【R18】黒のエリアマスター

shinko

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第三章 王都シルバーニュ

11話 地下四階 ボスの部屋

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 ボス部屋か……。【絶対領域障壁槍バリアスピア】により難なく三個の魔石と宝箱に変化した元ボスを確認し、アリエールの顔を見る。

「つまり、あいつらは俺達を嵌めようとしたってことか」

「そう。でも嘘はついてないでしょ。最短で地下四階のボス部屋に案内するわけだから……」

「なるほどな。狩りするよりよっぽど儲かるって寸法か。全く持ってあくどいな」

 一見爽やかに見えた奴らを思い出す。あれが営業スマイルか、知ってしまえばわざとらしいな……。あそこに座っていた事も納得がいく。

「下手したら荷物持ちましょうかって言って、根こそぎいくのもあるとか無いとか、らしいわよ」

 ガイドブックをトントンと叩きながらアリエールがため息を吐く。

「えげつないな……だがそれも手段、ってか? 生きるって大変だな」

「そうよ。だから油断は禁物よ。敵は魔物だけじゃないってね。それよりお腹減ったわ。もう、お昼じゃない。ここなら誰もこないし、まあ来てもいいけどとにかく何か食べましょ。ケルビンお願い」

「ああ、そうだな。ちょうど昼か。一応宝箱は開けてと、やっぱり鍵だな」

 鍵を収納して食事を出す。食料はだいぶ買い込んであるので何でもいける。ついでなのでテーブルと椅子を二つ出して本格的に休憩する。ホワイトシチューとパンにするか。

 水を出して手を洗うと、温かい食事をテーブルに並べた。さらにクランベリージュースで乾杯し、ボスの部屋で優雅に食事を楽しんだ。

「本当便利ね【絶対領域】。何でも自由になるって素敵よね」

「それについては同感だな。最初は小っちゃくてショボイと思ったけど意外と色々使えるし、そうだ。別に剣でもいけるのか」

 ナックルが出せるなら剣もだせるだろ。領域を長くすればいいだけだ。

 さっそく領域を長くしてソードを出してみた。

 するとイメージ通りの剣が出た。やっぱりできる。

「いいわね。でもそれを出すともう目一杯じゃない? 展開して《見えない槍》の方が安全な気がする」

「うん。そうだな。障壁は常に出しておきたい。一応今も出してあるぞ」

 二人を覆う薄い膜はゴルフボール位の領域で出来るようになっている。

「そうなんだ。ならいいわ。迷宮内は何が起こるかわからないから」

 そう言いかけた瞬間だった。

「キャーーーー!」

 甲高い叫び声と共に天井から女の子が降って来た。

「なっ!? 展開! 」

 とっさに剣にしていた領域をクッションにして下に滑らせる。

「【風の防御補助ウインドシールド!】

 アリエールもとっさに呪文を唱え、風で衝撃を和らげる。

 ボワンッ。
 
 落ちてきた女の子を何とか受け止めそのダメージを吸収した。

「なっ何よ。これー! くっだましたわね。あっ!? にっ荷物があああ!」

 幼い女の子が頭を抱えた。さては荷物を取られたか。


 上を見上げるとさっきの三人組がチラリと見えた。

「まいどありー」

 いやらしく笑う赤い髪のレッダーだった。

 やりやがったなあの野郎。

「あいつら許さん! アリエール。ここは任せた」

「うん」

 絶対領域を体に纏わすと足を延ばして階上に上がる。

 閉じかけた床を黒い手で掴んでこじ開けると、驚愕の表情をした三人組の前に降り立った。

「うわああああ!!」
「はあっっ!?あわわわわ!」
「とっ飛べるのかよ!?」

 驚きすぎて硬直している三人組。まさか下から飛んで来るとは思ってなかったようだった。

「ああ、お前ら、しょうもない事しやがって、荷物を返しな」

 そう言って右手の拳を三人に向け、

「ぐわっ!」
「がっ!」
「のわっ!」

 見えない黒い手で軽くデコピンしてやった。腰が抜けたようにしりもちをつく。

「次見たら殺す!」

「ひいいいっわっ分かった。返す。返しますから。許してください」
「ああ、たまたま、なんだ、です」
「す、すいませんでした」  

 三人は荷物を置くと、素早く走って逃げて行った。

 しょうもない奴らだな。大きなリュックを小さくして回収すると、赤いオブジェを叩いて床を開いた。

 領域を伸ばして着地する。分かっていれば楽勝だ。

 そこには唖然とした目で俺を見ている、銅色ブロンズ色髪の毛をおさげにした女の子がいた。それにしてもえらく若い。ラナナより小さいか。

 どう見ても十歳くらいにしか見えないのだ。一応チェーンメイルそれなりの装備を着ている。

 しかし、一人でここまで来たのだろうか。

「大丈夫かい」

「はいっ受け止めてもらって助かりました。今、アリエールさんから話を聞いて、荷物を取り返してくれると聞いたんですけど……」

「ああ、うん。これな」

 回収した豆粒状のリュックを置いて元に戻した。

「あっアイテムボックス! すごいわ。あっありがとうございました。助けて頂いて、私はエマール。ドワーフです」

 そうか。ドワーフなのか。もしかしたら見た目より年齢は上かもしれない。

「俺はケルビン。ところでエマール。一人で来たのか」

「はい。迷宮にいるミノタウルスがドロップする《牛王の角》がどうしても欲しくて……」

「へーじゃあ。強いんだな。そのごつい両手の拳武器ナックルで殴るのか」

「そうなんです。一応Cランクプロです。戦闘は自信があるんですが……」

 はめられて落っこちたのか、残念ながら頭は良くはないようだな。

「まあ、そういうこともあるさ。いい勉強になっただろ」

「はい……。本当に助かりました。ここでリュックが無くなってたら流石に厳しかったと思います」

「エマールちゃんね。まあ、良かったじゃない。これも運よ。私達もBランクで、とりあえず10階を目指すから良かったら一緒に行かない?」

「本当ですか。もちろんです。あっでもお邪魔じゃないですか」

「まあ問題ないさ。寝る時は別々だからな。なあ、アリエール」

「そうね。問題ないわ」

「はい。ではお願いします」

 こうしてエマールが同行することになった。

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