35 / 104
第三章 王都シルバーニュ
9話 ボス? ビックグリーンウルフ戦
しおりを挟む
「サポーターが案内できるのはここまでなんです。これから先はお二人でお願いします」
ペコリとお辞儀をしてラナナが言う。
「そう、なのか。そりゃそうか。いつまでも拘束してたら悪いもんな」
「そっかぁ。ここまでなんだ。あっ本当は一緒に帰らないといけないんじゃないの。ラナナちゃんだけじゃ帰れないでしょ」
そうなのだ。あくまでお手伝いだから、一日狩りして帰る人用のサポーターなのだ。
しまったな。まあ、道は覚えたし一度帰って出直すか。
「いや、それは問題ない。もう150ドロル掛かるが、ここでも契約が終了できるんだ。交代するギルド員と同行して帰る事ができるからな」
「なるほど、それでギルド員がいるわけか、よく出来たシステムだ。はい、150ドロルだ。ラナナ助かったよ。じゃあ、リュックは返すな。お前のお陰でこんなに早くここまでこれた」
リュックを取り出し元に戻す。
「私もいい方達に雇われて幸せでした。こんなに優しくしてくれた人は初めてですよ」
ラナナの赤い目がウルウルしたように見えた。
するとアリエールが抱き着いた。
「あーん。さみしいよー。ラナナちゃん。せっかく友達になれると思ったのに、もう、ちょっとだけモフモフさせてー」
「ふえーん。アリエールさん。私もさみしいですー」
がっりしりと抱き合う二人。……というか一方的に、アリエールにラナナがこねくり回されている。着ぐるみのような部分をずらそうとしているようだ。いや。それは毛だから、服じゃないから脱げないから、ってどこ触ってんだよ。
「わーーっだめですー。だからそこは服じゃないんですってああああ!」
股間を触るな! ……ふむ。これはしばらく待つか。
そういえばのどが渇いたな……。水筒を出して水を飲む。
ここから先は二人で行くのか。しかし何の情報も無いのは厳しいな。
「バルデルさん、迷宮の地図とか情報とか売ってないかな」
となりに立つギルド員に尋ねてみると呆れたように、
「なんだ。買ってこなかったのか。Bランクなのにサポーターを雇うくらいだからもっと慎重な奴かと思ったぜ。……ガイドブック、ラナナが持ってるぞ。できればあいつから買ってやってくれ」
「そうか、ああ、そうするよ。いや、こんなに複雑だと思ってなかったんだよ」
「その分だと何も知らずに来たようだな。ったくこれだから冒険者は……。いくら強くても迷って出られなきゃ死んじまうんだぜ。食料とか大丈夫なんだろうな」
いかついおっさんに心配されて、自分も急に心配になってきた。俺達は強いが行き当たりばったりだ。ラナナがいなかったらここにたどり着いたかさえ怪しいものだ。うーんどうしよう。
「ラナナを連れてっちゃダメなのか」
「あん、何言ってんだ。サポーターはここまでだ」
「いや、なんか正式に雇うとか、臨時でパーティーを組むとかできないかな」
「ははっよっぽど気にいったのか。だが、あいつらサポーターもここから先は行った事ねーからな。先は役に立たねーよ」
「そっか……。やっぱそうだよな」
まあ、しょうがない。情報を貰って二人で行くか。うし。そう結論つけた。
「ラナナ。ここから先の情報を売って欲しい」
「はい。そうだと思ってました」
すでにラナナには読まれていた。リュックから一冊の本を取り出すと、
「この迷宮の情報を集めた公式ガイドブックです。それに、私の調べた情報の落書きつきスペシャルです。お二人に特別。特別お譲りいたします」
そう言って使いふるされたような、一冊の本を渡された。アリエールが受け取り中身を見る。
「わーすごーい。びっしり何か書いてあるよ。いいのこれ、大事なモノでしょ」
「はい。お二人が心配なんです。その代わり、帰ってきたらまた話を聞かせてください。お願いします」
「ありがとう。ラナナちゃん。うん。約束する。ねっケルビン」
「ああ、もちろんだ。それは約束しよう。あと料金はいくらだ」
「いえ。プレゼントさせてください。まだ少ししか働いてないし」
「そう、うん。ありがとうラナナちゃん。そうだ」
(ケルビン代わりに何かあげたら)
アリエールが耳元でささやく。何だ、チューしたいのかと思ったぜ。うーん。何をあげようかな。たいした物は持ってないし、冒険者になりたいならうーん。そうだ。
「じゃあ。代わりと言っちゃあ何だけど、これ、売れ残りだけど《馬》あげるよ…」
ヒヒーンッ。
「ばかっそんなのいらないでしょ」
アリエールに怒られる。
「うわっ馬か!? 生きてる馬が出せるのか。聞いたことねえよ」
「はははっケルビンさんはめちゃめちゃですね」
「だめか。いや。たいした物持ってないんだよ」
「いえ、嬉しいです。本当に貰えるなら喜んで貰います。ね。バルデルさん」
「ああ、ありがたいぜ、運搬用の馬が欲しかったところだ。もちろん使用料金はラナナに払うぜ」
迷宮で馬は役に立つようだ。最悪食べれるしな。
「そうか。じゃあ。それで、またな。ラナナ」
「はい。ありがとうございました。ケルビンさん。アリエールさん。気をつけてくださいね」
「うん。じゃあ行って来ます。またね。ラナナちゃん」
手を振ってお別れすると、ユニコを戻して洞窟へと歩き出した。
「あっのど渇いた。水筒ちょうだい」
「ほら、俺もさっき飲んだ」
これからボス戦なのだが全く緊張感のない二人だった。
水分の補給が済んだ後は、洞窟の中へ入っていく。ここも一応光源はあるが、最低限の明るさだ。
数十メートル歩いた先に、重厚な扉のついた部屋がある。
「ここがボス部屋だな」
「うん、どうする。補助しとく?」
「いやあ、まあ、いいんじゃないか。展開させてあるからな」
「そうね、Dランククラスだし。じゃあ、行きましょ」
扉を開けて中に入った。重厚に作られた立派な部屋だ。強者が出てきそうな雰囲気がある。
少し前へ出た瞬間。入ってきた扉が閉じられた。
――大きな緑の狼が現れた。
虎のようにでかい狼だった。
「食らえっ【絶対領域】パーンチ!」
ダッシュで突っ込み頭を殴る。が展開させた障壁に当たり、狼がはじかれパンチが空ぶる。
「何やってんのよ」
アリエールが呆れる。
「私に任せて【風 の 刃】!」
アリエールが白い杖を振り呪文を唱える。杖先が輝き、激しく横回転する風の刃が飛び出した。
『ギャン!』
一瞬にして狼を切り裂き体に大きな穴が開く。
ボワンっと狼が煙になり、魔石と宝箱がそこに残った。
すげー。強いじゃんアリエール。
「やるじゃんアリエール。すごいじゃないか」
「ふふふ。そうよ。私もソコソコできるのよ。でもやっぱり装備のせいね。特にこの髪飾りの効果が大きいわね」
そうなのか? まあ、そうかもしれんが。テンションがあがる的な何かがあるかも……。
「それより、宝箱が出たな。開けてみようぜ」
「そうね。何かしら」
二人で期待して宝箱を開けた。
パカッ。
中には鍵が入っていた。
「あれっ鍵だ……」
「あっこれ正面の扉よ、何だ、先へ進むための鍵じゃないの。ドロップじゃないんだわ」
「そうか、そうゆうことか。まあ、そうたいしたボスじゃないからな」
少しだけ大きい魔石を拾い。鍵を使って扉を開く。
開いた先は小さな部屋で下に降りる階段があるだけだった。
階段を降りて下っていくとしばらくしてまた明かりが見える。
降りきった先はダンジョンらしい部屋だった。
ペコリとお辞儀をしてラナナが言う。
「そう、なのか。そりゃそうか。いつまでも拘束してたら悪いもんな」
「そっかぁ。ここまでなんだ。あっ本当は一緒に帰らないといけないんじゃないの。ラナナちゃんだけじゃ帰れないでしょ」
そうなのだ。あくまでお手伝いだから、一日狩りして帰る人用のサポーターなのだ。
しまったな。まあ、道は覚えたし一度帰って出直すか。
「いや、それは問題ない。もう150ドロル掛かるが、ここでも契約が終了できるんだ。交代するギルド員と同行して帰る事ができるからな」
「なるほど、それでギルド員がいるわけか、よく出来たシステムだ。はい、150ドロルだ。ラナナ助かったよ。じゃあ、リュックは返すな。お前のお陰でこんなに早くここまでこれた」
リュックを取り出し元に戻す。
「私もいい方達に雇われて幸せでした。こんなに優しくしてくれた人は初めてですよ」
ラナナの赤い目がウルウルしたように見えた。
するとアリエールが抱き着いた。
「あーん。さみしいよー。ラナナちゃん。せっかく友達になれると思ったのに、もう、ちょっとだけモフモフさせてー」
「ふえーん。アリエールさん。私もさみしいですー」
がっりしりと抱き合う二人。……というか一方的に、アリエールにラナナがこねくり回されている。着ぐるみのような部分をずらそうとしているようだ。いや。それは毛だから、服じゃないから脱げないから、ってどこ触ってんだよ。
「わーーっだめですー。だからそこは服じゃないんですってああああ!」
股間を触るな! ……ふむ。これはしばらく待つか。
そういえばのどが渇いたな……。水筒を出して水を飲む。
ここから先は二人で行くのか。しかし何の情報も無いのは厳しいな。
「バルデルさん、迷宮の地図とか情報とか売ってないかな」
となりに立つギルド員に尋ねてみると呆れたように、
「なんだ。買ってこなかったのか。Bランクなのにサポーターを雇うくらいだからもっと慎重な奴かと思ったぜ。……ガイドブック、ラナナが持ってるぞ。できればあいつから買ってやってくれ」
「そうか、ああ、そうするよ。いや、こんなに複雑だと思ってなかったんだよ」
「その分だと何も知らずに来たようだな。ったくこれだから冒険者は……。いくら強くても迷って出られなきゃ死んじまうんだぜ。食料とか大丈夫なんだろうな」
いかついおっさんに心配されて、自分も急に心配になってきた。俺達は強いが行き当たりばったりだ。ラナナがいなかったらここにたどり着いたかさえ怪しいものだ。うーんどうしよう。
「ラナナを連れてっちゃダメなのか」
「あん、何言ってんだ。サポーターはここまでだ」
「いや、なんか正式に雇うとか、臨時でパーティーを組むとかできないかな」
「ははっよっぽど気にいったのか。だが、あいつらサポーターもここから先は行った事ねーからな。先は役に立たねーよ」
「そっか……。やっぱそうだよな」
まあ、しょうがない。情報を貰って二人で行くか。うし。そう結論つけた。
「ラナナ。ここから先の情報を売って欲しい」
「はい。そうだと思ってました」
すでにラナナには読まれていた。リュックから一冊の本を取り出すと、
「この迷宮の情報を集めた公式ガイドブックです。それに、私の調べた情報の落書きつきスペシャルです。お二人に特別。特別お譲りいたします」
そう言って使いふるされたような、一冊の本を渡された。アリエールが受け取り中身を見る。
「わーすごーい。びっしり何か書いてあるよ。いいのこれ、大事なモノでしょ」
「はい。お二人が心配なんです。その代わり、帰ってきたらまた話を聞かせてください。お願いします」
「ありがとう。ラナナちゃん。うん。約束する。ねっケルビン」
「ああ、もちろんだ。それは約束しよう。あと料金はいくらだ」
「いえ。プレゼントさせてください。まだ少ししか働いてないし」
「そう、うん。ありがとうラナナちゃん。そうだ」
(ケルビン代わりに何かあげたら)
アリエールが耳元でささやく。何だ、チューしたいのかと思ったぜ。うーん。何をあげようかな。たいした物は持ってないし、冒険者になりたいならうーん。そうだ。
「じゃあ。代わりと言っちゃあ何だけど、これ、売れ残りだけど《馬》あげるよ…」
ヒヒーンッ。
「ばかっそんなのいらないでしょ」
アリエールに怒られる。
「うわっ馬か!? 生きてる馬が出せるのか。聞いたことねえよ」
「はははっケルビンさんはめちゃめちゃですね」
「だめか。いや。たいした物持ってないんだよ」
「いえ、嬉しいです。本当に貰えるなら喜んで貰います。ね。バルデルさん」
「ああ、ありがたいぜ、運搬用の馬が欲しかったところだ。もちろん使用料金はラナナに払うぜ」
迷宮で馬は役に立つようだ。最悪食べれるしな。
「そうか。じゃあ。それで、またな。ラナナ」
「はい。ありがとうございました。ケルビンさん。アリエールさん。気をつけてくださいね」
「うん。じゃあ行って来ます。またね。ラナナちゃん」
手を振ってお別れすると、ユニコを戻して洞窟へと歩き出した。
「あっのど渇いた。水筒ちょうだい」
「ほら、俺もさっき飲んだ」
これからボス戦なのだが全く緊張感のない二人だった。
水分の補給が済んだ後は、洞窟の中へ入っていく。ここも一応光源はあるが、最低限の明るさだ。
数十メートル歩いた先に、重厚な扉のついた部屋がある。
「ここがボス部屋だな」
「うん、どうする。補助しとく?」
「いやあ、まあ、いいんじゃないか。展開させてあるからな」
「そうね、Dランククラスだし。じゃあ、行きましょ」
扉を開けて中に入った。重厚に作られた立派な部屋だ。強者が出てきそうな雰囲気がある。
少し前へ出た瞬間。入ってきた扉が閉じられた。
――大きな緑の狼が現れた。
虎のようにでかい狼だった。
「食らえっ【絶対領域】パーンチ!」
ダッシュで突っ込み頭を殴る。が展開させた障壁に当たり、狼がはじかれパンチが空ぶる。
「何やってんのよ」
アリエールが呆れる。
「私に任せて【風 の 刃】!」
アリエールが白い杖を振り呪文を唱える。杖先が輝き、激しく横回転する風の刃が飛び出した。
『ギャン!』
一瞬にして狼を切り裂き体に大きな穴が開く。
ボワンっと狼が煙になり、魔石と宝箱がそこに残った。
すげー。強いじゃんアリエール。
「やるじゃんアリエール。すごいじゃないか」
「ふふふ。そうよ。私もソコソコできるのよ。でもやっぱり装備のせいね。特にこの髪飾りの効果が大きいわね」
そうなのか? まあ、そうかもしれんが。テンションがあがる的な何かがあるかも……。
「それより、宝箱が出たな。開けてみようぜ」
「そうね。何かしら」
二人で期待して宝箱を開けた。
パカッ。
中には鍵が入っていた。
「あれっ鍵だ……」
「あっこれ正面の扉よ、何だ、先へ進むための鍵じゃないの。ドロップじゃないんだわ」
「そうか、そうゆうことか。まあ、そうたいしたボスじゃないからな」
少しだけ大きい魔石を拾い。鍵を使って扉を開く。
開いた先は小さな部屋で下に降りる階段があるだけだった。
階段を降りて下っていくとしばらくしてまた明かりが見える。
降りきった先はダンジョンらしい部屋だった。
0
お気に入りに追加
570
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる