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第三章 王都シルバーニュ
11話 地下四階 ボスの部屋
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ボス部屋か……。【絶対領域障壁槍】により難なく三個の魔石と宝箱に変化した元ボスを確認し、アリエールの顔を見る。
「つまり、あいつらは俺達を嵌めようとしたってことか」
「そう。でも嘘はついてないでしょ。最短で地下四階のボス部屋に案内するわけだから……」
「なるほどな。狩りするよりよっぽど儲かるって寸法か。全く持ってあくどいな」
一見爽やかに見えた奴らを思い出す。あれが営業スマイルか、知ってしまえばわざとらしいな……。あそこに座っていた事も納得がいく。
「下手したら荷物持ちましょうかって言って、根こそぎいくのもあるとか無いとか、らしいわよ」
ガイドブックをトントンと叩きながらアリエールがため息を吐く。
「えげつないな……だがそれも手段、ってか? 生きるって大変だな」
「そうよ。だから油断は禁物よ。敵は魔物だけじゃないってね。それよりお腹減ったわ。もう、お昼じゃない。ここなら誰もこないし、まあ来てもいいけどとにかく何か食べましょ。ケルビンお願い」
「ああ、そうだな。ちょうど昼か。一応宝箱は開けてと、やっぱり鍵だな」
鍵を収納して食事を出す。食料はだいぶ買い込んであるので何でもいける。ついでなのでテーブルと椅子を二つ出して本格的に休憩する。ホワイトシチューとパンにするか。
水を出して手を洗うと、温かい食事をテーブルに並べた。さらにクランベリージュースで乾杯し、ボスの部屋で優雅に食事を楽しんだ。
「本当便利ね【絶対領域】。何でも自由になるって素敵よね」
「それについては同感だな。最初は小っちゃくてショボイと思ったけど意外と色々使えるし、そうだ。別に剣でもいけるのか」
ナックルが出せるなら剣もだせるだろ。領域を長くすればいいだけだ。
さっそく領域を長くしてソードを出してみた。
するとイメージ通りの剣が出た。やっぱりできる。
「いいわね。でもそれを出すともう目一杯じゃない? 展開して《見えない槍》の方が安全な気がする」
「うん。そうだな。障壁は常に出しておきたい。一応今も出してあるぞ」
二人を覆う薄い膜はゴルフボール位の領域で出来るようになっている。
「そうなんだ。ならいいわ。迷宮内は何が起こるかわからないから」
そう言いかけた瞬間だった。
「キャーーーー!」
甲高い叫び声と共に天井から女の子が降って来た。
「なっ!? 展開! 」
とっさに剣にしていた領域をクッションにして下に滑らせる。
「【風の防御補助!】
アリエールもとっさに呪文を唱え、風で衝撃を和らげる。
ボワンッ。
落ちてきた女の子を何とか受け止めそのダメージを吸収した。
「なっ何よ。これー! くっだましたわね。あっ!? にっ荷物があああ!」
幼い女の子が頭を抱えた。さては荷物を取られたか。
上を見上げるとさっきの三人組がチラリと見えた。
「まいどありー」
いやらしく笑う赤い髪のレッダーだった。
やりやがったなあの野郎。
「あいつら許さん! アリエール。ここは任せた」
「うん」
絶対領域を体に纏わすと足を延ばして階上に上がる。
閉じかけた床を黒い手で掴んでこじ開けると、驚愕の表情をした三人組の前に降り立った。
「うわああああ!!」
「はあっっ!?あわわわわ!」
「とっ飛べるのかよ!?」
驚きすぎて硬直している三人組。まさか下から飛んで来るとは思ってなかったようだった。
「ああ、お前ら、しょうもない事しやがって、荷物を返しな」
そう言って右手の拳を三人に向け、
「ぐわっ!」
「がっ!」
「のわっ!」
見えない黒い手で軽くデコピンしてやった。腰が抜けたようにしりもちをつく。
「次見たら殺す!」
「ひいいいっわっ分かった。返す。返しますから。許してください」
「ああ、たまたま、なんだ、です」
「す、すいませんでした」
三人は荷物を置くと、素早く走って逃げて行った。
しょうもない奴らだな。大きなリュックを小さくして回収すると、赤いオブジェを叩いて床を開いた。
領域を伸ばして着地する。分かっていれば楽勝だ。
そこには唖然とした目で俺を見ている、銅色髪の毛をおさげにした女の子がいた。それにしてもえらく若い。ラナナより小さいか。
どう見ても十歳くらいにしか見えないのだ。一応チェーンメイルを着ている。
しかし、一人でここまで来たのだろうか。
「大丈夫かい」
「はいっ受け止めてもらって助かりました。今、アリエールさんから話を聞いて、荷物を取り返してくれると聞いたんですけど……」
「ああ、うん。これな」
回収した豆粒状のリュックを置いて元に戻した。
「あっアイテムボックス! すごいわ。あっありがとうございました。助けて頂いて、私はエマール。ドワーフです」
そうか。ドワーフなのか。もしかしたら見た目より年齢は上かもしれない。
「俺はケルビン。ところでエマール。一人で来たのか」
「はい。迷宮にいるミノタウルスがドロップする《牛王の角》がどうしても欲しくて……」
「へーじゃあ。強いんだな。そのごつい両手の拳武器で殴るのか」
「そうなんです。一応Cランクです。戦闘は自信があるんですが……」
はめられて落っこちたのか、残念ながら頭は良くはないようだな。
「まあ、そういうこともあるさ。いい勉強になっただろ」
「はい……。本当に助かりました。ここでリュックが無くなってたら流石に厳しかったと思います」
「エマールちゃんね。まあ、良かったじゃない。これも運よ。私達もBランクで、とりあえず10階を目指すから良かったら一緒に行かない?」
「本当ですか。もちろんです。あっでもお邪魔じゃないですか」
「まあ問題ないさ。寝る時は別々だからな。なあ、アリエール」
「そうね。問題ないわ」
「はい。ではお願いします」
こうしてエマールが同行することになった。
「つまり、あいつらは俺達を嵌めようとしたってことか」
「そう。でも嘘はついてないでしょ。最短で地下四階のボス部屋に案内するわけだから……」
「なるほどな。狩りするよりよっぽど儲かるって寸法か。全く持ってあくどいな」
一見爽やかに見えた奴らを思い出す。あれが営業スマイルか、知ってしまえばわざとらしいな……。あそこに座っていた事も納得がいく。
「下手したら荷物持ちましょうかって言って、根こそぎいくのもあるとか無いとか、らしいわよ」
ガイドブックをトントンと叩きながらアリエールがため息を吐く。
「えげつないな……だがそれも手段、ってか? 生きるって大変だな」
「そうよ。だから油断は禁物よ。敵は魔物だけじゃないってね。それよりお腹減ったわ。もう、お昼じゃない。ここなら誰もこないし、まあ来てもいいけどとにかく何か食べましょ。ケルビンお願い」
「ああ、そうだな。ちょうど昼か。一応宝箱は開けてと、やっぱり鍵だな」
鍵を収納して食事を出す。食料はだいぶ買い込んであるので何でもいける。ついでなのでテーブルと椅子を二つ出して本格的に休憩する。ホワイトシチューとパンにするか。
水を出して手を洗うと、温かい食事をテーブルに並べた。さらにクランベリージュースで乾杯し、ボスの部屋で優雅に食事を楽しんだ。
「本当便利ね【絶対領域】。何でも自由になるって素敵よね」
「それについては同感だな。最初は小っちゃくてショボイと思ったけど意外と色々使えるし、そうだ。別に剣でもいけるのか」
ナックルが出せるなら剣もだせるだろ。領域を長くすればいいだけだ。
さっそく領域を長くしてソードを出してみた。
するとイメージ通りの剣が出た。やっぱりできる。
「いいわね。でもそれを出すともう目一杯じゃない? 展開して《見えない槍》の方が安全な気がする」
「うん。そうだな。障壁は常に出しておきたい。一応今も出してあるぞ」
二人を覆う薄い膜はゴルフボール位の領域で出来るようになっている。
「そうなんだ。ならいいわ。迷宮内は何が起こるかわからないから」
そう言いかけた瞬間だった。
「キャーーーー!」
甲高い叫び声と共に天井から女の子が降って来た。
「なっ!? 展開! 」
とっさに剣にしていた領域をクッションにして下に滑らせる。
「【風の防御補助!】
アリエールもとっさに呪文を唱え、風で衝撃を和らげる。
ボワンッ。
落ちてきた女の子を何とか受け止めそのダメージを吸収した。
「なっ何よ。これー! くっだましたわね。あっ!? にっ荷物があああ!」
幼い女の子が頭を抱えた。さては荷物を取られたか。
上を見上げるとさっきの三人組がチラリと見えた。
「まいどありー」
いやらしく笑う赤い髪のレッダーだった。
やりやがったなあの野郎。
「あいつら許さん! アリエール。ここは任せた」
「うん」
絶対領域を体に纏わすと足を延ばして階上に上がる。
閉じかけた床を黒い手で掴んでこじ開けると、驚愕の表情をした三人組の前に降り立った。
「うわああああ!!」
「はあっっ!?あわわわわ!」
「とっ飛べるのかよ!?」
驚きすぎて硬直している三人組。まさか下から飛んで来るとは思ってなかったようだった。
「ああ、お前ら、しょうもない事しやがって、荷物を返しな」
そう言って右手の拳を三人に向け、
「ぐわっ!」
「がっ!」
「のわっ!」
見えない黒い手で軽くデコピンしてやった。腰が抜けたようにしりもちをつく。
「次見たら殺す!」
「ひいいいっわっ分かった。返す。返しますから。許してください」
「ああ、たまたま、なんだ、です」
「す、すいませんでした」
三人は荷物を置くと、素早く走って逃げて行った。
しょうもない奴らだな。大きなリュックを小さくして回収すると、赤いオブジェを叩いて床を開いた。
領域を伸ばして着地する。分かっていれば楽勝だ。
そこには唖然とした目で俺を見ている、銅色髪の毛をおさげにした女の子がいた。それにしてもえらく若い。ラナナより小さいか。
どう見ても十歳くらいにしか見えないのだ。一応チェーンメイルを着ている。
しかし、一人でここまで来たのだろうか。
「大丈夫かい」
「はいっ受け止めてもらって助かりました。今、アリエールさんから話を聞いて、荷物を取り返してくれると聞いたんですけど……」
「ああ、うん。これな」
回収した豆粒状のリュックを置いて元に戻した。
「あっアイテムボックス! すごいわ。あっありがとうございました。助けて頂いて、私はエマール。ドワーフです」
そうか。ドワーフなのか。もしかしたら見た目より年齢は上かもしれない。
「俺はケルビン。ところでエマール。一人で来たのか」
「はい。迷宮にいるミノタウルスがドロップする《牛王の角》がどうしても欲しくて……」
「へーじゃあ。強いんだな。そのごつい両手の拳武器で殴るのか」
「そうなんです。一応Cランクです。戦闘は自信があるんですが……」
はめられて落っこちたのか、残念ながら頭は良くはないようだな。
「まあ、そういうこともあるさ。いい勉強になっただろ」
「はい……。本当に助かりました。ここでリュックが無くなってたら流石に厳しかったと思います」
「エマールちゃんね。まあ、良かったじゃない。これも運よ。私達もBランクで、とりあえず10階を目指すから良かったら一緒に行かない?」
「本当ですか。もちろんです。あっでもお邪魔じゃないですか」
「まあ問題ないさ。寝る時は別々だからな。なあ、アリエール」
「そうね。問題ないわ」
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