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第11話 いきなり新キャラ
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「よっしゃーー!!これから頑張るぞー!!」
いまからガリガリと執筆を開始してもいいのだがとりあえず寝ておこう。寝たいから寝るのではなく義務感からくる睡眠、そういう時は大抵十分に眠ることはできないのだが今回は色々なことへの達成感でグッスリと眠りにつく。しばらく寝てから目が覚める、程よく寝足りなく気持ちよく二度寝の態勢を整える。あぁ、最高の二度寝だ。
――ピンポーン――
二度目の眠りに入る前に家のチャイムが鳴り響く。ネットで買い物した記憶はない、どうせ何かの勧誘だろうと思い無視を決め込むが何度も何度もチャイムの音が鳴る。騒音を耐え凌ぎ今度こそ二度寝をしようと思ったのだが今度は扉をドンドンと叩く音がする。郵便も勧誘もここまではしない、親なら事前に連絡がある、師匠は直接中に入ってくる、となれば騒音の主は限られる。怒りを言動力に玄関まで足を運ぶ。
「うっるせえぞ!陽太!」
その男はヘラヘラと口だけの反省を述べる。
「ごめんごめん、けど龍はこれくらいしないとでてこないじゃん」
こいつの名前は夢見陽太、俺と同じ21歳の大学生、そして売れないイラストレーター。小学校からの友達で大学まで一緒の親友で俺の小説の表紙や挿絵のイラストを担当している。互いのイラストのせいで売れなかっただの内容が悪いだの他所の人にしたら炎上待ったなしの言い合いを出来るくらには仲が良い。
「なんの用だよ…寝てたんだよ俺は…」
数少ない素のままで会話が出来る相手なので普段より語気が強くなってしまう、本当は誰に対してもこの態度を貫きたいのだがそこまで常識知らずではない。それに最近はその態度を取ったらぽっくり死んでしまうのもある。
「近況報告の会だよ!最近なにしてんのか教えろよ、ちゃんと作ってんのか~?」
「そんな会したことないだろ…まぁいい入れよとっておきを見せてやるから」
「お、デカい口叩くじゃん」
家の中に招き入れ適当な場所に座らせてから出来立てほやほやのプロットを陽太に見せつける。
「どうだ!俺はこの作品でU22ラノベ大賞を獲るぞ」
「それってアニメ化確約のすげえ賞だろ?そんなの俺らみたいな売れない人間には無理だろ…」
そう思うのも当然だがプロットを読み進めた陽太は作品の出来に驚く。
「いやなんかこれ設定自体はそこそこありそうなのに魔王とか勇者のお姉さんの解像度が異常に高いな…」
「なんか実際に会って話を聞いたみたいなリアリティだな、これちゃんと書けばかなり面白くなるんじゃないか?」
意外と勘が鋭いな、俺の体験を話してもいいが妄想を現実かのように語る異常な人間と思われたくはないので黙っておく。売れっ子作家が隣の部屋にいてその人が元勇者で異世界に行ったなんてどんなに仲がいい友人が言ったところで信じる訳がない。俺が逆の立場でも絶対に信じないと断言できる。
「俺の努力の結晶だ」
俺がすごい訳ではない、俺と同じ体験をしたら他の人はきっと更にすごい作品を産み出せるのだろう。しかし今はそう言うしかない。
「逆にお前は最近どうなんだよ、イラストの仕事増えてるのか?」
「いやぁぼちぼちだな、まったくない訳じゃなけどメチャクチャ増えたわけでもねえよ」
「仕事ないよりはマシだな」
「そうだけど龍は賞を獲るために頑張ってんじゃん、俺はなんも変わってないんだよ」
なんか、これって…
「これってさ…」
やめろ、それ以上は…
「傷の舐め合いだな…」
分かっていても言わないようにしていただけに言葉にされると心が痛い。雰囲気もお通夜に近いので話題を変えよう。
「さ、最近描いたイラスト見せてくれよ」
「あ…あぁ、これだよ」
差し出されたスマホを必要以上に覗き込むとそこには可愛い女の子のイラストが映し出されていた。売れないといっても仕事はあるイラストレーターだ、絵心が小学生から成長していない俺と比べれば、比べるまでもなく上手い。けど、なんというか。
「あと一歩足りないんだよなぁ…」
「やっぱお前もそう思うか!!そうなんだよな、俺もなにかが足りないと思ってたんだよ」
「そうなのか…」
しかし、その肝心のなにかはさっぱり分からない。自分の分野である小説すら助けがなかったら微妙なままだった俺には違う畑のイラストについてアドバイスなんて出来る訳がない。
「龍はすげよ…足りてないなにかを掴みかけてるじゃん」
心が痛い、俺が凄いんじゃないんだよ。凄いのは師匠であって俺ではない、それを忘れて調子に乗ることも出来なくはないけどそれをした瞬間に人としてダメになる気がする。
師匠に頼ろうと思ったが確実に断られるので断念。俺の力で陽太を一皮剥かせるんだ。
「俺も手伝う!なんとかして上達の秘訣を見つけよう!」
「んなこと言ってもよお、モチベもそこまでないんだよな…」
悲しげな顔で呟く陽太はまるで少し前の俺に似ていた。自分の限界を悟り気力のない表情を見ているとこの親友を助けたいと思ってしまう。
「じゃあこうしよう!」
「俺が大賞を獲ってアニメ化の本を出す!その時の表紙はお前のイラストだ!」
「そんなの夢物語だろ…お前は大賞獲れるかもしれないけど俺は…」
「だから今から合宿だ!」
「はぁ!!?」
俺は師匠と違ってコイツに特別な何かを与えることは出来ない、それに頭がイカれたと思われるのもなんとなく癪に障るから師匠との話をするのもなしだ。とにかく俺の力で何とかするしかない。
「具体的に何をすればいいんだ?」
「あ~、えーっと、神絵師のイラストを模写しまくるとか…?」
情けない…俺の力でとか大見得を張ったにも関わらず出てきたアイデアは神絵師の模写である。けれど何もしないよりはマシだ。
「神絵師って例えば?」
「そりゃMyui一択だろ!」
Myuiはフォロワー100万人越えの超有名イラストレーター。基本的には好きな絵を投稿しているだけだが極稀にラノベの表紙を描く時がある、その度に本の内容は関係なしに売れ、イラストレーター界の新山千と言われることもある。師匠とMyuiが組んだ時は世間がお祭り騒ぎになり普段ラノベを読まない層ですら手に取るほどだった。しかしそんなMyuiには分かりやすい弱点がある。
「俺あの人微妙に嫌いなんだよな~SNSで暴れすぎだろ」
そう、口が悪い、いや性格が悪いのだ。自身が表紙を描いたラノベの内容について俺が描いたから売れた、などと発言する時がある。しかし基本的にはその通りなのでなんとなく許されている。そんなMyuiでも師匠の本を担当したときはイラストが負けているとネットで囁かれていた。
「それは分かるけど絵の上手さでいったらダントツだろ?やるしかないって」
「しょうがねえなぁ、やるか~」
よし、師匠なしでも俺はやれるところを俺自身に見せつけるんだ。
――コンコン――
窓から小さく音がする。もしやと思うより先に鍵の付いたはずの窓が開く。
「面白そうな話をしているね」
なんで来たんだ!!!
いまからガリガリと執筆を開始してもいいのだがとりあえず寝ておこう。寝たいから寝るのではなく義務感からくる睡眠、そういう時は大抵十分に眠ることはできないのだが今回は色々なことへの達成感でグッスリと眠りにつく。しばらく寝てから目が覚める、程よく寝足りなく気持ちよく二度寝の態勢を整える。あぁ、最高の二度寝だ。
――ピンポーン――
二度目の眠りに入る前に家のチャイムが鳴り響く。ネットで買い物した記憶はない、どうせ何かの勧誘だろうと思い無視を決め込むが何度も何度もチャイムの音が鳴る。騒音を耐え凌ぎ今度こそ二度寝をしようと思ったのだが今度は扉をドンドンと叩く音がする。郵便も勧誘もここまではしない、親なら事前に連絡がある、師匠は直接中に入ってくる、となれば騒音の主は限られる。怒りを言動力に玄関まで足を運ぶ。
「うっるせえぞ!陽太!」
その男はヘラヘラと口だけの反省を述べる。
「ごめんごめん、けど龍はこれくらいしないとでてこないじゃん」
こいつの名前は夢見陽太、俺と同じ21歳の大学生、そして売れないイラストレーター。小学校からの友達で大学まで一緒の親友で俺の小説の表紙や挿絵のイラストを担当している。互いのイラストのせいで売れなかっただの内容が悪いだの他所の人にしたら炎上待ったなしの言い合いを出来るくらには仲が良い。
「なんの用だよ…寝てたんだよ俺は…」
数少ない素のままで会話が出来る相手なので普段より語気が強くなってしまう、本当は誰に対してもこの態度を貫きたいのだがそこまで常識知らずではない。それに最近はその態度を取ったらぽっくり死んでしまうのもある。
「近況報告の会だよ!最近なにしてんのか教えろよ、ちゃんと作ってんのか~?」
「そんな会したことないだろ…まぁいい入れよとっておきを見せてやるから」
「お、デカい口叩くじゃん」
家の中に招き入れ適当な場所に座らせてから出来立てほやほやのプロットを陽太に見せつける。
「どうだ!俺はこの作品でU22ラノベ大賞を獲るぞ」
「それってアニメ化確約のすげえ賞だろ?そんなの俺らみたいな売れない人間には無理だろ…」
そう思うのも当然だがプロットを読み進めた陽太は作品の出来に驚く。
「いやなんかこれ設定自体はそこそこありそうなのに魔王とか勇者のお姉さんの解像度が異常に高いな…」
「なんか実際に会って話を聞いたみたいなリアリティだな、これちゃんと書けばかなり面白くなるんじゃないか?」
意外と勘が鋭いな、俺の体験を話してもいいが妄想を現実かのように語る異常な人間と思われたくはないので黙っておく。売れっ子作家が隣の部屋にいてその人が元勇者で異世界に行ったなんてどんなに仲がいい友人が言ったところで信じる訳がない。俺が逆の立場でも絶対に信じないと断言できる。
「俺の努力の結晶だ」
俺がすごい訳ではない、俺と同じ体験をしたら他の人はきっと更にすごい作品を産み出せるのだろう。しかし今はそう言うしかない。
「逆にお前は最近どうなんだよ、イラストの仕事増えてるのか?」
「いやぁぼちぼちだな、まったくない訳じゃなけどメチャクチャ増えたわけでもねえよ」
「仕事ないよりはマシだな」
「そうだけど龍は賞を獲るために頑張ってんじゃん、俺はなんも変わってないんだよ」
なんか、これって…
「これってさ…」
やめろ、それ以上は…
「傷の舐め合いだな…」
分かっていても言わないようにしていただけに言葉にされると心が痛い。雰囲気もお通夜に近いので話題を変えよう。
「さ、最近描いたイラスト見せてくれよ」
「あ…あぁ、これだよ」
差し出されたスマホを必要以上に覗き込むとそこには可愛い女の子のイラストが映し出されていた。売れないといっても仕事はあるイラストレーターだ、絵心が小学生から成長していない俺と比べれば、比べるまでもなく上手い。けど、なんというか。
「あと一歩足りないんだよなぁ…」
「やっぱお前もそう思うか!!そうなんだよな、俺もなにかが足りないと思ってたんだよ」
「そうなのか…」
しかし、その肝心のなにかはさっぱり分からない。自分の分野である小説すら助けがなかったら微妙なままだった俺には違う畑のイラストについてアドバイスなんて出来る訳がない。
「龍はすげよ…足りてないなにかを掴みかけてるじゃん」
心が痛い、俺が凄いんじゃないんだよ。凄いのは師匠であって俺ではない、それを忘れて調子に乗ることも出来なくはないけどそれをした瞬間に人としてダメになる気がする。
師匠に頼ろうと思ったが確実に断られるので断念。俺の力で陽太を一皮剥かせるんだ。
「俺も手伝う!なんとかして上達の秘訣を見つけよう!」
「んなこと言ってもよお、モチベもそこまでないんだよな…」
悲しげな顔で呟く陽太はまるで少し前の俺に似ていた。自分の限界を悟り気力のない表情を見ているとこの親友を助けたいと思ってしまう。
「じゃあこうしよう!」
「俺が大賞を獲ってアニメ化の本を出す!その時の表紙はお前のイラストだ!」
「そんなの夢物語だろ…お前は大賞獲れるかもしれないけど俺は…」
「だから今から合宿だ!」
「はぁ!!?」
俺は師匠と違ってコイツに特別な何かを与えることは出来ない、それに頭がイカれたと思われるのもなんとなく癪に障るから師匠との話をするのもなしだ。とにかく俺の力で何とかするしかない。
「具体的に何をすればいいんだ?」
「あ~、えーっと、神絵師のイラストを模写しまくるとか…?」
情けない…俺の力でとか大見得を張ったにも関わらず出てきたアイデアは神絵師の模写である。けれど何もしないよりはマシだ。
「神絵師って例えば?」
「そりゃMyui一択だろ!」
Myuiはフォロワー100万人越えの超有名イラストレーター。基本的には好きな絵を投稿しているだけだが極稀にラノベの表紙を描く時がある、その度に本の内容は関係なしに売れ、イラストレーター界の新山千と言われることもある。師匠とMyuiが組んだ時は世間がお祭り騒ぎになり普段ラノベを読まない層ですら手に取るほどだった。しかしそんなMyuiには分かりやすい弱点がある。
「俺あの人微妙に嫌いなんだよな~SNSで暴れすぎだろ」
そう、口が悪い、いや性格が悪いのだ。自身が表紙を描いたラノベの内容について俺が描いたから売れた、などと発言する時がある。しかし基本的にはその通りなのでなんとなく許されている。そんなMyuiでも師匠の本を担当したときはイラストが負けているとネットで囁かれていた。
「それは分かるけど絵の上手さでいったらダントツだろ?やるしかないって」
「しょうがねえなぁ、やるか~」
よし、師匠なしでも俺はやれるところを俺自身に見せつけるんだ。
――コンコン――
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なんで来たんだ!!!
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