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天王寺の変 八の章
獣衆無慚 陸 その8
しおりを挟む命令に従うには、わざわざ遠回りして佳穂を捕まえないとイケナイ。
とか考えてると、佳穂を見ていたまゆらの眼が警戒で細くなる。
一頭女が反応。
「五右脚女、六左脚女!」
構えていたエーランの前からあっけなくジャンプ。
「あらよっ!」
反対側まで跳ぶと、まゆらと佳穂の間に立った。
六左脚女が、首を傾げる。
同じ疑問を持った五右脚女が、まゆらに問う。
「まゆら~、コイツただの人間やで?」
「そいつちゃう」
「え?」
「おっ?」
佳穂の前、地面が歪んだ。
何も無いと思っていた地面が滲み、液体が盛り上がって来る。
銀色の液体。
「まさか、、、?!」
遠目で見てたエーランが、もしや? と気付く。
銀色は盛り上がりながら、その形を整え始める。
男性のシルエット。
「これは、、、」
そんな中、まゆらは銀色を見ずに、その後ろ、佳穂の背後にいつの間にか立っていた男を睨んでいた。
(アイツ、、、!
その男は、白のロンTにダメージジーンズ。
裸足に雪駄。
季節感が無い。
伸ばした髪は背中まで届き、センターで分けられた前髪は顔の面積の半分以上を両サイドから隠していた。
薄めの無精髭。
クリアな丸眼鏡は、伝説のミュージシャンを彷彿とさせていた。
まゆらの少し離れた位置に立つ矢部も気付き、驚いた表情で男の名を言っていた。
「レ、、、レプリック?!」
その名に、西下とトッポはもとより、僥倖さえ驚きを隠せないでいた。
「この波動、憶えてまっせ。本名がええか、
HNで呼んだ方がええでっしゃろか?」
無言。
糸に答える代わりに、ニヒルに笑って見せた。
両の手は、ジーンズの前ポケットに親指だけ入れるスタイル。
そのポーズのまま波動を上げる。
佳穂の足元の地面が、さらに盛り上がる。
滲んだ。
遂に形を成す。
グランドの土色から透明になり、それが今度は銀色へと変化し、最後は見事な人型が形成された。
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