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4章 凱旋と旅
2話 ノキアス
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「そうでしたか、まさか【領域の主】の英雄様だったとは気づきませんでした。大変失礼いたしました」
リビングにあるソファーに座ったシュレン・テレフォーンが頭を下げた。
「いや、ここまで話が来てる事に驚いたよ。これはもうスターテルの町にも伝わってるかもしれないな」
王都では青龍やミノタウロスキングが直接現れて騒動になったため皆知っているのは当然なのだが、離れた都であるトレビアまで話が伝わっているとは思ってなかった。貴族や冒険者ギルドではなにか情報網でもあるのだろう。
「そうね。その割に気付いてなかった事に驚きなんだけど」
アリエールが疑いの目でシュレンを見ている。
「いえ、面目ございません。お話はルーバー様からも伝えられてはいたのですが、まさかこの地へいらっしゃるとは考えても見なかったものですから……」
シュレンが冷や汗をかきながら頭をかいた。
「兄上、お呼びでしょうか。お客様がお見えのようでございますが」
そこへ弟のノキアスがノックして入って来た。
濃いグレーの髪をした長髪長身の美男子だ。スラっとして180cm位ありそうだ。利発そうな顔をしている。
「おう、ノキアス。こっちへ来てくれ。お前に仕官の話があってな」
「私に仕官ですか。まさかこちらの騎士様が」
とたんに嬉しそうな顔をするノキアス。やはり待ち望んでいたらしい。
「そうだ。噂の英雄、騎士ケルビン・シルバー様が人材を募集されておるのだ。たまたま縁があって私に声をかけてくださった。お前の事を話したらすぐに、といらっしゃったのだ。さあ、こっちへ来て座れ」
「はっはいっ!」
緊張した面持ちで礼をして兄の横に座った。
「ノキアス・テレフォーンと申します。英雄、シルバー卿様の下で働けるとは願ってもいない幸運です。どうぞよろしくお願いします」
「そうか。噂はともかく俺は騎士になったばかりで全く貴族の事がわかってない。王都に屋敷を貰ったんだが家を切り盛りする奴が必要だ。ノキアス、お前にそれが出来るか」
「……はい、お任せください。私はこのテレフォーン家からは出なければならない身です。幼い頃よりそう言われて知識と教養は磨いてきたつもりです。剣と魔法は才能がありませんでしたが、代わりに商学と経営学を学んでまいりました。きっとお役に立ってせます。是非、ケルビン・シルバー様の下で働かせてください。お願いいたします」
ノキアスが真剣な目で訴えたあと深々と頭を下げた。賢そうでやり手な感じがする。
「うん。ノキアス。質問をしたい。お前がうちの家宰になったとしよう」
「はい」
「俺がお前に1億ドロル預けたとする」
「……はい」
「どうする」
「そうですね。ケルビン様はそのお金でどうされたいのかお聞きします」
「うん。そうだな。その金は好きに使っていいからお前の好きな事をしろと言ったらどうする」
「はい。そういう事でしたら優秀な人材を集めて学校のようなものを作りたいと思います」
「ほう。それで」
「困っている人が食べていけるように教育し手に職を付けてもらいます。」
「ほう、いいな。ノキアスは学校を作りたいのか」
「はい、お金があれば可能なことです。私は運よくこの家に育ったおかげで知識と技術を得る事が出来ました。商人として働けば生きていく事は難しくはないでしょう。ですが、平民がその機会を得る事は容易ではありません。才能あるものが機会も無く苦労しているのを何とかしたいと常々思っているです」
キラキラした目で熱く語る青年、こいつは当たりだな。
「お前、そんな事考えていたのか。平民に教育したってしょうがないだろ」
シュレンが思わず口を出す。生まれつき貴族のやつにはそんな事を考えるやつはいないだろう。だが俺にはノキアスの思いが良く分かった。
「そうか。面白いなノキアス。ではもう一つ。このテレフォーン家が好きか」
「うっ、……育ててもらったことには感謝しておりますが」
言いにくそうに言葉を濁すが、家にあまりいい思いは抱いていないような気持が感じられた。
「お前、……いや、まあしょうがないか」
シュレンが一瞬怒ったようにも感じたが、思い当たる節があるようだ。やはり家を継ぐものと出される者では感覚が違うのだろう。だが、俺の聞きたかった事はそんな事じゃない。
「いや、すまん。そういう意味じゃないんだ。母親とか、家族とかを置いて王都へ行っていいのかが聞きたかっただけだ」
「なるほど、そうでしたか。私の母親は3年前に亡くなりましたし、仕官の話がなくとも今月中にこの家を出るつもりでしたので問題ありません」
「よし、わかったノキアス。お前を俺の部下として預かる。いいな」
「はい! ありがとうございます。ケルビン様」
嬉しそうに礼をした。
「おおっありがとうございます、シルバー卿。良かったな、ノキアス」
「はい。ありがとうございました。兄上」
ノキアスは兄シュレンに頭を下げた。
ノキアスに支度金を渡して必要な物をまとめてもらっている間、俺達は冒険者ギルドに入って依頼表をチェックした。
ミスリル鉱石の採掘場跡地への護衛とゴーレム討伐 CランクPT以上希望 約7日予定 金貨二枚 ビオーラ
やっぱり依頼はまだ残っていた。
リビングにあるソファーに座ったシュレン・テレフォーンが頭を下げた。
「いや、ここまで話が来てる事に驚いたよ。これはもうスターテルの町にも伝わってるかもしれないな」
王都では青龍やミノタウロスキングが直接現れて騒動になったため皆知っているのは当然なのだが、離れた都であるトレビアまで話が伝わっているとは思ってなかった。貴族や冒険者ギルドではなにか情報網でもあるのだろう。
「そうね。その割に気付いてなかった事に驚きなんだけど」
アリエールが疑いの目でシュレンを見ている。
「いえ、面目ございません。お話はルーバー様からも伝えられてはいたのですが、まさかこの地へいらっしゃるとは考えても見なかったものですから……」
シュレンが冷や汗をかきながら頭をかいた。
「兄上、お呼びでしょうか。お客様がお見えのようでございますが」
そこへ弟のノキアスがノックして入って来た。
濃いグレーの髪をした長髪長身の美男子だ。スラっとして180cm位ありそうだ。利発そうな顔をしている。
「おう、ノキアス。こっちへ来てくれ。お前に仕官の話があってな」
「私に仕官ですか。まさかこちらの騎士様が」
とたんに嬉しそうな顔をするノキアス。やはり待ち望んでいたらしい。
「そうだ。噂の英雄、騎士ケルビン・シルバー様が人材を募集されておるのだ。たまたま縁があって私に声をかけてくださった。お前の事を話したらすぐに、といらっしゃったのだ。さあ、こっちへ来て座れ」
「はっはいっ!」
緊張した面持ちで礼をして兄の横に座った。
「ノキアス・テレフォーンと申します。英雄、シルバー卿様の下で働けるとは願ってもいない幸運です。どうぞよろしくお願いします」
「そうか。噂はともかく俺は騎士になったばかりで全く貴族の事がわかってない。王都に屋敷を貰ったんだが家を切り盛りする奴が必要だ。ノキアス、お前にそれが出来るか」
「……はい、お任せください。私はこのテレフォーン家からは出なければならない身です。幼い頃よりそう言われて知識と教養は磨いてきたつもりです。剣と魔法は才能がありませんでしたが、代わりに商学と経営学を学んでまいりました。きっとお役に立ってせます。是非、ケルビン・シルバー様の下で働かせてください。お願いいたします」
ノキアスが真剣な目で訴えたあと深々と頭を下げた。賢そうでやり手な感じがする。
「うん。ノキアス。質問をしたい。お前がうちの家宰になったとしよう」
「はい」
「俺がお前に1億ドロル預けたとする」
「……はい」
「どうする」
「そうですね。ケルビン様はそのお金でどうされたいのかお聞きします」
「うん。そうだな。その金は好きに使っていいからお前の好きな事をしろと言ったらどうする」
「はい。そういう事でしたら優秀な人材を集めて学校のようなものを作りたいと思います」
「ほう。それで」
「困っている人が食べていけるように教育し手に職を付けてもらいます。」
「ほう、いいな。ノキアスは学校を作りたいのか」
「はい、お金があれば可能なことです。私は運よくこの家に育ったおかげで知識と技術を得る事が出来ました。商人として働けば生きていく事は難しくはないでしょう。ですが、平民がその機会を得る事は容易ではありません。才能あるものが機会も無く苦労しているのを何とかしたいと常々思っているです」
キラキラした目で熱く語る青年、こいつは当たりだな。
「お前、そんな事考えていたのか。平民に教育したってしょうがないだろ」
シュレンが思わず口を出す。生まれつき貴族のやつにはそんな事を考えるやつはいないだろう。だが俺にはノキアスの思いが良く分かった。
「そうか。面白いなノキアス。ではもう一つ。このテレフォーン家が好きか」
「うっ、……育ててもらったことには感謝しておりますが」
言いにくそうに言葉を濁すが、家にあまりいい思いは抱いていないような気持が感じられた。
「お前、……いや、まあしょうがないか」
シュレンが一瞬怒ったようにも感じたが、思い当たる節があるようだ。やはり家を継ぐものと出される者では感覚が違うのだろう。だが、俺の聞きたかった事はそんな事じゃない。
「いや、すまん。そういう意味じゃないんだ。母親とか、家族とかを置いて王都へ行っていいのかが聞きたかっただけだ」
「なるほど、そうでしたか。私の母親は3年前に亡くなりましたし、仕官の話がなくとも今月中にこの家を出るつもりでしたので問題ありません」
「よし、わかったノキアス。お前を俺の部下として預かる。いいな」
「はい! ありがとうございます。ケルビン様」
嬉しそうに礼をした。
「おおっありがとうございます、シルバー卿。良かったな、ノキアス」
「はい。ありがとうございました。兄上」
ノキアスは兄シュレンに頭を下げた。
ノキアスに支度金を渡して必要な物をまとめてもらっている間、俺達は冒険者ギルドに入って依頼表をチェックした。
ミスリル鉱石の採掘場跡地への護衛とゴーレム討伐 CランクPT以上希望 約7日予定 金貨二枚 ビオーラ
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