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騎士ジェラルドと淫魔の王
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しおりを挟む※騎士攻のターンです
日が暮れかかった頃、路地裏の館を再訪したジェラルドを見た召喚士はあからさまに震え上がった。召喚士は頭と喉に包帯を巻いていた。心持ち顔色も悪い。
「仕事だ。もう一度頼みたい」
「ご勘弁を! 私は死にかけたんですよ!」
「倍出そう」
「……まーたインキュバスですかぁ?」
召喚士は不満そうにジェラルドを見上げてきた。文官らしく小柄な男だ。馬に乗れるのか疑問になるほど貧弱な体つきだが、召喚の腕は確かだ。一昼夜通して二百以上のインキュバスを呼び出した実績は評価できる。
「呼び出したいのは魔界七公第七位イドル・リリー様だ」
「はあああああいぃっ?」
器用にも、召喚士は頓狂な悲鳴で聞き返してきた。
「その名を口にしないでっ! そもそも召喚できるわけがないでしょうが!」
「難しいのか」
「魔界を統べる魔王のひとつですよ! そんなの、人間に召喚できるはずないでしょうがっ!」
もう一袋、金貨の袋を置いてみたが、召喚士は首を横に振った。命が惜しいと涙ぐまれて、剣を抜くか迷う。
呼んで死ぬか、呼ばずに死ぬか。好きな方を選べ。
考えるまでもなく、なかなか非情な台詞だ。
ジェラルドは少し考え直した。
「ならば、インキュバスを頼もう」
「……無茶苦茶な数は嫌ですよ」
不遜にも、召喚士は不貞腐れている。
苛ついて、説得するより剣を選びたくなったが、今日のジェラルドは体調がとても良い。腹の底の疼きが薄いだけで寛容さは増すのだ。
「五十だ」
「二十」
「四十五」
「二十五」
睨み合った末、三十体で折り合いがついた。
金貨袋はもう一つ、積み増すことになったので、ジェラルドの所持金は財布の中身のわずかな路銀のみになった。
無論、少しも惜しくはない。
金は稼げるし、少しでも早く彼に会いたい。悪魔を呼び出してくれる召喚士は滅多にいないから、金貨を積むほうがずっと簡単だ。
地下の召喚室は昨日と変わりなく薄暗かった。ジェラルドが持ち込んだ香炉は処分したのか見当たらない。
召喚魔法陣もそのままで、荷物を置いて真ん中に立てと言われた。ジェラルドは身につけていたものも脱いで荷物と一緒にまとめて、魔法陣に立った。
召喚士はこれ見よがしに溜息を吐いた。
「あんた、本当に頭がおかしい」
「生憎だが正気らしい。加護があって狂えないんだ」
十分イカれてますよと吐き捨てて、召喚士は魔法陣のすぐ外側に立った。陣の中にはジェラルドだけが入るのだ。二度目なので手順もわかっている。
「十体ずつ三回まで。お代わりはナシですからね」
「わかった」
ジェラルドが応えると、召喚士は呪文を唱え始めた。
諸国を周ったジェラルドも知らない言葉は古代に栄えた魔法王国の言葉が元になっているらしい。淫紋に刻まれていた模様みたいな文字のことだろうか。
散漫に考えている間ずっと続いていた詠唱が終わると、魔法陣から暗闇が吹き出し、視界が奪われたる。
十数えて目を開けると、インキュバスたちが既にそこに立っていた。赤黒い肌とコウモリの翼の悪魔たちが十体いる。
「あれ? 昨日の? まだ満足できなかったカンジ?」
ジェラルドにインキュバスの見分けはつかないが、相手はそうでもないらしい。一番手前にいた淫魔が気楽に話しかけてきた。
昨日のジェラルドなら馴れ馴れしいと憤ったかもしれない。だが、彼らの王を知った後では少しの違和感も感じない。イドル・リリーはもっと親しげだった。
「そうです。私はあなた方の王にお会いしたい。どうか取り継ぎを」
ジェラルドはその場に片膝を突く騎士礼を取って、言った。
インキュバスたちが互いの顔を見合わせた。
「なんで人間が会いたいのか知らないけど、そういうのムリなんだよ」
別の悪魔が言った。
肌色や翼の形にはきっと差異があるのだろうが、ジェラルドには見分けがつかない。彼らは背丈も皆、ほとんど同じなのだ。
「では私を抱いて、さっさと『仕送り』をお願いします。面倒なので全員でどうぞ」
ジェラルドは騎士礼から両手を床に突きなおし、四つん這いになった。
と。
「昨日の今日でまさかと思いましたが、本当に騎士様だった」
頭上から、焦がれた声がした。
ジェラルドは勢いよく顔を上げた。
イドル・リリーが何かに腰掛けた姿勢で、ふわふわ浮かんでいた。
「う、うわああっ! ああっ、うあ!」
召喚士が腰を抜かして座り込んだ。さすがに、現れた悪魔がどれほどのものなのか分かるらしい。
眉を寄せたイドル・リリーが片方の指を軽く曲げた。
途端、召喚士の声が消えた。変わらずに叫んでいる様子だから、声が封じられたのだろう。魔法は不思議なものである。
「悲鳴って、得意じゃないんですよ」
イドル・リリーは言って、ジェラルドを見下ろした。
ジェラルドは両膝を突いて体を起こした。少しだけ前に膝行り寄り、見上げたイドル・リリーに両手を差し伸ばす。
長衣だけでなく下衣も異国風で、砂の海の民が好むものによく似ている。裾から覗く足は骨のように細く白く、先が尖ったフェルトの靴を履いていた。
この足先に触れたい。
触れてはいけないだろうか。
葛藤していると、イドル・リリーが上体をぐっと倒してジェラルドの首に両腕を巻きつけてきた。少し上から、しなだれかかってきた格好だ。
予想外のことだったが、もちろん、背を支えて抱きしめた。昨日は抱き返せなかった背は頼りないくらい薄い。うっかり折ってしまいそうである。
「昨日の帰り道、ちょっと、すごーく気分が良かったので寄り道を。食後の甘味が欲しくなっちゃったんですよね。そうしたら、それが、あんまり……美味しくなくて」
余程不本意だったのだろう。イドル・リリーは一息で歌いあげるみたいに嘆いた。
「お気の毒なことです。あなたは美食家だとおっしゃっていたのに」
「そうなんです。もう、とてもがっかり!」
菓子を取り上げられた幼子みたいにしょげているのが妙に可愛くて堪らず、ジェラルドはそっと、真っ白な髪を撫でた。一筋一筋まで細く柔らかな髪だ。こめかみあたりから編み込まれているところも美しい。
胸が高く、速く鳴る。
だが、焦ってはいけない。
まだ目的は達せられていないのだ。
「私の精は美味しかったですか?」
「とても! 熟成モノまで頂いてしまいましたしね」
「ではお口直しにいかがでしょうか」
ジェラルドはイドル・リリーの左手を取り、手のひらに頬を擦り寄せた。
昨日はずっと力が入らないまま、身を任せるばかりだった。後悔は微塵もないが、こうして自分からイドル・リリーに触れられるのが嬉しくて仕方がない。
なめらかな頬に口付けたらさすがに無礼だろう。ジェラルドはぎりぎりのところで思いとどまった。
「本当ですか? でも、今は苦しくないのでは?」
「あなたに召し上がっていただけるのは望外の喜びです。熟成した方がお好みでしたらお時間をいただければ」
「新鮮なものは格別なんですよ。……というか」
ジェラルドと額をくっつけた距離で、イドル・リリーが笑みを浮かべた。金色の瞳の奥が光っている。
「ひょっとして、わたし、誘惑されてますよね?」
軽やかな言い回しが愛らしい。
ジェラルドは笑んで頷いた。
「まるで悪魔みたいですね、騎士様!」
嬉しそうに、イドル・リリーの体がジェラルドの腕からすり抜けた。
慌てて顔を上げると、「そのままではバザールを歩けませんよね」と笑われる。
ジェラルドはすぐさま立ち上がり、魔法陣から飛び出た。手早く衣類を身につけるのは元から得意だ。当て布がいらないだけで着替えの速度は上がっている。
「ええーっ、ちょっと待ってくださいよ、リリ様! その人間がいなくなったら、俺たちはどうしたら?」
さっきのインキュバスが悲しげな声をあげた。
ジェラルドが依頼した淫魔たちは魔法陣内にいる人間を犯すために呼ばれた。魔法陣にそう描いてあるらしい。当のジェラルドが陣を抜けてしまえば契約は果たされない。つまり、インキュバスは還れない。
マントをつけながら振り返ると、召喚士が魔法陣の真ん中に落とされるところだった。間違いなくイドル・リリーの仕業だ。
インキュバスたちは瞬きする間に人間の男の姿に変わった。見分けの付かなかった淫魔たちが髪の色も目の色も体格も各々違う男になっている。もちろん全裸だ。共通点は鍛錬した騎士並に逞しいところくらいだろうか。
「よっし、可愛がってやろうなー」
嬉々として金髪の男が言うと、召喚士はあっという間に裸に剥かれた。貧弱な体つきは想定内だ。悲鳴は聞こえない。声が封じられたままだが、特に問題はないだろう。
「わたしたちはどうしましょうか、騎士様。またあの塔へ行きますか?」
イドル・リリーがふわりと着地した。ジェラルドは頷いて細い手を取り、
「お任せいただいてもよろしいでしょうか」
と尋ね返した。
「構いませんとも」
あっさりとした返事は思った通りだ。
「では、失礼いたします」
言って、ジェラルドはイドル・リリーを横抱きに抱き上げた。羽のように軽いのは彼の方だ。軽重も自在なのかもしれないが。
昨日のようにバザールを歩き回られる時間が惜しいジェラルドは、イドル・リリーを抱き抱えて階段を駆け上り、地下召喚室を後にした。
全速力でバザールを駆け抜けたジェラルドは、城壁沿いにある小さな家屋に飛び込んだ。砂岩と石を組み合わせて造られているごく普通の民家だ。狭いなりに寝室と食堂兼台所は仕切られている。
しばらく誰も住んでいなかったとかで荒れていたのを突貫で整えさせた。ベッドやテーブルセット、寝具類は一通り揃っている。繁華なバザールが近いから、金貨さえあれば何とでもなる。
「おや、騎士様の家ですか? いつの間に? すごいですねえ」
「仮初のものですが用意しました。今宵の宿としてお過ごしください」
昨晩と主客を替えた問答をして、ジェラルドはイドル・リリーをそっと下ろした。強めに抱えて走ってきたのに異国風の長衣には皺も入っていない。
淫魔の王は珍しそうに家の中を歩き回り、寝室に入っていった。ジェラルドはマントを壁に引っ掛けて、すぐに追った。
寝室といっても塔の部屋とは比べようもなく粗末なものだ。飾りタイルの一枚もない。窓も、ガラスのない板戸だ。それでもバンダル式の作り付けの寝台には真新しい寝具を置いてあるし、クッションは多めに用意させた。
イドル・リリーはそのベッドに腰を下ろしていた。
時は来た。
ジェラルドは床に膝をつき、イドル・リリーを見上げて右手を取った。眼鏡を掛けた優しい悪魔がわずかに首を傾げる。
「我が名はジェラルド。オールボ王国の貴族に生まれましたが、故あって家名は捨てました。ただこの身、この剣をもってお仕えすることをどうぞお許しください、イドル・リリー様」
「わあ。わたしに名乗りましたね。しかも不意打ち」
悪魔に名を告げてはいけないと召喚士には強く言われた。悪魔が魂を喰らうためには、その人間の名を知らなくてはいけないらしい。つまり名乗りは全面降伏に等しい。
これでいつでも、イドル・リリーはジェラルドの魂を喰らうことができるのだ。
「眷属に加えて下さっても構いません」
「わたし、眷属とは交わりませんよ?」
「では下僕でも従者でも。どうか御身の側にあることをお許しください」
ジェラルドはイドル・リリーのすんなりした手に頬を擦り寄せた。
「愛しています。私はあなたがどうしようもなく愛しいのです」
亡き母は、結婚すれば愛もわかるようになると言っていた。そういうものかと思っていたが、違う。
家畜の淫紋を刻まれてオークに汚され、戦の英雄と讃える人々から排斥され、巡礼の果てに神々の助け手を受けることもできなかったジェラルドに思いやりをくれたのは、ただイドル・リリーだけだった。
どこまでも続く真っ暗闇の中で見つけた骨のようなこの手を離すわけにはいかない。絶対に逃さない。離れない。そのためなら、ジェラルドは魂だって笑顔で差し出す。
間違いなく、これがジェラルドの愛だ。
「悪魔は愛を受け取れないものなんですよ」
応えてくれたイドル・リリーは困って見えた。
ジェラルドのことを考えてくれているから困っているのだ。
たまらない気持ちになって、ジェラルドはイドル・リリーの手を額に押し当て、唇を寄せた。
「愛を捧げるのは私の勝手だ。あなたはただ、私を召し上がればいいのです」
言葉の合間に、繊細な指先ひとつひとつに口付けていく。
「私は美味しいのでしょう?」
うーん、と唸ったイドル・リリーの爪の先がジェラルドの唇を突いた。
迷わず口に迎え入れ、柔らかく吸い付ける。本当はしゃぶりつきたいが、まだ話が済んでいない。堪えどころである。
「聖行者の生気は蕩けるほど美味しいんですよね」
「すべてあなたのものです」
「……本当に誘惑が上手すぎませんか、騎士様」
溜息混じりに眉を下げるのを見上げて、ジェラルドは笑んだ。
もう一息だ。
「神々にも見捨てられた私を救ってくださったのはあなただけなのです。どうか、私をお側においていつでも召し上がってください」
イドル・リリーは背中を丸め、すがりついたジェラルドの髪に口付けをくれた。宥めるように頬を擦り寄せられ、ジェラルドは両腕で細い体を抱きしめた。
薄い腹に顔を埋めると、熟した葡萄に似た甘い香がした。芳醇なワインに似ている香に目眩がしそうだ。
「私はあなたの食べ物です、イドル・リリー様」
畳み掛けると、ついにイドル・リリーが笑い出した。くすくすけたけた。楽しげな笑い声である。
「参りました! あはは!」
「では、お側においていただけますか?」
「ええ、ええ。美味しいものは大事にしますよ」
「ありがとうございます、愛しています!」
ジェラルドは伸び上がり、イドル・リリーを抱きしめた。頬を擦り合わせ、唇を重ねても拒まれない。
濃密に舌を舐め合いながら、ベッドに倒れ込んだ。真っ白な髪を唇で辿り、首筋に口付けた。小さく音を立てながら啄んで吸う。
それだけで意図が通じたのだろうか。
イドル・リリーの薄い唇が笑みの形になって、両腕が首に回ってきた。
吐息で唇に触れる距離で見つめる。
光を帯びている瞳孔に見惚れて目が離せないから、そのまま唇を深く合わせた。足の間に体を入れて小刻みに揺れながら、股間をぴったりくっつけ合わせた。
ジェラルドの男根は準備万端で勃っているが痛くも苦しくもない。焦れてもいない。腹の奥は疼いているが、それよりも、この男を愛したくて仕方がない。
片方の腕で自重を支え、もう片手で細い体を撫で上げた。
襟まで詰まった長衣の脱がせ方がわからなかったので裾を手繰ると、唐突に手の中で布が消えた。イドル・リリーが身につけていたものを全て消し去ったのだ。
はっとして瞬く。
イドル・リリーは嫣然としていた。
ジェラルドは晒された真っ白な体を、目と手のひらで丁寧に撫で辿った。
襟に隠れていた首も肩も胸も白い。腹は本当に薄くて、腑が入っているのか疑わしいほどだ。腰も足首にも余分な肉も張った筋肉もほぼなく、全体として白蛇のようである。
そして、湯船で見せてくれた三本目の足はぐっと小さくなっていた。平均的な大きさだ。
「邪魔にならない程度で」
「お心遣いに感謝します」
ジェラルドは通った鼻筋に口付けた。イドル・リリーは楽しそうに笑っている。とても可愛くて、とても美しい。
自分の衣服も脱ぎ捨てて、ジェラルドは素肌でイドル・リリーに覆い被さった。
肌と肌が触れ合うだけで気持ちがよかった。できるだけたくさん重なりたくて、もぞもぞと体を動かした。興奮は強くなる一方だ。
イドル・リリーが両方の膝を立て、足を大きく開いてくれた。女が男を正面から迎え入れる体勢である。
誘われるまま密着するとジェラルドの臍の下あたりにイドル・リリーの勃ちあがった男根があたった。そのまま淫紋を穿つように動き出すから、ぞくぞくとした悦びが湧き上がってくる。
相手は淫魔の王である。あらゆる性技を尽くしてくれる。
つまり、油断したら簡単に持っていかれてしまうということだ。
惜しかったがジェラルドは体を起こし、足の間に座り込んだ。イドル・リリーの両方の膝窩に手を入れて、開かせながら持ち上げる。
露わになった会陰から尻に向かって、すっかり熱を溢している自身を宛がって滑らせた。ぬるり、つるり。時々強く。まるで獣が縄張りを主張するように、自分の先走りを擦りつける。
「ん、ふふっ、気持ちいいです、そこ」
「ここですか?」
「ええ、薄皮一枚で、泣きどころですから」
甘い息を溢した唇にも触れたいが、もっと感じて貰いたい。一瞬迷った後、ジェラルドは骨のように細い足をもっと持ち上げる方を選んだ。
両方の膝から内腿に口付けして舌を這わせ、裏筋と陰嚢にも口付けて、浮かせた尻にも唇を押し付けた。
骨白の肌は本物の蛇のように滑らかで、少し冷たい。
「素敵ですよ、もっともっと昂ってください」
舌舐めずりするイドル・リリーに、頭の芯が痺れた。
淫らだ。かわいい。
愛しい。悦ばせたい。
もっと深く感じたい。感じさせたい。
渦を巻く欲望がジェラルドの奥底から渦を巻き、男根から喉から、迸りそうだった。
イドル・リリーが笑みを深くした。
「……あぁ、やっぱり、とても美味しい」
細い喉が飲み下したのは唾液ではあるまい。王は満足げだ。騎士の望みはここにある。
ジェラルドは薄い尻肉を揉み開いて、泥濘む穴へ突き入れた。本来濡れるはずもない場所だが、イドル・リリーは淫魔だ。人間ではない。
それがいい。そこもいい。
人間なんて信用できないものは大嫌いだ。
ジェラルドは腰骨のあたりを掴んで痩身を引き寄せ、体を倒した。腕が背にまわり、指先でしがみつかれる。
自分の背にあの骨のような指が縋り付いていると思うだけで肌が粟立った。
イドル・リリーの腰が波打つのを追いかけて穿って、引いて抉る。
ジェラルドの律動にあわせて、触れている内壁が締まって緩む。
「あっ、いい、気持ちいいです、騎士さま、きしさま、……あんっ、ん!」
恍惚とした喘ぎ声に耳から脳髄が犯されていくのがわかるのに、腰を止めることも、尖った肩骨を甘噛みするのもやめられない。
臍の下の淫紋が男根に擦られてざわついている。
どれもこれも気持ちがいい。
「私、も、気持ちが、いい、いいのですっ、いいのです!」
息を忘れるほど腰を振り立てたジェラルドは、程なくイドル・リリーの腹の奥を濡らし果てた。
快感。悦。
腹の底から湧いてくる淫欲は、腕の中のイドル・リリーへの愛だ。
愛しくて、愛しくてたまらない。
「はぁ……あなたは、本当に素晴らしい……」
イドル・リリーが喉を震わせた。
ジェラルドは恭しく唇を首筋に押し当てた。誓文は唱えないが、これは誓いの口付けだ。
ずっとお側に。あなたにだけ食べて貰えるように。
全身全霊でお仕えする。
「ねえ、騎士様。お代わりしてもいいですか?」
金色の瞳を煌めかせたイドル・リリーの薄い唇が至近で強請った。もちろん、否はあり得ない。
「お好きなだけ、召し上がってください。私の最愛」
ジェラルドは抜きもせずに律動を再開し、薄い唇を舐め吸った。
日は暮れたばかりだ。
夜は、長い。
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