【R18】黒のエリアマスター

shinko

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第三章 王都シルバーニュ

9話 ボス? ビックグリーンウルフ戦

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「サポーターが案内できるのはここまでなんです。これから先はお二人でお願いします」

 ペコリとお辞儀をしてラナナが言う。

「そう、なのか。そりゃそうか。いつまでも拘束してたら悪いもんな」

「そっかぁ。ここまでなんだ。あっ本当は一緒に帰らないといけないんじゃないの。ラナナちゃんだけじゃ帰れないでしょ」

 そうなのだ。あくまでお手伝いだから、一日狩りして帰る人用のサポーターなのだ。
 
 しまったな。まあ、道は覚えたし一度帰って出直すか。

「いや、それは問題ない。もう150ドロル掛かるが、ここでも契約が終了できるんだ。交代するギルド員と同行して帰る事ができるからな」

「なるほど、それでギルド員がいるわけか、よく出来たシステムだ。はい、150ドロルだ。ラナナ助かったよ。じゃあ、リュックは返すな。お前のお陰でこんなに早くここまでこれた」

 リュックを取り出し元に戻す。

「私もいい方達に雇われて幸せでした。こんなに優しくしてくれた人は初めてですよ」

 ラナナの赤い目がウルウルしたように見えた。
 
 するとアリエールが抱き着いた。

「あーん。さみしいよー。ラナナちゃん。せっかく友達になれると思ったのに、もう、ちょっとだけモフモフさせてー」

「ふえーん。アリエールさん。私もさみしいですー」

 がっりしりと抱き合う二人。……というか一方的に、アリエールにラナナがこねくり回されている。着ぐるみのような部分をずらそうとしているようだ。いや。それは毛だから、服じゃないから脱げないから、ってどこ触ってんだよ。

「わーーっだめですー。だからそこは服じゃないんですってああああ!」

 股間を触るな! ……ふむ。これはしばらく待つか。

 そういえばのどが渇いたな……。水筒を出して水を飲む。

 ここから先は二人で行くのか。しかし何の情報も無いのは厳しいな。

「バルデルさん、迷宮の地図とか情報とか売ってないかな」

 となりに立つギルド員に尋ねてみると呆れたように、

「なんだ。買ってこなかったのか。Bランク一流なのにサポーターを雇うくらいだからもっと慎重な奴かと思ったぜ。……ガイドブック、ラナナが持ってるぞ。できればあいつから買ってやってくれ」

「そうか、ああ、そうするよ。いや、こんなに複雑だと思ってなかったんだよ」

「その分だと何も知らずに来たようだな。ったくこれだから冒険者は……。いくら強くても迷って出られなきゃ死んじまうんだぜ。食料とか大丈夫なんだろうな」

 いかついおっさんに心配されて、自分も急に心配になってきた。俺達は強いが行き当たりばったりだ。ラナナがいなかったらここにたどり着いたかさえ怪しいものだ。うーんどうしよう。 

「ラナナを連れてっちゃダメなのか」

「あん、何言ってんだ。サポーターはここまでだ」

「いや、なんか正式に雇うとか、臨時でパーティーを組むとかできないかな」

「ははっよっぽど気にいったのか。だが、あいつらサポーターもここから先は行った事ねーからな。先は役に立たねーよ」

「そっか……。やっぱそうだよな」

 まあ、しょうがない。情報を貰って二人で行くか。うし。そう結論つけた。
 
「ラナナ。ここから先の情報を売って欲しい」

「はい。そうだと思ってました」

 すでにラナナには読まれていた。リュックから一冊の本を取り出すと、

「この迷宮の情報を集めた公式ガイドブックです。それに、私の調べた情報の落書きつきスペシャルです。お二人に特別。特別お譲りいたします」

 そう言って使いふるされたような、一冊の本を渡された。アリエールが受け取り中身を見る。

「わーすごーい。びっしり何か書いてあるよ。いいのこれ、大事なモノでしょ」

「はい。お二人が心配なんです。その代わり、帰ってきたらまた話を聞かせてください。お願いします」

「ありがとう。ラナナちゃん。うん。約束する。ねっケルビン」

「ああ、もちろんだ。それは約束しよう。あと料金はいくらだ」

「いえ。プレゼントさせてください。まだ少ししか働いてないし」

「そう、うん。ありがとうラナナちゃん。そうだ」

(ケルビン代わりに何かあげたら)

 アリエールが耳元でささやく。何だ、チューしたいのかと思ったぜ。うーん。何をあげようかな。たいした物は持ってないし、冒険者になりたいならうーん。そうだ。

「じゃあ。代わりと言っちゃあ何だけど、これ、売れ残りだけど《馬》あげるよ…」

 ヒヒーンッ。

「ばかっそんなのいらないでしょ」

 アリエールに怒られる。

「うわっ馬か!? 生きてる馬が出せるのか。聞いたことねえよ」

「はははっケルビンさんはめちゃめちゃですね」

「だめか。いや。たいした物持ってないんだよ」

「いえ、嬉しいです。本当に貰えるなら喜んで貰います。ね。バルデルさん」

「ああ、ありがたいぜ、運搬用の馬が欲しかったところだ。もちろん使用料金はラナナに払うぜ」

 迷宮で馬は役に立つようだ。最悪食べれるしな。

「そうか。じゃあ。それで、またな。ラナナ」

「はい。ありがとうございました。ケルビンさん。アリエールさん。気をつけてくださいね」

「うん。じゃあ行って来ます。またね。ラナナちゃん」

 手を振ってお別れすると、ユニコを戻して洞窟へと歩き出した。

「あっのど渇いた。水筒ちょうだい」

「ほら、俺もさっき飲んだ」

 これからボス戦なのだが全く緊張感のない二人だった。

 水分の補給が済んだ後は、洞窟の中へ入っていく。ここも一応光源はあるが、最低限の明るさだ。

 数十メートル歩いた先に、重厚な扉のついた部屋がある。

「ここがボス部屋だな」

「うん、どうする。補助しとく?」

「いやあ、まあ、いいんじゃないか。展開させてあるからな」

「そうね、Dランククラスだし。じゃあ、行きましょ」

 扉を開けて中に入った。重厚に作られた立派な部屋だ。強者が出てきそうな雰囲気がある。
 少し前へ出た瞬間。入ってきた扉が閉じられた。

 ――大きな緑の狼が現れた。

 虎のようにでかい狼だった。

「食らえっ【絶対領域ナックル】パーンチ!」

 ダッシュで突っ込み頭を殴る。が展開させた障壁バリアに当たり、狼がはじかれパンチが空ぶる。

「何やってんのよ」

 アリエールが呆れる。

「私に任せて【風 の 刃】ウインドカッター!」

 アリエールが白い杖を振り呪文を唱える。杖先が輝き、激しく横回転する風の刃が飛び出した。

『ギャン!』

 一瞬にして狼を切り裂き体に大きな穴が開く。

 ボワンっと狼が煙になり、魔石と宝箱がそこに残った。

 すげー。強いじゃんアリエール。

「やるじゃんアリエール。すごいじゃないか」

「ふふふ。そうよ。私もソコソコできるのよ。でもやっぱり装備のせいね。特にこの髪飾りの効果が大きいわね」

 そうなのか? まあ、そうかもしれんが。テンションがあがるてきな何かがあるかも……。

「それより、宝箱が出たな。開けてみようぜ」

「そうね。何かしら」

 二人で期待して宝箱を開けた。

 パカッ。

 中には鍵が入っていた。

「あれっ鍵だ……」

「あっこれ正面の扉よ、何だ、先へ進むための鍵じゃないの。ドロップじゃないんだわ」

「そうか、そうゆうことか。まあ、そうたいしたボスじゃないからな」

 少しだけ大きい魔石を拾い。鍵を使って扉を開く。

 開いた先は小さな部屋で下に降りる階段があるだけだった。

 階段を降りて下っていくとしばらくしてまた明かりが見える。

 降りきった先はダンジョンらしい部屋だった。
 
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