上 下
6 / 16
冒険の始まりと始まりの迷宮

6

しおりを挟む
 朝の陽ざしが部屋の中へと差し込み部屋の中を照らし始める。

「もう朝か。結局昨日ご飯を食べずに寝てしまったな。朝ご飯はできてるのかな」

 起きた瞬間、空腹感が空太を襲う。宿の食事ができてるかつぶやきつつ1階へと降りていく。

「おはようございます。朝食をとりたいのですが」

「おはようさん。ご飯ならもうちょっとでできるからそこに座っとくれ。それにしても昨晩食べに降りてこなかったじゃないか」

「ありがとうございます。すみません、ベットに横になった瞬間眠気に襲われまして」

「そうかい。あれ?昨日連れていた犬はどうしたんだい。一応その分も用意しようと思ってたんだけど」

「窓を開けて寝ていたら見事に逃げられてしまいました」

 空太がとぼけたように話す。

「まあ用意しなくていいんだったらそれでいいけど。気を付けなよ」

 軽く会話を終え言われた席に座る。数分後、皿を持った女将がキッチンから出てくる。

「おまたせ、今日の朝ごはんはパンとサラダと焼いた卵だよ」

 そう言い空太の前へとお皿を出す。

「ありがとうございます。いただきます」



(さて、とりあえずどうしよう。ギルドに行くのもいいけど店を見て回るのもいいな。昨日は火炎の子犬がいたからいきなり街の外へと出たけど、よく考えたら武器も持ってないし)

 朝食を食べ終えた空太はとりあえず何をするかを考える。

「すみません、お皿ってどうしたらいいですか?」

「食べ終わったのかい?取りに行くよ」

 女将が再びキッチンから出てくる。

「すみません、この辺りに武器屋とかってありますか?あるのでしたらちょっと教えてほしいのですが」

 空太は地図を出しながら女将に聞く。

「ああ、あるよ。このあたりだとここが一番近いところだね」

 女将が地図を指しながら教える。

「ありがとうございます。ちょっと行ってきます」

 場所を教えてもらった空太はさっそく行くことにした。


「確か教えてもらった武器屋ってこの場所で合っているよな。看板も武器屋っぽいし」

 地図を見ながら店の前で立ち止まる。店の屋根には大きな剣が2本交差している看板がこれ見よがしに飾られていた。

「とりあえず入ってみるか」

 店の中へ入ると店の中には様々な武器が目に入る。あるものは壁に立てかけられ、またあるものは籠の中にいれられている。

「いらっしゃい、なんかようかい」

 空太が店の中をきょろきょろと見渡していると1人の男が近づき話しかける。

「すみません、武器がほしいのですが。昨日冒険者になったばかりで武器も持っていなくて」

「初心者か。ならそこの籠に入っている武器がいいだろう。初心者用の武器を入れてある」

 そういい男が部屋の片隅を指さす。その先には少し埃のかぶった武器が籠に入れられてあった。

「ありがとうございます」

 空太は埃を払いながら目当ての武器を探していく。籠の底の方に目当ての武器が眠っていた。

「すみません、これっていくらになりますか?」

 そう言い男に短剣を差し出す。

「1本6大銅貨だな」

 男の言葉に今の所持金を見る。財布の中には金貨が1枚、銀貨が2枚、大銅貨が9枚、銅貨が5枚入っていた。

「うーん、1本だけだと心もとないし」

 空太はもう一度籠の中を探し始める。数分後空太の手には2本目の短剣が握られていた。

「すみません2本ください」

「2本で銀貨1枚と大銅貨2枚だ。3銅貨で腰に装着できるホルダーもつけるがどうする?」

「お願いします」

 銀貨1枚と大銅貨5枚を渡し、短剣2本とホルダーを受け取る。受け取ると空太はさっそくホルダーを装着し短剣を収める。

(おお、ちょっとだけ冒険者っぽくなったな)

 空太が装着した武器に感激していると男が質問をする。

「もう1本の短剣はどうするんだ?見たところ入れる鞄も持ってなさそうだし」

 男の言葉に空太はあっとした表情を見せる。

「ないんだったらここでは売ってないが隣の魔道具店にいくといい」

「わかりました。ありがとうございます」

「ここを出て左の店がそうだ」


 武器屋を出て言われた店へと入る。

「いらっしゃいませ。何をお求めですか?」

「すみません、これが入る用の鞄が欲しいのですが」

 そう言い店員に短剣を見せる。

「うーん。リュック型のものとベルトにつけられるショルダーバッグ型のものがあるのですがどちらにしますか」

「だったら、ベルトにつけられるものをお願いします」

「かしこまりました。少々お待ちください」

 そう言うと店員は店の奥から小さな鞄を持ってくる。

「こちらになるのですが」

 そう言いながら店員が持ってくる鞄は明らかに短剣よりも小さいものだった。

「これって短剣入りますか?明らかに小さいと思うんですけど」

「はい、大丈夫ですよ。これはマジックバックと言って魔法で中の面積を広くしてあります。なので見た目に反して多くのものを収納することができます。ちょっと短剣をお貸しください」

 そう言いながら空太から短剣を受け取り鞄へと入れていく。すると明らかに入るはずのない短剣が小さい鞄の中へするすると入っていく。

「どうでしょう、マジックバックは中の大きさで値段が変化するのですが、これだと鞄の大きさの10倍ほどの広さになって3銀貨ほどになります」

「3銀貨か、ちょっと高いな。でもあった方が便利だし……。もう少し安くなりませんか?」

「うーん、すみません。これ以上値段は下げられません。どうしますか」

「わかりました。3銀貨ですね」

 そう言いながら空太は金貨を出す。

「金貨でお支払いですね。マジックバックと銀貨7枚です、どうぞ」

 店員からマジックバックと残りの銀貨を受け取る。

「補足なんですけど、マジックバックの中は時間の経過がありませんので、食料などを入れても大丈夫です」

「ありがとうございます」

 買ったばかりのマジックバックをベルトに取り付け店から出る。

「予想外に出費してしまったな。早く安定してお金を稼げれるようにならないと持たないな。次はギルドだな」

 ギルドについた空太は昨日とは違いカウンターの方へは行かずに依頼書の張り出されている壁へと向かう。

「昨日は採取の依頼をやったから今日は別のものをやってみるか。……Fランクだとゴブリンの討伐が今張り出されている中で一番稼げそうだな」

 そう呟き一枚の依頼書を手に取りカウンターへ向かう。

「おはようございます、マリーさん。すみません、依頼を受けたいのですが」

「おはようございます、相田様。ゴブリンの討伐依頼ですね。冒険者証をお渡しください」

 空太とマリーに冒険者証を渡すと、マリーは奥の部屋へと入っていきまたすぐ戻ってくる。

「お待たせいたしました。相田様は討伐依頼を受けるのは初めてですね。簡単にですが説明しましょうか?」

「お願いします。何を基準に討伐をカウントしてくれるのかが分からないので」

「かしこまりました。討伐依頼では依頼書に書かれてある魔物を指定の数、あるいは制限なく討伐していただきます。討伐した魔物のカウントについてですが冒険者証のこの欄を見てください」

 マリーは冒険者証の裏面にある『討伐数:ゴブリン……0』と書かれた場所を指す。

「ここには受けた討伐依頼の討伐回数が表示されます。魔物を倒すと自動的にカウントされるので何体倒したか気になる場合はこちらを見てください」

「なるほど、ありがとうございます。今回の依頼書には期限などは書かれてなかったんですけど、いつまでに報告とかってありますか」

「はい、原則依頼書に指定のない場合はいつ報告していただいても大丈夫です」

「ありがとうございます」

「依頼とは関係ないのですが相田様にお伝えすることがあります。今朝ギルド長から連絡があったのですが、一度相田様と会って話があるそうです。今日の夕方以降一度ギルドへ来ていただけませんか」

 「ギルド長が俺と?」

 空太は真っ先に召喚したカードのことを考える。

(昨日の火炎の子犬についての話か?それとも城から何か連絡が入っての話か。どちらにしろ悪い予感しかしないな)

「お願いしたいのですが大丈夫ですか?」

「わかりました」

 そう返事をし、空太は冒険者証を受け取りギルドの外へと向かっていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ボッチな俺は自宅に出来たダンジョン攻略に励む

佐原
ファンタジー
ボッチの高校生佐藤颯太は庭の草刈りをしようと思い、倉庫に鎌を取りに行くと倉庫は洞窟みたいなっていた。 その洞窟にはファンタジーのようなゴブリンやスライムが居て主人公は自身が強くなって行くことでボッチを卒業する日が来る? それから世界中でダンジョンが出現し主人公を取り巻く環境も変わっていく。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。  主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。  こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。  そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。  修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。    それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。  不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。  記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。     メサメサメサ   メサ      メサ メサ          メサ メサ          メサ   メサメサメサメサメサ  メ サ  メ  サ  サ  メ サ  メ  サ  サ  サ メ  サ  メ   サ  ササ  他サイトにも掲載しています。

思い出の修理屋さん

みけねこ
ファンタジー
突如異世界に『聖女』として召喚された主人公。色々と疑問に思うことがあるけれどそれでも一応聖女として頑張ろうとしていた矢先、なぜかもう一人聖女が召喚されてしまう。 「聖女が二人いるなどあり得ない」 その言葉と共に国を追い出されてしまった主人公。異世界の理不尽さに耐えようとする、そんな『聖女』の物語。 (*は流血表現があります)

ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す

名無し
ファンタジー
 ダンジョン菌が人間や物をダンジョン化させてしまう世界。ワクチンを打てば誰もがスレイヤーになる権利を与えられ、強化用のクエストを受けられるようになる。  しかし、ワクチン接種で稀に発生する、最初から能力の高いエリート種でなければクエストの攻略は難しく、一般人の佐嶋康介はスレイヤーになることを諦めていたが、仕事の帰りにコンビニエンスストアに立ち寄ったことで運命が変わることになる。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

処理中です...