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天王寺の変 八の章

獣衆無慚 参 その5

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大国の交差点が見えた。
波働がいたのは今、今宮駅にあげまんちゃんが居なかったこと。
居たら間違いなく『おにいさん一人なん?』ってナンパされるに決まっている。
そんな事とはつゆ知らず、波働は小走りに天王寺へ。

大国を越えると、道の雰囲気が変わる。
いつの間にか25号線。
波働が恵美須の交差点に付いた時、を見る事が出来た。

課長に嫌みで言った、女子高生。

ボサボサ頭。
マスク。
百舌鳥が丘高校の制服。
踝までのロングスカート。
そこから見える、ジャングルブーツ。
顔は知らないが、その容姿は結界の中で知らない者は居ない。

実物を、始めて見た。

土御門家当主“黒門”の孫娘であり、土御門家最強最悪の術師、土御門かるらのひとり娘、土御門まゆら。

 (おっと訂正ですね。確か土御門家を出たという
  噂で、、、で? 噂か。本当かどうか解んないか。
  でも今、安倍の姓を名乗っているんだったっけ

とかなんとか考えながらも、まゆらを見た波働は自分の感覚を一瞬疑った。
疑っては、まゆらを見る。
これを三度繰り返した。

見間違いではない。

自分の蓄積した経験を疑うほど、まゆらの波動が異質過ぎる。
ひとりの術師が纏う波動にしては、混濁し過ぎている。、、、感じる。

 (これは、、、?!

むかしの術者を討伐した際に拷問で聞き出した術のひとつ、『二元素同時展開』を思い出した。

主に、エレメンタラーの技だ。

討伐当初、対抗する術式で対処したが、どうにも上手くと思ったら、純粋なひとつの呪文ではなく、その中に別種のエレメントを混ぜて消しにくくするテクニックだと言う。

なのでこちらも対抗するには二種の呪詛が必要になるというなんとも手間の掛かる相手だったのを思い出した。

ただ、やれる人間は少ない。

拷問にかけた男の情報によると、これが出来るのは持って生まれた才能か、初めから術を発動させるときに二種の元素同時展開をする事を基本として教え込まれ、それを途方もない訓練の積み重ねで実現出来るようになった努力家のどちらか。

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