭三百騎はどうしたんだよ、バーデル軍に対抗できる戦力なんかないだろ」
驚いたように戦士が言った。
あれが雷帝だったのか、確かに雷の魔法だったな。精鋭の三百とやらも多分俺が持っているのだが……そう言えばこれどうしようかな。
「それがわからねぇんだよ、いきなり跡形もなく消えたらしいんだ。その間にバーデル軍にも援軍が到着、チッキーナ男爵軍も応援に来たらしく、攻めてたマラケス準男爵軍は敗走した。スターテルの町どころか落とした北の砦まで放棄して自分の領地に戻ったって話だぜ」
「マジか、そいつは急展開だな、チッキーナ男爵軍か……大方そこにやられたんだろうな」
「そうなのかねぇ、そこまでの力があるとは思えねぇが、実際負けたんだ。そうかもしれねぇな」
「負けたのか、おいもしかして、バーデル軍がこの町まで攻めてくるとかねぇだろうな」
戦士の男が盗賊風の男に確かめるようにわめきたてる。
よく見ると俺達だけじゃなく周りの人達も話を聞いていた。大声で話しているし、気になる話題だからだろう。
「追撃はそこまでなかったようだぜ。ここまで来ることはないだろうとは言ってたさ、まあ今の所はな」
その言葉を聞いて安心したのか、戦士風の男は落ち着いたように酒を飲み干した。周りの人達も安心したようにため息を吐いた。
戦になれば無関係では済まないからな。
「ねぇ、ケルビン様、今の話ってあれのことでしょう」
左に座っているモニカがこそっと耳打ちする。やはり心配だったようだ。長く住んだ町だからな。
俺も実はほっとしていた。
「そうだろうな、まあ、タンドリーが間に合ったんだろう。結果的には良かったじゃないか」
スターテルの町が無事だった事に、俺達はもう一度乾杯して果実酒を飲み干した。
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