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4章 凱旋と旅
7話 セリーとマニエルの逃亡
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セリーとマニエルは必死に走っていた。
「もっもう、だめー」
「セリー諦めちゃだめ!」
スターテルの町から飛び出して南の町へ移動しようとした街道で、運悪く出くわしまったトレビアの軍隊に襲われたのだ。
「嬢ちゃん、いい加減に諦めな」
五十騎程の騎馬隊に囲まれて泣きながら走っている。絶体絶命の大ピンチだ。
町を襲撃するために迂回したトレビア軍と鉢合わせしてしまったのだ。
馬に対して徒歩で逃げ切れる訳が無い。
「ほれ、可愛がってやるからさぁ」
「ふははははは」
騎馬兵士達がいたぶるように追い立てる。
「おい、お前ら遊びは程々にしとけ!」
「へい、隊長。そら!」
――シュッ! シュッ!
「あぁっっ!?」
「うわぁっ!」
騎馬から投げ縄が飛んできて、セリーもマニエルも捕まってしまった。この人数相手に逃げられる訳が無いのだ。
「何すんだよ。あたい達はただの冒険者だ。何にもしないよ、頼むから見逃してくれよ」
マニエルが懇願する。
「そうですよ。ただ隣町に行くだけじゃないですか」
セリーも叫んだ。
馬から降りてきた兵士が言う。
「悪いな。今は戦中だ。見られたからには放っておけねぇ、運が悪かったと思って諦めな。ただちょっとご奉仕してくれれば、命までは取らねえぜ」(やってる間はな)
「おう、そうだぞ、お前たちの態度次第だぜ」
兵士達がニヤニヤしながら近づいてきた。五十人も男がいるのだ。廻されたら死ぬかもしれない……。
「本当に命は助けてくれるんだな」
マニエルが睨むように兵士に言う。
「ああ心配すんな。たっぷりサービスしてくれよ」
兵士がマニエルの鎧を脱がした。
セリーの鎧も脱がされた。心臓がバクバクし、悔しくて涙が溢れてきた。
地面に転がされ服と下着が粗々悪しく降ろされた。ケルビンに買ってもらった服が破れた。
横を向くと同じように寝転がされたマニエルと目が合う。呟くように彼女が言った。
「ごめんねセリー……」
町を抜け出そうと誘った事を謝っているのだ。しょうがない。こんな事になるなんて誰にも分らなかったじゃないか。
「ううん、マニエルのせいじゃない。諦めちゃだめよ、頑張ろう」
「……うん」
何としても生き延びて、またケルビンに会いたいな……。パンツを脱がされながらセリーの瞳から涙がこぼれた。
ニヤニヤする兵士に囲まれながら、セリーは目をつぶり唇をかみしめた。
☆
半刻前……チッキーナ領のヘルガルーダを討伐した後、復興資金用にとタンドリーへ魔石を渡した。
その変わりにタンドリーに頼んで【鳥形態】で当初の目的地、スターテルの町まで送ってもらう。
もちろんセリーとモニカに会うためだ。
【絶対領域】の中でアリエールが寝ている隙に、こっそりとセリーとモニカに会うつもりなのだ。アリエールの時間は内緒だが止めてある。あいつがいるといたずらされるし説明するのが面倒だからな。
今なら邪魔されずにゆっくりHできるのだ。(注:勝手にできると思ってるだけ)
すでに日は暮れていたがそうと決まれば善は急げだ。疲れているタンドリーを催促して夜の空を飛んでいた。
実はチッキーナ領からスターテルの町はすぐ近くだった。チッキーナ領に隣接するバーデル騎士領の中にあるそうだ。
バーデル騎士家はチッキーナ男爵家の寄子にあたり部下みたいな関係だそうだ。
北側に隣接するトレビア領とはいざこざがあり、ここ数年何度も応援を頼まれて軍隊を派遣しているらしい。
そんなどうでもいい貴族同士の内情を聞きながら、町に近づくと前方に五十騎位の騎馬隊が見えた。
何か人を囲んでいるいるようだ。
『あれはトレビア軍!? なんでこんなところに軍隊が……』
驚いたタンドリーが急降下して軍隊に迫る。
「おいタンドリー! 女が襲われてるぞ!」
俺は黒い領域を纏ってその中心へ飛び込んだ。
☆
――ドカーンっ!
えっ!?
足を広げようとしていた兵士が突然消えた。
「なっ何だ!? お前ら、どこのもんだ!? グワッ!!」
「てっ敵襲だー! うわー! グエッ!」
「何だ!? ガッ!!」
「うわぁあああああああ!」
騒然とした中で兵士達が次々と切られて、吹っ飛んでいく。五十人の兵士相手に突如現れた二人の戦士が、嵐のように蹂躙している。
月明かりの暗闇の中で、銀色の鎧に身を包んだ騎士と、銀色の格闘技を着た銀髪の武道家がバッタバッタと兵士を倒す。
えっ!? 何が起こってるの? 呆然としてマニエルと一緒にその光景を眺めていた。
あっと言う間に五十人いたはずの兵が倒れていた。
立っている敵は一人だけ。
銀色の鎧を着た騎士が、敵の隊長一人を残しているだけだ。
たった二人で殲滅したのだ。
――何て強いんだろう。
しばらくして見覚えのある銀色の髪をした武道家が近づいてきた。
すぐに誰だか気がついた。
会いたかった人が助けに来てくれたのだ。
嬉しくて涙が溢れてくる。
「ケルビン!!」
裸のまま飛びついた。
「セリーか!? 大丈夫だったかお前……」
「あぁああんやっぱりケルビンだぁあああ……わーん、ありがとぉおおー」
しばらくケルビンの胸で号泣した。
「もっもう、だめー」
「セリー諦めちゃだめ!」
スターテルの町から飛び出して南の町へ移動しようとした街道で、運悪く出くわしまったトレビアの軍隊に襲われたのだ。
「嬢ちゃん、いい加減に諦めな」
五十騎程の騎馬隊に囲まれて泣きながら走っている。絶体絶命の大ピンチだ。
町を襲撃するために迂回したトレビア軍と鉢合わせしてしまったのだ。
馬に対して徒歩で逃げ切れる訳が無い。
「ほれ、可愛がってやるからさぁ」
「ふははははは」
騎馬兵士達がいたぶるように追い立てる。
「おい、お前ら遊びは程々にしとけ!」
「へい、隊長。そら!」
――シュッ! シュッ!
「あぁっっ!?」
「うわぁっ!」
騎馬から投げ縄が飛んできて、セリーもマニエルも捕まってしまった。この人数相手に逃げられる訳が無いのだ。
「何すんだよ。あたい達はただの冒険者だ。何にもしないよ、頼むから見逃してくれよ」
マニエルが懇願する。
「そうですよ。ただ隣町に行くだけじゃないですか」
セリーも叫んだ。
馬から降りてきた兵士が言う。
「悪いな。今は戦中だ。見られたからには放っておけねぇ、運が悪かったと思って諦めな。ただちょっとご奉仕してくれれば、命までは取らねえぜ」(やってる間はな)
「おう、そうだぞ、お前たちの態度次第だぜ」
兵士達がニヤニヤしながら近づいてきた。五十人も男がいるのだ。廻されたら死ぬかもしれない……。
「本当に命は助けてくれるんだな」
マニエルが睨むように兵士に言う。
「ああ心配すんな。たっぷりサービスしてくれよ」
兵士がマニエルの鎧を脱がした。
セリーの鎧も脱がされた。心臓がバクバクし、悔しくて涙が溢れてきた。
地面に転がされ服と下着が粗々悪しく降ろされた。ケルビンに買ってもらった服が破れた。
横を向くと同じように寝転がされたマニエルと目が合う。呟くように彼女が言った。
「ごめんねセリー……」
町を抜け出そうと誘った事を謝っているのだ。しょうがない。こんな事になるなんて誰にも分らなかったじゃないか。
「ううん、マニエルのせいじゃない。諦めちゃだめよ、頑張ろう」
「……うん」
何としても生き延びて、またケルビンに会いたいな……。パンツを脱がされながらセリーの瞳から涙がこぼれた。
ニヤニヤする兵士に囲まれながら、セリーは目をつぶり唇をかみしめた。
☆
半刻前……チッキーナ領のヘルガルーダを討伐した後、復興資金用にとタンドリーへ魔石を渡した。
その変わりにタンドリーに頼んで【鳥形態】で当初の目的地、スターテルの町まで送ってもらう。
もちろんセリーとモニカに会うためだ。
【絶対領域】の中でアリエールが寝ている隙に、こっそりとセリーとモニカに会うつもりなのだ。アリエールの時間は内緒だが止めてある。あいつがいるといたずらされるし説明するのが面倒だからな。
今なら邪魔されずにゆっくりHできるのだ。(注:勝手にできると思ってるだけ)
すでに日は暮れていたがそうと決まれば善は急げだ。疲れているタンドリーを催促して夜の空を飛んでいた。
実はチッキーナ領からスターテルの町はすぐ近くだった。チッキーナ領に隣接するバーデル騎士領の中にあるそうだ。
バーデル騎士家はチッキーナ男爵家の寄子にあたり部下みたいな関係だそうだ。
北側に隣接するトレビア領とはいざこざがあり、ここ数年何度も応援を頼まれて軍隊を派遣しているらしい。
そんなどうでもいい貴族同士の内情を聞きながら、町に近づくと前方に五十騎位の騎馬隊が見えた。
何か人を囲んでいるいるようだ。
『あれはトレビア軍!? なんでこんなところに軍隊が……』
驚いたタンドリーが急降下して軍隊に迫る。
「おいタンドリー! 女が襲われてるぞ!」
俺は黒い領域を纏ってその中心へ飛び込んだ。
☆
――ドカーンっ!
えっ!?
足を広げようとしていた兵士が突然消えた。
「なっ何だ!? お前ら、どこのもんだ!? グワッ!!」
「てっ敵襲だー! うわー! グエッ!」
「何だ!? ガッ!!」
「うわぁあああああああ!」
騒然とした中で兵士達が次々と切られて、吹っ飛んでいく。五十人の兵士相手に突如現れた二人の戦士が、嵐のように蹂躙している。
月明かりの暗闇の中で、銀色の鎧に身を包んだ騎士と、銀色の格闘技を着た銀髪の武道家がバッタバッタと兵士を倒す。
えっ!? 何が起こってるの? 呆然としてマニエルと一緒にその光景を眺めていた。
あっと言う間に五十人いたはずの兵が倒れていた。
立っている敵は一人だけ。
銀色の鎧を着た騎士が、敵の隊長一人を残しているだけだ。
たった二人で殲滅したのだ。
――何て強いんだろう。
しばらくして見覚えのある銀色の髪をした武道家が近づいてきた。
すぐに誰だか気がついた。
会いたかった人が助けに来てくれたのだ。
嬉しくて涙が溢れてくる。
「ケルビン!!」
裸のまま飛びついた。
「セリーか!? 大丈夫だったかお前……」
「あぁああんやっぱりケルビンだぁあああ……わーん、ありがとぉおおー」
しばらくケルビンの胸で号泣した。
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