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第三章 王都シルバーニュ
28話 青い魔石
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三人の戦士が駆け寄って来た。
「お前よくやった! やってくれたな。ケルビンよ」
クローが嬉しそうに肩を叩いた。
「本当に助かったよ。その【領域】は変わってるな。自由に形を変えられるとは、すごい能力を貰ったな。正直羨ましい……と思ってしまうな」
騎士団長が複雑な顔をしてそう言った。
「ええ、羨ましいですねぇ。【特殊系】かもしれませんが、【領域】なんですよね。ケルビン殿」
副騎士団長のタンドリーも不思議顔だ。
この二人も《持ってる》のだ。
「うん、【絶対領域】だ。領域の中では俺の自由になるし、領域もある程度伸ばしたりできるんだ」
「うわっ反則だな」
「それはすごいな」
二人がやはり感心する。
「だろ! ズリーんだよこいつは、何でもアリだぜ。間違いなく最強の能力者だろう。なんせ自分を包んどけば無敵なんだからな」
ふてくされたようにクローが言う。
「ああ、そうだな。クロー。羨ましいがしょうがない。だが、おかげで何とか助かった。感謝する。シルバンデルグ王国騎士団長としても感謝したします。ケルビン殿。この度は王都を救っていただきありがとうございます」
「ありがとうございます。ケルビン殿」
急に改まったように二人の騎士が頭を下げた。
「いえいえ、皆さんが前で戦ってくれたおかげです。俺だけだったら近づけなかったと思いますよ」
思わずこっちも丁寧になる。
「なっこいつは謙虚だろ、ウォルター」
「ああ、そうだな。これは貴重な人材だな」
「ええ、今のうちに取り込んでしまいましょう」
どうやら三人は仲がいいらしい。笑って肩を叩かれながら、冒険者ギルドへと歩いて戻った。
☆
俺達はギルド長室に入って話をした。
だが、迷宮の周りの損害や被害は大きく死人も怪我人も大勢いたため、治療魔法のできるアリエールやグレミアは外で魔法をかけ続け、エマールも人を運んだり物をどかしたりと一生懸命働いていた。もちろんメリシアも大忙しだ。ギルド員もフル稼働でそこらじゅうを走り回る。ラナナもチョコチョコ走っていた。
王都からも他の魔導師団員や騎士団員達も大勢応援に駆けつけて、一帯は復旧へ向けて動き出していた。
しばらくしてようやくメリシアが一人で戻って来くと疲れた顔でソファーに座った。
「被害はあったけれど、あれでもよく押さえられたと言えるでしょうね。たまたま戦力が揃っていたのが不幸中の幸いでしたわ。今日もまたケルビン殿に助けられたわね。ギルド長として感謝いたします」
メリシアも深々と頭をさげた。
「もう、それはいいから……。それよりまた魔石が出たんだ。買い取ってくれるのか」
俺は期待して大きな青い魔石を取り出した。今はお金が欲しいのだ。
エマールの装備は買ってやると言ったのに足りなかったため、情けない事に結局エマールのお金で買ったのだ。アリエールの装備だけで一億ドロル使っている。
髪飾りも買ってやりたいしな。
「これもS-ランククラスだな」
騎士団長のウォルターが魔石を見て断言する。
牛巨獣人王の青い大きな魔石は、青龍と同じでやはり成人一人分位の大きさだった。
「そうですねぇ、昨日の青龍のと同じ位の大きさですね」
副団長のタンドリーも同意した。
「何にしてもこう続けて変異主が出てくるとは異常事態だぜ。ケルビンがいたから何とかなったが、また出てこないとは限らねぇ、こうなったら他のSランクも呼び戻した方がいいんじゃねーか。団長様」
クローがウォルターに投げかける。
「確かにな。低層階で【進化の魔王】が悪さしてるのは間違いないだろう。他のSランクは深層階だ。誰か呼び寄せて向かわせた方がいいかもしれん。ケルビンにはできればここを守ってもらいたいしな」
「そうですねぇ。アリエールさんとグレミアさんの回復魔法も助かりますし、【一撃】さんと【鉄の爪】さんにここを守護してもらった方がいいかもしれませんですね。団長」
「ああ、残念ながらSクラスの魔物になると、俺達だけでは対処できんからな」
腕を組み悔しそうな顔をする騎士団長。
騎士団のトップ2人と宮廷魔導師のトップ2人でも歯が立たなかったのだ。やはりSクラスの冒険者じゃないと対応できないのだろう。
「ですがウォルター騎士団長。他のSランク冒険者が大人しく王国の言う事を聞いてくれるとは思えませんが……」
メシリアが心配そうに訴える。
「うむ、そこだよな。だが、今回は大丈夫だろう。相手が【進化の魔王】となれば低層階でも勇者PTは動いてくれるのではないか」
「そうだといいのですが……」
ギルド長の不安は拭えないようだ。
どうやら他のSランクの連中はあまり言う事を聞かないようだな……。
「よし、さっそく陛下に相談して勇者アレクライトPTに討伐依頼を出して貰おう。あとこの魔石も王国で買い取る事とする。前回と同様二億ドロルで良いだろうか。ケルビン殿」
「はい、お願いします」
俺は心の中でガッツポーズだ。
「うむ。ではメシリア。その方向で」
「はっ」
今回の騒動も色々あったが夕方くらいには何とか目途がたち、俺達はまた財布がバブルを起こしたので昨日と同じ豪華な宿屋《スイートハウス》の最高級部屋に宿泊した。
「お前よくやった! やってくれたな。ケルビンよ」
クローが嬉しそうに肩を叩いた。
「本当に助かったよ。その【領域】は変わってるな。自由に形を変えられるとは、すごい能力を貰ったな。正直羨ましい……と思ってしまうな」
騎士団長が複雑な顔をしてそう言った。
「ええ、羨ましいですねぇ。【特殊系】かもしれませんが、【領域】なんですよね。ケルビン殿」
副騎士団長のタンドリーも不思議顔だ。
この二人も《持ってる》のだ。
「うん、【絶対領域】だ。領域の中では俺の自由になるし、領域もある程度伸ばしたりできるんだ」
「うわっ反則だな」
「それはすごいな」
二人がやはり感心する。
「だろ! ズリーんだよこいつは、何でもアリだぜ。間違いなく最強の能力者だろう。なんせ自分を包んどけば無敵なんだからな」
ふてくされたようにクローが言う。
「ああ、そうだな。クロー。羨ましいがしょうがない。だが、おかげで何とか助かった。感謝する。シルバンデルグ王国騎士団長としても感謝したします。ケルビン殿。この度は王都を救っていただきありがとうございます」
「ありがとうございます。ケルビン殿」
急に改まったように二人の騎士が頭を下げた。
「いえいえ、皆さんが前で戦ってくれたおかげです。俺だけだったら近づけなかったと思いますよ」
思わずこっちも丁寧になる。
「なっこいつは謙虚だろ、ウォルター」
「ああ、そうだな。これは貴重な人材だな」
「ええ、今のうちに取り込んでしまいましょう」
どうやら三人は仲がいいらしい。笑って肩を叩かれながら、冒険者ギルドへと歩いて戻った。
☆
俺達はギルド長室に入って話をした。
だが、迷宮の周りの損害や被害は大きく死人も怪我人も大勢いたため、治療魔法のできるアリエールやグレミアは外で魔法をかけ続け、エマールも人を運んだり物をどかしたりと一生懸命働いていた。もちろんメリシアも大忙しだ。ギルド員もフル稼働でそこらじゅうを走り回る。ラナナもチョコチョコ走っていた。
王都からも他の魔導師団員や騎士団員達も大勢応援に駆けつけて、一帯は復旧へ向けて動き出していた。
しばらくしてようやくメリシアが一人で戻って来くと疲れた顔でソファーに座った。
「被害はあったけれど、あれでもよく押さえられたと言えるでしょうね。たまたま戦力が揃っていたのが不幸中の幸いでしたわ。今日もまたケルビン殿に助けられたわね。ギルド長として感謝いたします」
メリシアも深々と頭をさげた。
「もう、それはいいから……。それよりまた魔石が出たんだ。買い取ってくれるのか」
俺は期待して大きな青い魔石を取り出した。今はお金が欲しいのだ。
エマールの装備は買ってやると言ったのに足りなかったため、情けない事に結局エマールのお金で買ったのだ。アリエールの装備だけで一億ドロル使っている。
髪飾りも買ってやりたいしな。
「これもS-ランククラスだな」
騎士団長のウォルターが魔石を見て断言する。
牛巨獣人王の青い大きな魔石は、青龍と同じでやはり成人一人分位の大きさだった。
「そうですねぇ、昨日の青龍のと同じ位の大きさですね」
副団長のタンドリーも同意した。
「何にしてもこう続けて変異主が出てくるとは異常事態だぜ。ケルビンがいたから何とかなったが、また出てこないとは限らねぇ、こうなったら他のSランクも呼び戻した方がいいんじゃねーか。団長様」
クローがウォルターに投げかける。
「確かにな。低層階で【進化の魔王】が悪さしてるのは間違いないだろう。他のSランクは深層階だ。誰か呼び寄せて向かわせた方がいいかもしれん。ケルビンにはできればここを守ってもらいたいしな」
「そうですねぇ。アリエールさんとグレミアさんの回復魔法も助かりますし、【一撃】さんと【鉄の爪】さんにここを守護してもらった方がいいかもしれませんですね。団長」
「ああ、残念ながらSクラスの魔物になると、俺達だけでは対処できんからな」
腕を組み悔しそうな顔をする騎士団長。
騎士団のトップ2人と宮廷魔導師のトップ2人でも歯が立たなかったのだ。やはりSクラスの冒険者じゃないと対応できないのだろう。
「ですがウォルター騎士団長。他のSランク冒険者が大人しく王国の言う事を聞いてくれるとは思えませんが……」
メシリアが心配そうに訴える。
「うむ、そこだよな。だが、今回は大丈夫だろう。相手が【進化の魔王】となれば低層階でも勇者PTは動いてくれるのではないか」
「そうだといいのですが……」
ギルド長の不安は拭えないようだ。
どうやら他のSランクの連中はあまり言う事を聞かないようだな……。
「よし、さっそく陛下に相談して勇者アレクライトPTに討伐依頼を出して貰おう。あとこの魔石も王国で買い取る事とする。前回と同様二億ドロルで良いだろうか。ケルビン殿」
「はい、お願いします」
俺は心の中でガッツポーズだ。
「うむ。ではメシリア。その方向で」
「はっ」
今回の騒動も色々あったが夕方くらいには何とか目途がたち、俺達はまた財布がバブルを起こしたので昨日と同じ豪華な宿屋《スイートハウス》の最高級部屋に宿泊した。
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