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天王寺の変 九の章
侮王凡焉 参 その19
しおりを挟む勝気なキースがその女を見た瞬間、全身を震わせていた。
戦慄。
今誰かに、どうした? って聞かれたら、恥ずかしげも無くキースは『怖い』と答えただろう。
何に対しても無邪気で怖いもの知らずだったマークの、足が竦んだ。
慄然。
今誰かに、どうした? って聞かれたら、訳も分からずマークは『身体が勝手に震える』と答えただろう。
唯一、何とか自我を保てているジョシュの口から、二人も頭に浮かべた言葉を出していた。
「人か? あれが人なのか?」
ジョシュの眼は、感動を浮かばせている。
「オーラの端が、観えない」
視界いっぱいに広がったグロテスクでサイケデリックな禍々しいオーラが、こんなにも美しいとは知らなかった。
人のオーラは基本単色で、選ばれた者が二色だったり三色だったりする。
それが“ナチュラリスト”だ。
その中でも恵まれた、特殊なギフトを与えられた者だけが虹色のオーラを纏えると教えられてきた。
それが、一番美しいナチュラリスト。
それなのに、、、。
「なんてことだ。あの女が、美しく観えてしまう、、、」
今にも涙を流しそうなジョシュの言葉。
解るが、納得してはイケナイ。
ジョシュの言葉だろうが、そこに同意してはイケナイ。
キースは意思を貫くために、歯を食いしばった。
(私は“代理人”として裁く側。
あんな女を尊ぶ事は、決して無い!
食いしばった口から血が出ているのに、キースは気付けないでいた。
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